中国は、不況風が全土を覆っている。中国一のビジネス街上海では、1人当たり500元(約1万円)の高級レストランが、相次いで閉店に追込まれている。香港がすでに輝きを失い、本土の上海も精彩が消えてきた。不動産不況が、企業や市民生活を直撃しており、不安心理が高まる一方だ。
『ブルームバーグ』(8月27日付)は、「小籠包の鼎泰豐、中国本土で14店舗閉鎖へ 節約志向で消費低迷」と題する記事を掲載した。
台湾から世界に展開している点心料理チェーン、鼎泰豐(ディンタイフォン)が中国本土で14店舗を閉鎖する。中国の外食業界では、節約志向を強める消費者を呼び込むため激しい価格競争が繰り広げられている。
(1)「中国子会社の北京恒泰豊餐飲は26日にウィーチャット(微信)のアカウントに掲載した声明文で、中国本土の30余りの鼎泰豐店舗のうち北京、天津、青島、西安、アモイなどの14店舗を閉じると明らかにした。営業許可証が失効し、更新に関して取締役会の見解が一致しなかったため、こうした決定に至ったと説明した」
北京恒泰豊餐飲は、本土の30余りの店舗の14を閉鎖する。約半分という事態だ。中国の消費がいかに悪化しているかを示している。
(2)「中国国内ではファストフードチェーン「KFC」や中国コーヒーチェーン大手「瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー)」などさまざまな外食チェーンが顧客獲得競争を展開している。長引く不動産危機による中国経済の回復の遅れや株価の低迷に加え、キャリアプランの不透明さが消費者心理を悪化させている。レストランアプリの「大衆点評」によると、鼎泰豐の中国本土店舗の一人当たりの平均支出額は約150元(約3000円)。ただ、高級レストランが割引価格でビュッフェスタイルの食事を提供し、ファストフードチェーンが1ドル(約145円)強の価格で顧客の呼び込みを図る環境で、鼎泰豐の平均支出額は消費者のニーズとますます釣り合わなくなっている」
外食チェーンでは、割安の「KFC」や「ラッキンコーヒー」が、割安な大衆価格で顧客を増やしている。一方で、高級レストランへの客足が減っている。
(3)外食業界で、鼎泰豐だけが事業縮小を余儀なくされたのはない。中国メディアの澎湃によると、上海では今年、1人当たりの平均支出額が500元(約1万円)を超える複数の高級レストランが営業を停止した。スターバックスでさえ、より安価な地元の競合店舗に顧客が流れて業績が悪化した後、戦略的提携を模索している。
上海では、1人当たりの平均支出額が500元(約1万円)を超える高級レストランが、複数営業を停止している。こちらは、企業などの利用が減った結果であろう。
中国の消費に異変をもたらしている最大要因は、長引く不動産不況の結果である。この事態に地方政府も深刻な財源不足に陥っている。土地売却益が急減しているからだ。
『ブルームバーグ』(8月27日付)は、「中国財政の脆弱さが浮き彫りに、土地売却収入は記録的な落ち込み」と題する記事を掲載した。
中国の広範な財政支出は縮小し、地方政府の土地売却収入は記録的なペースで落ち込んでいる。財政の脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りとなっており、中国当局に対しては景気刺激策を強化するよう求める圧力がさらに高まる可能性がある。
(4)「多額の負債を抱える地方政府のバランスシート上では、不動産不況による財政への打撃がますます鮮明になっている。ブルームバーグの試算によると、地方政府の土地売却収入は7月に前年比およそ40%減の2500億元(約5兆円)となり、2016年に比較可能なデータが入手できるようになって以来の大幅な落ち込みとなった」
地方政府の土地売却収入は、7月に前年比およそ40%減という大幅な落込みである。
(5)「地方政府の一般公共予算と政府基金勘定予算を合わせた財政収入は、1-7月に15兆900億元となり、前年比5.3%減少。その結果、広範な財政赤字は3兆8000億元(約76兆円)となった」
中国地方政府は、1~7月で約76兆円の赤字を抱える。年額換算で約130兆円の赤字となる。中国は、「国・地方・家計」が全て緊縮状態に置かれているのだ。