勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2024年08月

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    習近平氏は、「新しい質の生産」と称して、EV(電気自動車)・電池・ソーラーパネルの三種品目について、中国産業の先兵という位置づけをしている。それだけに、地方政府が補助金をたっぷりと付けて支援している。すでに過剰生産へ落込んでいるが、従来と異なりすぐ生産抑制が効かない事態となっている。国有企業と異なり民間企業が主体であるからだと言うのだが。 

    『ブルームバーグ』(8月22日付)は、「中国の過剰生産能力、習氏の統制も力及ばずと題する記事を掲載した。 

    中国は、世界が必要とする以上のものを生産していると多くの人々が懸念している。電気自動車(EV)やソーラーパネルなどの価格下落が新たな貿易戦争の火種となっている。中国指導部でさえも危惧している。中国共産党最高幹部が先月末に開いた会議では、企業間の「悪質な競争」を抑制する方針が示された。 

    (1)「ここ数カ月、産業界の過剰生産能力を巡る状況が一段とひどくなっている。中国の工場が生産できるリチウム電池やソーラーモジュール、鉄鋼の全てを吸収できるだけの世界需要はない。しかも、これは企業利益を犠牲にしている。ゴールドマン・サックス・グループによると、ソーラーやEV、鉄鋼、建設機械の産業供給で半分余りが利益を上げておらず、状況は前年から急激に悪化。消費財を生産している企業にも恩恵はない 

    ソーラーパネル、EV、鉄鋼、建設機械の半分が利益を上げていない。生産者物価指数(PPI)が、2022年終盤から前年割れのマイナス状況が続いている理由だ。

     

    (2)「以前にも似たようなことがあった。中国は2012年から16年にかけ、同じ問題によって引き起こされた長期の生産者デフレを経験した。国際通貨基金(IMF)によれば、経済の減速に伴い、鉄鋼業と石炭産業の稼働率は10年の79%と90%から、15年には70%と65%に低下した。当時も過剰生産能力は国際問題となった。16年の中国に対する反ダンピング・反補助金調査の約半分は鉄鋼関連だった」 

    過去は、鉄鋼業と石炭産業の過剰生産問題であった。 

    (3)「共産党の習近平党書記(国家主席)がこの時打ち出した対策は、生産抑制を目的とした供給サイドの改革で、政府は15年から工場を閉鎖し、鉄鋼・石炭労働者への退職手当として1000億元(約2兆円)を投入した。これは成功だった。17年までにデフレは去り、中国アルミニュームなど一部の大手国有企業は黒字に転換した。そのため、一部の業界関係者が政府に再び供給サイドの改革に取り組むよう促しているのも当然のことだろう。しかし、今回はそれがうまくいかないと考えられる理由がある」 

    過去の過剰生産は、政府の指令によって止まりやすかった。今回は、過去のようにスムーズに行かないのだ。

     

    (4)「過剰生産能力が最も深刻なセクターでは、政府の影響力が弱い。10年前、鉄鋼と石炭、そしてそれほどではないがアルミが頭痛の種だったとすれば、今回の国際的な焦点はリチウム電池とソーラー、EVだ。残念ながら、生産者の約半数が国有企業である鉄鋼とは異なり、これらのニューエコノミー分野は民間企業が大半を占めている。習総書記が昔のような計画経済に戻る覚悟がない限り、政府が企業経営者に指図することはできない」 

    過去の過剰生産は、国有企業間で行われたから、過剰生産ストップは比較的容易にできた。今回は、民間企業の過剰生産競争で政府の介入が効かない。 

    (5)「その上、過剰生産能力を利点と考える業界のリーダーもいるようだ。生産能力の弱い企業は早めに撤退せざるを得なくなり、生き残った企業には明るい未来とより大きな利益が残るためだ。例えば、リチウム電池だ。寧徳時代新能源科技(CATL)は最大手で、同業他社とは対照的に、バッテリー価格の下落にもかかわらず、利益率は上昇傾向にある。規模と優れたコスト管理が役立っている」 

    残存者利益を目指して、最後まで競争を続けて利益総取りを狙っている。

     

    (6)「EV生産では、比亜迪(BYD」中国最大手だ。値下げが販売に弾みをつけたという見方もできる。4-6月(第2四半期)の販売台数は42万6000台で、米テスラに迫る勢いだ。競合勢が供給過剰に苦言を呈した6月前半、王伝福会長は企業が受け入れなければならない「自然のルールが競争だ」と述べた」 

    EVでは、BYDがライバルの息の根を止めるまで競争を止めないだろう。 

    (7)「今回、需要喚起はかなり難しい。需要の多くは海外にある。ゴールドマンによると、昨年の中国生産に占めた輸出の割合は、バッテリーが37%、ソーラーが42%、EVが19%だった。中国政府は自国のメーカーを支援するため、国内でのEV普及を加速させるよう補助金を増やすしかないだろう。しかし、残念ながら、中国と欧米との地政学的緊張の悪化によって、国内市場で稼いだ利益も簡単に損なわれる恐れもある」 

    企業は、輸出を目指してダンピング競争するから、過剰生産競争を止められないという。 

    (8)「政策当局は産業界の供給過剰と、それが企業利益や経済全体に及ぼす影響を明らかに懸念している。にもかかわらず、具体的な対策を打ち出していないのはこうした背景があるようだ。そのため、中国の過剰生産能力問題は、産業界のリーダーたちでさえ「もうやめよう」と言い出すまで悪化し続けるしかない。それは数年先のことかもしれない」 

    中国は、資本主義と共産主義の混合体という指摘がある。中央政府が経済計画を立て(共産主義)、地方政府が企業へ補助金を出して市場競争(資本主義)という見立てである。この結果、際限なく過剰生産が続くとしている。

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    韓国左派は強硬な反日的集まりである。昨年今頃、福島処理水放出に反対して、放射能汚染水が日本近海に止まらず、韓国沿岸にも押し寄せるとデマをばら撒いた。これに踊らされた韓国市民は、塩の買い付けうぃ急ぎ韓国産魚類まで買わないという事態に陥った。あれから1年経った現在、韓国市民はこのデマ騒ぎをすっかり忘れ、「日本の魚は旨い」と舌鼓を打っているほどだ。当の左派は、自らのデマばら撒きに沈黙しており、新たな「反日騒ぎ」を起こすべく虎視眈々としている。 

    『朝鮮日報』(8月22日付)は、「『日本産のマダイもおいしい』、韓国で1年も続かなかった汚染水デマ 汚染処理水放出から1年」と題する記事を掲載した。 

    日本が福島原発放射能処理水の海洋放出を開始してから今月24日で1年になる。韓国政界では海洋放出をめぐって昨年夏、「核廃水」「セシウムのクロソイ」といった刺激的なスローガンで反日感情をあおった。当時、韓国最大規模の水産市場であるソウル市内の鷺梁津水産市場をはじめ、全国各地の水産市場で客足が途絶えた。商人たちは閑散とした店の番をしながら「私たちが何をしたと言うんだ」とため息をついていた。

     

    (1)「本紙記者たちが今月19日午後に訪れた鷺梁津水産市場は、「放射能デマ」など完全に忘れ去っているような雰囲気だった。シマアジ・イシダイ・マハタ・イサキ・マダイなどが入った生け簀にはどれも「日本」という原産地表記がはっきり書かれていたが、気にする人は誰もいなかった。市場の中央にある電光掲示板には16日、韓国水産業共同組合が実施した放射能検査で日本産マダイやイサキなどが「ヨウ素」「セシウム」などの項目ですべて「適合」と判定されていると書かれていた。「韓国では水産物の放射能検査をする時、国際標準および先進国に比べて10倍以上厳しい基準である1キログラム当り100ベクレルを適用している」という動画も流されていた。同組合は昨年の海洋放出開始以降、毎日(週末を除く)日本産水産物の放射能検査を行っている」 

    「人の噂も七十五日」と言うけれど、韓国でも悪質なデマが人々の頭から消え去っている。食にまつわるデマは深刻なはずだが、科学的に無害が立証されているだけに、韓国市民は納得したのだろう。

     

    (2)「買い物客たちは、「韓国産より日本産の方がおいしい魚種がある」「デマなどに気にしないで、おいしい日本産の魚を買って食べている」と語った。月に1回、鷺梁津水産市場で刺身を買っているというシンさん(60)は「マダイは韓国産より日本産のほうがはるかに食感がいいし、日本産のシマアジは絶品だ」と言った。シンさんは1年前の韓国野党による「放射能魚」などの主張について、「この世界で国民にそのような魚を輸入して食べさせる国や政府なんて、どこにあるだろうか」と言った。韓国政府はこの1年間で日本の水産物を対象に放射能検査を約4万4000回実施したが、基準値に近づいた結果が出たケースは1件もなかった」 

    中国の漁船団は、三陸沖の公海で操業している。中国は、今でも日本産海産物の輸入を禁止しているが、自国漁船団は堂々と福島処理水放出のど真ん中で操業しているのだ。「二枚舌」と言われても反論できまい。この点、韓国の方が柔軟になっている。 

    (3)「別の買い物客のイさん(54)は「韓国産のニベ・ホヤ・アワビなどを買って、家で食べるつもりだ」と言った。そして、「海流を考えると、韓国は福島の汚染水が最も遅く到達する場所だそうだが、デマは話にならない。どうして今ここに大勢の人々が集まってきているというんだ」と話した。その上で、「おととい大阪に行ってきたが、韓国人団体観光客は原産地表記もない魚をよく食べていた」とも言った。昨年の海洋放出時、世界の原子力学界関係者たちは「ほとんどの放射能核種が多核種除去設備(ALPS)を通じてまず『ろ過』され、この過程でも除去できないトリチウム(三重水素)は海水で希釈して世界保健機関(WHO)の基準値(1リットル当たり1万ベクレル)以下に下げる」として、問題にならないと述べた」

     

    韓国左派は、IAEA(国際原子力機関)による福島処理水放出について「無害」であることを証明しても絶対に受入れなかった。政治的動機で「反日」を行う手段に利用していたのだ。韓国左派と同一線上にある。 

    (4)「鷺梁津水産市場の商人たちは「放射能の心配をする消費者はもうほとんどいない。むしろ、おいしいから日本産水産物のほうが韓国産より人気が高い」と語った。同市場で「シンナムド水産」を経営しているキム・スンヨルさん(50)は「日本産のマダイはエビをエサにしているので食感が絶品。韓国産より高いのに買いに来る人が多い」「日本産のシマアジも(韓国の)若者の間では『韓国産のブリと味が同じだ』と口コミが広がっていて人気がある」と話す。同市場の商人会の会長であり、「タンクッ村」という店の経営者でもあるチャ・ドクホさん(54)も「原産地が『日本産』と書いてあっても、汚染水や放射能について聞いてくる客はいない。マダイとシマアジは全部日本産だが、うちの店の売上トップ3に入る」と言った」 

    鷺梁津水産市場で商人会の会長を務める人の店では、売上トップ3が全て日本産という。日本の魚は旨いのだろう。

     

    (5)「韓国海洋水産開発院の統計によると、今年上半期の日本産水産物の輸入量は1万8106トンだとのことだ。これは福島原発の放射能処理水海洋放出直前の昨年上半期(1万5994トン)に比べて13.2%増えた数値で、上半期基準で2017年(1万8399トン)以来の最高値だ」 

    今年上半期の日本産水産物の輸入量は、前年同期比13.2%増である。デマ騒ぎの起こる前よりも輸入量が伸びている。個別魚類でみると次のような結果だ。ブリ2.4倍、貝類2.0倍、マイワシ2.9倍と激増している。

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    賃上げしない企業アウトへ

    米国で日本企業が投資首位

    企業に「パラノイア」健在

    GDPで健康体復活を証明

     

    岸田政権は、9月末に首相辞任で幕を閉じる。その前に、「脱デフレ宣言」が行われるのか。これは、次期政権の経済政策を拘束することになるので、脱デフレ宣言は棚上げされたままになるであろう。

     

    経済活動はすでに、脱デフレ状態にある。日銀が、3月にマイナス金利を撤廃し、7月末には0.25%の利上げ行ったからだ。こうなると、政府の「脱デフレ宣言」がされない現状は、何とも奇妙な状態となる。政府は、なぜ脱デフレ宣言を渋っているのか。それは、政治的な意味合いからだ。

     

    脱デフレ宣言の条件は、次の4つとみられる。

    1)経済指標の見極め

    2)賃金上昇の遅れ解決

    3)企業の価格転嫁拡大

    4)国民の共感と理解を得られる

     

    新藤義孝経済再生担当相は、4月の時点で政府がデフレ脱却を宣言する際には、国民の共感が得られるような日本経済の姿を同時に示す必要があるとの認識を示している。具体的には、実質賃金上昇率がプラスになって安定化する見通しがつくことであろう。この状況が、7月の実質賃金がプラスになって実現した。政治的な「脱デフレ宣言」まで至近距離にあることは確かだ。

     

    賃上げしない企業アウトへ

    脱デフレ条件では、賃金上昇率の引上げが重視され、それには企業の価格転嫁拡大が不可欠とされてきた。今春闘では、労働力不足という決定的な要因によって、5%賃上げが実現した。労働力の供給状況からみて今後も、5%賃上げが不可欠な労働環境になっている。これを満たせなければ、企業の継続性が危ぶまれる事態になってきた。つまり、倒産リスクがつきまとう時代に変化しているのだ。ただし、労働力不足下であり労働者に企業倒産のしわ寄せは行きにくい。転職によって、新たな職場が得られるからだ。

     

    脱デフレ条件4項目の中で、1)の経済指標の見極めは、経済政策の要である。政府は、消費者物価指数、GDPデフレーター、需給ギャップなどを点検しなければならない。だが日銀は、マイナス金利撤廃や今回の利上げで経済指標の見極めを慎重に行っている。それは、日銀が四半期毎に発表する「展望リポート」で詳述されているのだ。結局、日銀による一連の金利操作が、日本経済がデフレ状態を脱したと判断した上での決定である。

     

    日銀が、ここまで独自の判断で行動できるのは、日銀法改正(1998年実施)によって政府の桎梏を離れた結果だ。それ以前は、政策変更のたびに大蔵省(財務省)へお伺いを出すほかなかった。戦時中の法改正によるものだ。日銀は、「大蔵省日本橋出張所」とまで揶揄されていた。平成不動産バブルは、大蔵省が日銀の利上げを阻止した結果でもある。これが、日銀法改正へ繋がった理由である。

     

    日銀は、今後の消費者物価状況について、どのような見方をしているのか。「展望リポート」(7月)では、次のように指摘している。

     

    2024年度 2%台半ば

    2025年度 概ね2%程度

    2026年度 概ね2%程度

    消費者物価の基調的な上昇率は、需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり、中長期的な予想物価上昇率の上昇に伴い徐々に高まっていくと予想される、としている。日銀は、2年後まで明快に消費者物価上昇率を予測している。

     

    日銀が、ここまで物価状況を見通しているのは、仮にこの路線から外れた上昇が起これば、金利操作するという宣言でもあるのだ。単なる「他人任せ」での物価見通しでないことに留意すべきである。とりわけ、円投機筋には重大な警告となろう。

     

    円キャリートレードでは、金利が安定していることが絶対条件とされている。その点で、これまでの日本は「ゼロ金利」「マイナス金利」を続けてきたので、円投機筋にはまたとないチャンスであった。あたかも「ハゲタカ」のように円投機に走ってきた。だが、日銀は金利操作の自由を得た以上、これまでのように円投機筋へ「好き勝手」なことをさせないであろう。異常円安は、日本のGDPを世界4位へ引下げる大きな要因になった。こういう事態は、二度とあってはならないのである。

     

    米国で日本企業が投資首位

    日本は、「ゼロ金利」「マイナス金利」に象徴されるように、金利のない世界であった。金利のない世界は、無風状態を意味する。ビジネスチャンスが生まれないのだ。こうして企業活動は、国内よりも海外へ向っていった。例えば、米国での対内直接投資では、日本企業がトップになっている。日本国内で行うべき投資が、米国で行われていた。その実例を見ておきたい。

     

    米商務省によれば、自動車を筆頭に日本企業の対米直接投資残高(23年)は7832億ドルと19年から世界一が続く。カナダ・ドイツ・英国・フランスを抜いていたのだ。これは、日本企業が、活躍できる舞台さえ整えば、国を問わずいかようにも投資できるという例である。(つづく)

     

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    中国は、インフラ投資による経済成長の一環として高速鉄度建設に邁進している。国家鉄路局によると、中国国内で営業する鉄道路線は23年に15.9万キロと、過去5年で2割も増えている。このうち高速鉄道は同4.5万キロで、18年より1.6万キロ延びた。毎年のように、日本の新幹線の総営業距離に相当する路線を新規開設してきた計算だ。

     

    これだけ急ピッチな建設であるから、最初から採算は度外視である。この結果、23年12月期業績は営業総収入が1兆2000億元に対し、純利益は33億元で純利益率は0.28%に過ぎない。負債総額は、6兆1282億元(約125兆円)だ。年間純利益で返済すると1857年もかかる計算。事実上、利益での返済は不可能だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(8月21日付)は、「中国高速鉄道、苦肉の値上げ策 負債120兆円膨張に焦り」と題する記事を掲載した。

     

    中国国有の鉄道会社、中国国家鉄路集団が運賃改革を急いでいる。高速鉄道の主要路線で実質値上げに踏み切ったほか、高価格帯の座席グレードも新たに設けた。これまで路線網の拡大によって売り上げを伸ばしてきたが、そのツケで膨らんだ負債は120兆円を超す。既存路線での稼ぐ力の強化が求められている。

     

    (1)「中国鉄路は今夏、「中国版新幹線」とされる高速鉄道の主要4路線で料金体系を刷新した。一見わかりにくい新料金は、標準運賃をまず約2割上げたうえで、運行する列車ごとに異なる割引率を設定するというものだ。こうした変動制の料金体系は「ダイナミックプライシング」と呼ばれ、航空やホテル業界などで普及してきた。全体をみれば企業の収益力は向上するという施策だ。日本経済新聞が、8月19〜25日の武漢広州間の実際の運賃を調べると、座席の種類ごとにみた料金設定のうち、5割超が改定前と比べて値上がりしていた。料金がほぼ変わらない座席も4割強あったが、値下がりは5%のみだった」

     

    中国高速鉄度は、変動制の料金体系を採用して増収策に出ている。5割超が、値上がりしているという。

     

    (2)「中国は景気低迷で節約志向が強まっている。そんな状況下でも中国鉄路が料金の実質的な引き上げや高価格路線を打ち出す背景には、同社が抱える巨額負債の存在がある。2023年末時点の負債総額は6兆1282億元(約125兆円)で、経営再建中の不動産大手、中国恒大集団の2倍を大きく上回る。23年12月期の業績は営業総収入が1兆2000億元に対し、純利益は33億元にとどまった。新型コロナウイルスの影響で利用者数が落ち込んだ20〜22年は数百億元の最終赤字を計上するなど経営は厳しく、負債は増加の一途をたどっている」

     

    2023年末時点の負債総額は、約125兆円である。日本の旧国鉄の累積赤字は民営化直前の1987年に31.2兆円であった。中国高速鉄道の累積赤字は、2022年末で122兆円である。旧国鉄赤字の3.9倍にも達している。この事実からみても、前途は多難である。

     

    (3)「最大の問題は巨額投資により営業路線を拡大しても、収益力の改善にはつながっていないことだ。路線拡大を優先し、ずさんな計画による整備も目立っている。中国東北部の遼寧省丹東市。街の主要駅である丹東駅から南西20キロにあるもう一つの高速鉄道駅「丹東西駅」を訪れると、駅舎は静まりかえっていた。構内のタイル張りの床は汚れ、車寄せのアスファルトはひび割れしている。「開業当初こそ利用客がいたが、だんだん見かけなくなった」。3年で営業停止となった。中国には同様に稼働していない高速鉄道駅が少なくとも26カ所あり、このうち8カ所は完成から一度も使われないまま放置されているという」

     

    高速鉄道駅のうち少なくとも26カ所が、使われていない状態という。最初から杜撰な計画であったのだ。

     

    (4)「鉄道の建設や運営には地方政府も関わっており、債務の膨張に歯止めがきかなければ、地方の財政や経済へ重荷となる。少子化の進む中国ではかつてのような需要の伸びも見込めず、「焼け石に水」ではない抜本的な対策が求められる」

     

    高速鉄度建設は、地方政府も関わっている。赤字も分担させられるはずだ。こうなると、地方政府の財政は、ますます逼迫化する。

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    韓国電池業界は、二重ショックを受けている。韓国の電池技術が、中国電池企業に盗用されている上に、中国からの安値輸出攻勢に晒されているからだ。まさに、「盗人に追銭」という事態に遭遇している。中国の電池業界は、政府の「三種の神器」(EV・電池・ソーラーパネル)政策で多額の補助金を受けている。中国電池は、肝心の技術を韓国から盗用しているとすれば「濡れ手に粟」という「おいしいビジネス」をしてきたことになる。

     

    『東亜日報』(8月21日付)は、「LGエネが中国企業相手にバッテリー特許侵害で訴訟、中国の韓国バッテリー特許侵害例は少なくとも 1000件」と題する記事を掲載した。

     

    LG化学がバッテリー陽極材を作る中国企業の寧波容百に対し、今月中旬に訴訟を提起したことが確認された。容百がLGの陽極材製造技術をコピーして特許を侵害したというもの。陽極材は電気自動車(EV)バッテリー原価の50%を占める核心素材だ。LG化学は、訴訟額(裁判に勝って得ようとする金額)で6億ウォン(約1億1400万円)を請求した。

     

    (1)「バッテリー業界によると8月20日、LGエネルギーソリューション、三星(サムスン)SDI、SKオンなど韓国バッテリーメーカーの特許を海外企業が盗用またはコピーして侵害した件数が少なくとも1000件に上るという。最も多くの特許を保有しているLGエネが、独自で確認した例だけで600件余りに達する。ここにLG化学やポスコフューチャーエム、エコプロなどの素材メーカーまで入れれば侵害例は1000件を大きく越える。大半が中国企業による侵害したという」

     

    中国のバッテリーメーカーは、韓国技術を盗用していたとして訴訟事件に発展した。LGエネだけで、600件余りの盗用とされる。酷いものだ。

     

    (2)「海外企業が、韓国の特許をコピーするのは、韓国技術を活用せずにはグローバル需要先が要求する技術レベルに合わせるのが難しいからだ。特許庁によると、昨年末基準でLGエネが出願した特許出願数は2万3034件で、中国1位のCATL(5420件)の4倍に上る。韓国バッテリーメーカーの特許数は、中国企業より約5倍も多く世界1位だ。バッテリー3社の幹部は、「今までは海外企業に『正当な代価を支払うよう』と警告したが、今後積極的に訴訟に出るだろう」と話した」

     

    中国は、これまで独自技術を売りにしていたが、盗用とすれば輸出に大きな影響が出てくる。中国政府が、「三種の神器」として奨励してきただけに、メンツ丸つぶれとなろう。

     

    『ハンギョレ新聞』(7月6日付)は、「EV販売鈍化・中国の攻勢で韓国の二次電池3社のCEOそろって『危機』主張」と題する記事を掲載した。

     

    LGエナジーソリューション(LGエナジー)、SKオン、サムスンSDIなど、韓国の二次電池企業の最高経営責任者(CEO)らが、社員に向けて「慢心を捨てろ」「もはや後がない」「新たな危機」と相次いで警告のメッセージを発した。電気自動車(EV)の需要鈍化と中国企業などによる値下げ攻勢が激化し、内部に緊張感を吹き込んでいるかたちだ。彼らは一様に技術革新や原価競争力の確保などを求めた。

     

    (3)「彼らの危機診断は、やや出遅れた感がある。これらの企業の第1四半期の営業利益は大幅に減少したり赤字を記録したりしている。実績回復どころか、さらなる悪化の可能性が高いというのが市場のアナリストの全般的な見通しだ。中国の二次電池企業の攻勢はよりいっそう強まっている。寧徳時代新能源科技(CATL)と比亜迪(BYD)は、安価なLFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーを武器に、全世界のシェアで12位になった」

     

    中国のCATLは、自社技術開発力の高さを自慢してきた。だが、韓国企業から大量の技術窃取をしてきたとなれば、とんだ赤っ恥をかくことになった。

     

    (4)「韓国信用評価は、「二次電池産業は、需要不振と大規模な供給計画によって中短期の需給条件が低下し、実質的な収益性が弱まるとみられる」とし、「韓国の業界内で投資のスピードを調節することに対する共感が形成されていることが把握されている」と、5月初旬にすでに分析を発表している。3社の経営陣の危機突破戦略は大同小異だ。いずれも技術革新と価格競争力の確保を強調した。LGエナジーのキム・ドンミョン社長は「慢心を捨てて挑戦とイノベーションの遺伝子を復活させよう」とし、「われわれの強みだった素材・技術・工程のイノベーションが遅れ、構造的な原価競争力も弱まり、売上の成長にもかかわらず収益性が低下しているというのが冷酷な現実」だと述べた」

     

    韓国電池企業は、これまで自社技術が盗用されている事実に気付かなかったのだ。これもまた迂闊な話である。

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