勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2024年08月

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    中国は、不況風が全土を覆っている。中国一のビジネス街上海では、1人当たり500元(約1万円)の高級レストランが、相次いで閉店に追込まれている。香港がすでに輝きを失い、本土の上海も精彩が消えてきた。不動産不況が、企業や市民生活を直撃しており、不安心理が高まる一方だ。

     

    『ブルームバーグ』(8月27日付)は、「小籠包の鼎泰豐、中国本土で14店舗閉鎖へ 節約志向で消費低迷」と題する記事を掲載した。

     

    台湾から世界に展開している点心料理チェーン、鼎泰豐(ディンタイフォン)が中国本土で14店舗を閉鎖する。中国の外食業界では、節約志向を強める消費者を呼び込むため激しい価格競争が繰り広げられている。

     

    (1)「中国子会社の北京恒泰豊餐飲は26日にウィーチャット(微信)のアカウントに掲載した声明文で、中国本土の30余りの鼎泰豐店舗のうち北京、天津、青島、西安、アモイなどの14店舗を閉じると明らかにした。営業許可証が失効し、更新に関して取締役会の見解が一致しなかったため、こうした決定に至ったと説明した」

     

    北京恒泰豊餐飲は、本土の30余りの店舗の14を閉鎖する。約半分という事態だ。中国の消費がいかに悪化しているかを示している。

     

    (2)「中国国内ではファストフードチェーン「KFC」や中国コーヒーチェーン大手「瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー)」などさまざまな外食チェーンが顧客獲得競争を展開している。長引く不動産危機による中国経済の回復の遅れや株価の低迷に加え、キャリアプランの不透明さが消費者心理を悪化させている。レストランアプリの「大衆点評」によると、鼎泰豐の中国本土店舗の一人当たりの平均支出額は約150元(約3000円)。ただ、高級レストランが割引価格でビュッフェスタイルの食事を提供し、ファストフードチェーンが1ドル(約145円)強の価格で顧客の呼び込みを図る環境で、鼎泰豐の平均支出額は消費者のニーズとますます釣り合わなくなっている」

     

    外食チェーンでは、割安の「KFC」や「ラッキンコーヒー」が、割安な大衆価格で顧客を増やしている。一方で、高級レストランへの客足が減っている。

     

    (3)外食業界で、鼎泰豐だけが事業縮小を余儀なくされたのはない。中国メディアの澎湃によると、上海では今年、1人当たりの平均支出額が500元(約1万円)を超える複数の高級レストランが営業を停止した。スターバックスでさえ、より安価な地元の競合店舗に顧客が流れて業績が悪化した後、戦略的提携を模索している。

     

    上海では、1人当たりの平均支出額が500元(約1万円)を超える高級レストランが、複数営業を停止している。こちらは、企業などの利用が減った結果であろう。

     

    中国の消費に異変をもたらしている最大要因は、長引く不動産不況の結果である。この事態に地方政府も深刻な財源不足に陥っている。土地売却益が急減しているからだ。

     

    『ブルームバーグ』(8月27日付)は、「中国財政の脆弱さが浮き彫りに、土地売却収入は記録的な落ち込み」と題する記事を掲載した。

     

    中国の広範な財政支出は縮小し、地方政府の土地売却収入は記録的なペースで落ち込んでいる。財政の脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りとなっており、中国当局に対しては景気刺激策を強化するよう求める圧力がさらに高まる可能性がある。

     

    (4)「多額の負債を抱える地方政府のバランスシート上では、不動産不況による財政への打撃がますます鮮明になっている。ブルームバーグの試算によると、地方政府の土地売却収入は7月に前年比およそ40%減の2500億元(約5兆円)となり、2016年に比較可能なデータが入手できるようになって以来の大幅な落ち込みとなった」

     

    地方政府の土地売却収入は、7月に前年比およそ40%減という大幅な落込みである。

     

    (5)「地方政府の一般公共予算と政府基金勘定予算を合わせた財政収入は、1-7月に15兆900億元となり、前年比5.3%減少。その結果、広範な財政赤字は3兆8000億元(約76兆円)となった」

     

    中国地方政府は、1~7月で約76兆円の赤字を抱える。年額換算で約130兆円の赤字となる。中国は、「国・地方・家計」が全て緊縮状態に置かれているのだ。

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    トヨタ自動車とドイツのBMWが水素を使い発電時に二酸化炭素(CO2)を出さない燃料電池車(FCV)で全面提携する。トヨタが水素タンクなど基幹部品を供給し、BMWが数年内にFCVの量産車を発売する。両社で欧州の水素充塡インフラも整備する。

     

    トヨタ自動車の水素戦略は、(1)量産化、現地化、(2)有力パートナー連携、(3)技術革新の3つの施策に成り立っているとされる。要するに、自社の革新技術をバネにして、世界へFCVを普及させる手堅い戦略である。トヨタは、EV(電気自動車)でも同様の経営戦略である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(8月27日付)は、「トヨタとBMW、燃料電池車で全面提携 部品や水素充塡」と題する記事を掲載した。

     

    次世代エコカーの選択肢として日欧大手がFCVで手を組む。販売が減速する電気自動車(EV)以外の戦略が必要となっている。両社は9月3日にもFCVの全面提携に向けた基本合意書(MOU)を交わし、5日に予定しているBMWのメディア説明会で公表する。  FCVは、水素と酸素の化学反応で作った電気で動く。発電時に水しか出ないため「究極のエコカー」と呼ばれている。エンジンに当たるのはモーターで、電力で駆動する点はEVに近い。

     

    (1)「今回、トヨタはBMWのFCV向けに水素タンクのほか、水素を使って発電する「燃料電池」など水素関連の基幹部品を全面供給する。駆動システムなどEV技術を活用できる領域はBMWが主体となって手がける。トヨタとBMWは2012年6月からFCVで協業関係にあった。ただこれまではトヨタ側からは燃料電池部品のセルを供給するだけで、水素タンクや駆動システムなどはBMWが独自開発していた。トヨタは、世界に先駆けて14年にFCV「ミライ」の一般販売を始めるなど、FCV量産化で世界をリードしている」

     

    トヨタが、ドイツの高級車BMWとFCVで全面提携することは、トヨタのFCV生産コストの引下げに寄与するほか、FCV需要を拡大させるという二つのメリットがある。

     

    (2)「現在、BMWは多目的スポーツ車(SUV)の「X5」をベースに、FCViX5 ハイドロジェン」を研究開発する。2本で容量計6キログラムの水素タンクを搭載。34分でフル充填でき、航続距離は500キロメートルを超える。日本を含む各国で実験走行を展開している。今後、トヨタの水素システムを全面的に取り入れることでコストを抑え、数年内の販売開始を目指す」

     

    BMWは、トヨタとの全面提携によって数年内にFCV発売へ漕ぎつける。トヨタは、2030年以降にFCVの全面展開を意図してきただけに、予定取りの進捗である。

     

    (3)「包括提携では、BMWとトヨタが欧州での水素インフラ整備について協力関係を構築することも盛り込まれる見通しだ。欧州自動車工業会(ACEA)によると、欧州連合(EU)域内のEVなど向けの公共充電ポイントは23年末時点で63万2000カ所を超えた。一方、水素ステーションは欧州全体でも270カ所にとどまる。マークラインズによると、トヨタの「ミライ」の累計販売台数は約2万6000台にとどまっている。販売価格が700万円以上と高額であることが普及の足かせになっている。トヨタとBMWはコストの多くを占める水素関連システムの基幹部品を共通化することで、FCVの価格を抑えたい考えだ」

     

    FCVが、排ガス規制の厳しい欧州で需要を集められることは確実である。しかも、BMWという超一流ブランドでFCVが発売されれば、爆発的人気を得られるであろう。トヨタらしい「迂回戦略」である。

     

    (4)「EVの失速でFCVに追い風が吹いている。急速充電器を使ってもフル充電に数十分かかるEVと比べ、充填時間の短さも長所だ。ホンダは7月、新型FCV「CR-V e:FCEV」を国内と米国で発売した。同社は21年8月にFCV生産から撤退していた。BMWもiX5 ハイドロジェンを発売した後、30年代には複数のFCVをそろえる計画で、EV一辺倒からの脱却を目指す」

     

    EV失速は、数年間は続くとみられる。FCVは、その間に販路拡大のチャンスを生かせる。手堅いトヨタの計算通りの動きであろう。

     

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    米議会が3月、米港湾で使用されている中国製の荷役クレーンについて調査した結果、通常の操業用とはみられない通信機器が見つかった。こうした中国製クレーンが、港湾で得た情報を中国本土へ送信することで、米国の安全保障上のリスクを高めるとの懸念が高まった経緯がある。

     

    米議会関係者や文書によると、遠隔アクセスが可能なセルラーモデムが搭載されているクレーンもあった。議会調査で、モデムが発見されたことはこれまで報道されていなかった。米国内の港湾で利用されている荷役クレーンの8割近くが中国国有メーカー、上海振華重工(ZPMC)の製品だ。国防総省や他の情報当局の関係者は、同社製クレーンが偵察に利用されている可能性があるとして警戒を強めている。この結果、中国製のクレーンを撤去して日本製へ置き換える動きが始まっている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(8月26日付)は、「米クレーン特需、日本に商機 対中安保懸念で3兆円投資」と題する記事を掲載した。

     

    三井E&Sが米国で港湾用クレーンを手掛けるのは1989年以来35年ぶりだ。日本の港湾用クレーン産業に、にわかに注目が集まっている。世界で中国製品のシェアが高まる中、安全保障上の懸念が出ているためだ。米政権は、中国製の追い出しを念頭に、3兆円規模の港湾インフラ投資を決めた。日本企業への投資が増えるなど、勢力図が変わるとの見方もある。

     

    (1)「港湾用クレーン国内最大手、三井E&Sの松村竹実最高財務責任者(CFO)は、「早い段階で実現するのではないか」と見通しを語った。米子会社のパセコがカナダの投資会社と共に、米カリフォルニア州で港湾用クレーンの最終組み立てを検討している。三井E&Sが、米国で港湾用クレーンを手掛けるのは1989年以来35年ぶりだが「既に複数の案件が走っている」(松村CFO)という。

     

    三井E&Sが、35年ぶりの米国港湾用クレーンの最終組み立てを検討している。話は、ここまで煮詰まってきている。

     

    (2)「クレーン事業が突如盛り上がったきっかけは、米政権が2024年2月に発表した、港湾の安全を強化する大統領令だ。インフレ抑制法(IRA)の投資計画などを通じ、5年間で米港湾インフラに200億ドル(約3兆円)以上を投資する。主要な米国商業用港湾で、サイバーセキュリティー対策を求める一方、港湾用クレーンの国内製造能力を信頼できるパートナーとともに構築することなどが盛り込まれた」

     

    今後5年間で、米港湾インフラに200億ドル(約3兆円)以上の置き換え投資が見込まれる。日本企業が全量受注となれば大きな商談である。

     

    (3)「米政権は、中国交通運輸省が開発した「LOGINK」という物流管理システムを警戒している。世界の港湾インフラは中国製品のシェアが高く、貨物の移動や配送の追跡データを中国が収集できる公算は大きい。米国にあるコンテナ積み下ろしに使うクレーンも8割近くを中国製が占める。米国は、機密性の高い物流データが悪用されれば、安全保障上の脅威になるとみている。5月には、港湾用クレーンの関税を従来のゼロから25%に引き上げる措置を発表した。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、「米国が今後、欧州や日本などの同盟国にも中国製からの切り替えを求める可能性がある」と指摘する」

     

    米国は、自国だけでなく同盟国全般へ中国クレーンの撤去を求める可能性があるという。そうなると、膨大な需要が見込める。

     

    (4)「11月の米大統領選を控え、民主党と共和党はいずれも対中強硬路線を継続する見通しだ。19年の中国・華為技術(ファーウェイ)製通信機器の締め出しと同様のことが起これば、日本の機械各社にとっては干天の慈雨となる。三井E&Sは27年3月期の売上高を24年3月期比12.%増の3400億円とする計画を掲げ、港湾用クレーンを含む物流システム事業をけん引役に位置付ける。すでに、米補助金の対象となる米国製部品の調達率55%以上にメドを付けた。住友重機械工業やJFEエンジニアリングなど、クレーン事業を手掛ける各社にも恩恵が及ぶ可能性がある」

     

    三井E&Sのほかに、住友重機械工業やJFEエンジニアリングなどにも特需が舞い込む可能性が出てきた。

     

    (4)「米国内の思惑は、一枚岩でない。港湾業界団体は6月、クレーンの関税引き上げが港湾の競争力自体をそぐとして、措置の撤回を求めた。特需を生かしつつも情報収集を欠かさない冷静な姿勢が、日本勢には求められる。

     

    米国港湾業界団体は6月、クレーンの関税引き上げに反対する動きを見せている。ただ、中国製クレーンにスパイ装置が隠されている事実は、中国製クレーン忌避の動かせぬ理由だ。

       

    中国地方政府は、財源不足を補うべく観劇に登場する「悪代官」さながらの振る舞いに出ている。市民へやたらと罰金を科して徴収しているのだ。変わった罰金では、衛生環境の改善名目で住宅を検査し、「食器を洗っていない」「布団を畳んでいない」などの不適切な状態が確認されれば3元(約600円)〜20元(約4000円)を科すというものだ。権力を笠に着て「やりたい放題」である。こうした罰金が、積もり積もって年間8兆円にもなるというから驚きだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(8月26日付)は、「中国の地方政府、罰金収入8兆円 財政難で依存強まる」東洋経済オンライン

     

    中国の地方政府が交通違反などによる罰金収入を増やしている。2023年の徴収額は8兆円弱と、10年前の2倍超に膨らんだもようだ。不動産不況を背景に収入源が細った地方政府の苦肉の策といえるが、市民の不満がたまれば社会不安を招きかねない。

     

    (1)「中国東北部の遼寧省盤錦市。7月下旬、かつて石油産出で栄えたこの街に足を運ぶと「都市管理法律執行」と記された車両が行き交っていた。駐車違反や露天商の無許可営業などを取り締まる当局の専用車だ。23年の盤錦の罰金収入は13億元(約260億円)だった。税収の13%に相当する金額で、市民1人あたり年2万円以上を徴収した計算になる。「数年前から取り締まりが厳しくなった。運転していると歩行者に道を譲らなかっただけで200元取られる。1日の収入が吹き飛ぶ」。市内でライドシェアの運転手として働く男性は嘆く」

     

    習近平国家主席は、「共同富裕」を持論にしている。だが、市民から罰金名目で強制徴収するのは、習氏の持論と矛盾する。何か、清の時代へ逆戻りの印象である。

     

    (2)「盤錦だけではない。中国メディア「財経」が全国主要247都市の18〜21年の財政状況を分析したところ、29都市の罰金収入が税収の10%以上にのぼった。経済規模が小さく税収に乏しい地方都市で「罰金依存」が目立つ。広西チワン族自治区梧州市が29.8%、同・賀州市は23.%だった。国家統計局によると、地方政府の罰金収入は13年に1613億元だったが、22年は3687億元にのぼった。23年の罰金収入はまだ公表されていないが、18年以降で非税金収入のうち罰金が占めた割合をもとに計算すると、3800億元規模になった公算が大きい」

     

    29都市の罰金収入は、税収の10%以上にものぼるという。それだけ、市民の反感を買っているのだ。

     

    (3)「23年秋には、四川省涼山イ族自治州の地方政府の新制度に注目が集まった。衛生環境の改善名目で住宅を検査し、「食器を洗っていない」「布団を畳んでいない」などの不適切な状態が確認されれば3〜20元を科すというものだ。河南省洛陽市でも23年、農薬の基準値を超えた野菜を売って21元の利益を得た男性が、罰金11万元を言い渡された」

     

    家庭で、「食器を洗っていない」「布団を畳んでいない」などが確認されれば、3〜20元を科すという。かつての「一人っ子」時代には、「二人目妊娠」が判明すると、強制堕胎を迫られた。こういうことを平気で行う政府である。罰金攻勢など簡単なことだろう。

     

    (4)「地方政府が、なりふり構わず徴収を強化する背景には、深刻な財政難がある。中国は土地が国有制で、地方政府は国有地の使用権を不動産企業に販売して財源を確保してきた。ただ不動産不況で開発が停滞し、23年の売却収入はピーク時の21年から3割以上減った。税収も景気低迷から大きな伸びは見込めず、罰金収入に頼る構図ができた。生活の様々な場面で罰金を取られることが増えれば、市民らの反感はおのずと高まる。22年秋には新型コロナウイルスを厳格に封じ込める「ゼロコロナ政策」で窮屈な生活を強いられた市民らが抗議の声をあげた。不満の高まりは習近平(シー・ジンピン)指導部が重要視する社会の安定を揺るがしかねない」

     

    地方政府は、住宅不況で土地売却益が3割以上も減っている。この穴埋めが、罰金行政である。市民を搾取対象としかみていない証拠だ。

     

    (5)「危機感を抱いた中央政府は、度を過ぎた罰金徴収を控えるように通達を出し続けている。財政省は今年3月に発表した24年の財政計画で「みだりに罰金を科したり、(目標金額を)割り当てたりするのを禁じる」と強調した。7月中旬に開かれた共産党の重要会議、第20期中央委員会台3回全体会議(3中全会)は、地方政府の収入を増やすためにぜいたく品や嗜好品に課す消費税を地方政府に配分する方針を決めた。ただ地方政府の財政難を解決する抜本策としては力不足との見方が多い。「罰金依存」脱却への道のりは険しい」

     

    中央政府は、地方政府の罰金行政を止める努力をしているが、財源不足という現実はいかんともし難いのだ。中央政府は、不動産税や相続税という普遍的課税を忌避して、こういう便宜的手段を容認するのだろう。

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    今年の全日本高校野球選手権大会の「甲子園」は、韓国系の京都国際高校の優勝となった。韓国は、大統領まで大喜びでさすがの「反日」も影も薄くなっている。だが、最大野党「共に民主党」は、反日攻勢をかけ続けている。これによって与党と大統領を追い詰める戦略である。このように、与野党対立の原点は、日本問題である。野党の言い分では、大統領と与党が親日になり過ぎるとしている。日韓友好は、あり得ぬという立場である。

     

    『朝鮮日報』(8月26日付)は、「反日の眼鏡をかければ老朽化した施設の補修まで親日に見えるのか」と題する社説を掲載した。

     

    韓国野党・共に民主党は「尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は体系的に独島を消そうとしている」として25日から真相解明に向けた独自の調査を開始するという。コロナで入院中の李在明(イ・ジェミョン)代表が、病床から指示したようだ。ソウル地下鉄の安国駅、蚕室駅の独島オブジェが補修のため一時撤去され、また戦争記念館でも同じく独島(竹島)オブジェが補修目的で撤去されたのだが、これを韓国政府が組織的に撤去させたか確認するというのだ。

     

    (1)「ソウル交通公社は先日、地下鉄安国駅と蚕室駅の独島オブジェ撤去について「地下鉄利用客の動線に支障になり妨害にもなるので撤去した」と明らかにした。これらが設置されたのは15年も前だが、この問題で複数の野党は「独島を消した」として韓国政府を強く批判したため、ソウル交通公社は近く新たな独島オブジェを設置すると発表した。設置から12年が過ぎた竜山戦争記念館の独島オブジェ撤去も問題視されたため、戦争記念館は「老朽化した他の展示物と共に収蔵庫に保管中であり、補修後に再設置する」と説明した」

     

    韓国最大野党が、日本を巡る対立を激化させている背景は、李在明代表の裁判結果を無罪へ持ち込もうという戦術とみられる。裁判所へ圧力をかけることで、李氏の無罪を勝ち取ろうという目的以外に理由は考えられない。韓国司法は、民意に影響される大きな特色がある。世論に流されるのだ。「共に民主党」は、世論を反日へリードして李氏を無罪へ誘導しようとしている。

     

    (2)「今回、オブジェを撤去したのは、ソウル市と韓国国防部(省に相当)戦争記念事業会だが、野党などは「韓国大統領室の指示だ」として疑惑を指摘しているのだ。独島は、韓国が実効支配を続けている。日本と対立する必要のない今の状態を、今後長期にわたり維持するだけでよい。そのため地下鉄駅のオブジェで韓国の立場が強くなったとか弱くなったなどと言い出すこと自体が幼稚極まりない。逆に野党が騒ぎたて、これに勢いを得て連日独島問題を表面化し、韓国政府が説明を余儀なくされる事態となれば、これこそ独島を紛争地域化し国際司法裁判所に持ち込もうとする日本の思い通りになるだろう。このような事実を共に民主党は理解しているのだろうか」

     

    「共に民主党」は、韓国政府が独島を放棄すると主張している。こういう極論を持ち出せば、世論が反日へ傾くと計算しているのであろう。韓国政府は、非公開だが独島防衛演習をしている。こういう事態のなかで極論を唱えている。韓国世論が、どのように反応するかだ。中国若者世代は、半分以上が「親日」という世論調査結果が出ている。

     

    韓国の東北アジア歴史財団が、韓国リサーチに依頼し、7月に行った全国の満18~39歳の男女1000人を対象に調査した世論調査が発表された。『朝鮮日報』(8月15日付)が報じた。

     

    25~29歳の男性の74.8%が、日本に好感を持っている。また、18~24歳の男性は71.1%が日本に好感を持っていることも分かった。18~39歳の男女の57.3%が日本に対して好感を持っている。中国に対して好感を持っている割合は、10.1%にとどまった。日本に対する好感度は、中国に対する好感度の5倍以上である。こういう中で、左派の反日姿勢は、上滑りしている公算が強い。

     

    (3)「反日の色眼鏡でみれば、老朽化した施設の補修も親日に見えるようだ。共に民主党執行部からは正式な会議で「尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は、独島を日本に上納するだろう」などの発言まで飛び出し、その直後にネットでは「国立中央図書館の古文献室にあった独島オブジェが撤去された」などフェイクニュースまで広がった。古文献室には最初から独島オブジェはない」

     

    「共に民主党」は反日を唱えても、若者世代がこれに反応しない状況になっている事実を認めることが必要であろう。

     

    (4)「共に民主党は、1年前に福島汚染水デモを広めて国民に不安を抱かせ、巨額の国家的損失をもたらしたが、今もそのことを謝罪していない。今回も老朽化したオブジェの補修をあえて問題とし、独島を口実に韓国政府に対する親日批判を年中行事にしたいのだろう」

     

    「共に民主党」には、感情論でなく事実に基づいた対日発言を求めたい。将来、政権へ復帰したときどのように取繕うつもりだろうか。そちらの方が懸念されるのだ。

     

     

     

     

     

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