習近平国家主席は、消費刺激策に対して「浪費」という感覚で捉えている。こういうときこそ「耐乏生活」を送るべきとしているのだ。この経済感覚では、今年の経済成長目標「5%前後」は絶望的である。習氏は、成長率目標に拘らず、財政赤字増大をどれだけ減らすかに力点を置いている様子だ。
『ブルームバーグ』(8月29日付)は、「中国経済、5%前後の成長達成は困難か UBS見通し引き下げ」と題する記事を掲載した。
中国政府が5%前後に設定した2024年の国内総生産(GDP)成長率目標を巡り、エコノミストらは達成がますます難しくなっているとみている。個人消費が伸び悩み、習近平指導部は大型の刺激策を見送る中、スイスのUBSグループも中国の24年と25年のGDP成長率予想を下方修正した。
(1)「UBSは、不動産不況や引き締め気味の財政政策スタンスを受け、中国経済がなお勢いを欠いていると分析し、今年のGDP成長率を4.6%と予想。従来の4.9%から引き下げた。来年の成長率見通しは4%と、前回の4.6%から下方修正した。消費に関連する大手数社が今月発表した決算は振るわず、5%前後のGDP成長率目標は達成できないのではないかという懸念が改めて浮上。不動産不況が内需や信頼感を強く圧迫している。中国は22年にも年間の成長率目標を達成できず、当時は厳格な新型コロナウイルス対策や突然の政策変更が足かせとなった」
UBSの中国経済予測は、IMF(国際通貨基金)が4月に予測した最初の見通しに近くなっている。ただ、IMFは、1~3月期GDPが予想外によかったことに引きずられ上方修正する「ミス」を冒している。中国政府の「5%前後」という目標は、もともと過大であった。政策的な裏付けがないのだ。
(2)「UBSのエコノミスト、汪濤氏らは28日付けのリポートで、「家計消費を含め、不動産活動の低迷による経済全般への圧迫は従来予想よりも大きくなるとわれわれは見込んでいる」と説明した。4-6月(第2四半期)の中国経済は、5四半期ぶりの低成長にとどまり、GDP成長率見通しを引き下げる動きも増えている。成長目標の達成に懐疑的な金融機関には、同じく4.6%と予測するJPモルガン・チェースや、さらに低い.4.5%と見込む野村ホールディングスなどがある」
今年の成長率予測が4.6%としているのは、UBSのほかにJPモルガン・チェースや、さらに低い4.5%予測の野村などが控えている。当初のIMF予測は、この線にあった。
(3)「中国当局は、22年末以降、住宅ローン金利の引き下げや頭金要件緩和、住宅購入制限縮小など、不動産市場に対する支援策を講じてきたが、UBSによれば、こうした施策の実施は遅れ気味で、効果は限定的だ。汪氏らは、「中国の不動産需給のファンダメンタルズは近年変化し、家計所得が伸び悩む中で市場の信頼感は低く、在庫水準が高い一方で在庫調整の実施は遅れている」と分析。中国不動産セクターの見通しを引き下げ、新築住宅着工が底を打つのは26年半ばになると見込んだ」
IMFの最新予測(2024年2月)では、2034年までに住宅投資は22年比30~60%の減少を見込んでいる。新築住宅着工が、26年半ごろに底を打つという予測は実現しないであろう。
(4)「アルパイン・マクロのストラテジストで、中国出張から最近戻ったワン・ヤン氏は5%前後の成長目標について、達成は「ほぼ不可能」との見方を示す。課題への取り組みには明確で一貫した戦略が必要だが、政策立案者はこの点を欠いていると指摘。需要の問題への対応で実施されている「バラバラの対策」ですら、場当たり的で二の足を踏んだものになっていると分析した」
5%前後の成長目標達成は、「ほぼ不可能」という見方も出てきた。中国経済は、どこまでも「住宅依存」から抜け出られないのだ。
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2024-08-29 |