勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2024年09月

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    日本製鉄が、150億ドル(約2兆1100億円)で米鉄鋼大手USスチールを買収する件が、米国政府の承認段階で不透明になっている。理由は価格ではない。条件でもなければ、株主でもない。今年が大統領選イヤーであることから、政治の思惑が絡んでいることだ。一時は、バイデン大統領が合併拒否姿勢と伝えられるなど混乱したが、結論は大統領選後に持ち越されそうである。つまり、政治的決定から免れるのだ。

     

    今回の合併をもつれさせている裏に、もう一つの「事情」が存在する。USスチールとの合併を狙っていた米鉄鋼2位のクリーブランド・クリフスである。USスチールとの合併で日鉄に競り負けたことで反撃しているのだ。全米鉄鋼労組(USW)を反対派に巻き込んでいる。だが、肝心のUSスチール労組は、日鉄との合併賛成派である。このねじれた関係が、事態を複雑にさせている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月17日付)は、「クリフスと日鉄の因縁、停滞招く保護主義」と題する記事を掲載した。

     

    USスチール買収合戦が本格化したのは2023年8月だ。米鉄鋼2位のクリーブランド・クリフスが名乗りをあげた。その後、日鉄が上回る価格を提示しクリフスは競り負けた。クリフスはその後もUSスチール買収に執念を燃やす。日鉄が買収したUSスチールに規模で抜かれることへの危機感が背景にある。

     

    (1)「クリフスとはどのような会社なのか。創業は1847年と古いが、製鉄参入は比較的最近だ。もともとは資源会社で鉄鉱石を米国の鉄鋼会社に販売してきた。一貫製鉄所の運営を本格化したのは20年にオハイオ州の鉄鋼大手、AKスチールを買収してからだ。成長の原動力の一つとなったのは同年に欧州アルセロール・ミタルから米国事業を買収したことだ。実はこのときに買収した2つの工場はミタルと日鉄の合弁で日鉄も出資していた。買収でクリフスは付加価値品である自動車鋼板にも本格的に参入した」

     

    クリフスは、合併を繰返して規模が大きくなった企業である。それだけに、「中身」が伴わない憾みがあり、USスチールが合併先として忌避したのであろう。日鉄であれば、同年の創立で「社格」にも不満はない。当然の選択であったに違いない。

     

    (2)「日鉄を批判し続けるクリフスだが、日本企業との縁は実は深い。ローレンコ・ゴンカルベス最高経営責任者(CEO)は、かつてJFEスチールが出資していた鉄鋼会社の出身だ。クリフスが買収したAKスチールも、過去にJFEの前身の川崎製鉄が出資していた。買収を繰り返し、売上高は過去5年で10倍に膨らんだが、市場の目は厳しい。時価総額は米鉄鋼大手で最下位であり、足元ではUSスチールにも抜かれた。巨大化を急ぐあまり、構造改革が遅れている」

     

    クリフスの社歴からみても、日本の鉄鋼界の事情に詳しいはずである。日鉄が、どういう企業であるかを十分に理解しているであろう。この日鉄が、USスチールと合併すれば、クリフスの出る幕がなくなる。そういう危機感の裏返しが、日鉄批判には潜んでいる。強敵という認識だ。

     

    (3)「9月5日には、日鉄による買収が失敗したらUSスチールの資産を買収すると表明したが、株価は翌日に年初来安値を更新。16日も1.%安だった。シティーグループは、「特に付加価値の高い鋼板の利益貢献が想定を下回っている」と分析する。停滞の焦りからクリフスが傾注しているのが輸入鋼材の締め出しだ。トランプ政権時から政界への影響力を高め、輸入関税を強化するよう働きかけてきた。政治力が強い全米鉄鋼労働組合(USW)との結束もこうした背景と無関係ではない」

     

    クリフスの「体力」のなさは、市場が見透かしている。日鉄による買収が失敗したらUSスチールの資産を買収すると表明して以来、株価が下落し続けている。クリフスには、USスチールを合併する力がないと判断されているのだ。

     

    (4)「クリフスとUSWは、「日鉄が中国などから安価な鋼材を流入させ、米国の労働力を脅かしている」との主張を崩していない。日鉄が米国の輸入材への関税措置を阻害していると懸念する米政府の主張とも重なる。米国の鉄鋼業界は、米政府が断続的に打ち出す貿易管理など保護主義的な政策で輸入品から国内雇用や生産を守ることに終始した結果、抜本的な改革が遅れた歴史がある。政府による過度な産業保護は結果的にUSスチールの身売りにつながった。保護主義に傾注するあまり改革が遅れれば、クリフスも第2のUSスチールになりかねない。株価の低迷はそうした懸念を如実に示している」

     

    クリフスとUSWは、日鉄とUSスチールの合併反対論を唱えている。この反対論が通れば、米国鉄鋼界は「終わり」となる。保護主義で競争力を失うからだ。バイデン政権は、今こそ米鉄鋼100年の計に思いをいたすべきであろう。

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    昨年のドイツ名目GDPは、日本を抜いて世界3位になったものの実態はふらついている。円の異常安が生んだGDP3位交代であったことが、ますます明確になっている。 

    ドイツの欧州経済研究センター(ZEW)が、17日発表した9月の先行指数は3.6と、8月の19.2から急低下した。エコノミスト予想では、17への小幅な低下が見込まれていた。これほどの大幅悪化を予想したエコノミストは1人もいなかった。一致指数もマイナス84.5へ低下した。 

    『ブルームバーグ』(9月17日付)は、「ドイツの景気見通しは『著しく悪化』、ZEW先行指数が急低下」と題する記事を掲載した。 

    (1)「ZEWのバンバッハ所長は発表文で、「景気の早期改善への期待は目に見えて薄れつつある」と述べ、「ユーロ圏景気見通しの後退は悲観的な見方が総じて強まっていることを示唆するが、ドイツの見通しは著しく悪化している」と指摘した。ドイツの4ー6月(第2四半期)国内総生産(GDP)はマイナス。工業界の不振が影響した。ここ最近は、自動車メーカーのフォルクスワーゲン(VW)が国内工場の閉鎖検討や雇用保障協定の破棄を明らかにしたほか、BMWは業績予想の下方修正を強いられるなど、厳しいニュースが相次いでいる」

     

    ドイツ経済は、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギーコストの急上昇で製造業が窮地に立たされている。景気の半年から1年先を示す先行指数が、たったのプラス3.6では、10月はマイナス転落が不可避だろう。一致指数は、すでにマイナスである。ドイツ経済は正直正銘の危機状態にある。 

    『ブルームバーグ』(9月6日付)は、「ドイツ激震、VW工場閉鎖は『氷山の一角』 工業力衰退の象徴に」と題する記事を掲載した。 

    ドイツ最大のメーカー(VW)が工場閉鎖という引き返せない「ルビコン川」を渡ろうとしていることで、ドイツは工業力衰退という物語の中で最も象徴的な瞬間に直面している。VWの発表は、ビジネスの現実を遅ればせながら認識したというだけではない。自動車大国としてのドイツのイメージと、かつて輸出世界一だった経済への打撃だ。

     

    (2)「VWの発表は、ビジネスの現実を遅ればせながら認識したというだけではない。自動車大国としてのドイツのイメージと、かつて輸出世界一だった経済への打撃だ。1989年にベルリンの壁が崩壊すると、東西ドイツの統一が急がれたが、文化や経済面での格差は残った。9月1日に投開票された独東部2州の州議会選では、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進した。東西の分断を浮き彫りにしているAfDや左派ポピュリストの勢いを止める力は、主流派の政党にはない」 

    旧東ドイツの2州は、景気が停滞しており極右政党が州議会選で躍進している。不況期の極右政党の進出は、旧ナチスを連想させるだけに不気味である。 

    (3)「AfDの台頭は、ショルツ首相の連立政権にとって痛手となるだけではない。2025年の総選挙が迫る中で有権者が抱く不満の根本原因に向き合うよう迫っている。そうした中で多くを左右するのが、輸出主導の自動車製造大国から、半導体やEVバッテリーといった先端を行くクリーンエネルギー大国への速やかな移行という新たな経済の奇跡をドイツが成し遂げられるかどうかだ」 

    かつての自動車大国ドイツが、VWの工場閉鎖問題が象徴するように、行き詰まっている。日本は、トヨタが世界一の座を堅守してくれている。ありがたいことだ。

     

    (4)「VWの失速は、時代に乗り遅れた企業を巡る警告であり、ドイツの成功モデルに潜んでいた陥穽(かんせい)だ。欧州経済の原動力となってきたドイツが、今後も欧州をリードし続けることができるのか疑問に疑問が投げかけられている。INGのマクロ部門責任者カルステン・ブルゼスキ氏は「VWの問題は誤った経営判断による自業自得という側面もあるが、VWはビジネス拠点としてのドイツが直面している難題の一例を突き付けている」と指摘。ドイツは長年にわたり競争力を失い続けており、これがかつての独経済の至宝、VWにも影響を及ぼしている」と述べた」 

    VWの失速は、EV(電気自動車)へ賭けすぎたことだ。EVが、未だ技術的に完成していないことに気付かず勝負した結果である。トヨタの判断とは、全く異なっていた。経営判断の失敗である。 

    (5)「VWは昨年、東部の中規模都市ツウィッカウでフルEV247000台と、「ランボルギーニ」と「ベントレー」向けに1万2000の車体を生産したが、工場閉鎖の可能性が浮上する前から、コスト削減がすでに進んでいた。EVが依然として高価でEV購入を促す奨励策が縮小されつつあり、欧州でのEVの普及がなかなか進まないという状況にツウィッカウ工場は全面的にさらされている。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のエコノミスト、マーティン・アデマー氏は、「ドイツ経済における自動車産業の重要性は近年低下しているが、引き続き非常に重要なセクターであることに変わりはない」と語った」 

    自動車産業は、雇用の受け皿である。工場閉鎖は、大変な失業者を生む。

     

     

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    中国各地で最近、一気に広まった流行語があるという。「鉄の鍋をたたき壊し、くず鉄にして売ろう」というものだ。ありったけのものを投げ出して、物事に対処することを意味する熟語が、隠れた政治スローガンとして使われ始めたというのだ。中国経済が、危機的状況に追込まれている実状を余すところなく示している。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月18日付)は、「中国で地方が謎の悲鳴、『鍋を壊し鉄売れ』に潜む破綻」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙編集委員の中沢克二氏である。

     

    中国の家庭で長年、もっとも大事にされてきた道具は何か。それは、ほぼ全ての料理づくりに不可欠な鉄製の大きな中華鍋。これをたたき壊すというなら、三度の飯さえ我慢せよ、という号令にも聞こえる。食の国、中国は今、容易ならざる緊急事態に陥っている。

     

    (1)「中国の緊急事態とはいったい何を指すのか。「鉄の鍋をたたき壊し……」が流行語になったきっかけは、インターネット上に広く出回った地方の公式文書とされる画像だった。中国南西部の大都市、重慶市内にある区の政府が出したものだという。そこには「『鉄の鍋をたたき壊し、くず鉄にして売ろう』工作専門チームを立ち上げる」とある。具体的な人選も示されていた。任務は、全力で地方債務リスクを軽減・解決することだ。平たく言えば、財政的な破綻を避けるための資金捻出である。資産の処分や有効活用、コスト削減、隠れた収入発見、企業からの新たな徴収などで財源を捻出できれば、さしあたり債務返済や金利支払いに充てることができる。いわば応急措置だ」

     

    中国の地方政府には、もはや現金化できるものがないことを示している。頼りの土地売却益は大幅減である。「土地本位制」(学術用語ではない)が崩れ去った後の寂寥とした事態を的確に言い表されている。

     

    (2)「一部地方の実質的な破綻を如実に示すのが、地方政府や関係する公営施設の職員、医療従事者らへの給与・賞与などの支払い遅延、大幅減額だ。なかには給与が一切、支払われなくなり、民間への転職を余儀なくされる悲惨な例もある。「(給与・賞与の)減額、不払いのケースは、北京に近い、ある省内でもみられる。それでも民間に転職できるならまだよい。実態はかなり厳しい」。仕事柄、中国と外国を頻繁に行き来する人物らは、身近な例から現状を説明する」

     

    公務員の給料遅配はざらに起こっているという。民間へ転職できるのは恵まれた方で、それすらチャンスがない状態だ。

     

    (3)「地方政府の財政収入は、相当部分、土地に頼ってきた。国有地の使用権を住宅・不動産開発業者、企業家に高値で売った収入が、立派すぎる公共施設、道路などを建設するインフラ投資や、急速にアップした公務員給与・賞与の原資になっていたのだ。地方財政の土地依存の割合はまちまちだが、少ない場合でも3割、多い例では7割を超していた。財政収入を支えてきた30〜70%もの部分が、使えなくなれば、何が起きるのか明白だ」

     

    財政収入を支えてきた30〜70%もの部分が、バブル崩壊で跡形もなく消えてしまっている。日本の平成バブル崩壊とはレベルが異なる。日本の行政組織は、微動だにせず機能した。疲弊したのは、民間企業であったのだ。中国経済を待っているのは、地方政府「破綻」による需要減である。

     

    (4)「この問題は、一部の地方政府にとどまらない。中国の地方政界事情に通じる人物は「(中国)各地で指導者らが『鉄の鍋をたたき壊し、くず鉄にして売ろう』を、窮状を示す比喩として口にしている。それが一部で文書にもなった。中央は、うれしくないだろう」と説明する。とはいえ、中国メディアによると、この地方政府による発信の源は、中央政府にある。昨年、国務院弁公庁が発した政策文献に「鉄の鍋をたたき壊し、くず鉄にして売ろう」という表現がみられたという」

     

    中央政府も、地方政府疲弊の影響が及ぶ。地方財政支援で財政赤字が膨らむからだ。

     

    (5)「全力で地方債務リスクを軽減・解決すべきとされる緊急事態の対象は、先に例に挙げた重慶だけではない。天津、内蒙古、遼寧、吉林、黒竜江、広西、貴州、雲南、甘粛、青海、寧夏なども含まれるとされる。地方政府は、中央が安易に発した表現を逆手にとって、今、あえて大きな悲鳴を上げ始めた。このままではどうにもならない。庶民が持つ鉄の鍋まで没収して壊し、財源を捻出するしかない。そうでなければ破綻する。そんな含意も感じ取れる」

     

    地方政府が、悲鳴を上げているのは「ポーズ」ではない。実態を示している。土地売却益の急減によって、地方行政が機能しない事態に追込まれている。現実を甘くみてはいけないのだ。

     

     

    テイカカズラ
       

    韓国では、犬用カートの販売が急増している。犬用カートの販売台数は昨年、ベビーカーの販売台数を初めて上回った。この傾向は、今年上半期も続いている。韓国の合計特殊出生率は、世界最悪を記録している。昨年は、「0.72」まで低下した。「2.18」を維持できれば、その国の人口は横ばいを維持できる。韓国の現状は、この人口横ばいラインの3分の1まで落込んでいる。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月17日付)は、「『超少子化』韓国、犬用カートの販売急増に揺れる」と題する記事を掲載した。

     

    子どもを持たないことや子どもを産むことへのためらいについて、米国など世界で議論が起きている。しかし懸念が最も強いのは、出生率が先進国で最低の韓国かもしれない。韓国にはもう一つ、激論を巻き起こしていることがある。それは犬用カートの販売急増だ。

     

    (1)「犬用カートがあまりにも普及したため、1月には「もやもやしているのは自分だけ? 犬用カートを巡り激論」という特集が放送された。米国など多くの先進国では、大人がペットを甘やかされた子どものように扱い、ぜいたくな誕生会を開いたり、立派な家を用意したり、プライベートジェットで一緒に旅行したり、犬用カートに乗せたりしている」

     

    韓国では、犬用カートが大流行という。韓国の方が、犬が大事にされ「赤ちゃんの代用」になっている感じだ。日本では、愛犬は飼い主と散歩している例が多く、カートに乗っているケースは珍しい。

     

    (2)「韓国の政府当局者は、危機感をあらわにしている。韓国の出生率は0.72で、人口を維持するために必要な水準の3分の1しかない。昨年の「若者ラウンドテーブル」の場では、今の雇用労働相の金文洙(キム・ムンス)氏が出席者の若者に苦言を呈した。「私が心配しているのは若者が愛し合っていないことだ。若者は犬を愛し、連れ歩いている。結婚せず、子どもも持たない」。左派系少数政党のメンバーは、最近の記者会見で金氏の発言に抗議し、低出生率をペットの飼い主のせいにする前に、過酷な労働条件や低賃金についてよく考えるべきだと主張した」

     

    若者は、結婚しないで犬を可愛がっている。考えさせられる問題だ。良い悪いという答えを出す前に、なぜだろうかと問い直すことだろう。

     

    (3)「最新の世論調査では、20~49歳の韓国人女性の2人に1人が子どもを持つつもりはないと回答した。これらの回答者は、子どもを必ず持たなければならないものではないとの認識で、経済的な制約を理由に挙げた。人間と一緒にペットが入れる施設が全国で急増する一方で、レストランやカフェは迷惑になる行動をするとして「子ども禁止ゾーン」を宣言している。中央政府は若い世代にペットより子どもを選ぶよう呼び掛けているが、実は尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は結婚しているが子どもはおらず、犬と猫を合わせて少なくとも10匹飼っている」。尹氏は6月、韓国の低出生率を巡り「人口国家非常事態」を宣言。省庁に「存亡の危機」を回避するため低出生率を解決するよう求めた」

     

    徳川15代将軍綱吉は、生類憐れみの令を20年に以上も続けた。動物愛護と言えば聞こえは良いが、江戸庶民は困惑した。現在の韓国では、庶民が率先して「生類憐れみの令」を実行している。社会異変の起こる前兆なのかも知れない。

     

    (4)「韓国では子どもの数が減る一方で、昨年の犬の登録頭数は過去最高を記録し、2018年の2倍余りとなった。韓国最大のペット用品通販サイト「ペット・フレンズ」のユン・ヒョンシますます明確になっている

    ン最高経営責任者(CEO)によると、犬用カートの販売台数は2019年以降に4倍となった。「エアバギー」は犬用カートの「メルセデス・ベンツ」と言われ、約1100ドル(約15万7000円)の秋冬用特別モデル「グレイツイード」にはスコットランド製の生地が使われ、オフロードタイヤが採用されている」

     

    犬用カートは、15万円以上もする。ますます、韓国版「生類憐れみの令」に近くなっている。

     

    (5)「エアバギーは、ベビーカーメーカーとして創業したが、同社の韓国部門は近年、犬用カートだけを扱うようになった。韓国部門を率いるパク・スンジェ氏は「当社のカートには犬も子どもも乗せることできる」が、「韓国市場はペット用カートを求めている」と話した。小型で健康な犬を乗せて運ぶカートは、デパートやレストラン、歩道、娯楽エリアで見かける日常風景の一部だ。ソウルの森公園(ニューヨークのセントラルパークより広い)では、犬用カートが歩行者用の小道をふさぎ、施設管理者のリ・ソンギュ氏(62)は困惑している。「カートには子どもが乗っているはずなのに」とリ氏は話した

     

    韓国では、価値観がひっくり返ってしまったのかもしれない。子どもを持たないで犬を可愛がる。何か重大なポイントが、抜け落ちている感じがする。社会が、余りにも硬直化していることへの「息抜き」であろう。

     

     

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    尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、20%台の低支持率であったが、これを支えてきた核心支持層に崩壊の兆しを見せ始めた。70代以上の尹大統領支持率が、3週間で23ポイントも下落しているからだ。長期化する医療ストによって、急患が「救急室たらい回し」され結局、死亡するという痛ましい犠牲者が出ている。健康問題に敏感な高齢層が、尹氏支持を撤回したのであろう。 

    問題は、医学部定員増加に反対する医師や医学部が既得権益を「死守」する姿勢にもある。絶対に妥協せず、犠牲者が出てもストを継続する状態は正常な感覚ではない。生涯高賃金を確保するためには、医師の数を増やさず競争を避けるという自己保身が見え隠れしているのだ。最大の犠牲者は一般国民である。

     

    『東亜日報』(9月14日付)は、「尹大統領支持率が20%、就任後最低」と題する記事を掲載した。 

    尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の国政支持率が過去最低の20%を記録した。与党支持率も同時に下落し、尹政権発足後の最低の28%だった。与党が医学部定員の増員をめぐる医政葛藤の解決策を示すことができず、医療空白が長期化することに対する批判的世論が反映されたものと分析される。

    (1)「韓国ギャラップが、9月10日から12日にかけて全国の成人1002人を対象に実施した調査結果(詳細は中央選挙世論調査審議委員会ホームページ参照)によると、尹大統領の職務遂行に対する肯定的な評価は先週より3%ポイント下落した20%だった。否定評価は先週より3%ポイント上がった70%で、5月第5週と同じ最高だった」 

    最新世論調査では、尹大統領支持率が20%、不支持率70%という数字が出た。これは、極めて危険なデータである。

     

    (2)「韓国ギャラップは、「否定評価は『医学部定員拡大』(18%)、『経済・民生・物価』(12%)、『疎通不十分』(10%)、『独断的、一方的』(8%)、『全般的に間違っている』(6%)などを理由に挙げた」と明らかにした。これに先立って総選挙惨敗後、尹大統領の職務遂行評価は5月第5週に肯定評価が21%、否定評価が70%だったが、支持率が徐々に回復した。7月第3週には29%まで上昇したが、その後、医学部定員問題が議論になり、引き続き下落傾向を示したのだ」 

    尹大統領は、医学部定員問題が足かせになって支持率が低下している。尹氏の「正論」が通らない以上、さらなる妥協策も必要だろうが、医師側の「頑迷固陋」ぶりも見逃せない事態だ。結局、韓国では巨大な既得権益層があらゆる改革を阻止していることがハッキリしたことである。

     

    (3)「大統領室は、「支持率については言及しない」として公式反応を示さなかった。しかし、秋夕(チュソク=陰暦8月15日の節句)連休の直前に発表した世論調査で最低を記録すると、少なからず戸惑っている様子だ。特に与党内部では、心理的マジノ線である20%台まで崩れる場合、国政の動力喪失が加速化する懸念する声が出ている」 

    支持率が、20%を割込む事態となれば、下線部のように野党を勢いづかせて「弾劾」という無法な要求を実現させる恐れもゼロではない。「弾劾癖」のついている左派にとっては、「尹氏追放」という夢を抱く可能性を強めている。そうなると、韓国政治は麻痺状態に陥るであろう。すでに、その前兆が出ている。国会で最大野党の共に民主党から「ニューライト論」が仕掛けられている。「新右翼」とでも解釈するのだろうが、反日と結びつけているのだ。

     

    『中央日報』(9月17日付)は、「韓国政界を揺さぶる『ニューライト』」と題する記事を掲載した。 

    「首相は『ニューライト』をご存知ですか」〔申栄大(シン・ヨンデ)共に民主党議員〕

    「『ニューレフト』もあるのですか。どうか“色塗り”はしないでほしい」〔韓悳洙(ハン・ドクス)首相〕 

    2日の韓国国会予算決算特別委員会全体会議で、申議員と韓首相が交わした舌戦だ。3日、安昌浩(アン・チャンホ)国家人権委員長候補人事聴聞会でも「もしかしてニューライトですか」〔徐美和(ソ・ミファ)共に民主党議員〕、「ニューライト史観が何ですか」(安昌浩国家人権委員長候補)のような攻防が続いた。 

    (4)「いわゆる「ニューライト」論争が9月政界を飲み込んだ。野党圏は金文洙(キム・ムンス)雇用労働部長官や安昌浩国家人権委員長候補ら、最近尹錫悦政府の主要人物と韓日関係をはじめ独島(トクド、日本名・竹島)造形物撤去や歴史教科書問題などを前面に出して「ニューライト」総攻勢をしかけた。与党は、「理念主義に持っていこうとするな」と対抗した。尹大統領は先月29日、国政会見で「正直、ニューライトとは何かよく分からない」とまで話した。政界関係者は「80~90年代『セッカル論(理念論)』攻防を連想させる」とし「変化したのは保守と進歩側の攻守が逆になったこと」と話した。 

    国会での理念論争を否定しないが、反日を搦めて政府を批判して、肝心の議案審議を棚上げしている。この裏には、文前大統領「疑惑」をニューライト論で消そうという思惑があるのかも知れない。だが、党利党略もほほどほどにすべきだろう。

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