勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2024年05月

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    EV伸び率一桁へ低下

    黒字はテスラ含め3社

    自転車操業のEV業界

    G7は中国製品阻止へ

     

    中国は、EV(電気自動車)で世界市場席巻目標を立てている。国内には100社以上とされる新興EVメーカーが、地方政府の支援(補助金)を得て参入している。だが、すでに国内市場は飽和状態で、EV生産工場の稼働率は50%見当まで低下している。最適操業度80%を大幅に下回っているのだ。この指標一つをみただけでも、中国の「EV戦争」は、終戦間近の状態にある。具体的には、EVメーカーの出す手形サイトの長期化が、資金繰りの窮状をさらけ出している。詳細は、後で取り上げる。

     

    習近平国家主席は、経済政策の基本方針として「先立後破(先に確立、後に破壊)」を掲げている。「先立」とは、「三種の神器」(EV・電池・ソーラーパネル)を大々的に輸出して、疲弊している中国経済へテコ入れする目的である。「後破」とは、不動産バブル後遺症の処理であろう。この先立後破は、軍事戦術で有効であっても、経済政策で言えば落第だ。不動産バブル崩壊後の不動産価格下落が日々、不動産担保貸付債権を不良債権化させているのだ。中国指導部は、こうした微妙な点を見落としている。致命傷になるリスクである。

     

    習氏は、三種の神器のなかでもEVに強い期待を賭けている。EVコストのうち約30%が、電池コストとされる。最近では、リチウムイオン電池よりも割安なレアメタルを使わないリン酸鉄リチウム(LFP)電池を使用している。リンや鉄は、レアメタルと比べて自然界に広く存在しており、埋蔵量も豊富な物質である。

     

    中国は、LFP電池によって他国よりも2割程度、電池のコストダウンを実現していると推定されている。こうした中国EVコスト構造からみて分るように、中国EVの価格引き下げには限界があるはず。現実は、この限界点を超えた値引き輸出が行われている。要するに、「ダンピング輸出」だ。この裏には、中国政府の補助金がテコになっているとみなされている。

     

    習氏が、EV輸出急増によって不動産バブル崩壊後の景気停滞を突破しようとしているのは、余りにも理論無視と言わざるをえない。不動産価格下落で毎日、不良債権は増え続けている。この状態を根本的に解決せず、EV輸出増で不況を突破しようというのは、戦時中の日本が「竹槍」で上陸する米軍と戦うような、非現実的対応にみえるのである。

     

    EV伸び率一桁へ低下

    中国のEVは、23年は24.6%の増加であった。それが、24年1~3月は13.3%増となり、4月は11%増へと鈍化している。5月以降は、一桁の増加率になるであろう。こうした事態の中で、100社以上とされるEVメーカーが販売競争を繰り広げている。どうみても「資源の無駄」という印象を否めない。この裏には、地方政府が補助金を出しており、雇用確保の目的が課されている。こうなると、EV生産が「失業対策」の一環のような形になる本末転倒な事態を迎えている。

     

    EVの伸び率が、一桁台へ鈍化しているとみられる理由は、都市部の普及が一巡していることだ。残されたEV市場は地方の農村部である。農村部の地方政府は、めぼしい産業がなく、不動産開発企業に依存する経済構造である。その不動産開発企業は、過剰住宅在庫を抱えて青息吐息の状態だ。地方政府の主要財源である土地売却収入が急減しており、EV普及に不可欠なEV給電施設設置余力などあるはずもない。地方政府は、職員の業務に伴う異動は、自動車を止めて自転車を利用させているほどの窮迫ぶりである。

     

    こうして、EVの普及は都市部の一巡とともに、急速に落込むほかない状況になっている。この状態で、EVはさらなる値下げ競争へ突入している。市場飽和状態の中で、売上が伸びないから値下げするのは、企業として極めて危険な選択である。

     

    中国EVの最大手であるBYDは5月10日、新発売の多目的スポーツ車(SUV)「海獅07」の価格を18万9800(約409万円)〜23万9800元(約518万円)とした。23年11月には、販売予定価格を20万(約432万円)~26万元(約562万円)としていた。実際は、当初と比べわずかだが引下げたのだ。BYDは、徹底的な価格競争で後発EVメーカーをふるい落とす戦略である。

     

    中国EV市場では、これまで米国テスラが価格決定権を持っていた。テスラは4月、中国本土で販売するEV全4車種の価格を引き下げている。セダン「モデル3」の最廉価モデルは6%引き下げ、SUV「モデルY」も5%引下げていた。テスラは、中国メーカーの安値攻勢に押されたことなどから、24年1〜3月期決算の最終利益は約4年ぶりに減収減益となっている。こうなると、テスラといえどもさらなる値下げは困難になろう。

     

    黒字はテスラ含め3社

    中国EVで、黒字経営はBYD・理想汽車・テスラの3社とされている。BYDは、幅広い車種で販売を伸している。理想汽車は、高級EV路線を堅持してきた。テスラは、カリスマ経営者マスク氏の弁舌で、全自動運転車の夢に惹かれたファンを引きつけている。

    (つづく)

     

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    https://www.mag2.com/m/0001684526

     

     

     

    あじさいのたまご
       

    海外の「物言う株主」(アクティビスト)は、これまで株主総会で増配や株主還元など目先利益を主張する集団と警戒されてきた。だが、最近のアクティビストは長期的視点から株主利益を高める「理論派」が増えている。国内の機関投資家も、「物言う株主」として会社側提案を拒否するケースが増えた。企業統治(コーポレート・ガバナンス)は、確実に浸透している。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月26日付)は、「日本株『外圧』が起爆剤、物言いは還元から稼ぐ力へ」と題する記事を掲載した。

     

    日本企業は本当に変わるのか。6月の株主総会シーズンに関心が高まっている。強まる株主からの「外圧」は日本株が再点火する起爆剤になりうるからだ。

     

    (1)「企業に改革を迫るアクティビストは異端ではなくなった。CLSA証券の日本担当ストラテジスト、ニコラス・スミス氏は米バリューアクト・キャピタルのオリンパス投資を例に「最近はアクティビストが投資前より会社を良くすることを実証した。価値をもたらすと理解されたことで他の投資家の支持を受けるようになった」と解説する」

     

    日本企業は、「アクティビスト」と聞いただけで震え上がったものだ。コーポレート・ガバナンスという認識のなかった日本企業には、異質のものにみえたのである。

     

    (2)「2000年代に米スティール・パートナーズが、サッポロHDを標的にした。不動産依存やビール事業の低迷を追及した。だが、改革要求は賛同を得られず、「日本企業を啓蒙したい」などの発言は世論の反発も浴びた。時を経てガバナンス改善が社会的課題となり、そこに真剣に向き合うファンドの外圧を見る目は変わってきた。米モルガン・スタンレーのアジア株担当チーフ・ストラテジスト、ジョナサン・ガーナー氏は「企業統治の進化がよりよい資本配分につながり、収益性重視に大きく転換してきた」と語る」

     

    企業統治論によって、株主は従業員や下請け企業などと同様に企業活動の重要な役割を果すことが理解されるようになった。企業経営者が、経営権を一人占めできないことがハッキリしたのである。

     

    (3)「投資家の関心は一時的な株主還元から事業の見直しで稼ぐ力をどう伸ばすかに移ってきた。UBS証券の守屋のぞみ株式ストラテジストは「事業戦略に踏み込んだ提案も出てきている」と指摘する。注目するのは事業構成の見直しで評価を高めた先行組の堅調さだ。経済産業省の「事業再編ガイドライン」が好事例に取り上げた日立製作所ソニーグループなど7社の合計時価総額は19年末比で2.2倍と、主要100社で構成するTOPIX100(1.7倍)を大きく上回る」。

     

    アクティビストも洗練されてきた。日本企業が、容易に受入れないことを知ると共に、一時的な株主還元から事業の見直しで稼ぐ力をどう伸ばすかに移ってきた。こうなると、企業も聞く耳を持つようになったのである。

     

    (4)「先行事例では外圧を構造改革に生かした企業が目立つ。09年に巨額赤字で公募増資に動いた日立製作所は調達資金をインフラ事業の成長につなげただけでなく、積み重ねた海外投資家との対話を経営改善に役立てた。日立建機など20社強あった上場子会社を無くして選択と集中を進め、23年秋には35年ぶりに上場来高値を更新した」

     

    日立製作所は、アクティビストの意見をうまく利用して成功したケースである。本業に特化して、傍系事業を売却する大手術が行われた。「選択と集中」である。東芝は、アクティビストに振り回されたケースであろう。経営者に、主体性がなかった結果だ。

     

    (5)「アクティビストの提案が、経営を進めるうえでの正解とは限らない。ほかの株主やステークホルダー(利害関係者)の賛同が得られない提案は通らないのは従来と同じだ。ソニーは米サード・ポイントによる映画・音楽事業の分離要求を拒み、逆にエンタメを核とする複合経営で成長している。14日に発表した新たな中期経営計画では「利益ベースの成長重視」を宣言し、ゲームとイメージセンサーを軸とするシナリオを市場も好感した」

     

    昨年6月のトヨタ自動車の株主総会は、EV(電気自動車)進出が遅れたとして、環境アクティビストが豊田彰男社長(当時)の役員就任反対を提案した。これは否決されたが、「EV信仰者」が引き起した例だ。トヨタのEV慎重論は、結果として大成功であった。

     

    (6)「足元の市場では自社株買いだけでは株価上昇につながらないケースも目立つ。丸井グループは14日、200億円を上限とする自社株取得枠の設定を発表したものの、株価反転にはつながらず24日に年初来安値をつけた。資本効率の改善だけでなく、いかに稼ぐ力を高めるか。日経平均株価の3月の最高値更新を経て「株主総会に向けて個別銘柄に再び焦点が移っていく」(BNPパリバ証券の奥山史取締役グローバルマーケット統括本部長)。日本株高の原動力となってきた企業の変化は始まったばかりだ」

     

    丸井は、自社株取得を発表したが株価の下落に見舞われた。稼ぐ力の方針がなかったからだ。市場の受け止め方は、ここまで変わってきた。

     

     

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    日本のGDPは4位へ転落し、「失われた30年」と言われて、日本人は萎縮している。だが、ASEAN(東南アジア諸国連合)の識者調査によると、世界で一番住みたい国は日本という調査結果が出た。しかも、世界覇権国の米国を上回っているのだ。理由は、国際法を順守する姿勢に加え、経済の強さ、文化への憧れなどが信頼の背景にあるという。 

    『日本経済新聞』(5月25日付)は、「住みたい国、日本が首位」と題する記事を掲載した。

    シンガポールのシンクタンクISEASユソフ・イシャク研究所によると、ASEANの人々が住みたい国は、域外で日本が首位だった。日本と回答した人は全体の17.%に上り、米国(15.%)などを上回った。 

    調査対象は、東南アジアの民間企業や政府、研究機関などに所属する識者で、ASEANも含む10カ国・地域連合の中から選んだ。日本は、「信頼できる国・地域連合」でも1位を獲得し、信頼度は昨年より増した。国際法順守の観点や経済力に期待する人が多く、米中や欧州連合(EU)と比べても日本への信頼が厚かった。休暇に訪れたい旅行先としても、ASEAN加盟国や韓国、欧米諸国を抑えて日本がトップだった。ASEAN10カ国の1994人が回答した。 

    日本は、太平洋戦争で多くの被害をASEANに残してきたが、ODA(政府開発援助)によって誠心誠意、賠償してきたことが80年近い歳月を経て「親日」へと変わったことはありがたいことである。

     

    日本経済新聞』(23年11月15日付)は、「ASEANと日本『次の50年』アブドラ・ラザク氏」と題する記事を掲載した。アブドラ・ラザク氏は、2015年にマレーシアの独立系シンクタンク、ベイト・アル・アマナを創設した。同国外務省の外交政策諮問会議のメンバーである。 

    ASEANはいま、アイデンティティーの危機に直面する。ミャンマーや南シナ海の問題に一丸となって取り組めないのは地域共同体として機能していないことの表れだ。だが、内部に問題は抱えていても、この地域に関与したい国・地域に重要なプラットフォームを提供し続けている。 

    (1)「とりわけ日本はとても大切なパートナーだ。フィリピンやベトナム、マレーシアなど中国と(南シナ海の領有権を巡り)問題を抱える加盟国があるが、日本との間にはない。ASEANと日本の間には非常に強い相互理解がある。ASEAN側は、日本を米国の「子分」とはみていない。日本はこの地域で米国よりも多くのことを成してきた。米国が存在感を示そうとするのは、単に中国に対抗するためだ。日本はそうではなく、地域へ誠実に関与してきた」 

    日本は、ASEANと何ら係争問題を抱えていない国である。信頼関係を深められる基盤が成立している。

     

    (2)「ASEANと日本は今年、友好協力開始から50年を迎えた。マレーシアを例にとれば、1981年に当時のマハティール首相が日本の発展に学ぶ「ルックイースト政策」を打ち出し、研修生や留学生を送り込んだ。彼らが日本の文化などを持ち帰り、日本企業の投資を引き付けることに成功した。より重要なのは、日本に対する我々の認識を変容させたことだろう。もちろん、この地域には他のプレーヤーも進出している。特に最近20年間は、中国が大々的にやって来て、インフラ整備などに多くの援助を提供してきた。韓国や中東からの投資も増えている」 

    1981年、当時のマレーシアのマハティール首相が、日本の発展に学ぶ「ルックイースト政策」を打ち出した。これが、日本とASEANの文化関係を深めるきっかけになった。 

    (3)「そうした状況でも、日本に対する信頼は揺るがない。中国は我々に指図をする。労働者は中国から連れて来るし、技術移転もせず、汚職の懸念がある。さらに、南シナ海は自分のものだと主張し、至る所に人工島を造成している。日本は違う。より純粋で信用に足るパートナーだとASEANは評価し続けている。中国を常に疑ってかかるのとは対照的だ」 

    日本は、ASEANへ指示することはない。領土的野心もない。純粋で信用に足るパートナーである。

     

    (4)「次の50年はどうすべきか。日本との関係は従来、貿易や製造業に焦点をあててきた。これからはもっと他の分野に目を向けたい。代表例はテクノロジーだ。技術大国かつ知識大国でもある日本は、その道筋を示すことができる。食糧や気候変動、人工知能(AI)、移民など、あらゆる問題に技術的な解決策が必要だ。知識集約型の協力という新たな次元に進むべきで、だからこそ日本の大学に注目している。(2011年に開学し日本式教育を行う)マレーシア日本国際工科院の成功は喜ばしいし、24年には筑波大学マレーシア分校も開設される予定だ」 

    日本とASEANは、今後の50年のあるべき関係について「共創」という造語を打ち出した。脱炭素やデジタルなど共通の課題に協力して解決策を見いだす。岸田首相は、当面5年で官民合わせて350億ドル(約5兆円)の資金を地域に投入する方針を表明した。 

    (5)「安全保障も重要になる。いまの米中対立でASEANはどちらにもくみせず、対立の影響を最小限にとどめたいと考えている。米中いずれにも近づきすぎていると思われたくはないわけで、日本はこの状況をもっと利用すべきだ」 

    日本は、太平洋戦争の反省から、ASEAN外交はこれまで経済協力が中心だった。いまの米中対立下で、日本には安保支援の期待も強まっている。地域の緊張を高めることは避けつつ、連携を着実に進める時期だ。岸田首相が昨秋、フィリピンとマレーシアを訪問し、東・南シナ海で覇権主義的な動きを強める中国をけん制するため、安全保障分野の協力を深めることで一致した。

     

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    中国国営テレビ(CCTV)は24日夜、台湾周辺での軍事演習が終了したと報じた。事前の発表通り、23~24日に行われた。今回の演習は、「連合利剣2024A」となっている。今後も「B、C、D」などと称する軍事演習をするのであろう。中国は、台湾の頼総統を「分離主義者」とみなし、総統に就任した3日後に軍事演習を実施した。中国の理屈づけでは、頼氏の就任演説が「分離主義者」と決めつけたが、中国軍の演習ははるか事前に予定されていたことは明らかだ。 

    問題は、演習と称して台湾を油断させて奇襲攻撃することだ。今回の演習でも戦闘機に実弾を装着さえていたことが判明している。何かを仕掛ける意図であろう。米国防総省高官は、中国軍の2日間にわたる演習を分析している。それによると、「作戦は不可能」としている。米軍は、中国の手の内を観察する良い機会になった。 

    『日本経済新聞 電子版』(5月25日付)は、「中国軍『台湾全域包囲』の能力誇示、頼政権と対決姿勢」と題する記事を掲載した。 

    中国軍は1996年の台湾海峡危機の際に台湾周辺で大規模演習をした。このときの演習区域は海峡側が中心だった。台湾本島を取り囲むようにして演習したのは22年8月のペロシ米下院議長(当時)の台湾訪問時が初めてだったとみられる。

     

    (1)「今回の演習の特徴は、ペロシ氏訪台時と似た台湾の包囲にある。飯田将史・防衛研究所理論研究部長は「台湾を全面封鎖できる能力や意図があると頼政権に知らしめる狙いがある」と分析した。演習期間はペロシ氏訪台時よりも短い。当時は中国軍が台湾東方の海域へ弾道ミサイルを発射し、5発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。今回、弾道ミサイル発射は確認されていない」 

    中国は、台湾を全面封鎖できる能力や意図があることをみせつけた。たが、台湾海峡封鎖は、他国の干渉を招く理由になる。気をつけるべき点だ。 

    (2)「もっとも、演習規模を縮小し圧力を弱めたわけではない。22年8月の演習にはなかった内容や変更点が含まれるからだ。1つ目が演習の区域だ。22年8月は台湾本島周囲6カ所だった。今回は5カ所に減ったものの、前回はなかった台湾西部の澎湖諸島周辺にも設定した。台湾の離島である金門島や馬祖列島の周辺も対象に加えた。中国軍直属の国防大学の専門家は23日、中国国営中央テレビ(CCTV)の取材に「台湾当局と台湾軍の活動空間を圧迫する」と語った」。 

    金門島や馬祖列島の周辺も封鎖したことは、中国軍がもっとも占拠しやすい戦術とみられている。

     

    (3)「2つ目が事前予告の有無だ。22年8月は軍がペロシ氏の訪台を受けて2日深夜、演習区域を表示した地図とともに4日昼から開始すると予告した。一方、今回の演習は23日朝に軍で台湾方面を管轄する東部戦区が実施を公表した時点ですでに始まっていた。予告なしの演習は台湾側により大きな衝撃をもたらした可能性がある」 

    今回は、事前予告がなかった。ただ、中国艦船の動きは事前にキャッチされている。「急襲」は不可能である。 

    (4)「3点目が軍と海上警備を担う中国海警局の共闘だ。同局は24日、台湾本島東部の海域で船隊を編成し、パトロールの訓練をした。23日には馬祖列島の周辺で演習した。いずれも軍が設けた演習区域の付近とみられる。海警局は18年、軍の最高意思決定機関である中央軍事委員会の一元的な指導を受ける人民武装警察部隊の指揮下に入った。同年には海軍出身者が海警局トップに就任した。今後、対台湾で軍と海警局の一体運用が深まる可能性がある。中国海軍の艦艇と海警局の船の合計27隻の合同訓練も確認した」 

    中国は、台湾侵攻では海警船も使うことが分った。小島の封鎖に動員するのだろう。主戦場では足手まといになる。

     

    (5)「台湾国防部(国防省)の発表によると、24日は中国軍の戦闘機「スホイ30」や「H6」爆撃機など合計62機の飛来を確認した。うち47機が台湾海峡の暗黙の「休戦ライン」である中間線とその延長線を越えて台湾北部、中部、南部の空域に入った。CCTVによると2日目の24日は艦船が編隊を組み、戦闘機や爆撃機と連携しながら海上や陸上の目標物を模擬攻撃した。中国軍の艦船を追跡した台湾軍艦が、およそ1キロメートルの距離まで近づく場面もあったという」 

    中国は、まず本土からミサイル攻撃をかけ同時に空爆を実施するであろう。艦船による上陸作戦はその後だ。艦船は、台湾海峡を渡航中に潜水艦攻撃を受ける。どれだけが上陸できるかが勝負だ。「AUKUS」(米英豪)の潜水艦部隊が迎え撃つ。 

    『日本経済新聞 電子版』(5月26日付)は、「国防総省高官、中国の軍事演習『実際の成功は難しい』」と題する記事を掲載した。 

    (6)「米国防総省の高官は25日、中国軍が台湾を包囲する形で実施した軍事演習を巡り「演習しているような作戦を成功させることがいかに難しいかを示した」との声明を発表した。「彼らがこの種の演習をするたびに、私たちは彼らがどのように機能するかさらに深い洞察を得ることができる」と説明した。米軍が中国軍の演習での動きを分析し、対応策を練っていると示唆した。米国防総省のライダー報道官は25日、インド太平洋地域の米軍の態勢変更の可能性について「現在の米軍の態勢と作戦に引き続き自信を持っている」との声明を出した」 

    米軍は、今回の中国軍演習をつぶさに観察している。盲点を探しているであろう。通常は、図上演習で敵の攻略法を試すが、中国軍は「実物演習」を見せて米軍を助けている。

     

     

     

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    ドイツは、欧州経済の王者を自任してきたが、高電力料金で海外企業はドイツへの直接投資を敬遠してフランスへ流れている。フランスは、言わずと知れた原子力発電国である。低電力料金を「売り」にして対内直接投資では、ドイツのお株を奪っている。「工業国ドイツ」は危機感を強めているが、対抗策はゼロだ。ドイツ企業自体が、「脱ドイツ」を急いでいるほどである。

     

    『ロイター』(5月25日付)は、「企業投資はドイツからフランスへ、マクロン氏の改革が成果」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツの電子部品メーカー、ハーガー・グループは事業拡大に向けた新工場の建設場所を国内とフランスのどちらにするか迷った結果、フランスを選択した。グループ会長のダニエル・ハーガー氏はロイターに、フランスの法人税軽減措置や、工場立地探しに対する地元当局の支援、さらに企業にとって悪名高い同国の厳格な労働規制を柔軟に運用できる余地ができたことなどが、決め手になったと明かす。

     

    (1)「これはまさに、マクロン大統領が就任から7年かけて打ち出してきた企業寄りの改革が、ユーロ圏の経済規模ビッグ2であるフランスとドイツの経済的な力関係を変えたことを物語っている。もはやフランスの高い税率や、ドイツの週40時間よりも少ない週35時間の労働制に外国投資家が不満を唱えていた時代は遠い昔となり、フランスへの外国からの直接投資は記録的な水準に達しつつある。ハーガー氏は「マクロン氏が大統領に就任して以来、企業にとって事業環境ははっきりと改善し、歓迎されている」と語った」

     

    フランスは、マクロン氏が大統領へ就任以来7年間、取組んできた企業寄り改革が実を結び、海外からの直接投資は記録的な増加率になっている。

     

    (2)「ドイツの雇用の55%を占め、家族経営型が多い中堅・中小企業の典型と言えるハーガー・グループは、引き続き国内にも投資しているが、結局フランス東部のアルザス地方に1億2000万ユーロ(1億3000万ドル)を新たに振り向けることになった。26日にフランス大統領として2000年以降で初めてベルリンを公式訪問するマクロン氏は、前任者たちのように外資誘致競争で置き去りにされることをあまり心配せずに済む。000年当時、フランスは週35時間労働制を導入したばかりで多くの外国投資家にそっぽを向かれていた一方、ドイツは労働改革を強化し、06年から10年間にわたる力強い輸出拡大基調の土台を築いた

     

    ドイツは、フランスが週35時間労働制を導入した結果、2006年から10年間にわたりドイツの優位性が目立ち輸出拡大基調の基礎を築いた。フランスの「敵失」に救われた形だ。

     

    (3)「近年、そのドイツの経済成長モデルには疑念が生じている。中国向け輸出や安価なロシア産天然ガスに依存し過ぎた上に、インフラの老朽化や電力価格の高騰、緊縮財政などが重くのしかかっているからだ。対照的にフランスは、原子力エネルギーを長期的に推進してきた経緯もあり、外国のハイテク企業からの投資も増えている。例えばマイクロソフトは、膨大な電力を消費するデータセンターを同国に建設する」

     

    今やドイツに逆風が吹いている。原発抑制とロシア産天然ガスに依存しすぎた結果、エネルギーコストが高騰している。ドイツは、インフラの老朽化や憲法上の規定による緊縮財政も重なり、欧州の病人とまで言われる事態だ。フランスとは、立場が入れ替わった。

     

    (4)「コンサルティング会社EYの年間調査によると、ドイツが勢いを失い、英国も欧州連合(EU)離脱による逆風が依然尾を引いている中で、フランスは2019年から欧州で外国からの直接投資が最も多くなっているマクロン氏が企業投資誘致のためにベルサイユ宮殿で毎年開催している会議では今年、過去最高となる150億ユーロ相当の投資の約束を獲得。また同氏は法人所得税率を25%に引き下げることなどで、企業の年間の税負担を250億ユーロ圧縮したほか、他の事業関連税を軽減したり撤廃したりしている。

    ドイツ貿易・振興機関によると、同国の平均的な法人税率は30%弱だ」

     

    ドイツへ集中した対内直接投資は、2019年からフランスへ流れが変わった。フランスの改革が軌道に乗ったからだ。

     

    (5)フランスは企業寄り政策が実を結び、マクロン氏が初当選した17年以降の経済成長率はドイツの2倍以上に達していることが、ロイターの計算で分かる。フランスの雇用数も過去最高水準だ。EYの調査によると、外資が創出した雇用数は昨年4%増加したただ外国投資家の人気を集めているこうしたマクロン氏の改革は、しばしば有権者の感情を逆なでし、同氏の支持率は低迷している。フランス経済には、生産性の伸び悩みから過大に膨らんだ財政赤字まで、さまざまな問題も残されたままだ。ハーガー氏は、外国投資がフランスに大きく流入しているとしても、同国の工業セクターがドイツに追いつくまでの道のりはなお非常に長い、と話している

     

    マクロン氏が、フランス大統領に就任以来のGDP成長率は、ドイツの2倍になっている。だが、国内の評判はよろしくなく世論との紛争が絶えない。フランス経済には、生産性の伸び悩みから過大に膨らんだ財政赤字まで、さまざまな問題も残されたままである。フランスが、ドイツの工業部門の水準へ到達するのはまだ先の話だ。

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