勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2024年03月

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    中国政府は、不動産バブル崩壊を甘くみている節がある。李首相は、海外企業経営者の前で「たいした問題でない」と大見得を切っているが、実態はそんな軽い問題ではない。中国経済にとって、「命取り」になりかねないほどのプレッシャーを与えているのだ。

     

    『ブルームバーグ』(3月28日付)は、「中国は債務問題に対処を さもなければ『失われた10年』に-ダリオ氏」と題する記事を掲載した。

     

    ヘッジファンド運営会社ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者、レイ・ダリオ氏は27日、中国は債務削減と金融緩和を進めるべきであり、そうしなければ「失われた10年」に直面する恐れがあると警鐘を鳴らした。

     

    (1)「ダリオ氏はリンクトインで、習近平国家主席が今後の国際秩序を表現する際に使った「100年に一度の大変局」との警告に同意するとし、債務問題の管理に向けた措置を中国に勧めると投稿した。この投稿は5000語近くに及んだ。「多くの債務と貧富の大幅な格差があり、同時に大きな国内と国際的な権力の衝突や自然の破壊的変化、テクノロジーの多大な転換が存在する場合、『100年に一度の大嵐』が起きる可能性は高まる」とも指摘した」

     

    習氏は、現状が「100年に一度の大変局」と警告している。だが、対策は小出しである。これが重なれば、「100年に一度の大変局」になりかねないリスクを抱えている。

     

    (2)「ダリオ氏はさらに、米中間の緊張で差別されることを恐れた外国人投資家が分散を進めたり、中国を離れたりしているとも分析。このため、中国は投資獲得で困難に見舞われており、経済的・文化的対立が解消しなければ、向こう10年以内に戦争に発展する可能性が高いとした。債務問題に対処するため、ダリオ氏は中国がデレバレッジ(資産売却し債務削減をする)と金融緩和を同時に行うことを勧めている。そうした動きは、富のレベルで大きな変化につながり得るため、困難で政治的にリスクがあるとも認めた」

     

    過剰債務問題には、早急なデレバレッジが不可欠である。これによって、金利負担を軽減することだ。現在、この正統派政策が行われていない。「言うは易く行うは難し」という側面があるだけに、勇断を以て行われなければならない。中国政府は、これを忌避している。

     

    (3)「中国は、「振り子がどこまで毛沢東主義的・マルクス主義的なやり方に戻るかは誰にも分からない」とした上で、「より直接的なコミュニケーションは、中国指導部の伝統的なやり方ではないことが妨げとなっている。中国が、より伝統的なやり方に回帰する中ではこれも理解できる」と記した」

     

    中国政府は、「広く公論に委ねる」という方式でなく、少ない人間で事を運んでいる。これが、大きなリスクを招いている。

     

    『日本経済新聞 電子版』』(3月28日付)は、「IMF元幹部、中国の不動産不況『長く続く』供給過剰で」と題する記事を掲載した。

     

    国際通貨基金(IMF)元副専務理事の朱民氏は28日、中国の不動産市場について「構造調整は非常に長く続く」と述べた。不動産不況の短期での収束は難しいとの見解を示した。

     

    (4)「朱氏は「人口減少や高齢化などの需要変化のなかで、中国不動産は供給過剰に陥っている」とした。「中国の1人当たりの住宅面積は42平方メートルで、すでに世界的に高い水準にある」と指摘した。「中国の不動産は供給過剰であり、その構造調整は、非常に長く続くことを理解しなければならない」と厳しい見方を明らかにした。政府には、新築住宅に集中した政策を見直し、長期で安心して住める賃貸住宅の整備など抜本的な政策転換を促した。一方、中国経済の最大の焦点である金融システム危機については「発生しない」と可能性を否定した」

     

    中国の人口動態からみて、中国の住宅需要が減少することは疑う余地のないことだ。IMFは今後10年間で住宅需要は半分以下に減るとしている。この現実を見据えれば、早期に不動産業界を再編する必要がある。

     

    (5)「朱氏は、海南省を拠点とする複合企業、海航集団(HNAグループ)や積極的な海外投資で債務を膨らませた安邦保険集団の破綻処理を例に挙げ、「中国はこうした企業を処理する能力がある。一部の企業に関する悪いニュースを聞いても、心配する必要はない」と自信を示した。中国の倪虹・住宅都市農村建設相は全国人民代表大会(全人代、国会に相当)期間中の記者会見で「重大な債務超過に陥り経営が困難となった企業は、破産すべきは破産し、再編すべきものは再編すべきだ」と述べた。経営状態が深刻な不動産企業に今後厳しい対応を取る方針を示唆している」

     

    中国は現在、不動産業界再編を行う能力があるとしている。このまま放置しておくと、体力消耗が続き「共倒れになる」。習氏には、その決断がつかないのであろう。

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    習近平国家主席は3月27日、北京を訪れた米国の財界関係者と会談し、中国との経済交流と投資を拡大してほしいと求めた。習主席はこの会談で、中国経済の健全性と持続可能性を強調、「中国経済のピークはこれから先」と胸を張った。

     

    『ブルームバーグ』(3月28日付)は、「習主席、米企業経営陣に対中投資促すー中国経済のピークはまだ」と題する記事を掲載した。

     

    中国の習近平国家主席は27日、クアルコムのクリスティアーノ・アモンCEOを含む北京を訪れた米企業経営者グループとの会合を開いた。中国は自国経済への信頼回復と米国との関係安定化を探っている。

     

    (1)「新華社通信によると、習氏が会ったのは米国の経済界や戦略コミュニティー、学界の代表だ。会合が非公開だったことを理由に匿名を条件に述べた関係者の1人によると、会合は1時間半を超え、米国側が質問を投げかけ、習氏がそれに答えた。中国共産党の総書記でもある習氏は、米中両国がデカップリング(切り離し)に向かう必要はないとし、米企業が中国に投資することを望んでいると述べたと関係者は明らかにした」

     

    中国は、政治的に対立する米国と経済的に結びつきを強化しなければならない矛盾した立場にある。この状態で、仮に「台湾侵攻」を行えばどうなるか。結論は、すぐに出るであろう。

     

    (2)「習氏はまた、国内経済の問題を認めた上で、当局はそれに対応可能で、中国経済はピークに達していないとも語ったという。この関係者は、会合がオープンかつ率直な雰囲気だったとの見方を示した。中国は、外国企業を歓迎する姿勢を示そうとしているが、米政府との緊張をはらむ関係や不安定な景気回復、コンサルティング会社に対する締め付けなどで投資マインドは後退している」

     

    習氏は、中国経済が未だピークを迎えていないと胸を張った。これは事実でなく、生産年齢人口(15~59歳)が総人口の占める比率は、2011年にピークを迎えた。これが、中国経済の潜在成長率のピークである。習氏の強がりは、「年寄りの冷や水」である。

     

    (3)「地政学的緊張の深まりや中国での国内企業優遇の動きがあるものの、グローバル企業経営者にとって今回の会合は、巨大な中国市場に参入する関心を強調する機会となった。中央テレビ(CCTV)によれば、中国と米国は「大きな問題については共通点を探し、小さな問題については相違点を留保」すべきだと習氏は呼びかけ、両国の人的交流がさらに盛んになることを望んでいると述べた」

     

    中国は、米国との経済的な融和を望んでいる。だが、米国を諜報面で出し抜くという狙いも事実だ。それだけに、米中の融和実現は極めて難しくなっている。

     

    (4)「CCTVはまた、習氏が中国と米国の関係について、ここ数年の後退や課題にもかかわらず、より良い未来を迎え得るとし、中国経済は健全で持続可能だと説明したと報道。中国は改革の深化で大きな動きを計画しており、トップクラスのビジネス環境を構築するよう目指すとも話し、中国と米国は人工知能(AI)と貿易、経済で助け合うべきであり、互いの妨げになるべきではないと主張したという」

     

    習氏がAIに言及したのは、米国が既にこの面で圧倒的な支配権を確立したことへの焦りである。AI半導体は、米国の独占であり中国は手も足も出ない状態になっている。

     

    (5)「昨年11月、習氏がサンフランシスコ近郊でバイデン米大統領と会談し両国関係は安定したが、貿易規制やサイバー攻撃への非難など幅広い問題を巡り論争は続いている。中国は26日、米国の電気自動車(EV)補助金を巡り世界貿易機関(WTO)に提訴したと発表。米国と英国は今週、国家が支援する中国のハッカー集団が政治家や企業、反体制派を標的にし、英国の有権者データを盗んだと非難した」

     

    中国が、西側諸国へサイバー攻撃を仕掛けていると非難されている。こういう中で、経済だけは切り離して円滑に進めようという習氏の要請が、いかに実現困難か一目瞭然である。

     

    (6)「中国は、一部エコノミストから野心的と見なされている年5%前後の成長目標の達成を目指し、外国人投資家への働きかけを強めているようだ。中国商務部は1月、外国企業との懇談会を毎月開催し、彼らの懸念に耳を傾け対処することを約束している。新型コロナウイルス禍以前は、習主席は中国版ダボス会議とも呼ばれる「博鰲(ボアオ)アジアフォーラム」などで、経営者たちと定期的に会談していた」

     

    中国は、米国へ「政経分離」を求めている。政治的に対立しても経済的には巧く行おうというねらいである。これは、中国の論理であって米国は受入れがたいであろう。

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    中国は、EV(電気自動車)・電池・太陽光発電パネルの3業種をテコに輸出増加をめざしているが、米国は超党派でEV輸入を拒否する姿勢をみせている。100%超の関税や1台あたり2万ドル(約300万円)の追加関税を求める法案まで登場する騒ぎだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(3月28日付)は「米国、中国EVに関税100%超も検討 メキシコ生産に照準」と題する記事を掲載した。

     

    米国の政府や連邦議会は中国の電気自動車(EV)が米国内に流入しないよう対策に動く。議会には100%を超す税率を課し、中国メーカーがメキシコで生産した場合も対象に含める案がある。安さを売りに世界を席巻する中国製EVへの警戒感が超党派で高まっている。

     

    (1)「イエレン財務長官は27日、中国を訪問してEVなどの過剰生産を見直すよう中国政府に求めると表明した。南部ジョージア州で講演した。米メディアによるとイエレン氏は4月にも中国を訪ねる。イエレン氏は「かつて鉄鋼などで、中国政府の支援によって大幅な過剰投資が広がり、過剰生産が発生した。現在ではEVなどの新しい産業で過剰生産能力が構築されている」と説いた。「世界の価格と生産パターンをゆがめ、米国の企業と労働者、そして世界中の企業と労働者にも打撃を与える」と訴えた」

     

    イエレン氏は、EVなどの新しい産業が引き起こしている過剰生産が、世界経済に脅威であることを警告している。米国への悪影響も強調しており、4月に訪中する。

     

    (2)「米政府・議会は国内の自動車産業を保護しようと、貿易障壁を検討している。米国は中国製自動車の輸入に25%の制裁関税を課している。米通商代表部(USTR)は現在、制裁関税の見直し作業中だ。米メディアは自動車がさらなる引き上げを調整していると報じた。連邦議会議員は政府の動きに合わせ、2024年2月以降、続々と具体的な法案を提出した。野党・共和党のジョシュ・ホーリー上院議員は2月末、125%に関税率を引き上げる法案をだした。同党のマルコ・ルビオ上院議員も3月、中国製の輸入車1台あたり2万ドル(約300万円)の追加関税を求める法案を提出した。中国メーカーがメキシコなど他国で生産した車も対象にする」

     

    米国は、すでに中国製自動車の輸入に25%の制裁関税を課している。従来は、これによって中国EVの輸入を防げるとみてきた。だが、最近の中国EVは国内で値下げ競争をしており、25%関税では対抗できない事態になっている。そこで、野党議員からは125%や2万ドルの関税率まで提案されている。

     

    (3)「与党・民主党の重鎮であるシェロッド・ブラウン上院議員らも歩調を合わせるように、3月7日に米政府に関税引き上げを求める書簡を送った。「人為的な低価格の中国製EVが米国に流入すれば、何千人もの米国人の雇用が失われ、米国の自動車産業全体の存続が危うくなる」と記した。現時点では米国内で流通する中国製EVはほとんどないとみられる。議員には一度流入を許せば、一気に普及しかねないとの懸念がある」

     

    与党・民主党も、中国EVへの高関税引上げへ同調する動きが広がっている。11月の大統領選を控えて、与野党は揃って高関税によって中国EVの輸入を防ぐ姿勢をみせている。

     

    (4)「中国の比亜迪(BYD)がメキシコでのEV生産を検討していることも懸念に拍車をかけた。メキシコから米国への車の輸出には一定の条件のもと、関税がかからない。11月の大統領選で対決するのが確実なバイデン大統領と共和党のトランプ前大統領も足並みがそろう。バイデン氏は「中国の政策は米市場に中国車を氾濫させ、国家安全保障にリスクをもたらす可能性がある」と言及するなど、警戒感を度々あらわにしてきた。前大統領も16日、再選した場合には中国の自動車メーカーがメキシコで生産した車に「100%の関税を課す」と明らかにした」

     

    中国のBYDは、メキシコでEV工場を建設する案を検討している。BYDは、メキシコへEV工場を建設しても、米国へは輸出しないとしているが、迂回輸出で米国市場を目指すことは明らかであろう。

     

    (5)「これまでバイデン政権は、対中政策について「(規制対象を絞って厳重に管理する)スモールヤード・ハイフェンス」という目標を掲げてきた。米中の分断は志向せず、先端半導体など一部に限定し、経済への打撃を最小限にする考え方だ。ここにきて、先端品でなくても大量の一般品が米市場を席巻することが経済安全保障上の脅威になるとの認識が米政府・議会で広がり始めた。商務省は1月から旧世代の一般半導体を巡り、中国依存の深刻度を調べ始めた。調査結果を受け、関税引き上げなどの措置を検討する

     

    中国経済が、停滞しているだけにダンピング輸出で苦境打開を図る事態は十分に想定される。米国は、それだけに中国EVの輸入へ強い警戒観をみせている。この騒ぎは、旧世代半導体輸入警戒論まで飛び火している。米国の対中警戒論は、高まるばかりだ。

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    経済産業省は3月27日、2035年ごろをめどに官民で次世代の国産旅客機を開発する案を示した。三菱重工業が撤退した「三菱スペースジェット(MSJ、旧MRJ)」の反省を踏まえ、一社単独ではなく複数社で開発を進める。MSJは、完成後に多くの予約を取りながらも、米国での最終形式証明が取れず23年2月、ついに断念に追込まれた。あれから1年、国策半導体企業ラピダスに倣って、海外との連携を視野に再挑戦する。 

    『日本経済新聞 電子版』(3月27日付)は、「国産旅客機開発に米欧支配の壁 三菱重工は1兆円費やす」と題する記事を掲載した。 

    経済産業省が企業と連携して次世代国産旅客機の開発を目指す方針を固めた。大規模投資が必要となる民間事業者にとって、開発参入の障壁は高い。旅客機開発では2023年に三菱重工業が総額約1兆円を投じたものの撤退に追い込まれた。教訓を生かせるのか。日の丸ジェットの実現に向け、政府による戦略の実効性が問われる。


    (1)「三菱重工は08年に「三菱スペースジェット(MSJ、旧MRJ)」の開発を始めた。民間企業の主導で日本の航空機産業の育成を目指す一大プロジェクトだった。安全性を確保するための設計変更が相次ぎ、6度も航空会社への納期の延期を余儀なくされ、当初1500億円としていた開発費は累計で1兆円規模に膨らんだ。新たに巨額資金を投じても事業の採算性を確保するのが難しいと判断し、23年2月に開発中止を発表した」 

    MSJは当時、世界注目の小型ジェット機(30~50席)として注目された。多くの予約も獲得して、後は米国での形式証明を取る最終段階で断念した。ここまで進めながら、最後の段階で断念しただけに、もう一度「仕切り直し」で臨めば、成功への可能性はあろう。MSJは、三菱重工業1社の単独事業であった。今回は、複数社が参加すれば環境も変わる。 

    (2)「三菱重工幹部は、1社で背負うのはあまりにリスクが大きすぎた」と、MSJ開発を振り返る。3900時間を超える試験飛行では大きな問題は生じず、「技術的な自負はある」と成果を口にする。ただ、米欧が支配する空の「ルールメーキング」の壁を乗り越えられなかった。米航空当局などから商用飛行に必要な型式証明を取得できなかったためだ。「なぜ安全なのか証明しろ」と、厳格なようであいまいな要求に苦しんだ。度重なる開発の延期で部品の大部分を調達していた米メガサプライヤーとの関係も悪化した。部品調達に支障をきたし、値下げ交渉もうまくいかずコストがかさんだ」 

    MSJは、最初から米国航空機産業との連携があれば、不首尾に終わることもなかったであろう。戦時中の戦闘機「零戦」を製作した経験を持つ日本が、最後の詰めの段階で米国から「しっぺ返し」を受けたようなものだ。

     

    (3)「MSJ開発の本拠地となった愛知県内の部品メーカーは「航空関連の人がいなくなってしまった。もう一度やるといっても人が集められるかどうか」と見る。別の部品メーカーの社長は「お金のかかる航空機開発では国が最後まで伴走してくれなければ成功は難しい。MSJは中途半端だった」と指摘する。三菱重工は撤退表明時に航空関連の次世代技術を模索することは公表していた。ただ、「すぐに開発に向けて動き出す機運は社内にない」と同社関係者は話す」 

    今回の国産航空機復活への動きは、経産省の旗振りである。MSJの経験が風化しないうちに立ち上がらなければ、過去の努力が無駄になる。 

    (4)「海外の航空当局を乗り越える以外にも壁はある。政府は水素エンジンを動力にした旅客機などの開発を想定している。背景には航空産業で進む脱炭素の動きがあるためだ。国際民間航空機関(ICAO)は50年までに国際線からの二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロとする目標を掲げている。機体や動力源も新しくする次世代の航空機として主に3種類の開発が進む。航空機に発電用のタービンを搭載してモーターを回すという手法や、水素を使う燃料電池を搭載して発電させる方法だ。ジェットエンジンの燃料をケロシンから水素に切り替える方法も検討されている」 

    日本政府は、水素エンジンを動力にした航空機開発を目指している。水素エンジンでは、トヨタ自動車が開発に取組んでいる。日本の総力を以て取組めば早期に実現へこぎつけよう。

     

    (5)「ただ、次世代航空機に使う動力の開発に向けては欧米が先行している。米航空宇宙局(NASA)は次世代の電動航空機の概念設計を示している。欧州エアバスは20年に水素を使った3種類の次世代機のコンセプトを発表し、35年に向けて開発を進めている。米ゼネラル・エレクトリック(GE)と仏サフランは合弁会社を通じ、水素も使える新型の航空エンジンを開発する」 

    日本も、海外との連携が必要になろう。「単独開発」では、思わざる障害に出くわす。要は、他国との協調路線が必要だ。 

    (6)「日本は官民をあげたプロジェクトで先発勢に追いつけるかも問われることになる。

    日本企業に成功事例がないわけではない。ホンダが小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」の商用化に成功している。MSJと比べ同じジェット機と言ってもサイズが全く異なるため、両者の単純比較は難しい。三菱重工はMSJの開発拠点を日本に置き、当初は日本の技術者が主導していた。ホンダは最初から米国に拠点を置き開発から製造まで全て米国で行い、型式証明を取得し商用化にこぎ着けたという違いはある」 

    MSJが失敗し、ホンダは成功した。これは、形式証明の権限を握る米国との関係性がカギを握っている。次期国産航空機開発では、ホンダ式が有効であろう。ホンダのように、開発本体を米国へ移すことはないが、「提携」を密にすることだ。

     

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    3月27日の香港株式市場で、中国最大の電気自動車(EV)メーカー、比亜迪(BYD)の株価が急落した。2023年通期利益が予想を下回ったことを受け、同社が激しい価格競争をかわしながら力強い利益の伸びを維持できるかどうか疑念が強まったからだ。

     

    BYDのライバルであるテスラは、中国での生産を縮小し始めている。テスラは3月に入り、上海工場での「モデルY」と「モデル3」の減産を開始し、労働日数を週6.5日から5日に減らしている。中国でのEV競争が限界にきていることを示している。

     

    『ブルームバーグ』(3月27日付)は、「中国BYD、香港市場で株価急落ー23年通期利益が予想に届かず」と題する記事を掲載した。

     

    BYDの23年通期利益は、予想を10億元(約210億円)下回った。期末配当は1株当たり3.1元と、前年比で約3倍へ増配されたものの、好材料視はされなかった。決算発表を受け、BYD株は一時7.4%安と、昨年8月以来の日中下落率となった。

     

    (1)「アバディーンの投資ディレクター、シンヤオ・ヌン氏は「少なくとも私の見解では、1株当たり利益減少が懸念されている可能性がある」と指摘した。モルガン・スタンレーのアナリストは26日のリポートで、BYDの1株当たり利益は昨年10~12月(第4四半期)に前期比で25%減少した可能性が高いとの見方を示していた」

     

    BYDは、販売台数で23年10~12月(第4四半期)にテスラを追い抜き、EV販売台数で世界首位に立った。ただ、今年1~3月はBYDの販売が集中する中国で旧正月休みがあったため、首位の維持は難しい可能性がある。

     

    BYDの23年販売台数は、EVとハイブリッド合わせて302万台だった。年間目標の達成に向けて第4四半期だけで94万2000台を売り上げた。BYDは今年に入り、中国自動車市場で価格競争の第2ラウンドを開始した。「新時代の電気はガソリンよりも安い」をスローガンに、ガソリン車からEVへの乗り換えを進めようと大半のモデルで値引きを実施している。

     

    こうした値引き競争が、さらなる販売台数増加に結びつかない場合、値引き分は逆に利益を減らすという逆効果を招く「両刃の剣」となる。このリスクを乗り切れなければ、BYDにとって大きな損害をもたらす。

     

    BYDの1株利益が、昨年10~12月期に前期比25%減になったとすれば、これが株価急落要因となる。この基調の上で値引き要因が加われば、1株利益はさらなる減少となる。株式市場が、神経を使う理由だ。

     

    『ブルームバーグ』(3月25日付)は、「BYD、中国でほぼ全モデル値引き-EVで後れ取るトヨタなどに攻勢」と題する記事を掲載した。

     

    BYDは、EV販売で米テスラを抜き世界一になったことに満足せず、今度はトヨタ自動車や独フォルクスワーゲン(VW)などから顧客を奪うことを目指し、価格競争が厳しい中国で積極的な値引き攻勢を仕掛けている。

     

    (2)「BYDは現在、「電比油低(電気はガソリンより安い)」と称するマーケティングキャンペーンの一環として、販売するEVとハイブリッド車のほぼ全モデルを値引きしている。注目すべきは、BYDの最も手ごろなEVの価格がさらに引き下げられたことだ。ハッチバック「海鴎(シーガル)」は5%値下げされ、6万9800元(約147万円)となった。トヨタやVW、日産自動車はEVへの移行で後れを取り、その結果、中国での販売で苦戦している」

     

    「電比油低」とは、EVがガソリン車よりも割安という意味である。EVの「海鴎(シーガル)」は150万円を割っている。この価格帯で、EVの販売台数がどれだけ伸びるかだ。伸びなければ、BYDにとって「丸損」というリスクを被る。

     

    中国の乗用車販売台数は、今年1~2月で前年比17%増加。新エネルギー車は、37.5%の増加だ。テスラの出荷台数は、前年同期から6%の減少になった。年初から値下げを実施したにもかかわらず、テスラは販売台数増に結びつかなかった。

     

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