勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2024年04月

    あじさいのたまご
       

    韓国は、年功序列社会である。年齢が上になることは、社会で「尊敬」される条件になっている。国会でも後輩代議士が、先輩代議士から叱責される場合、「若造」と軽蔑されているほど。典型的な儒教社会である。 

    韓国の雇用市場では、40代の就業者が減少する「珍現象」が起こっている。これは、出世競争に敗れたサラリーマンが、後輩の部下になることを嫌った退職するとみられている。それ以外に、説明できる要因がないのだ。日本であれば転職するであろうが、韓国は転職市場が整っていないので、退職=自営業という華々しい「散り方」をしている。もったいない話だ。 

    『中央日報』(4月23日付)は、「韓国の雇用市場から消える40代『経済の柱』堅固にしなくては」と題する社説を掲載した。 

    「経済の柱」である40代が雇用市場のウイークポイントになった。就業者数が9年にわたり減り労働市場から追いやられている。

     

    (1)「韓国統計庁の経済活動人口調査推移によると、40代の就業者数は2015年から昨年まで減り続けている。40代は2005年から2019年まで全年齢層で最も多い就業者数を記録した。だが加速化する高齢化の中で2020年には就業者数1位を50代に明け渡し、60歳以上の就業者にも近い将来逆転される雰囲気だ」 

    韓国では、40代の就業者が他の世代に比べて減っている。雇用市場から消えているのだ。多くは、自営業になって「一国一城の主」に収まっている。 

    (2)「40代の就業者数減少の主要因は人口減少だ。昨年40代の就業者数は2014年と比べ9.2%減った。問題は40代の労働市場離脱速度が人口減少より速いことにある。この期間に40代の人口は8.7%減少した。他の年齢層と比較すると雇用市場から押し出される40代の危機は尋常でない。同じ期間に50代の就業者数は12.3%、60歳以上の就業者数は80.5%増えた。人口は50代が7.3%、60歳以上が54.8%増えた。20代は1.1%の人口減少にも就業者数は5.1%増え、30代は人口減少幅の13.4%より就業者数減少幅が7.7%と少なかった」 

    2014年と2023年比較

           人口増減  就業者増減

    20代    1.1%減   5.1%増

    30代   13.4%減   7.7%減

    40代    8.7%減   9.2%減

    50代    7.3%増  12.3%増

    60歳以上 54.8%増  80.5%増

     

    上記のデータをみると、50代、60歳以上の就業者が急増している。これは、アルバイトなどの短期間雇用である。これと比べて、40代は、人口減少以上の就業者減である。進学率の上昇でプライドが高く、出世競争で後輩に抜かれることは「恥辱」と考えるのであろう。企業は、抜擢人事によって組織に刺激を当てることも必要である。となれば、「トコロテン人事」は不可能である。出世競争とは別に、自分や家族の生活を大事にする「度量」を持つべきだろう。韓国社会は、儒教倫理でそれができないのだ。 

    (3)「製造業と卸小売業など主要業種の就業者減少も40代を労働市場の外に押し出している。韓国経営者総協会によると、2014年と比較して昨年の40代の製造業就業者数は15万4000人、卸小売業は30万1000人減少した。これら業種の就業者減少は40代男性就業者数の急減と軌を同じくする。特に40代の場合、製造業、建設業、サービス業など伝統産業従事者が多く、人工知能(AI)などデジタル経済への転換に弱いのも彼らの雇用市場離脱を加速化している。労働市場で「挟まれた世代」である40代が政府の各種政策優先順位から押されているところに、硬直した号俸制賃金体系により企業の人材構造調整の直撃弾を受けているのも40代が「新雇用脆弱階層」にする原因だ」 

    下線部は、40代がデジタル経済に不慣れのために退職しているという解釈だ。これは、実態をみていない架空の解釈である。もともと、デジタル化に不慣れで退職などあり得ない話だ。韓国社会の高学歴化という中で、メンツにかけてもデジタル技術を習得するはずである。

     

    (4)「40代は国家経済の中枢の役割をする年齢層だ。生涯周期で見る時に最も活発な経済活動をし、家族扶養と消費や納税などで核心の役割を担当する。雇用市場から彼らが離脱すれば家計経済が揺れ、それにともなう消費萎縮などの衝撃を避けることはできない。産業と労働現場の競争力低下につながる怖れもある」 

    韓国は、年功序列制度を止めることが必要である。同時に、転職市場を拡充して40代で退職などという労働資源の無駄を排除すべきことだ。 

    (5)「雇用市場で40代が自らの役割をするためには彼らの労働市場再進入に向けた再教育など各種制度を整備する一方、硬直した賃金体系と労働制度改革を網羅する労働改革に拍車をかけなければならない。良質の雇用創出に向けた産業構造改編と構造調整もともになされなければならない。「経済の柱」を堅固にしてこそその国が生きる」 

    韓国は、転職市場を拡充することが不可欠である。これさえ整えれば、40代で退職などという無駄なことは起こらないはずだ。社会と個人は、頭の切り替えが必要である。

    テイカカズラ
       

    韓国経済は、金融面で多くの難題を抱えている。家計と中小企業が、高金利に耐えられない構造であるからだ。この現象は、これまでもしばしば繰返されてきた。過去の教訓が生かされていない証拠であろう。家計の場合は、政府が金利の減免を行うという「徳政令」が、頻繁に繰返されてきたので、「返済が困れば政府が面倒をみてくれる」という潜在的な依存心が働いている面も否定できない。

     

    『ハンギョレ新聞』(4月25日付)は、「韓国、銀行の延滞率がここ5年で最高 危機的な家計 自営業者が多数」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「韓国の銀行圏のウォン建て融資の延滞率がこの49カ月で最高となった。家計への融資では信用貸し、企業への融資では中小企業に対する貸付の延滞率が急激に上がっている。金利が大幅に上昇したうえ、景気後退の影響を受けて返済能力の低い人々が利子を期限までに払えずにいるのだ。さらに借金を重ねさせて時間を稼ぐのではなく、債務調整の活性化を誘導すべきだ。家計所得が増え、それによって消費が増えて低迷する内需が好転するよう、政府の政策対応の努力も必要な時だ」

     

    銀行で融資延滞率が、この49カ月で最高になっている。家計と中小企業が、期限までの返済が困難になっている傾向が強くなっている。

     

    (2)「金融監督院が24日に発表した2月末の国内銀行の延滞率(1ヶ月以上の元利金延滞率)は、前月より0.06ポイント上昇の0.51%。2019年5月の0.51%以来の最高値だ。企業への融資は中小企業に対する貸付の延滞率が0.7%まで上昇。家計に対する融資は、住宅担保貸付の延滞率は0.27%で安定しているが、信用貸しを含めたその他の貸付の延滞率は1月の0.74%から2月には0.84%まで急上昇している」

     

    2月末の国内銀行の延滞率(1ヶ月以上)は、0.51%になった。2019年5月以来の高さだ。企業は0.7%、家計が0.84%である。家計の延滞率が上がっている。

     

    (3)「銀行は、四半期末に不良債権をまとめて売却するか、償却処理する。したがって、各期の最終月には延滞率が下落する傾向がある。だが、そのように延滞率を管理しているにもかかわらず延滞率が上昇し続けているというのは懸念される。韓国の市中金利は2008年の世界金融危機以降、下落傾向にあった。銀行の延滞率も、韓国銀行が政策金利を1.25%から1.5%(2017年11月30日)、1.75%(2018年11月30日)へと引き上げた後に1年ほど0.5%を上回ったことがあるだけで、以降は下落傾向にあった」

     

    過去の延滞率は、政策金利引上げから1年ほどは0.5%を上回ったが、その後に低下している。

     

    (4)「コロナ禍以降、インフレに対応するための金利引き上げに伴って、2022年末からは急速に上昇している。低金利の時期に民間の負債が急膨張したために、今回の上昇は簡単にはおさまりそうにない。その中で、家計負債が減っているのは幸いだ。全金融圏の家計に対する融資は2月に1兆9000億ウォン、3月に4兆9000億ウォン減少した。これは、借金をさらに増やすという家計の対応方法が限界に達したと解釈することもできる」

     

    今回の延滞率急上昇は、過去の低金利が一挙に引上げられた事情があるので、「金利耐性」が弱いという危惧すべき点がある。低金利時代が長く続いて、「超過借入れ」した向きは高金利で返済が困難になっているのだ。

     

    (5)「融資の健全性管理を緩めてはならない。返済危機に陥った借主に対しては、信用回復支援制度にもとづく債務調整が迅速に行われるように誘導すべきだ。コロナ禍前の2010~2019年の平均延滞率は0.78%だった。政府はこれをもって「銀行危機はないだろう」とのんびりしていてはならない。延滞率の急激な上昇は多くの家計、中小企業、小商工人が危機に直面しているというシグナルだからだ

     

    コロナ禍前の2010~2019年は、平均延滞率が0.78%であった。現在は、0.51%である。過去に比べれば、低い水準だが安心は禁物である。今回は、一挙に政策金利が引上げられているので、「金利耐性」が弱いのだ。韓国の最大の弱点の一つは、金融構造の脆弱性にある。この問題が解決できなければ、韓国経済の安定性維持は不可能である。

     

     

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    中国では、長引く不況対策として企業は人件費削減へ乗り出している。「35歳」以下を採用し、それ以上は解雇という何とも痛ましい事態を招いている。これでは、経済の自律的な回復は困難である。個人消費は、雇用不安で切り詰め対象になるからだ。

     

    『フィナンシャル・タイム』(4月23日付)は、「中国のテック業界に『35歳の呪い』年齢差別が横行」と題する記事を掲載した。

     

    中国のショート動画投稿アプリ「快手科技(クアイショウ)」の開発者だった34歳のラオバイさんが、自分の雇用は危ういかもしれないと最初に感じたのは、35歳の同僚が解雇されたときだった。「ショックと不安が同時に押し寄せてきた。私たちは境遇がとても似ていて、自分にも同じことが起こりうると気づいた」と振り返るラオバイさんは、元雇用主から反撃にあわないようニックネームで取材に応じた。

     

    (1)「35歳の誕生日からわずか数カ月で解雇されたこのラオバイさんは、社内で「石灰石」と呼ばれる事業再編の新たな犠牲者となった。この計画を直接知る現役社員と元社員を含めた関係者5人によると、快手は30代半ばの若手社員をお払い箱にしている。ラオバイさんは、解雇は全社的な人員削減の一環だと告げられた。快手はコメントを控えた。このいわゆる「35歳の呪い」は、ホワイトカラーのあらゆる職種の労働者を苦しめている。年齢が上がると、子育てなど家庭での役割が増えることを理由に長時間労働に後ろ向きになるとの認識が広がっている」

     

    中国のショート動画投稿アプリ「快手科技」は、35歳以上の従業員を解雇している。人件費節約が目的である。「共同富裕」を掲げる中国で、企業は飽くなき利益追求を行っているのだ。

     

    (2)「中国のテック業界が政府の取り締まりや景気減速でぐらつくなか、過去数カ月で数万人の雇用が削減されており、労働者は年齢が高いほど失職しやすいと考えられている。テック企業は若くて未婚の労働者を露骨に優遇している。北京を拠点に労働問題を扱う弁護士のヤン・バオクアン氏は「ハイテク業界における年齢差別は大きな問題だ。年を重ねた労働者は最新の技術開発についていけない、ハードワークを続けるエネルギーがない、賃金が高すぎるとみられている」と指摘する。中国の労働法は、雇用主が民族や性別、宗教などを理由に差別することを禁じているが、年齢については明確に言及していない。だが、同法は高齢者差別を禁止するものと広く解釈する人もいるため、雇用主が解雇理由にはっきりと年齢を挙げることはないとヤン氏は語る」

     

    社会主義を標榜する中国で、35歳以上の従業員を解雇しているとは信じがたいことである。各社に設けられている共産党支部は黙認しているのであろうか。

     

    (3)「中国のテック企業幹部は若い労働力を求めていると公に明言してきた。ネットサービス大手、騰訊控股(テンセント)の劉熾平(マーティン・ラウ)総裁は2019年、中間管理職の1割を入れ替える計画を発表し「彼らの仕事はより情熱を持った若い人材や新しい同僚に引き継がれる」と説明した。ネット検索大手、百度集団(バイドゥ)の李彦宏(ロビン・リー)董事長兼最高経営責任者(CEO)は、同じく19年に公開された社内文書で「1980年、90年以降に生まれた従業員を増やして会社の若返りを図る」計画を発表した」

     

    ネットサービス大手、テンセントやバイドゥもこうした「35歳以上」の解雇を行っている。

     

    (4)「この考え方は、ほとんどのハイテク企業に深く根付いている。中国の出前アプリ大手、美団の元営業マネジャーは「20〜30歳の間はほとんどの人がエネルギーに満ちあふれている。前に進んで会社のために自分を犠牲にすることもいとわない。だが、親になり、そして体の老化が始まったら『996』の勤務体制にどう対応するのか」と述べ、午前9時から午後9時まで週6日働くことを指す中国テック業界の悪名高い長時間労働に言及した」

     

    テック業界では、悪名高き「996」勤務態勢が続いている。過労による健康被害と同時に、人権侵害にも該当する事態だ。

     

    (5)「動画共有アプリ「TikTok」を傘下にもつ字節跳動(バイトダンス)と、ネット通販大手の拼多多(ピンドゥオドゥオ)は、中国ハイテク企業の中で最も若い人材を擁することがデータからうかがえる。ビジネス向けのSNS「脉脉(マイマイ)」の最新データ(2020年)によれば、両社の従業員の平均年齢は27歳だ。同じデータから、従業員の平均年齢は快手の28歳に対し、中国配車アプリ最大手の滴滴出行(ディディ)では33歳であることもわかる。労働組合の全国組織「中華全国総工会」によると、中国の労働者の平均年齢は38.3歳だ。景気減速や規制への懸念を背景にハイテク業界でレイオフ(一時解雇)が相次ぐなか、この傾向は強まる一方だ

     

    労働組合の全国組織「中華全国総工会」によれば、労働者の平均年齢は38.5歳である。事実上、「35歳定年制」を裏付けている。こうした事態が放置されたままで、中国経済の軌道回復は困難であろう。中国の抱える構造的脆弱性をいかに解決するか。習氏に課された難題である。

     

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    日本半導体が最も輝いた時代のエース3社が今は、統合してルネサスエレクトロニクスになった。雌伏期を経て再び、「稼ぐ力」を磨いている。半導体不況下の1~3月期の営業利益率は、3割台を維持した。半導体ビジネスの革新が、効果を発揮しているのだ。 

    ルネサスエレクトロニクスは、1980年代に日本の半導体企業が世界を席巻した「後裔」である。中でも、NECは世界最大の半導体メーカーであった。日本半導体は、その後の国際競争に勝てず逆境に陥ったが、この過程でルネサスは3社の大同団結によって生まれた。その過程は2010年4月、三菱電機と日立製作所の半導体部門であったルネサステクノロジが、NECの半導体部門子会社NECエレクトロニクスと統合したものだ。 

    今や、国策半導体企業「ラピダス」の存在がクローズアップされている。ラピダスは、ルネサスエレクトロニクスの模索しているソフト開発重視とユーザーへの信頼第一で納期を厳守する営業戦略は受け継ごうとしている。ルネサスエレクトロニクスの切り開いた道が、ラピダスの先導役を果しているのだ。ラピダスとルネサスエレクトロニクスは、苦楽を分かち合った同根である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月25日付)は、「ルネサス、逆風下の市況抵抗力 減益でも利益率3割維持」と題する記事を掲載した。 

    ルネサスエレクトロニクスが、半導体の市況悪化に対する抵抗力を示している。25日に発表した2024年1〜3月期連結決算(国際会計基準)は、純利益が前年同期比24%減の798億円となった。一方、営業利益率(非経常項目などを除くベース)は3割台を維持した。安定した収益力を身につけ、M&A(合併・買収)など成長投資に打って出る。 

    (1)「ルネサスの柴田英利社長は、「(半導体市況の)ダウンサイクルの中でも及第点を取れた」と同日のオンライン会見で話した。中国市場を中心に産業機器などが低迷し、売上高にあたる売上収益は2%減の3517億円と減った。一方、利益率は32.%と、同社が長期目標として掲げる25〜30%を上回った。23日に1〜3月期決算を発表した米車載半導体大手のテキサス・インスツルメンツは純利益が35%減だった。営業利益率は35.%とルネサスよりも高いものの、前年同期と比べると9ポイント下落した。ルネサスの落ち込みは相対的に低かったことが好感され、25日のルネサス株は午前9時の決算発表後に一時前日比5%上昇する場面があった。同社はかつて、半導体市況の影響を受けやすい収益体質で、市況が悪化すると利益率も下がっていた」 

    半導体企業の業績は、好不況の差が大きく出るのが特色である。ルネサスエレクトロニクスは、不況下でも3割の営業利益率を維持した。過去の不況から学んだ教訓が生かされているのだろう。

     

    (2)「21年までに相次ぎ実施した大型M&Aが、収益構造の改善につながった。17年には米インターシル、19年に米インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)、21年に英ダイアログ・セミコンダクターといった半導体メーカーを買収し、圧力や温度などのデータを処理するアナログ半導体の技術を手に入れた」 

    3割の営業利益率を維持できた裏には、相次ぐ海外の半導体企業を吸収合併してきたことで、経営に厚みが出ていることが大きな要因である。19年と21年に相次いで合併して技術蓄積に成功した。 

    (3)「ルネサスが、強みを持つ機器の動きを制御する「マイコン」技術と、買収先の半導体製品を組み合わせ、新たなシステムを顧客に提案する。注文が来てから半導体を単品で売るのに比べ、付加価値を付けやすい。システムに組み込んだ部品が正しく動くかの検証はルネサス側で済ませているため、顧客が新たな製品を開発する時間を短縮できる。産業機器や通信などの市場も開拓し、半導体の市況が変動しても営業利益率は大きく振れなくなった」 

    技術の厚みが出たことで、顧客へ新たなシステムを提案し受注につなげている。ラピダスは、この方式を学んでいる。ユーザーとの距離をできるだけ縮めることで短納期を目指している。これが、ユーザーの信頼を勝ちうる道と信じているからだ。

     

    (4)「自社と顧客の持つ在庫管理を徹底した効果も出てきた。その1つが特約店と呼ばれる専門商社との取引の見直しだ。生産計画では特約店から受け取る受注予測などを参考にする。契約社数を絞ることで商流を把握しやすくし、在庫が膨らむリスクを抑制する。ルネサスは10年4月に国内市場向けに約30社と契約していた。収益性や受注予測の精度が優れる特約店に絞り、直近の取引は5社前後まで減った。取引を継続する特約店でも扱う製品を絞るなどしてきた」 

    特約店を絞ったことも効果を上げている。無駄な在庫を持たないというメリットがあるからだ。半導体企業は、こうした在庫調整で時間をとられている。 

    (5)「ルネサスは次の成長に向けて、半導体の開発環境などソフトへの投資を拡大している。24年2月には約9000億円で米ソフトメーカーのアルティウムを買収すると発表した。各国当局の承認などを得たうえで24年中に買収を完了する予定で、巨額買収に向けて自己資本を蓄積する必要がある。市況変動への抵抗力を保てるかが、次の成長の条件となる」 

    24年2月に、約9000億円で米ソフトメーカーのアルティウムを買収すると発表した。年内には買収が完了予定である。ルネサスエレクトロニクスは、これによって一段の飛躍を目指す。ルネサスエレクトロニクスの出自は日本だが、合併による国際化によって英語が社内の公用語になっている。

     

     

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    中国と北朝鮮は、ハッカーが大活躍している。中国は、技術情報の盗み出し。北朝鮮は、外貨の獲得である。ドイツのVW(フォルクスワーゲン)は、2010年から同社システムの脆弱なところから侵入を試み、2011年と2012年には一部のデータが盗まれていた。2013年には管理者権限が盗られ、多くのデータがコピーされていたという。 

    ハッカーの正体は不明だが、アドレスは北京となっている。盗まれた技術は、ガソリンエンジン、ギアボックス(変速機)などという。中国は、精密技術が不得手である。未だにまともなエンジンを製造できないと指摘されている。こうした弱点を解決すべく、エンジンが要らないEV(電気自動車)へ特化した理由である。 

    『COURRiER Japon』(4月25日付)は、「中国ハッカーに『極秘技術』をごっそり盗まれていた独フォルクスワーゲン」と題する記事を掲載した。 

    独メディア『ZDF』によると、販売台数で世界第2位の自動車メーカーである独フォルクスワーゲン(VW)が、大規模なハッキング被害に遭っていたことが明らかになった。

     

    (1)「VWは、2010〜2015年にかけて同一のハッカーから何度もサイバー攻撃を受けていた。犯人の正体はわかっていないが、専門家によると、中国のハッカーである可能性が高いという。そのIPアドレスが北京につながっており、中国の人民解放軍の近くにまで辿ることができたからだ。決定的な証拠はないが、ハッキングに使われたスパイソフトは、中国のハッカーが利用する「プラグX」や「チャイナ・チョッパー」であった」 

    ハッカーのIPアドレスは、北京の人民解放軍近くでたどれたが、その先は不明という。これだけの情報で、犯行の主は推測できる。 

    (2)「ハッカーは、2010年から同社システムの脆弱なところから侵入を試み、2011年と2012年には一部のデータが盗まれていた。2013年には管理者権限が盗られ、多くのデータがコピーされていたという。VWグループのアウディとベントレーも標的になり、合計で19000点ほどのファイルが流出した。標的になったのは、ガソリンエンジン、ギアボックス(変速機)、デュアル・クラッチ・トランスミッション(オートマ車の変速機構)などの主要な技術に関するデータだ。エレクトロモビリティ、燃料電池などの代替駆動システムに関する技術情報も流出した」 

    エンジン・EV・燃料電池などの基礎技術が、中国へ渡っている。こういう犯罪に対して、何の痛痒も感じないのだろう。

     

    (3)「独誌『シュピーゲル』によると、2014年6月に侵入された際、VWのIT担当者がハッキングに気付いた。同社はそれから対策をとり、一連の攻撃は防ぐことができるようになった。2015年に巨大なITシステムを再構築してITセキュリティのレベルを向上させたという。システムの刷新には数百億円規模のコストがかかった。盗まれたデータがどのように使われたのかはわからない。しかし、自動車産業を専門とする、独オストファリア応用科学大学のヘレナ・ウィスバート教授は、盗まれた「ガソリンエンジンとトランスミッション、そしてEVと水素自動車に関する特定のノウハウに関する情報は、国際競争においてまだ非常に重要な意味を持ちます」とZDFに述べている」 

    盗まれた技術であるガソリンエンジン、トランスミッション、EV、水素自動車に関する特定のノウハウに関する情報は、中国の自動車競争力を大いに引上げたと判断されている。 

    (4)「中国の自動車メーカーは近年急成長し、電気自動車(EV)分野で圧倒的な競争力を持つ。一方、20年ほど中国の自動車市場でシェア1位を誇ったVWは、2023年にその座を中国EVメーカーのBYDに奪われた。独紙『フランクフルター・アルゲマイネ』によると、VWグループは、中国のガソリン車市場においては20%程度と、いまだ高いシェアを誇る。しかし、EV市場でのシェアは5%程度だ。中国ではEVの販売割合が急激に増えていることを考えると、今後のVWの立場は危うい」 

    VWは、中国に基幹技術を盗まれても相変わらずの「親中派」である。度量が大きいのか、市場の大きさに免じて赦したのか。それ以降も、一切の警戒姿勢をみせていないのは不思議である。脱中国を試みなかったからだ。

     

    (5)「そんななか、VWは2030年までに中国で30以上のEVモデルを販売することを目指している。同社のオリバー・ブルーメCEOは「ドイツ国内の何十万もの雇用も中国との協力関係に依存しています」と強調し、中国での大規模な投資を発表した。一方、VWの中国事業にかかる政治的リスクも高まっている」 

    VWは、ますます中国市場へ執着する姿勢を強めている。中国市場を失ったら、VWの世界的な地位は下落する。トヨタに次ぐ世界2位の座は維持できまい。

     

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