中国経済最大の難所は、不動産バブル崩壊後の不良債権処理である。習近平国家主席は、金融監督当局と地方政府が責任を持って処理せよと決めた。だが、事態はそれほど簡単に解決できるものではない。中央政府が、財政資金を投じない限り住宅の過剰在庫処理は不可能な事態になっている。経済政策は、「支離滅裂」状態へ落込んでいる。
『ブルームバーグ』(5月27日付)は、「中国の住宅救済策、難航かーパイロット都市での実績が課題示す」と題する記事を掲載した。
中国政府による大規模な住宅市場救済策は、すでに進められている小規模なパイロットプログラムを土台とすることを目指しているが、軌道に乗るのは容易ではなさそうだ。
(1)「中国人民銀行(中央銀行)は今月、地方政府がデベロッパーから余剰在庫を買い取るのを支援するため420億ドル(約6兆6000億円)を投じると発表した。昨年から8つの都市で同様のパイロットプログラムが実施されているが、不動産市場を安定させる効果は限定的で、割り当てられた資金のごく一部しか投入できていないもようだ」
人民銀行は、地方政府がデベロッパーから余剰在庫を買い取る資金として約6兆6000億円を融資すると発表した。すでに行われているパイロットプログラムによると、成果は上がっていないのだ。
(2)「全国的な新たな取り組みに期待される役割は大きい。中国政府は不動産不況が手に負えなくなり万科企業のような大手デベロッパーの存続が脅かされる前に、低迷を食い止める必要がある。パイロット都市やその他のさまざまな地域の取り組みで起きていることは、今後の課題を示している。負債を増やすことを心配する地方政府、割安で売却することに消極的なデベロッパーや住宅所有者、この仕組み全体にあまり利益を見いだせない銀行など、主要なプレーヤーにインセンティブを与えるのは難しいことが分かった」
下線部のように、パイロットプログラムの行われている8都市の経緯は、芳しいものでない。誰にもメリットがないので消極的になっている。
(3)「BNPパリバの中国担当チーフエコノミスト、ジャクリーン・ロン氏は「既存の在庫を購入するには、さまざまな利害関係者の利益のバランスを取るために多くの交渉が必要だ」と指摘。この複雑さを認識した上で、中央政府は「慎重」を期し、参加を自主的なものにとどめ購入する住宅数の目標を設定することはしなかったと説明した。人民銀は試験プログラムに1000億元(約2兆2000億円)の枠を設定したが、どれだけの額が実際に貸し出されたかは正確には分からない」
人民銀行は、パイロットプログラムに1000億元の枠を設けたが、どれだけの融資が実行されたか把握していない。
(4)「事情に詳しい関係者によると、3月末に人民銀が公表した20億元を大幅に上回っているという。人民銀の発表と国営メディアの報道を総合すると、福州、済南、天津、青島、重慶の5つのパイロット都市は少なくとも44億元を借り入れている。地方当局は、購入した不動産を手頃な価格の賃貸住宅にしなければならないが、これが一つの障害となることが分かった」
5つのパイロット都市では、少なくとも44億元を借り入れているという。1000億元の枠に対して、実行は4.4%にすぎない。
(5)「このプログラムでは、人民銀は1.75%の金利で資金を供給し、銀行は3%以下で各都市に融資しなければならない。しかし、孫斌斌氏ら天風証券のアナリストの計算によると、補助金によって借り入れコストが下がっても、北京、広州、深圳などの賃貸収益率はさらに低い。このギャップは、物件の管理・維持コストを考慮するとさらに広がるとアナリストは21日のリポートで説明。人民銀の新プログラムの利用が「初期段階では限定的かもしれない」と指摘した。BNPのロン氏によれば、もし人民銀の全国計画が5000億元の新規融資を促進することに成功すれば、地方政府は「補完的投資」のためにさらに5000億元を借り入れなければならなくなるかもしれない」
パイロットプログラムでは、人民銀の融資枠をそのまま使っただけでは済まず、地方政府も同額の補完的投資が必要という。こうなると、地方政府は及び腰になるほかない。
(6)「地方当局は古い住宅を購入するよりも、新しい住宅を建設し、より多くの雇用と経済成長を生み出すことによって、手頃な価格の住宅を提供することに魅力を感じるかもしれないと同氏は述べた。さらに、もうひとつの抑止力がある。敷地内の一部を公営賃貸住宅にすると、同じプロジェクト内の他の物件の価格が下がる可能性がある。そのため、値下がりした物件の所有者から不満の声が上がり、自治体とデベロッパーの双方にとって頭痛の種となる可能性がある」
買い取った在庫住宅が、公営住宅になると付近の住宅価格が下がるという懸念が出る。そうなると住民の反対運動が起こる。地方政府にとっても難題である。




