東京電力福島第1原発の処理水海洋放出について、中国政府は開始から1年となる今も「核汚染水」と呼んで批判を続けている。国民の方は、こういう政府の頑なな姿勢を忘れて、日系回転寿司で舌鼓を打っている。汚染騒ぎよりも、景気の行く末の方がはるかに重大関心となっている。
2023年8月24日の放出開始当時、中国では「日本の『核汚染水』は240日後に中国沿岸に到達する」との情報が拡散した。名門・清華大(北京市)の研究グループによる予測として、メディアがこぞって報じたのだ。ところが、それから1年近く過ぎても、沿岸で処理水による汚染は確認されてなどいない。むしろ、中国当局は自国の海洋環境の安全性を強調し、多数の中国漁船が日本周辺で操業を続けているのだ。
『毎日新聞』(8月23日付)は、「処理水放出1年、中国で回転ずし盛況 関心は『汚染』より『景気』」と題する記事を掲載した。
東京電力福島第1原発の処理水海洋放出から24日で1年。「核汚染水」との批判が巻き起こった中国の世論は今、この問題をどうみているのか。放出直後、中国政府は日本産水産物の全面禁輸に踏み切り、SNS(ネット交流サービス)を中心に反日感情が高まった。しかし、日本企業が多数進出する東北部の港湾都市、遼寧省大連市を久しぶりに訪ねると、市民にとっての気がかりはもはや処理水問題ではなくなっていた。
(1)「8月上旬、夏休みシーズンを迎えた大連市の海辺は多数の観光客でにぎわっていた。取れたての海の幸を売りにする屋台にとってはかき入れ時である。香ばしく焼けたエビやイカをほおばる人々は、処理水放出による『海鮮離れ』とは無縁のようだった。3日間の大連滞在中、出会った住民に「水産物を食べるのに心配はないか」と質問してみた。「最近は報道も減り、気にしなくなった」「農産物だって農薬を使っている。考えすぎると何も口にできない」「日本で暮らす友人も海鮮を食べているそうだ。私も問題はないと思う」との答えが返ってきた」
大連の市民は今や、処理水放出に関心を持たなくなっている。問題が、発生しないからだ。
(2)「前回、記者がこの地を訪ねたのは、放出開始から約1カ月にあたる23年10月の大型連休中だった。当時、言葉を交わした大連市民は、こちらが日本人と分かると決まって海や食の安全への懸念を口にした。それが今回は、処理水問題を自ら話題にする人に出会うことはなかった。もちろん、限られた取材範囲で市民の不安が消えたと結論づけることはできない。市場や日本料理店を回ると「放出後に客足が減った」との声も聞かれた。それでも1年前と比べれば、人々の関心は確実に薄れているように思えた。処理水問題に代わり、今回よく耳にしたのは「給料が減って副業を増やした」「海外に働きに出ようと考えている」という景気停滞に絡む身の上話である」
市民の関心は、処理水問題よりも不景気の話しだ。給料が減らされたとか海外へ出稼ぎに行くなど、切実な経済問題ばかりである。
(3)「市場で取材した水産物業者は、「海鮮が売れないのは(処理水ではなく)庶民にお金がないからだ。ホテルからの注文がガクッと減った」と嘆いていた。日本料理店の経営者たちも「1年前はともかく、今は消費の低迷が最大の悩みだ」と異口同音に話した。「これまで中国で経験したことがない不況だ。みんな処理水の心配どころではないでしょう」。1990年代から大連市に工場を構える食品会社「松井味噌(みそ)」の松井健一社長(60)の実感だ。同社はさまざまな調味料・食材を製造し、中国の日本食業界を支える存在だ。「とにかく誰も金を使おうとしない。特に高級路線の業態が苦しく、壊滅状態と言っても大げさではない」と、松井さんは飲食業界の実情を語った」
これまで、中国で経験したことがない不況に見舞われていると嘆いている。特に高級路線の業態が苦しんでいる。消費節約の対象になっているからだ。
(4)「ここ1年で深刻さを増す消費の冷え込みは、処理水問題をかすませるほど社会環境に激変をもたらしているようだ。就職難、減給、リストラなどの将来不安から人々の間で節約志向が急速に高まり、飲食業でも価格競争が過熱している。大連市でみそラーメンなどの外食事業も手がける松井さんは、「不況だからこその商機もある。低価格帯の需要は大きい。不動産不況による賃料下落は事業展開にプラス材料になり得る」と指摘した」
家賃下落で、低価格帯の需要を掘り起こせば、新しい事業展開も可能という。
(5)「実際、処理水問題で逆風を受けたはずの日系回転ずしチェーンは、価格と質のバランスを強みに、中国で人気を集め、各社が出店ペースを加速させている。北京市東部の大型ショッピングモールでは、「はま寿司」の北京2号店が13日にオープンした。当日の午前11時半に足を運ぶと、入店まで約1時間かかる盛況ぶりで、親子連れらがマグロやサーモンの握りをほおばっていた」
日系の回転ずしが好調である。「汚染水」騒ぎと無関係になっている。
(6)「別のモールには21日に「スシロー」北京1号店が開店。19日に開かれたプレイベントには、中国メディアの記者やSNS上で影響力を持つインフルエンサーが駆けつけた。「世界の海に汚染が及ぶ」と主張する中国政府の膝元である首都・北京で、日系回転ずしの開店ラッシュが起きる現実が、処理水問題に対する世論の移ろいを象徴しているように見える」
中国指導部は、いつまで自作自演の「汚染水」騒ぎをまき散らす積もりだろうか。収拾策に困っているはずだ。





