11月の米国大統領選挙まであと100日を切るタイミングで、ハリス氏が民主党候補になった。民主党は数週間前からバイデン氏ではトランプ氏に勝てないという絶望感から内部対立が生じていたが、彼女が候補になったことで、新たな熱気と活力を得た。最新の世論調査によると、わずか1週間余りの間に、全米だけでなく選挙の結果を左右しそうな激戦州でもトランプ氏のリードが消え去った。
『フィナンシャル・タイムズ』(8月2日付)は、「米国の女性を勇気づけるハリス候補」と題する記事を掲載した。
ブルームバーグ・ニュース/モーニング・コンサルトがハリス氏のアトランタ集会と同じ7月30日に公表した調査によると、勝敗の鍵を握る7つの激戦州におけるハリス氏の支持率は48%で、トランプ氏の47%とほぼ互角だ。ハリス氏の人気は、特に若者、有色人種、女性の有権者からの支持率の上昇に支えられている。民主党はハリス副大統領が投票日の11月5日までその勢いを維持することを期待している。特に女性有権者からの強い支持が、党史上最高の投票率につながることへの期待が大きい。
(1)「民主党から地方選挙などに立候補する若者を募って支援する非営利団体「Run for SOMETHING」(立候補しよう)の共同創設者であるアマンダ・リットマンさんは、「ハリス氏の候補者指名が熱気を生み出している」と喜ぶ。「恐ろしいとしか感じられない選挙から本当に希望に満ちた、前向きでワクワクする選挙戦へと変わった。トランプ氏の当選を阻止するだけでなく、より良い未来がどのようなものかを示すことができる」。リットマンさんはヒラリー・クリントン氏の2016年大統領選挙運動にも関わった。「候補者が大切。候補者の物語が、そして彼らの人となりが大切」とリットマンさんは語る」
下線部は,重要である。候補者が有権者の希望を叶えてくれるような「物語」を語れなければ当選は難しいとされる。利益誘導でなく、心と心の共鳴が当選の条件とされている。ハリス氏は、そういう「物語」を作れるかだ。
(2)「ハリス氏は、出産に関する権利の確保と中絶手術を受けやすくすることを選挙運動の中心テーマにしている。アトランタでの約20分間の演説で、ハリス氏は「極端な中絶禁止をなくす」と述べ、73年に女性の中絶の権利を認めた歴史的な最高裁判決「ロー対ウェイド判決」で保障された権利を法制化する連邦法を推進すると約束した。しかし、ハリス氏はトランプ氏と共和党の副大統領候補バンス氏による個人攻撃や性差別的な発言のひどさを訴えた。先週だけでも、前大統領はハリス氏を「IQ(知能指数)の低い人物」だと評し、外国の敵にとって「遊び道具のような存在」になるだろうと述べた。また、彼女の(黒人としての)人種的アイデンティティーに疑問を投げかけた。」
トランプ氏の「ハリス批判」は、中道派有権者の心を遠ざけている。もったいないことをしている。米国大統領としての気品が必要である。
(3)「アトランタ集会の聴衆の中には、8年前のクリントン元国務長官の選挙戦を引き合いに出す人も見受けられた。クリントン氏は主要政党では初めての女性大統領候補になったが、激しい選挙戦の末、同氏を「性悪な女」となじったトランプ氏に敗れた。しかし、ほとんどの集会参加者は、16年以降、米国の政治は大きな進歩を遂げていると主張した。多くは、クリントン氏が「最も高く、最も堅牢なガラスの天井」と呼んだものをハリス氏は打ち破ることができると語った」
クリントン女史が、女性大統領への「ガラスの天井」へヒビを入れており、ハリス氏が破りやすいようにしているかもしれない。
(4)「16年以降、米国では、ウィメンズ・マーチ、ミー・トゥー運動など女性の権利に関する大きな動きがあった。22年には、最高裁判所が人工妊娠中絶を憲法上の権利と認める「ロー対ウェイド判決」を覆す判断を下した。この最高裁の判断を受けて、共和党が多数を占める州議会の多くは、反対論の強い厳格な中絶規制を推進しており、不妊治療や避妊の合法性を疑問視する場合すらある。政治学者のララ・ブラウン氏は、こうした動きに強い不満を持つ多くの女性有権者がハリス氏支持に流れているとみている」
妊娠中絶禁止問題は、党派を超えて女性有権者の高い関心を得ている。トランプ氏は,この問題で劣勢に立たされている。
(5)「もし女性が大統領になったら、自分は女性の1人として誇りに思うでしょう。しかし、それは私が候補者に求める一番大切なことではない」とコグインさんは語った。「候補者が男性であろうと、トランスジェンダーであろうと、気にしない。リーダーにふさわしい資質を備えている人に投票する」。しかし多くの人々は、ハリス氏が大統領候補者となったことの意義や、トランプ氏を打ち負かす可能性に熱狂している」
ハリス氏が、大統領に相応しいか。有権者は、その資質をハリス氏に感じているのだろう。





