5月、日本を訪れた外国人旅行者は304万人となり、3月から3か月連続で300万人を超えた。韓国が73万8800人と最も多く、次いで中国が54万5400人、台湾が46万6000人、米国24万7000人である。
日本国内では、「オーバーツーリズム」が指摘されるほどになった。この勢いは、今後どうなるかだ。地方への分散が必要だが、それにはホテル建設が不可欠である。
『ブルームバーグ』(6月28日付)は、「訪日客数増加の余地大きく、マイナー観光地に誘客-IHG日本代表」と題する記事を掲載した。
ホテル運営大手のIHGホテルズ&リゾーツで日本を担当するアビジェイ・サンディリアマネージング・ディレクターは、訪日客数増加の余地は大きいとしたほか、観光業の持続的な発展に向け、これまでよく知られていなかった観光地への誘客に自社が貢献できると話した。
(1)「同社は、国内47カ所で「インターコンチネンタル」などのブランドのホテルを展開しており、16カ所で開業を予定する。サンディリア氏は28日のインタビューで、年間の観光客数が8500万人を超えるスペインや1億人に達したフランスに比べ、日本は2500万人にとどまり「成長の余地はある」と話した。たとえ今後円高に振れたとしても、大きなネガティブインパクトはないとする」
日本の訪日客はまだ2500万人だ。欧州から比べれば3分の1か4分の1のレベルである。日本も、ホテルさえ増やせればまだまだ増加の余地がある。円高になっても日本人気は衰えないという。
(2)「あまり知られてない地方都市への誘客では「我々のようなグローバルブランドと協力することが重要だ」と話した。例えば、同社は2022年に愛知県犬山市にホテルを開業したが、4割が訪日客だという。同社は海外の消費者に認知されており、スマートフォンアプリなどを通じて情報発信もできるとして、地方都市への観光客の呼び込みに貢献できると意気込んだ。新型コロナウイルス禍の収束で日本の観光業は急速に回復している。3月には初めて月間の観光客数が300万人を超え、4月と5月も同じ水準だった。
海外で知られていない日本の観光地を売り出すには、世界的に名が通ったホテルが必要である。そうなれば、安心して旅を楽しむことができる。
(3)「一方で京都府など特定の観光地に人が集中し、一部ではオーバーツーリズムが起きるなど課題もある。観光客の満足度を維持しながら人数を増やしていくには、他の地域に分散させる必要がある。ホテル展開については、今年後半に中価格帯ブランドの「ガーナー」を日本に初めて投入する。IHGは以前から日本でANAホールディングスと協業するが、足元では森トラストとパートナーシップを組み、長崎県でホテルを開業する予定だ。デベロッパーなどと今後も協力していきたいと話した」
古都京都は、世界の憧れになっている。観光公害が起っているほどだから、これを防ぐ手立てが必要で、他の地域への分散化である。それには、ホテルが不可欠になる。
『ブルームバーグ』(5月15日付)は、「月給50万円でホテル幹部候補募集、米フォートレス系が低賃金に一石」と題する記事を掲載した。
宿泊業界で人手不足が深刻化する中、米投資会社フォートレス・インベストメント・グループ傘下で国内4位の客室数を持つマイステイズ・ホテル・マネジメントは幹部候補生の募集を始める。月給50万円と業界平均の約2倍の待遇で、宿泊業界以外からも人材を呼び込む狙いだ。
(4)「幹部候補生の育成プログラムは27歳までの四年制大学卒業同等者が対象で、新卒者だけでなく就業経験者も応募できる。契約社員として旅館やホテルと、本社の料金設定やマーケティング、営業などの部門で経験を積み、3年目にはマネジャー職に就く。手腕が認められれば4年目から正社員となる。マネジャーになる前に8年程度の現場経験を積むことが一般的だったが、短期間でのキャリアアップを可能とすることでホテル経営に関心の高い人材獲得を狙う」
ホテル業が、成長産業として登場してきた。月給50万円の高給を支給するという。広く人材を集める狙いだ。
(5)「厚生労働省の2023年の賃金構造基本統計調査によると宿泊業および飲食サービス業の平均給与は25万9500円で、マイステイズが提示する50万円はこの水準を大きく上回る。背景にあるのは深刻な人手不足だ」
ホテルマンは、現場からの「叩き上げ」の苦労人が多い世界である。そこへ、「新人類」が登場する。時代は変わるのだ。