勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2024年08月

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    最も信頼できる株式市場の一つとされた日本株が、予想外の暴落に見舞われ、わずか2日間で日経平均が3192円下げ、世界で最も損失を被った市場になった。だが、日本経済を揺るがすような悪材料が出た訳でない。日本株急落は、円キャリートレード(日本で低金利の資金を借りて投資する)の手仕舞いという技術的な理由である。つまり、これまで超金融緩和を続けてきた日銀が、「金利のある世界」へ移行すると利上げに踏みきったことが理由である。海外投資家がこれに,大慌てしているのだ。 

    『ブルームバーグ』(8月2日付)は、「転機迎える日本株、緩和トレード終焉か 日銀タカ派姿勢で」と題する記事を掲載した。
     

    (1)「日本株は、海外投資家からインフレヘッジの手段として位置づけられていた側面が後退していることも影響しているようだ。松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは、「(株安は)緩和トレードの巻き戻しだろう。低金利持続を前提にしたストラテジーが修正を迫られている」と指摘する。海外投資家が日本で資金を調達して投資する手法は、金利が上昇するようなら見直す必要が出てくるとの見立てだ」 

    下線部は、まさに円キャリートレードを指している。この円キャリートレードは、日銀の利上げで続行不可能となり、借りた円を返済する手仕舞いで日本株を売ったのだ。これだけででも、利上げによる円安阻止効果は抜群である。円相場は、3日午前1時25分で1ドル147円04銭である。 

    (2)「商社株は、著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイの投資先として注目を集めた。バークシャーは、日本株投資の資金の大半を、相対的に金利が低い円建てで借り入れて調達しているとみられている。商社を含む卸売業は、この日の業種別下落率の5位に入った。市場では「バークシャーが戦略を見直すのではないかとの警戒感が浮上し、追随して商社株を買っていた中長期投資家などから売りが出たのではないか」(国内証券のアナリスト)との思惑が聞かれた」 

    バフェット氏は、日本で低利資金を借りて商社株へ投資するという極めて低資金コストであった。円キャリートレードである。

     

    (3)「JPモルガン証券の高田将成クオンツ・ストラテジストは、世界的なインフレトレードからの資金引き揚げの一環で日本株が売られているとの見方を示す。「ハト派的なパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の会見が、インフレトレードからの即時撤退にお墨付きを与えた可能性がある」と高田氏はみている。インフレトレードとは、インフレヘッジできる資産を買う取引で、インフレ連動債の上場投資信託(ETF)やコモディティ、高配当株などの取引を指す。グローバル投資家の間では、この中に日本株も含まれている。これまではグローバルでインフレのときでも、日本では基本的に利上げはできず、その結果として円安になり株高になるという傾向がみられ「期待インフレが高まる中で日本株がアウトパフォームすることが、この2030年の通説だった」(JPモルガン証券の高田氏)という」 

    グローバル投資家は、インフレトレードを行ってきた。インフレヘッジできる資産を買う取引で、この中に日本株も含まれている。日本は、基本的に利上げできず、その結果として円安になり株高になるという傾向を利用してきたもの。このインフレトレードの基本構造が、日本の利上げと米国の利下げ徴候の強まりによって崩れた。これが、ここ2日間にわたる日本株暴落をもたらしたのである。

     

    (4)「日銀の連続利上げが見込まれる中での大幅安を、コムジェストのリチャード氏は、日銀が追加利上げに動いたことで「(海外短期筋にとって)好材料出尽くしになった」ためという。JPモルガンの高田氏は、インフレトレードの巻き戻しのほか、予想外の日銀タカ派化で、膨らんでいた円ショート(売り)や日本株ロング(買い)のポジションがいずれも急速に巻き戻された結果、日本株は大幅に調整しているとも指摘している。積み上がったポジションが調整を終えるには12週間ぐらいかかるのではないかとコムジェストのリチャード氏はみている」 

    市場の予想では、日銀が利上げするとみていなかった。その「狼狽」が、円キャリートレードの巻き戻し(解消)を一挙に行わせた。平家軍が、富士川の水鳥の羽音に驚いて総退却した構図とよく似ているのだ。この騒ぎは、1~2週間は続くという。

    (5)「全体相場が大きく調整した中でも、日本製鉄やコナミグループ、アステラス製薬など直近に決算を発表した銘柄群は上昇した。「物色意欲は払底したわけではない」としんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャーは指摘している。足元の相場はパニック的な動きのため3万5000円程度への下落はあるかも知れないものの、株価収益率(PER)はデフレ時の過去平均並みの水準に低下してきたとして「きっかけがあれば短期間で反発する余地はある」と、藤原氏は予想する」 

    言葉は悪いが、日本のゼロ金利に群がっていたグローバル投資家は、インフレトレードを行っていた。それが、環境激変で一挙に手仕舞いを迫られている。話を簡単にまとめれば、こういうことだ。ここは、落ち着くことが重要。軽挙妄動をしないことだろう。

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    中国共産党機関紙、人民日報系の新聞で、タカ派的な論調で知られる『環球時報』の編集長だった胡錫進氏がソーシャルメディアへの投稿を禁止された。中国経済に関する物議を醸すようなコメントが理由だと事情に詳しい関係者が明らかにしたという。

     

    中国のエコノミストらは、自分たちの提案が聞き入れられているか分からないと言い、会合では当局者はうなずき、メモを取るばかりだとも関係者は語る。指導部の考えに詳しい関係者1人によると、著名アナリストのコメントは、習氏のトップダウン型のメッセージを乱す雑音と見なされる。モルガン・スタンレー・アジアのスティーブン・ローチ元会長は、「習氏は今や中国のチーフエコノミストだ」との見解を示している。

     

    『ブルームバーグ』(8月2日付)は、「中国の著名タカ派論客、経済語りネット投稿禁じられる-関係者」と題する記事を掲載した。

     

    著名なインフルエンサーである胡氏のアカウントは、フォロワーが2500万人近い微博(ウェイボ)を含め停止された。非公開情報だとして関係者が匿名を条件に語った。停止期間については触れなかった。胡氏が最後に投稿したのは7月27日で、微博では1日に何度も投稿していた胡氏にとっては異例の長い沈黙となっている。

     

    (1)「共産党は先月、第20期中央委員会第3回総会(3中総会)を開催。今回の3中総会は、国有企業と民間企業を対等な立場に置くという「歴史的」転換を示唆すると胡氏が論じたことが、禁止措置の引き金になったという。当局が、この問題に関する公の場での議論を制限したいというシグナルだと関係者は説明した。

     

    胡氏は、「国有企業と民間企業を対等な立場に置くという『歴史的』転換を示唆する」と書いたことが禁止措置の引き金になった。習氏は、国有企業が産業構造の中心になると明言している。それだけに、この方針に逆らうとみられたに違いない。

     

    (2)「深刻化する不動産不況による景気減速に対処する中で、共産党は経済を公に議論する場を狭めている。「デフレ」などのデリケートな用語に触れないようアナリストらに圧力をかけ、見通しの悪さを示すと見なされる公式データは公表が一段と差し控えられるようになっている」

     

    習氏は、「デフレ」という言葉を嫌っている。習氏の責任とみられるからだ。中国の現状がデフレでない限り、大型財政赤字予算を組む必要もないからだ。

     

    (3)「オーストラリア国立大学(ANU)台湾研究プログラムの政治学者、宋文笛氏は、公的メディアで30年のキャリアを持ち、いまだに中国プロパガンダの「インサイダー」である胡氏を黙らせることは、厳しいメッセージを送ることになると指摘。「胡氏でさえレッドラインに抵触する可能性があるということは、今日、中国で公の場での政治的言論に携わる者にとって、越えてはならない一線がどこにあるのかを知ることがいかに難しいかを示している」と述べた」

     

    習氏は、胡氏を黙らせることで他にも睨みをきかせている。

     

    (4)「ブルームバーグ・ニュースは胡氏に接触できなかったが、胡氏はアカウントがブロックされたことを最初に報じた星島日報に対し否定しなかった。「個人的には何も言いたくない。理解してほしい」と今週、香港の同紙に語った」

     

    胡氏は、これまで共産党の代弁者のように発言してきた。これが、禁じられたとなれば、中国も「闇の世界」になってきた。

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    FRB(米連邦準備理事会)は、7月31日に開いたFOMC(米連邦公開市場委員会)で、利下げの開始が近づいていることを示唆した。パウエルFRB議長の話しぶりからは、労働市場をさほど心配していないようであった。雇用の伸びの鈍化を、景気の弱さの顕在化というより、労働市場の正常化の一環とみていたからだ。だが、7月利下げ見送りを巡って早くも疑問が出てきた。 

    米労働省が8月1日に発表した7月27日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は、前週比1万4000件増加の24万9000件となった。これは、昨年8月以来の高水準である。金融市場は、米国経済がソフトランディングでなく、さらに進んで経済の悪化に陥ると警戒し始めている。今後、米国の利下げが急ピッチで進み、円相場の異常安が是正されることは確実となった。 

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月2日付)は、「FRB、政策対応で後手に回るリスク」と題する記事を掲載した。
    7月31日にFOMCを終えたFRBは手の内をあまり明かさないよう努め、会合終了後の声明ではインフレと失業率を巡るリスクについて、「より良いバランスへの移行を続けている」とした。ジェローム・パウエル議長は記者会見で、FRBがこの先どう動くかは今後のデータ次第との考えを改めて強調した。

     

    (1)「市場は確信を固めたようだ。CMEグループの「フェドウオッチ」ツールによると、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む次回9月会合での少なくとも0.25ポイントの利下げ確率は100%、0.5ポイントの利下げ確率は15%となった。さらに、市場はFRBが9月、11月、12月の今年の残り3回のFOMCでそれぞれ0.25ポイントずつ利下げする可能性が高いとみており、FF金利の誘導目標が現在の5.25~5.5%から年末時点で4.50~4.75%以下になる確率を74%とみている」 

    これまでの経験では、日米金利差が4.75%前後に縮小されると、ドル相場は調整反落局面を迎えている。現在の日米金利差は、5.00から5.25%である。米国の政策金利が、年末時点で4.50~4.75%以下になる確率を74%とすれば、日本がさらなる利上げしなくても、日米金利差は4.25から4.50%へ縮小する。これは前述のドル相場は調整反落局面「日米金利差4.75%前後」以下への縮小になる。本格的な円安是正局面になろう。この点は、繰返し強調したい。 

    (2)「投資家はこうしたシナリオを好感し、31日の株式・債券相場は上昇した。しかし、安心しきることには二つの面からリスクがある。第一に、投資家は利下げ見通しについて楽観的になり過ぎている可能性がある」 

    7月31日時点では、米国経済はソフトランディングできると安心して株式・債券相場は上昇した。だが、8月1日に冒頭で示した、7月27日までの1週間の新規失業保険申請件数が、昨年8月以来の高水準であることで一転、ハードランディング予想へと悪化したのだ。

     

    (3)「おそらくもっと大きなリスクは、景気減速の兆候が強まる中でFRBの対応が大きく後手に回ることだろう。今回の決算シーズンで多くの米企業は、過去を振り返る経済統計全般がこれまでのところ示唆するよりも足元の状況はやや悪化している可能性を示唆している。例えば、ファストフード大手マクドナルドのクリス・ケンプチンスキ最高経営責任者(CEO)は7月29日、消費抑制の圧力は今年、「さらに深まり、拡大した」との認識を示した」 

    企業は、すでに従業員の新規採用に対してブレーキを踏んでいる。この点は、本欄でも取り上げてきた。FRBが、高金利のブレーキを踏み続けていると、本格的な雇用調整が起こり兼ねないきわどい局面にある。 

    (4)「こうしたリスクは、FOMCが今年8月と10月には開催されないというスケジュール要因によって高まる。例えば、労働市場に関する指標が7月と8月に弱まり始め、その後も軟化し続ければ、FRBが11月6~7日のFOMCで2回目の利下げに踏み切るまでに状況が悪化し続ける可能性がある。その間に0.25ポイントの利下げが1回あるだけでは、悪化食い止めにはあまり役立たないだろう。金融政策が景気に影響を与えるまでの典型的なタイムラグを考えればなおさらだ」 

    現状では、FOMCの開催日程からみて9月と11月しか利下げ決定の機会はない。それだけに7月のFOMCは貴重な機会であった。そこで利下げを見送った以上、9月にどれだけの幅で引下げるかだ。

     

    (5)「現時点では、これは基本シナリオとは捉えられていない。確かに、雇用創出ペースはここ数カ月でやや鈍化している。政府の発表では失業率は6月に4.1%となり、前年同月の3.6%から上昇している。投資家が特に懸念すべきは、実際に労働市場がさらに大きく減速した場合、FRBには適切に対応する十分な時間が残されていないことだ。このことは、今年開催する残りのFOMC会合のいずれかでFRBが50ポイントの利下げを行う可能性を先物市場が多少織り込んでいる理由にもなっている。もしそうなれば、FRBは7月に利下げに踏み切らなかったことを後悔するかもしれない」 

    FOMCは、年内の開催月に0.50%という大幅利下げを迫られる可能性が出てきた。市場は「大荒れ」となろう。無論、円安の異常相場は急速に是正される。

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    円相場にとって、日米金利差5%台は致命的である。この最悪事態が、確実に改善方向へ動き出した。日銀が0.25%の利上げをした。FRB(米連邦準備理事会)パウエル議長は731日の記者会見で、「政策金利の引き下げは早ければ9月の次回会合でテーブルに乗る可能性がある」と述べた。9月までに何か劇的なことが起きない限り、9月の会合で0.25%利下げすることが確実な情勢である。円安相場是正は、どこまで進むのか。 

    『ブルームバーグ』(8月1日付)は、「円『快進撃』、1ドル140円がトレーダーの次のターゲットに」と題する記事を掲載した。 

    外国為替市場では怒濤の24時間を通過し、円がドルに対して1年半以上ぶりの月間上昇率を記録して7月の取引を締めくくった。

     

    (1)「円の上昇基調を受けて、アムンディやTDセキュリティーズの為替ストラテジストらは、1ドル=140円まで円高が進む可能性を指摘している。マッコーリー・グループのストラテジストも、「足元の円高の快進撃はまだ始まったばかりだ」とし、ドル・円相場が年末までに140円に接近する公算があると予想。2025年12月までにはさらに125円へのドル安・円高進行もあり得るとみる。仮にそうなれば、円は米金融当局が利上げを開始したばかりの22年前半に見られた水準に戻ることになる」 

    これまでの異常円安を招いた最大の要因は、日米金利差拡大を利用した円キャリートレードである。安い金利の円を使って,高金利通貨へ投機していたのだ。その状況が一変した。日銀は、0.75%程度までの利上げを臭わせる一方、FRBも9月から利下げを示唆している。米国では、失業率が速いピッチで上昇に転じているのだ。すでに1年間で「0.5ポイント」もの上昇であり、このままだと失業率5%の事態を招き兼ねない。慌てるFRBと自信を持ち始めた日銀が、ともに日米金利差縮小に向けて動き出したのだ。円安是正が始まっても何ら不思議はない。当然であろう。 

    (2)「一部のストラテジストは、ここ数週間に蓄積された円上昇幅の大部分が解消されるリスクが短期的に生じているとみる。ただ、7月31日には日本銀行が追加利上げに踏み切り、米金融当局が早期利下げの可能性を示唆したことで、数カ月にわたってくすぶっていた円の先行きに対する悲観的な見方は払拭されている。アムンディの債券・為替戦略担当ディレクター、パレシュ・ウパダヤ氏は、ドル・円相場について「複数の要因が重なれば、140円に達する可能性がある」として、米金融当局の緩和サイクル開始やリスク回避の活発化、日銀の揺るぎない引き締めスタンスを材料に挙げた。その上で、「越えるのが難しいハードルのように見えるかもしれないが、実際はそうでもない」としている」 

    為替相場の基調を見る上で重要なのは、100日移動平均線(短期)と200日移動平均線(長期)と現在の相場の関係である。これによると現在の1ドル150円は、100日移動平均線はもちろん、200日移動平均線も打ち抜いている。つまり、円安是正を示唆している。

     

    (3)「8月1日の東京外為市場では、円は対ドルで一時1%高い148円51銭まで上昇。7月の円の月間上昇率は7%を超えた。足元の円高基調とは対照的に、ことし前半は対ドルの下落率が12%と、G10通貨の中で最悪のパフォーマンスに陥り、日本の通貨当局を円買い介入に追い込んでいた。4月と5月に実施された介入の規模は約9兆8000億円を記録。その後7月にも追加で5兆5000億円強の介入が実施され、ようやく相場の流れが転換した」 

    政府の為替介入額は、約15兆3000億円(約1000億ドル)とされている。これだけの資金を投入して、円安相場の流れを食止める努力がされた。3月の日銀植田総裁が、理論通りに「金融政策と為替相場は無関係」と発言した。その「代償」が、この巨額資金の介入を招いたとも言える。現在の植田氏が「タカ派」を演じているのは、こういう手痛い失敗があるからだ。為替市場では、「口は災いの元」になる。

    (4)「TDセキュリティーズのマクロストラテジスト、アレックス・ルー氏は、「日本の金融政策が一段と引き締められれば、国内資産に向かうリバランスのフィードバックループが強まる」と指摘する。同社は来年1-3月(第1四半期)にドル・円相場が140円に達すると見込んでいる。オーバーシー・チャイニーズ銀行の外国為替ストラテジスト、クリストファー・ウォン氏によると、同行はドルに対する円の適正水準を136円とみる。サクソ・キャピタル・マーケッツの為替戦略責任者、チャル・チャナナ氏は、特にボラティリティーが上昇し、キャリー取引の巻き戻しが進む場合において、年内にもドルが145円を割り込む方向へ円高が進む余地があるとしている」 

    ここでのディーラーの見通しは、円安相場是正が急ピッチであることが背景にある。これまでの円安から言えば、目を丸くするような予測値である。

     

    (5)「BofA証券の山田修輔主席FX・金利ストラテジストは、「現在織り込まれている米金融当局の利下げに加え、われわれは日銀が来年に0.75%程度まで政策金利を引き上げると予想している」と説明。来年に向けてはドル・円相場の140円台もあり得ると付け加えた。マッコーリーの外為・金利ストラテジスト、ガレス・ベリー氏(シンガポール在勤)は、円売りを伴う人気の円キャリー取引が投資妙味を失っているとして、円の上昇基調が維持されると予想。「米金融当局の緩和サイクルがいずれ始まれば、円キャリー取引で円をショートにする意味がなくなるだろう」とリポートで指摘した。円は7月上旬に対ドルで約38年ぶりの安値で推移した後、値を戻す展開となり、過去1カ月間では主要通貨に対して全面高となった。ヘッジファンドによる円キャリー取引の急速な巻き戻しが円上昇の大部分に寄与した」 

    米金融当局の緩和サイクルが9月から始まる。そうなると、円キャリー取引で円をショートにする意味(売る)がなくなるだろうという。こうなると、円相場の流れは大きく変わる。年末から年初にかけて,1ドル140円台もあり得るとしている。

     

     

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    中国の住宅不況は、深刻の度を加えている。新規の物件が売れないだけでなく、中古物件まで不況の嵐が及んでいる。そこで、編み出されたのが「偽装離婚」を利用した売買によって、中古住宅の現金化への道である。

     

    夫婦が別れた形を取って物件を全て妻名義にする。妻は物件を「売出」す。夫が、時間をおいて住宅ローンを組んで「購入」すれば、売れなかった物件が「現金化」されるという仕組みだ。こういう実例によって、現金を懐にする夫婦が増え始めたというのだ。世も末である。住宅不況が、こういう歪な偽装離婚を生んでいる。 

    『日本経済新聞 電子版』(7月31日付)は、「中国でバズる『深圳離婚』、住宅債務が生む都市伝説」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙の中沢克二編集委員である。 

    中国で驚くべき成長を象徴する巨大都市が、香港に隣接する広東省深圳だ。今、居住人口1700万超の深圳を舞台にした半ば「都市伝説」のような物語が、中国全土に広がっている。名付けて「深圳離婚ブーム」。偽装に近い離婚で、売れないマンションを現金化できるという魔法のような話だ。これが中国の対話アプリ、動画などを通じてバズっている裏には、中国の深刻な住宅・不動産不況で生じたローン債務がある。 

    (1)「『深圳離婚』伝説が広がり始めたのは2023年秋からだ。不動産事情に精通する中国の企業人が側聞したという例を紹介したい。ビジネスで成功した中年の中国人夫婦(子供1人)は共に資金を出し合い、深圳で日本円換算にして2億円超の豪華マンションをローンで購入した。景気がまずまずだった新型コロナウイルス感染症拡大の前であり、日本円で2億円近いローン債務は問題なく返済できると踏んでいた」 

    日本円で2億円近いローン債務が、払えなくなったというケースだ。中古マンションを売却したいが売れない。

     

    (2)「ところが、夫婦が営むビジネスは、折からの不況で大きな痛手を被る。そこで虎の子の豪華マンションを売却し、巨額ローンの残債返済とビジネスの運転資金に回そうと考えた。だが、住宅バブル崩壊のあおりで、実勢価格はみるみる下がり、思うような値で売れないばかりか、買い手さえまったく現れない。困った夫婦はそこで一計を案じた。離婚による資金捻出である。まず、夫婦の財産だったマンションは、離婚時の財産分割で全権利を子供の面倒もみる元妻側に渡す。離婚理由は何でもよい」 

    窮余の一策として「偽装離婚」の道にたどり着く。 

    (3)「伝統的な家族観が崩れつつある中国の大都市部では離婚は一般的だ。近年、深圳の離婚率は全国でも有数の高さに。一時は結婚した2組の夫婦のうち1組は離婚するとまでいわれた土地柄で、同じ広東省内の大都市、広州よりもかなり高い。離婚申請が偽装かどうか瞬時に見分けるのは難しい。夫婦は一定期間、別居するが、実態はあまり変わらない。しばらく時間を経て、元妻は自分の持ち物である豪華マンションを売りに出す。巨額のローン債務に耐えきれなくなったのが理由だ。ここは真実に近い」 

    夫は、妻にマンションの所有権を与えて偽装離婚する。

     

    (4)「この偽装劇のクライマックスは、ここで元夫がマンションの買い手として突然、現れる場面だ。厳しかった住宅購入規制は徐々に緩和され、元妻から物件を買う元夫は金融機関で住宅ローンを組める。形式が整い、見合う担保さえあればよい。成約数が統計上、増えるのは当局も歓迎だ。購入時には、物件価格の何割かに当たる頭金をそろえる必要があるが、こちらも徐々に減額され、金利も低下傾向。審査が通れば、マンションの名目資産価値に見合う巨額資金が、元夫婦の手元に入るという皮算用だ」 

    元妻は、マンションを売りに出すが、そこへ元夫が住宅ローンを組んで購入する。こうしてまんまと「現金化」に成功するのだ。 

    (5)「この巨額資金は、以前に組んだ元夫婦の巨額ローン債務の返済に充てるほか、ビジネスの運転資金に回す。それでも残れば、外国に持ち出して外貨に交換し、今後、利益を生み出せる海外不動産を購入する選択肢も考える。元夫がローンを返済できず、踏み倒した場合はどうなるのか。中国の金融機関側は、担保であるマンションを差し押さえ、競売に出すことになる。この偽装離婚劇の結末は、元夫婦が持っていた売れない豪華マンションを、金融機関が買い取ったのと同じ構図になる。元夫婦はついに現金化に成功する」 

    元夫がローンを返済できなければ、金融機関側が担保のマンションを差し押える。こうして不良債権となるのだ。

     

    (6)「こんなうまい話が、数件のまれな例ではなく、大々的なブームにまでなるのだろうか。大いに疑問がある。元夫は社会信用スコアが地に落ちてブラックリストに載る。正常な社会生活を送れなくなるからだ。中国のメディア事情に詳しい人物は「バズっている深圳離婚話の大半は極度に誇張されたものか、ウソだ。ネット上のクリック数稼ぎが目的だろう」と指摘する。一方、別のメディア関係者は「既に中国全土で知られた話だ。誇張があっても『根幹部分はおおよそ真実』と受け止められている。深圳で理由不明の離婚が多いのも事実である」と解説する」 

    このネット上を駆け巡る話題には誇張説もあるが、「根幹部分は真実」という見方もある。中国の住宅不況にまつわる哀しいまでの話だ。

     

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