勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2024年10月

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    ドイツは、16年も続いたメルケル政権によって、中ロへの経済依存が極限まで高まった。現在、これらが経済安全保障の面で、ドイツ経済に大きな負担になっている。ロシアとは、エネルギーで大きく依存し、中国へも過度の企業進出によって中国経済の停滞で振り回されている。こうした事態を受けて、ドイツは経済安全保障を優先する方針へ転換した。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月31日付)は、「ドイツ副首相、中ロへの経済依存『ドーピングだった』」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツのハベック副首相兼経済・気候相が日本経済新聞の単独インタビューに応じ、中国経済への依存度を減らすデリスキング(リスク低減)を「必ず継続する」と語った。景気低迷にもかかわらず、中国離れを進める強い政治的な意志を示した。ハベック氏は環境政党の緑の党出身。ドイツの連立政権内でショルツ首相に次ぐ実力者であり、欧州全体の通商・環境政策に大きな影響力がある。10月下旬にショルツ首相らとインドを訪問した帰路、ドイツ政府専用機内で取材に応じた。

     

    (1)「ドイツ経済が低迷する中、デリスキングを断行するのかとの問いに対し、ハベック氏は「必ず、絶対にやる」と即答した。「経済安全保障という観点で、経済政策は景気と連動しない」とも断言し、「投資先を分散し(特定国への)強い依存を是正するのが私の目標」と述べた。ドイツ経済が「安価なロシア産ガスと永遠に拡大を続ける中国市場」に頼りすぎていたとの反省が底流にある。「ドーピングのようなものだった」と悔いる胸中を漏らした。エネルギー高騰などでドイツの国際競争力が低迷したのは「ツケを払っているから」と認めた」

     

    ドイツ経済は、為替はドイツにとって割安なユーロの恩恵を受け、ロシアからは割安な天然ガスの供給に浴してきた。さらに、中国へは大量のドイツ企業が進出し、多額の補助金を得た。こういう「温室」状況が、一挙に変わってしまった。逆風の中で出直しを求められている。

     

    (2)「投資優遇措置の見直しなどでドイツ企業に中国以外への投資を促すという。「中国から撤退すべきだということではない」と強調する一方、「すでに対中投資を減らした企業もある」と明らかにした。中国企業との公平な競争条件が確保されていないとの不満が高まっているとした。欧州連合(EU)とインドやインドネシアとの自由貿易協定(FTA)の交渉が進めば「分散を後押しすることになる」との認識も示した。代替市場としてベトナムにも注目する」

     

    ドイツは、アジアとの関係強化が求められている。メルケル時代は疎遠であった日独関係が、今は密接な関係になっている。防衛面でも日独が協力関係を結んでいる。

     

    (3)「今年のドイツ経済は、マイナス成長の見通し。屋台骨の自動車産業の業績は厳しく、フォルクスワーゲン(VW)は工場閉鎖を視野に入れる。米大統領選でトランプ氏が当選すれば、欧米の貿易摩擦が再燃し、景気がさらに減速する恐れがある。ただ、ドイツが構造不況に陥るとの見方は否定し、包括的な景気刺激策を講じたことで「来年には成長が戻る」と強調した。国防やイノベーション、デジタル化のために財政出動で投資を増やすのが望ましいと語った」

     

    VWは、ドイツ国内3カ所の工場閉鎖を労組に通告する事態になっている。79月期決算は、営業利益が前年同期比42%減という惨状である。中核のVW乗用車ブランドの19月の売上高営業利益率は2.%で、目標とする6.%に届かなかった。まさに、SOS状況だ。

     

    (4)「ハベック氏は、日本の新政権と経済安保で協力し、インド太平洋の秩序維持に貢献する意向も明らかにした。同氏の発言は欧州のアジア外交の変化を象徴する。ドイツ海軍の艦隊は9月、22年ぶりに台湾海峡を通過し、中国と領土を争うインドには潜水艦を輸出しようとしている。同氏は国際秩序の維持に積極的にかかわるべきだと考える。以前は紛争のある地域の安全保障にかかわることに消極的だったが「ロシアのウクライナ侵略でドイツは方針転換した」。欧州では中国への警戒感が強まり、日韓豪などインド太平洋の民主主義国家の重みが増す。新しい政権を探る日本を「価値観をともにするパートナー」と位置づけ、「経済安保政策について日本から学びたい」と述べた

     

    日本では、NATOアジア版構想も浮上している。日豪ニュージーランドなどが協力体制を組み、NATOとの協力関係を強化する方向へ進むのであろう。 

     

     

     

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    持てる運を使い果たす

    IMFは近未来へ警告

    李前首相の冷徹な予告

    近く米国成長率下回る

     

    習近平中国国家主席の「運」は、尽きかけたようにみえる。国家主席就任は、江沢民氏の強い推挙を受けたもので、本命視されていた李克強(前首相・故人)を押しのけて実現した経緯がある。江氏は、習近平氏を操る目的でもあったとされる。こうした個人的思惑に支えられた習氏は、李氏に競り勝った。これが、人生最大の運と言わずして何と呼ぼうか。 

    この幸運は、さらに続いた。不動産ブームに支えられて、土地売却収入という多額の税収に恵まれたのである。これらを隠れ財源にして短期間に国防費を拡大させ、米国覇権へ対抗する壮大な夢が実現可能と判断するまでになった。絶頂期であったのは2021~22年のころであろう。 

    21年に、中国共産党の第19期中央委員会第6回全体会議(6中全会)で、40年ぶりとなる「歴史決議」を採択させた。これによって、習近平氏の地位は確固不動のものになった。歴史決議は、共産党100年の歴史を統括するもので、主要な成果や今後の方向性を示している。中国共産党の創立以降、歴史決議が採択されたのは1945年の中国建国の父・毛沢東、1981年のトウ小平以来3度目だ。習氏は、毛やトウに並び中国共産党政治史で輝ける地位を確立した。

     

    この勢いで、22年に国家主席3期目を実現させた。事実上の「終身国家主席」を目指す体制を整えたのである。習氏は中国共産党第20回党大会で、建国100年を迎える2049年に米国を凌駕する超大国になるとの目標を掲げた。まさに、「中国勝利宣言」目標の設定である。具体的には、「共同富裕」の実現を掲げた。 

    共同富裕は、共産主義思想の基本として毛沢東が初めて提唱したものだ。1978年の改革開放以降は、トウ小平の「まず豊かに暮らそう」という先富論が優先され、共同富裕は後回しにされた。2000年代に入って中国の高度成長が続き、最近では経済不均衡が社会の安定を脅かすほど深刻化している。習氏は、こういう認識から共同富裕実現へ踏み込んだものである。

     

    持てる運を使い果たす

    今や習氏の運が尽きかけている理由は、不動産バブル崩壊後の対応の拙さにある。習氏には、この事態を不動産開発企業の暴走程度の事態と軽く判断していた。金融機関に対して、不動産企業への融資を止めさせ経営者を罰する。この程度で、不動産バブル崩壊を乗り越えられるとみたのだ。習氏のこういう判断が、政策判断の甘さを露呈した。 

    習氏は、不動産バブル崩壊に伴う需要減に対して、供給力増強で対応している。「三種の神器」(EV・電池・ソーラーパネル)を政府補助金で輸出産業に仕立て、強引な輸出戦略を打ち出している。中国経済という「病人」を、マラソンレースに出場させるような無謀な策に打って出たのだ。今は、すっぽり穴の開いた需要減を、新たな内需増強策でカバーしなければならない重要な段階にある。それにもかかわらず、真逆の政策判断を下した。習氏の持てる運は、全て使い果たされたとみるのだ。

     

    もう一つの失敗は、性急な共同富裕論である。全ての中国人が豊かになろうという前向きの考えではない。経済的に豊かな人間は、過去に遡り給与や賞与を返却せよという強引な政策だ。これは、全ての中国人が「等しく貧しくなろう」という主旨であろう。金融機関職員に対し過去5年に遡り給与を返却させている。習氏は、金融機関を「不労所得機関」と位置づけている。金融機能によって、新しいビジネスが生まれるという効用を頭から否定しているのだ。気の毒なほど、金融知識が乏しい結果であろう。 

    これでは、経済発展が困難になる。中国の「中所得国の罠」が決定的だ。中国経済は、現状のままで推移する限り、先進国へキャッチアップは不可能である。一人当たり名目GDPは現在、1万2597ドル(2023年)である。今後の経済成長率の急減速を計算に入れれば、2万ドル以下の低水準で盟友ロシアと肩を並べる状態が続くのであろう。これは、国民生活で大きな不満を呼び起こす要因となる。共同富裕論が、まさに「等しく貧しくなろう」という事態を招きかねないのだ。

     

    IMFは近未来へ警告

    IMF(国際通貨基金)は10月22日に、最新の世界経済見通しを発表した。中国は24年を0.2ポイント下げて4.8%と予想。25年の予想は4.5%で据え置いた。IMFは中国経済について、極めて強い警戒的姿勢をみせている。ゲオルギエワIMF専務理事は、中国が国内消費を押し上げる改革を行わない限り、年間成長率は将来的に4%を「大幅に下回る」可能性があると警告している。この指摘は重要である。 

    IMFは、一貫して不動バブル崩壊後の不良債権処理問題を急ぐように強調してきた。中国はこれに対して、銀行が不良債権を確実に処理してきたので、懸念には及ばないという姿勢だ。中国が、財政出動による不良債権処理を急ぐようにと迫られているとみているための予防線である。(つづく)

     

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    https://www.mag2.com/m/0001684526

     

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    戦時中の南方駐留日本軍は、東京の大本営から武器弾薬も与えられずに、次々と作戦命令だけが下された。現在の中国では9月、共産党政治局が旧日本の大本営と同様に「住宅価格下落を阻止せよ」と命令を発している。財政出動という「実弾」は与えられず、驚くべき「空弾」政策決定過程が明らかにされた。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月30日付)は、「中国経済浮揚で連続記者会見の謎、問われる習氏への忠誠」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙編集委員の中沢克二氏だ。

     

    中国共産党政治局会議が9月下旬、「住宅・不動産市場落ち込みで価格が下がるのを食い止め、安定を回復させよ」と不振の経済に対処する異例の命令を下した。10月28日に開催した今月の政治局会議は、習近平氏への忠誠度が問われる「政治」を主題とする命令が出た。テーマは「巡視」である。汚職の撲滅を意味する「反腐敗運動」に絡む査察の成果報告だった。次のようなものだ。

     

    (1)「10月の政治局会議は、党中央組織、国家機関、中央金融機関への査察・監督の手を緩めず、さらに徹底するよう指示した。すなわち、「自己革命の精神で反腐敗闘争を最後まで貫き、汚職への処罰で高い圧力を維持する」という内容だ。9月と10月の政治局会議のテーマの方向性は一見、バラバラで全く関係がないようにみえる。だが、そこには明確なつながりがある。「巡視の査察対象機関は、軒並み記者会見を開き、(習への)忠誠度をアピールしている」。関係者の鋭い指摘である」

     

    政治局会議は、習近平総書記(国家主席)が主宰して毎月開くものである。9月と10月の政治局会議の決定は一見、全く異なったことを指しているようだがそうではない。10月は、9月に命令したことが実際に行われたかどうか査察するという内容だ。

     

    (2)「注目すべきは、2022年の共産党大会以来、実施した第3回の巡視で対象になった機関ばかりだ。「国家発展改革委員会(発改委)、財政省、住宅都市農村建設省、中国人民銀行、国家税務総局、中国証券監督管理委員会(証監会)、国家統計局、上海証券取引所、深圳証券取引所……」。発改委、財政省、住宅都市農村建設省、人民銀行は全て9月末の政治局会議による命令の直前から10月にかけて、トップが記者会見に自ら登場し、経済対策を表明した組織・機関である。9月24日に人民銀行総裁の潘功勝、10月8日に発改委主任の鄭柵潔、同12日に財政相の藍仏安、同17日に住宅都市農村建設相の倪虹というぐあいだ。偶然ではありえない」

     

    9月24日を皮切りに、発改委、財政省、住宅都市農村建設省、人民銀行のトップは、示し合わせたように記者会見を開き、需要刺激策を発表した。だが、肝心の国債発行については詳細な内容を控えてただ宣伝に努めたのだ。

     

    (3)「そして証監会、上海証券取引所、深圳証券取引所などが関わる株式市場では9月以来、近年見られなかった株価急騰という、ひとまずの成果をひねり出した。一種の「上意下達」の結果である。9月から10月にかけて異例の形で閣僚らの記者会見が続いた謎の裏には、こうした査察も絡む強い圧力があった。習氏は12年、共産党トップに就任して以来、反腐敗運動を推進してきた。それは抵抗する「政敵」を追い落とし、習個人への忠誠度を高めるうえで絶大な効力があった」

     

    習氏は、「反腐敗運動」に名を借りて政敵を追放してきた。この荒療治手法を、行政遂行手段に使っている。習氏は、官僚に向けて政策実行手段に利用しているのだ。

     

    (4)「異例の形で連続記者会見した経済担当閣僚らは、経済対策の中身で結果を出さなければならない。まずは、24年の経済成長率目標である「5%前後」の達成が絶対のノルマだ。一方、経済対策を表明する際には、様々な制約も存在する。政治面から考えれば、過去の習政権の経済対策の失敗が少しでもにじむような言動は、厳に慎まなければならない」

     

    鵜飼に喩えれば、習氏は鵜匠の役である。経済担当閣僚らは、鵜に過ぎないのだ。

     

    (5)「最も気にしているのは、終わりなき「反腐敗闘争」の下、習に対する忠誠度が常に問われている、という厳しい状況だ。象徴的なのが、10月28日の政治局会議で改めて示された「巡視」という名の国家機関への査察圧力である。担当閣僚、幹部、官僚とも必死だ。一時も気を抜けない苦悩のなかにある。「いつ捕まってもおかしくない」。彼らはそう思いながら、仕事にまい進するしかない」

     

    鵜に過ぎない経済担当閣僚らは、働きが悪ければ「反腐敗闘争」の名によって裁かれる身である。何とも強烈は「習一強体制」の悲劇である。

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    総選挙の各党別の比例票が発表された。自民党は533万票も減らしたが、立憲民主党は7万票増にとどまった。国民民主党は、358万票と138%増であり、自民票減少の67%の受け皿になった計算だ。自民党と国民党の公約は似かよっている。有権者は、安心して国民民主党へ乗換えた格好である。「一時避難」とも言えそうだ。 

    『毎日新聞』(10月30日付)は、「『この時を待っていた』、キャスチングボート握った国民民主」と題する記事を掲載した。 

    自民党、立憲民主党、日本維新の会に続く第4党となった国民民主党は、議席数以上に国会で存在感を示しつつある。自民、公明の与党が過半数を割り、他党との協力なしには国会運営が進まないためだ。一方で、政権奪取を目指す立憲も、国民民主との連携は避けて通ることができず、国民民主が永田町の大勢を左右する状況が生まれつつある。 

    (1)「国民民主の玉木雄一郎代表は29日の記者会見で、「キャスチングボートを握る計画を少し前倒しする形にできた」と衆院選の結果を満足げに語った。公示前の7議席から4倍の28議席に伸ばし、単独での法案提出も可能になった。自公だけでは衆院過半数の233まで18足りないが、国民民主が協力すれば過半数に達する議会構成となっている」 

    民放では、玉木雄一郎氏とはどんな人物か紹介している。今や、注目の政治家になった。農家の出身という。働く者の立場が分るのだろう。玉木氏は、先鋭な野党とは一線を画している。

     

    (2)「玉木氏は以前より「対決より解決」を掲げ、政権批判だけではない、提案型の野党のあり方を模索してきた。これまでも政府予算案に賛成したり、一部の政策で与党と協議したりするなど、政策ごとに「是々非々」で対応する姿勢を取っている。与党側からすれば「国民民主が最も連携しやすい相手」(自民ベテラン)だ。ただ、玉木氏は自公政権への連立入りには否定的だ。閣僚などのポストを条件に連立入りすれば、政策重視を訴えて集めた支持を失いかねない。一方で、政策ごとに協力する「パーシャル(部分的)連合」には含みを持たせ、与野党問わず協議に応じると述べている。29日の記者会見でも「ほしいのはポストではなく、選挙で約束した経済政策の実現だ」と述べた」 

    玉木氏は、「対決より解決」を訴えている。旧社民党路線である。自民党は、こういう穏健な野党・国民民主党と話し合えるのが救いであろう。誠実に対応することだ。 

    (3)「玉木氏が、協力の条件として第一に挙げるのは「減税」の実現だ。基礎控除と給与所得控除、いわゆる「年収の壁」を計103万円から計178万円に引き上げることを衆院選の公約に掲げ、「手取りを増やす」とのスローガンは現役世代からの支持を集めた。燃料高騰対策として、ガソリンに上乗せされている暫定税率を廃止することも求めている。国民民主はかつて他党との連携で苦い経験がある。ガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除を巡り、自公に接近しながら、結果的に難色を示され3党協議離脱に追い込まれた。政策実現で存在感を示そうとしたが、少数政党ゆえに自公に「足元を見られた」(野党関係者)形だ」 

    労働力不足の状況で、「年収の壁」である計103万円を計178万円へ引上げるのは当然のことだろう。これによって、どれだけ所得税が減るのか。財務省は、そちらが気になっている。玉木氏は、財務省出身である。その辺りのことは計算済みのはずだ。

     

    (4)「玉木氏は、「日本では2大政党的政権交代は難しい」というのが持論で、連立政権を前提とする「穏健な多党制」を主張してきた。小選挙区で議席獲得が難しくとも、中小政党も議席を得やすい比例票の獲得を目指し、競合を辞さずに積極擁立を続けてきた戦略が奏功した。今回、国民民主がキャスチングボートを握る状況が生じ、玉木氏周辺は「この時を待っていた。国民民主が掲げた政策を実現させれば、さらに支持を広げられる」と期待する。玉木氏も他党を巻き込んで政策を実現し、来年の参院選に臨む意向で「参院選が正念場だ。いかに勢力を伸ばせるか実力が問われる」と意気込む」 

    日本の政治的土壌は、言い悪いは別として保守系である。今回の「政治とカネ」の発端になった共産党の全国比例票は、19.3%も減っている。本来ならば、政治改革の先導者だけにそれなりの評価があっても良かった。だが、公約が現実離れしている。「集団的自衛権の行使を容認する閣議決定と安保法制を廃止する。日米同盟の強化に反対する」となっている。これでは、安心して1票を投じられないのだろう。中ロに寝首をかかれるからだ。 

    (5)「国民民主が求める「減税」には代替財源の確保が課題となる。玉木氏は税収の上振れ分を充てるとしているが、安定財源もなく減税を実施するのは困難だ。立憲関係者は、「国民民主の政策には現実味がない。与党が簡単に受け入れるとは到底考えられない」と分析した」 

    国民民主党は、賃金上昇率が「物価+2%」に達するまで消費税5%に減税する。インボイス制度は廃止すると公約に掲げている。だが、インボイス制は脱税防止で不可欠である。中小業者に多額の「益税」を与えることになるからだ。つまり、消費者が支払った消費税のうち、国庫に納入されず、合法的に事業者の手元に残る部分である。インボイス制は、先進国共通である。税法上の公平性は維持されなければならない。国民民主党は甘えないことだ。

     

     

     

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    サムスン電子は、非メモリー半導体技術の未熟さによりファンドリー事業(半導体受託生産)が、大赤字に陥っている。問題は、これが自社のスマホ生産にも影響しており、非メモリー半導体を外部から購入しなければならない羽目に陥っている。こうして、自社生産の限界が露呈されるとともに、スマホ部門の採算性悪化という新たな問題を引き起している。 

    『ハンギョレ新聞』(10月30日付)は、「半導体技術競争力の低下でサムスン全体が揺れる、スマホとの相乗効果も低下」と題する記事を掲載した。 

    サムスン電子の自己資本利益率(ROE)の後退は、「総合電子企業」の強みが色あせた現実を示している。総合電子企業としてのサムスンの特徴は、スマートフォンのような完成品をはじめ、これに入る半導体やディスプレイなど部品まで全て自社で作る点にある。各事業間の相乗効果を通じて利益を最大化できることがメリットである。逆に、さまざまな事業の中で一つが揺れ始めれば、危機が簡単に会社全般へと広がるというデメリットにもなる。その過程で効率が低下し、利益も停滞する。サムスン電子でもこのような危機が現れているというのが専門家たちの診断だ。

     

    (1)「証券会社の資料を総合すると、サムスン電子の非メモリー半導体部門は今年3兆6000億ウォン(約3990億円)水準の営業損失を記録する見通しだ。サムスンの非メモリー半導体は、設計担当のシステムLSI事業部と製造担当のファウンドリー(半導体受託生産)事業部に分けられる。証券会社各社は、これらの事業部が昨年に続き、今年と来年もサムスン電子の営業利益を数兆ウォン削減するものとみている」 

    サムスンは、非メモリー半導体が技術面で遅れており、これがファウンドリー事業部のほかに、スマホ事業へも跳ね返って業績全体の悪化を招いている。 

    (2)「その理由はなんだろうか。非メモリー半導体部門の主な顧客は、ほかでもない同社のモバイル事業部だ。非メモリー半導体部門の主要製品はスマートフォンの頭脳の役割を果たすアプリケーション・プロセッサー(AP)「エクシノス」であるためだ。ギャラクシーのスマートフォンを作るモバイル事業部は、エクシノスと他社の製品を比較してからどの部品を使うかを選択する。通常は、エクシノスと米国「クアルコム」の「スナップドラゴン」を混用してきた。スナップドラゴンは品質が相対的に優れているが、他社から買ってくるだけに割高であるため、独自生産するエクシノスと共に使われてきた」 

    サムスンの非メモリー半導体部門の主要製品は、スマートフォンの頭脳であるアプリケーション・プロセッサー(AP)「エクシノス」である。このエクノシスが、歩留まり率の低下によって割高になっている。となれば、代替品として米クアルコム社製品を使わざるを得ない。それだけ、コスト高になっているのだ。

     

    (3)「業界は、来年初めに発売されるギャラクシースマートフォンの新製品に、エクシノスが搭載されない可能性が高いとみている。エクシノスの生産における収率(良品比率)が低いため、「ギャラクシーS23」に続き「ギャラクシーS25」もスナップドラゴンに「全賭け」するとみられている。それが事実なら、非メモリー半導体部門においてはエクシノスの販売量が大幅に減ることになる。モバイル事業部にとっても、クアルコムだけに依存すると交渉力が低くなり、より多くの費用を支払わなければならないため、これは悪材料といえる。結局、サムスンのモバイルと非メモリー半導体のいずれにとっても収益性が悪くなりうるという話だ」 

    サムスンが、来年初めに発売予定のスマホ新製品では、APにクアルコム社製品を採用せざるを得なくなる。これは、自社製非メモリー半導体の使用量が減ることを意味するので、サムスン全体の業績の足を引っ張る。 

    (4)「サムスンのような総合電子企業で、一方の事業の苦戦が他方の事業にも打撃を与え悪循環を招くという点を示している。エクシノスの生産を担当するファウンドリーは2017年に独立事業部としてスタートし、会社の新しい成長動力として注目されたが、半導体の回路線幅が7ナノメートル(nm)以下に薄くなる「超微細化」の局面に進入した後、技術競争力が急激に落ちたという市場の評価を受けている。そして、エクシノスを中心にモバイル事業の競争力にも悪影響を及ぼすようになったわけだ」 

    サムスンは、前宣伝と異なり7「ナノ」生産局面に入って、技術競争力が急激に落ちたとみられている。半導体「後工程」の未熟さが一挙に表面化しているのだ。これは、半導体メーカーにとって致命傷である。

     

    (5)「サムスン電子は最近、ファウンドリーだけでなく、主要事業が全て競争力の低下に直面したとみられている。「絶対王者」として君臨してきたメモリー半導体は、高帯域幅メモリー(HBM)のような先端領域で力を発揮できずにいる。モバイル事業部も今年初め「ギャラクシーS24」で話題になったが、その後フォルダブルフォンの実績不振と相次ぐ品質問題に悩まされている。NH投資証券のリュ・ヨンホ研究員は「(サムスン電子の資本利益率が下落するのは)すべての事業が総体的に厳しいため」とし、「例えば、モバイル事業はエクシノスを使えないので利益が増えず、家電とディスプレイも停滞しており、半導体も予想ほど成長できずにいる」と語った」 

    サムスンの非メモリー半導体の弱体化は、日本半導体が衰退した過程と二重写しになっている。日本は、高技術ゆえに安価なパソコン(PC)やスマホの半導体生産に即応できず敗北した。サムスンは、日本と異なり低技術ゆえに高度の非メモリー半導体を低コストで生産できない事態に陥っている。技術面での対応は、短期間で克服するのは不可能だ。サムスンは正直正銘、困難な局面へ遭遇した。

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