勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2024年04月

    テイカカズラ
       

    4月25日に開幕した「北京国際自動車ショー」は、中国の自動車メーカーが人工知能(AI)などソフトウエアとの融合を打ち出している。「走るスマホ化」と言われるほどの変化をみせているのだ。

     

    新興企業の小鵬汽車(シャオペン)は、AIを活用して高度な理解力やコミュニケーション能力を車に持たせ、車内操作や運転支援をするシステムを近く投入する方針を明らかにしたほど。100以上の機能を組み合わせ、運転者の嗜好や個性に合わせた車両になるという。『日本経済新聞 電子版』(4月27日付)が報じた。

     

    『ロイター』(4月27日付)は、「『豪華装備』競う中国EVメーカー、西側と異なる消費者指向」と題する記事を掲載した。

     

    競争が激しさを増す一方の中国の電気自動車(EV)市場では今、他の地域では決して目にされないような「豪華装備」を惜しげもなく提供し、消費者を引きつけようとする国内メーカーの動きが活発化している。

     

    1)「新興ブランドだけでなく国有の大手メーカーでさえ、2万ドル(約310万円)程度の低価格EVにも、かつては高級車向けと考えられてきた技術や性能を盛り込んでいるほどだ。2万ドルと言えば、米国の新車平均販売価格4万8000ドルの半分以下に過ぎない。こうした流れは、中国市場で売れ筋のEVを抱えるテスラやフォルクスワーゲン(VW)をはじめとする外国勢にとっては逆風が強まることを意味する。価格に関しては昨年、BYD(比亜迪)が「シーガル(海鴎)」を投入して業界に激震が走った。現在、シーガルの販売価格は1万ドル未満で、中国における販売台数は4位となっている」

     

    中国EVは、激烈な低価格競争に移っている。この裏には、政府の補助金政策が働いている。純粋な競争ではない。

     

    2)「ただ、EV参入後発組の国有企業を含む他の中国メーカーも、25日に始まった国際自動車展示会「北京モーターショー」で1万ドルを切る車を披露し、BYDとの差を埋めた。それらよりやや高い2万ドル近辺のEVや、プラグインハイブリッド車(PHV)も市場にあふれている」

     

    EVが、1万ドル(約154万円)を割って販売され始めた。採算が取れるはずがない。生きるか死ぬかの瀬戸際であろう。欧米のダンピング輸出への警戒が高まっているので、これを意識して低価格競争を演じさせている面もあろう。

     

    3)「注目されるのは、こうした車も高級車並みの内装や技術が装備されている点にある。ベイン・アンド・カンパニーのパートナー、レイモンド・ツァン氏は、中国の特に若い世代は自動車を選ぶ際に「技術面の豪華さ」を重視していて、中国メーカーはその面で優位に立ち続けていると指摘。「この状況は、多くの西側市場で車の買い手がなお品質や信頼性、乗り心地、操縦性などにかなり重きを置いているのとは非常に異なっている」と述べた」

     

    低価格EVが、高級車並みの内装や技術が装備されている。中国では、ハイテク装備の豪華さを競っているが、欧米とは異なっている。西側市場のユーザーは、品質や信頼性、乗り心地、操縦性などにかなり重きを置いている。

     

    4)「一部の中国メーカーは何とか差別化を図ろうとして、消費者を面白がらせるような機能を車に取り付けている。ゼネラル・モーターズ(GM)と上海汽車(SAIC)の合弁企業が販売する小型EV「宝駿」(最低価格1万1000ドル前後)には、後方部分にドライバーが他の車に対して親切にされた場合に「ありがとう」やハートの絵文字をメッセージとして点滅させるためのスクリーンがある」

     

    中国EVは、「オモチャ的要素」が重要部分となっている。中国の若者が好むからだ。

     

    5)「吉利汽車傘下のプレミアムブランド、ジーカーのEVセダン「001」のフロントグリルは、停車時に音楽を流しながら、歩行者に「いいね」の絵文字を送り続けることができる。国有の東風汽車集団が披露している「納米」は航続距離300キロで価格は9600ドルだが、テスラによって人気となった空力性能を持ち、スマートフォンで離れた位置からドアを開けられる」

     

    1万ドルを割るEVも登場した。スマートフォンで離れた位置からドアを開けられるという


    (6)「これまで中国では、国産ブランドよりも欧米ブランドがより豪華で品質も上だとみなされてきたものの、そうした構図は急激に変わりつつある。マッキンゼーのアナリストチームは3月に公表した中国自動車市場見通しで「外国ブランドの威光はほぼ消滅した。伝統的な高級外国車オーナーは、一方的に中国産の高級新エネルギー車オーナーへと移り変わっている」と分析した」

     

    中国国産車は、高級イメージを売り込んでいる。外車ブランドの威光は、ほぼ消滅したという。中国自動車市場は急速に変わりつつある。

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    日経平均株価が、34年ぶりに高値を更新したことは日本の「復興」を強く象徴するものとなった。日本の再出発を合図する信号となった。 

    今年の春闘は、ベースアップ(基本給引上げ)で中小企業労組も3%台を確保している。連合の春闘集計は、すでに第4次回答まで来ているが、従来のような「尻つぼみ」の結果にならず高水準を維持している。特に中小労組(従業員300人未満)は、第2回以降の集計で額・率ともに上昇するというこれまでにない「好調さ」だ。こうして、企業のビヘイビアが変わったのは確実である。企業は、賃上げの重要さを悟ったのだ。 

    『ブルームバーグ』(4月27日付)は、「失われた30年が変えた日本、進化し次の時代へ」と題するコラムを掲載した。 

    90年代後半に米紙『ニューヨーク・タイムズ』(NYT)の東京支局長だったハワード・フレンチ氏は、日本について「世界情勢における重要性が大幅に低下し、今なお衰退している中途半端な国という世界における正当な位置に戻りつつある」と書いた。 

    (1)「私が日本に来て21年目となる今年、何かが起きている。日経平均は2月22日、3万9098円68銭で引け、約34年ぶりに最高値を更新。経済的にも心理的にも画期的な出来事となった。痛みを伴う政策の変更や地政学的な要請、そして全くの幸運が重なった結果だ。外交政策や金融・企業の活力、防衛戦略、ポップカルチャー、さらにはスポーツ(大谷翔平選手は今や世界で最も有名なアスリートの1人だ)などあらゆることが、株式相場のブレークスルー以上に、日本が低迷期から抜け出しつつあることを示している」 

    日本は、株価以外にも低迷期から脱したことを示している。外交政策や金融・企業の活力、防衛戦略、野球の大谷選手まで活躍の場が広がっている。

     

    (2)「今の日本は活気にあふれ、有能な人材も多く自信に満ちている。日本を立ち直らせた立役者である故安倍晋三元首相は、日本が「普通の国」になることを望んだ。かつての日本であれば、世界中のどの国からも課題を抱えた国にしか見えなかったかもしれないが、現時点での日本の物語は希望を与えてくれる。衰退は不可避ではないのだ。普通の国に不安はつきものだ。国民が無気力に陥っているわけではない。「今なお衰退している中途半端な国」ではない日本は、再び世界で活躍するプレーヤーだ。そして、80年代の恐れ知らずの経済大国ではない。失われた30年は日本を変貌させ、進化させ続けている。筋書きは変わったのだ」 

    安倍晋三元首相は日本で最長政権を担ったが、多くの改革の種を蒔いている。「インド太平洋戦略」は、安倍氏の構想から出発し米国を巻き込んだ世界戦略になった。国内では、コーポレートガバナンスの重要性を認めて旗をふった。日本企業復活へのステップになったのだ。 

    (3)「日本の政策立案者の多くは、危機の複雑さに対処することを拒み、一つのシンプルな解決策で好景気を取り戻せると信じていた。何度も浸水が起きていたとしても、ほとんど誰も船が沈みつつあると言おうとしなかったのだ。真に効果的な最初のゲームプランは、12年末に安倍氏が首相に返り咲くまで待たなければならなかった。同氏の経済政策「アベノミクス」は、財政出動と日本銀行による国債買い入れを通じて経済活動を刺激しようとするものだった。日本の苦境は構造的で指導者1人の手に負えるものではなかったが、安倍氏は適切な解決策を選ぶという点で、リーダーの個人的資質が依然として重要であることを証明した」 

    平成バブルからの本格的復興は、安倍氏の構想によって始まった。アベノミクスである。反対派は、「アホノミクス」と呼んで非難した。

     

    (4)「経済アナリストの間では、アベノミクスの持続的な効果については意見が分かれているが、同氏が推し進めた改革の一つである15年に導入された日本初の「コーポレートガバナンス(企業統治)コード」は実を結んだようだ。これには、上場企業の経営陣や取締役会に対する評価を高め、企業行動の不透明性を小さくする措置が含まれていた。キーマンという意味ではもう一人、忘れてはならない人物がいる。世界的に有名な投資家ウォーレン・バフェット氏だ。日本の株式相場が上昇に転じる前の2020年、日本の5大商社に着目していたバフェット氏は各商社の株式5%を保有。その2年後に持ち株比率を高めた時、日本に強気だと宣言した」 

    15年に導入された「コーポレートガバナンス(企業統治)コード」は現在、ようやく実を結んだ。もう一人、米国の投資家バフェット氏が、五大商社に注目して「日本株ブーム」の先がけになった。 

    (5)「アベノミクスは、不透明な日本を想定していた人々に驚きを与えた。企業は今、株主を大切にし、生産性の低い事業を売却し、時価総額を上げられない場合は上場を廃止さえしている。敵対的買収をかわすためライバル企業の株式を購入したり、株式を持ち合ったりするというあしき慣行も廃止されつつある。かつては「ハゲタカ」ファンドとマスコミにやゆされたアクティビスト投資家も、今では取締役会を動かす存在として歓迎されている」 

    アベノミクスの一環であるコーポレートガバナンスは、日本企業の閉塞的行動を180度変えさせた。 

    (6)「日本政府はずっと早く、デカップリング(切り離し)とまではいかなくとも、中国絡みのリスクを取り除く必要性を理解していた。中国本土からベトナムやインドなどの製造業で中国と競い合う国に投資を分散させた日本は「中国+1」戦略の先駆者だ。米国のトランプ前政権下で始まり、バイデン政権で加速した「脱中国」政策への転換は、日本を世界的な地位回復に何よりも貢献した。日本の歴代政権は、インドやフィリピンなど、日本と同じように中国との問題を抱える国々との関係を深めてきた。米国の政策立案者は今、日本の対中アプローチは初めから正しかったと認めている」 

    日本外交は、世界で最初に中国への警戒姿勢をみせ、欧米外交をリードしている。これが逆に、日本の世界的地位回復に役立っている。

     

     


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    4月26日のニューヨーク外国為替市場で、円相場は1ドル=158円台前半まで下落した。植田日銀総裁が、記者会見で「円安に金融政策で直接対応するつもりはない」と発言したことが、円売り勢を勇気づける結果となった。日米金利差が、円安相場の背景にあることを示唆している。一方では、急速な円安が日本の国力低下を反映したものと見方もある。果たしてどうなのか。 

    『ロイター』(4月26日付)は、「円安の背景に日米金利差、違和感覚える国力低下論=尾河眞樹氏」と題する記事を掲載した。 

    円安・ドル高が止まらない。年初来の対円の通貨騰落率(4月24日時点)を見ると、円が全面安となっている一方、外為市場で取引量が多い主要10通貨のうち、ドルの上昇率は9%でトップとなっている。 

    (1)「中東情勢の緊迫化による原油価格への上昇圧力と円安が相俟って、国内では更なる円安に対する不安の声が高まっている。こうした声を反映してか、「足元の円安は、日本の国力の低下によるものだ」という論調も散見されるようになった。確かに、日本の人口減少や財政問題などを踏まえると、人々の将来に対する不安は根強い。さらに円安と関連付けて「国力の低下だ」「深刻な問題だ」と不安を煽られると、「ナルホド」と比較的容易に賛同を得られることが背景にあると思われる。また、こうした見方が広がることにより、円の先安観が強まれば、今後さらに円安を後押ししていく可能性もあるだろう」 

    現在の円安相場は、日本人に不安感を煽るものだが、その「正体」を見抜く冷静さも必要だ。国力低下が原因ではない。日米金利差によるものだ。

     

    (2)「『国力』とは、文字通り「国の力」だ。バブル崩壊以降、「失われた30年」と言われるほど景気の低迷が続いた日本の経済力は、「相対的に弱かった」と言える。しかしこれも30年という長きにわたっており、ドル円が急騰し始めた2022年からのこととは言えないだろう。そもそも、バブル崩壊後に円高が進行し、2011年に1ドル=75円台の超円高に見舞われた際、日本では「円高・デフレ」のスパイラルが大きく問題視されていて、「経済力」は極めて弱かったことは誰もが知るところだ。こうした点からも、最近の円安の背景を「国力の低下」だと単純に説明するのには、やや違和感を覚える」 

    過去の円相場の推移をみると、バブル崩壊後の2011年に1ドル=75円台の超円高に見舞われている。これは、日本の国力が回復した結果ではない。まさに、為替相場の「オーバーシュート」によるものだ。その意味では、現在の超円安は「オーバーシュート」である。 

    (3)「2022年以降の急速な円安については、ほとんどが日米金利差で説明がつくと筆者は考えている。日米実質金利差(10年)とドル円は長期にわたり連動している。特に、2021年7月以降直近までの期間を取ると、相関係数は0.94と極めて高い。これには、2020年のコロナショックが影響していると思われる。パンデミックにより、世界各国は共通の危機に晒された。したがって、どの国も「財政出動」と「金融緩和」のポリシーミックスによりこれを乗り越えようとした。「マネーがジャブジャブの状態」においては、少しでも金利の高い通貨にマネーが向かいやすくなり、金利差の変化に対する為替レートの感応度も高くなっていることが考えられよう」 

    2022年以降の急速な円安は、日米金利差で説明がつく。パンデミックによる世界的な金融緩和で、世界のマネーは少しでも金利の高い通貨へ向かいやすい局面になっている。その点で、日本の実質的な「ゼロ金利」では、円安はやむを得ない事態だ。

     

    (4)「2011年にドル円が75円台を付けた局面では、日本は超円高とデフレに悩まされていた。その後の日銀による「異例の金融緩和」により、円高・デフレの負のスパイラルを断ち切れたことは、日本経済に大きく貢献したと言えよう。ただ、その後も金融緩和の継続と円安が長期化したことにより、財政赤字が慢性化し、低生産性の企業(ゾンビ企業)が生き残るという副作用も発生している」 

    2011年、円が75円台と超円高を付けたが、日本経済が「絶好調」であったわけでない。当時の国力は低下していたのだ。最近の円安相場が、国力衰退を象徴するとの説にはこうして無理を伴っている。 

    (5)「今年の春闘は大幅な賃上げとなり、いよいよ「賃金と物価の好循環」の兆しが見られ始めた。そうすれば、日本経済の成長力も高まり、高い金利が受け入れられる世界になっていく。生産性の向上を起点とするこの「好循環」のチャンスを逃さないようにする必要がある。海外から日本への直接投資が増え、異例の金融緩和からの正常化も進めば、ポジティブな意味で円がじわり買われる時が来るのではないか。そうならない限り、ドル円は米国の政策頼みの相場が続きかねない。結局のところ、国力の低下が円安の要因というよりは、むしろ「長期にわたる円安が国力の低下を招く」ということなのではないだろうか」 

    日銀の利上げは、7~9月と予測されている。毎月勤労統計調査で、賃金の引上げを確認してから利上げとなろう。円安相場は、あと少し続くとみられるのだ。

     

     

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    中国メディアは、現在の住宅不況の本質を認めることを避けている。不動産バブルの崩壊でないと言い張っているのだ。だが、長期化する住宅不況は心配の種としている。この曖昧な姿勢が、中国の不動産バブル崩壊の解決を遅らせているとみるべきだ。

     

    中国の基本姿勢は、資本主義経済が需給のアンバランスという矛盾を抱えた経済であると規定している。中国社会主義経済は、こういう矛盾を計画経済によって回避する、という非現実的仮定を信じているのだ。それ故、中国がバブル崩壊という資本主義経済特有の「病気」に罹っているとは、口が裂けても言えないにちがいない。このメンツが、中国経済で間違った処方箋を書かせている理由だ。

     

    『レコードチャイナ』(4月26日付)は、「中国経済はまだ『日本化』していないがリスクは依然存在ー中国メディア」と題する記事を掲載した。

     

    中国メディア『第一財経』(4月24日付)は、中国経済が1990年代の日本に近づいているとの見方を否定する一方で、経済政策次第では「日本化」するリスクも確かにあるとする記事を掲載した。

     

    (1)「記事は、中国では低インフレ、低成長、弱気な景気予測という状況が生じており、不動産の低迷、高齢化、外圧の増大という要素も相まって、中国経済が90年代以降の日本経済の低迷と同じ道を進むのではないかという市場や学者の懸念が高まっているとした。その上で、中国経済は確かに多くの課題に直面しているものの、90年代の日本のような状況はまだ発生していないと指摘。中国の経済成長率はかつてに比べて鈍化したとはいえ、バブル崩壊後の日本を大幅に上回っているだけでなく、世界のほとんどの先進国をも上回る水準にあると伝えた」

     

    中国が、不動産バブル崩壊に直面している事実は金融面から説明がつく。対GDPに対する債務残高比率が、すでに300%をはるか上回っていることだ。日本の平成バブル時は、290%程度であった。この一事を以て、中国が「日本化」していることを証明している。さらに、「流動性の罠」といって金利を下げても資金重要が出ないことである。債務返済が優先されて、新規融資を受ける余裕がないのだ。経済成長率の高さが問題でない。中国は間もなく4%成長率を割り込む事態へ追込まれる。IMF(国際通貨基金)が、必死に警告している理由だ。

     

    (2)「中国の投資と資本ストックの伸びが、比較的安定しここ数年の不動産投資の弱まりを製造業とインフラ投資がカバーしていること、16年以降の中国の出生率低下が労働供給に本格的に影響し始めるのは32年以降で、現時点では影響がないこと、90年代の日本のようなバランスシート不況に至っていないこと、新型コロナの反動という一過性の影響だけではなく、中国のサービス需要が伸び続けていることなどを挙げ、当時の日本とは状況が異なることを説明した」

     

    製造業とインフラ投資が、今なお旺盛である理由は、政府が製造業へ多額の補助金を与えている結果だ。過剰設備を生み出している結果、稼働率低下の弊害を見落とすと危険である。インフラ投資も、政府の指示によって行われているにすぎない。自律的な製造業とインフラの投資ではない。

     

    (3)「一方で、「マクロ政策が適切に対処されなければ、90年代の日本のような長期的な構造不況に陥るリスクも否定できない」と指摘。特に地政学的な面で今の中国は当時の日本よりも複雑な環境にあり、人口政策改革の推進、国際協力の強化、国内経済の競争力・適応力の強化などといった課題に対処するための総合的な対策を講じる必要があるとした

     

    下線部分は、まともな意見である。こういう冷静な見方をしながら、日本化を否定しているのは、中国政府から「睨まれない」防衛的視点が滲み出ている。

     

    (4)「記事は、中国の1人当たり所得水準はなおも低く大きな伸び代があること、都市化が現在進行形であり潜在的な市場が大きいこと、消費や産業、サービス業の発展の余地を大きく残していることなどが、中国が中所得国のわなを回避し、経済成長を持続させるための好条件を提供していると紹介。「ただ、景気後退の問題が長期化すれば、市場関係者の期待が変化し、発展のチャンスを逃すことで、景気後退がさらに長期化する可能性がある。したがって、政策立案者は経済動向を注意深く監視し、悪影響を避けるために速やかに行動する必要があると論じた」

     

    下線部は逆説的な言い方で「中所得国の罠」を警告しているとみるべきだ。中所得国の罠とは、労働力を使い果たして生産性が上がらない事態を指している。中国の「生産年齢人口比率」は現在、急低下している。これは、生産性が上がらないことを示唆するのだ。日本で実証済みである。マルクスの主義主張に拘っていると、中国は思いもよらぬ事態へ追込まれるであろう。

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    トヨタ自動車は、米テスラが不調の間に米中でEV増強へ動いている。米インディアナ州で2026年からEVの生産を始め、現地2工場に広げると発表した。中国では、新型車2車種を発売し、ネット大手の騰訊控股(テンセント)と戦略提携するなど活発だ。テスラの1~3月期決算は、約4年ぶりの減収減益と、内容そのものは散々だった。米中2大市場での急失速が主因だ。足元だけではない。業績不振で全世界の10%、1万5000人程度の人員削減に踏み切る。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月26日付)は、「トヨタ、テスラ減速の間に巻き返し 米中でEV積極策」と題する記事を掲載した。

     

    トヨタ自動車は主力市場の米国と中国で電気自動車(EV)戦略を推し進める。26日、新たに米インディアナ州でも2026年からEVの生産を始め、現地2工場に広げると発表した。中国では新型車2車種を発売し、ネット大手の騰訊控股(テンセント)と戦略提携する。

     

    (1)「ライバルのEV大手、米テスラの業績が鈍化するなか、トヨタは積極策に打って出る。トヨタのインディアナ州の工場へ14億ドル(約2100億円)を投じ、3列シートを備えた多目的スポーツ車(SUV)タイプのEVを生産する。電池はノースカロライナ州に建設中の電池工場で生産し、調達する」

     

    トヨタは、リチウムイオン電池で大幅な技術革新を進めている。走行距離1000キロメートル、給電時間20分以下という、これまでのEV常識を覆す新車を発売する。27~28年には、全固体電池搭載のレクサスを発売してEVの真価を問う。

     

    (2)「電池をパックに組み立てる生産ラインを、インディアナ州の工場に新設する。同工場では現在、SUV「ハイランダー」などを生産している。米ケンタッキー州の工場でも同じタイプのEVを生産する計画だが、異なるモデルという。ケンタッキーでは25年の生産開始を目指しているが、26年にずれ込む可能性もある。北米と中国はトヨタにとって重要な市場だ。23年度の世界販売台数のうち北米は約26%、中国は約18%を占める。米国では3列シートのSUVが人気を集めており、需要に応じた車種を生産する。一方で既に世界屈指のEV市場の中国で求められるのはスピード感だ。そのため他社との連携にも積極的に乗り出している」

     

    トヨタにとって、北米と中国は重要な市場である。23年度の世界販売台数のうち、北米は約26%を占める。中国は約18%だ。それだけに、テスラが調整を迫られている間に、トヨタは一挙に距離を縮める戦略である。トヨタEVは、装いも新たに既存電池の改良で挑戦する。

     

    (3)「25日開幕の「北京国際自動車ショー」では、EV新型車2つを世界初公開し、1年以内に発売するとした。クロスオーバー「BZ3C」は比亜迪(BYD)や中国第一汽車集団との合弁、SUV「BZ3X」は広州汽車集団などと共同開発した。テンセントとは24年中に共同で開発したサービスなどを搭載した車両を投入する」

     

    トヨタは、中国EVとも提携して中国人好みのサービスなどを搭載した車両で挑戦する。「郷に入れば郷に従う」である。中国社会では、エンターテイメントなどサービスの多彩化を求めている。欧米社会とは、全く異なるのだ。

     

    (4)「トヨタはEVだけでなく、ハイブリッド車(HV)や水素で走る燃料電池車など環境車を幅広く取りそろえる「全方位戦略」を掲げる。強みのHVは価格や利便性、燃費性能から人気を集めて好調だ。世界販売は23年度で約355万台と過去最高だった。ただ、EVはトヨタにとって「ミッシングピース」(佐藤恒治社長)となっている。世界販売を26年に150万台、30年に350万台まで高める計画を掲げるが、23年度実績は11万台にとどまる。投資の手は緩めない。EV市場そのものにも減速感が出ている今は、トヨタにとって巻き返す好機とも言える」

     

    トヨタのEV戦略では、26年に150万台、30年に350万台まで高める計画である。トヨタの周到に準備されたEV戦略が、これから始まる。一方、EVで独走してきた米テスラは、苦境に立たされている。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月26日付)は、次のよう報じている。

     

    (5)「1~3月期のひどい業績を見れば、テスラの新たな取り組みの説明がつく。EV販売台数が伸び悩む中、同社はアナリストの予想をはるかに上回る25億ドル(約3870億円)の現金を使い果たした。営業キャッシュフローが四半期としては2020年前半以来の低水準だった一方、設備投資額が過去最高に達したためだ。自動車メーカーは販売が落ち込むと瞬く間に不振に陥る上、痛手も大きい。テスラも例外ではない」

     

    テスラは、1~3月期の営業キャッシュフローが20年前半以来の低水準だった。設備投資が過去最高であった結果だ。だが、この設備投資は空回りである。豊富な資金を持つトヨタとは、全く異なる事態へ追込まれているのだ。

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