米国市場は、8月1日を境に悲観論へと急転換した。労働関連統計が、予想以上に悪化したからだ。家計調査に基づく7月失業率は4.3%(5月は4.1%)へ上昇し、4カ月連続の悪化である。市場予想は4.1%の横ばい予想であった。
完全失業率は、景気関連統計では「遅行指標」と位置づけられている。「先行指標」、「一致指標」の後に「遅行指標」が来る。この遅行指標である完全失業率が、4.3%まで上昇したことは、米国経済が下降に向っていることを意味している。実は、完全失業率が1年前に比べて「0.5%ポイント」以上の悪化になると、失業率は急激に悪化するというパターンが知られている。6月の失業率が、この危険パターンに入っていた。論より証拠で、7月失業率は4.3%へ跳ね上がったのだ。市場が、ハードランディングだと危機感を強める理由である。
『ロイター』(8月3日付)は、「米9月の50bp利下げ観測高まる、雇用統計受け『FRB後手に回った』」と題する記事を掲載した。
米労働省が発表した7月の雇用統計を受け、米連邦準備理事会(FRB)が9月の次回会合で0.50%ポイントの利下げを決定するとの観測が短期金融市場で高まった。FRBはその後も利下げを継続し、年末時点の政策金利は現行水準より1%ポイント以上低くなるとの予想も出ている。
(1)「7月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は前月比11万4000人増となり、予想を下回った。失業率が約3年ぶりの高水準となる4.3%に上昇したほか、平均賃金の前年比での伸びが約3ぶりの低水準となった。FRBはこれに先立つ7月30─31日の連邦公開市場委員会(FOMC)で金利据え置きを決定。パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、早ければ9月17─18日の次回会合で利下げを議論する可能性があると述べていた」
FRBは、7月末のFOMCで9月の利下げの可能性を示唆している。
(2)「アネックス・ウェルス・マネジメントの主任エコノミスト、ブライアン・ジェイコブセン氏は、「パウエル議長が今朝分かったことを当時知っていれば、おそらく利下げを決定していただろう」とし、「インフレ鈍化を受けても金利を据え置いたことで、FRBはブレーキを踏み込みすぎた。FRBは状況がいかに急速に変化しているか、認識するのに後手に回っている」と語った」
FRBは、7月の完全失業率の急上昇を確実の予測できなかったという批判を浴びている。後手に回ったというのだ。
(3)「パンテオン・マクロエコノミクスのチーフエコノミスト、イアン・シェパードソン氏は「7月のFOMCでFRBが金利を据え置いたのは誤りだった」とし、「9月に0.50%ポイントの利下げが決定される根拠は強い」と述べた。雇用統計発表前は、FRBは9月に利下げに着手し、利下げ幅は0.25%ポイントになるとの見方が織り込まれていた」
FRBは判断を見誤った以上、9月のFOMCでは「0.5%」の利下げをすべしとしている。
『ブルームバーグ』(8月3日付)は、「FRB、0.5ポイント利下げには消極的か 市場で織り込み強まるも」と題する記事を掲載した。
7月の米雇用統計が弱い内容となったことから、米連邦公開市場委員会(FOMC)は既に利下げを待ち過ぎているとの懸念が強まっているが、警戒シグナルを発しかねない大幅利下げが9月に実施される可能性は低そうだ。
(4)「FRBの動きを注視しているエコノミストの多くからは、即座に異なる見解が発せられた。アーンスト・アンド・ヤング(EY)のチーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は「FRB当局者のタカ派的なバイアスを踏まえれば9月の利下げは確定したと予想されるが、50bpの引き下げには抵抗があるだろう」と述べた。SMBC日興セキュリティーズのチーフエコノミスト、ジョゼフ・ラボーニャ氏は、「もし50bp引き下げれば、パニックのように見えるだろう」とし、市場は大幅利下げの織り込みで「先走り」していると付け加えた」
FRBは、0.5%(50bp)の引下げには抵抗感があろうという指摘もある。米国経済が、パニック状態になっているというに等しいからだとしている。
(5)「パウエルFRB議長の下、FOMCは緊急時のみ大幅な金利調整を行ってきた。2020年3月の最初の2週間では、新型コロナウイルス感染が米経済に打撃を与え始める中で1.5ポイント利下げし、政策金利をゼロ近辺とした。22年には、インフレ高進に直面する中で0.5ポイントと0.75ポイントの利上げを実施した」
パウエル議長は、現状を「緊急時」と判断するかどうかだ。いずれにしても、9月になれば、0.25~0.50%の金利引下げが起こる、これによって、日米金利差は圧縮される。円安相場の是正は、1ドル=140円を目指して進む環境が形成されたのだ。





