習近平中国国家主席は、国民へ「耐乏生活」を強いることで現在の不動産バブル崩壊後遺症を克服しようとしている。資本主義経済の原理である「市場経済」を無視して、「中国式現代化」で乗切ろうとしているのだ。これは不可能であり、矛盾を拡大するだけだ。こうした誤りに気付かずに、「猪突猛進」する中国は、どこへ行くのか。
『Forbes Japan』(12月20日付)は、「日本の失敗に学ばぬ中国、最新の過ちは最悪の事態を招くかもしれない」と題する記事を掲載した。
習近平指導部は、アジア最大の経済大国が最悪の事態へと突き進むのを加速させかねない根本的な過ちを犯している。焦点は、中国共産党が低迷する家計需要にどう対処しているか、すなわち短期的な景気刺激策と、それに伴う国債利回りの低下である。これは、1990年代に日本が不良債権問題に対処したのとまったく同じ対応だ。そして、日本は今なおその余波に苦しんでいる。
(1)「必要とされているのは、社会的セーフティーネットを構築し、貯蓄よりも消費を促すための大胆かつ緊急の措置だ。習指導部の改革チームがこの大きな経済的空白を埋めるまでは、経済停滞に対して対症療法で時間稼ぎをしているだけにすぎない。中国政府がなるたけ迅速に行動し、実施するべき改善策は他にもある。低迷する不動産セクターの立て直し、より活気ある資本市場の創出、記録的な若年失業率の引き下げ、制御不能なまでに膨れ上がった地方政府の債務削減、国有企業による寡占の抑制、そして透明性の向上などだ」
習氏は、社会的セーフティーネットを構築するどころか、貧しさに耐えろという間違った方向を選んでいる。「第二の長征」を試している。
(2)「ことデフレ対策となると、人民元の過剰な家計貯蓄を消費に回すインセンティブほど急を要するものはない。これは構造的な課題であり、資金投入にとどまらない強力な政策対応が求められる。中国の人口動態を考えれば、その重要性は明らかだ。高齢化は、本質的にデフレ要因となる。なぜなら70代の人々は20代や30代と同じようには消費しないからだ。中国の債券利回り低下を受けて、日本を引き合いに出すエコノミストが相次いでいる。習指導部が14年ぶりとなる金融緩和姿勢を示した後、中国国債の価格は急上昇している。10年債の利回りが右肩下がりを続ける中、市場関係者はゼロ金利へと向かう可能性がより現実味を帯びてきたとみている」
市場は、金融緩和姿勢が中国経済を最悪事態へ追込むとみている。家計への財政支援がない結果、経済が成長軌道へ誘導されないと判断しているからだ。金融緩和だけが突出すれば、人民元安→物価停滞という最悪事態が到来する。10年債の利回りが右肩下がりを続ける理由である。
(3)「そして、それこそ中国が「ゆでガエル化」し、本当に深刻な危機に陥るときだ。鍋の中のカエルはゆるやかに上昇する水温には気づけず、問題を感知したときにはすでに手遅れとなっている──よく知られたこの寓話が真実であることを世界に証明している主要経済国があるとすれば、それは日本にほかならない。要するに、人は状況が壊滅的になるまで、忍び寄る危機に気づきにくいということだ。経済的な観点から見ると、日本はまさにその典型である。25年以上にわたり歴代日本政府は、不良債権問題への最善の対処法は大量の国債発行、大々的な公的資本注入、ゼロ金利であると考えていた」
日本は、「コスト・カット」に明け暮れて、賃金をコストとみたことに間違いがあった。賃金は、新規需要をつくり出す源泉である。このことを思い知らされたのだ。中国は、まず家計に自信を持たせる政策を行うべきだが、習氏の「思想」では無視されている。
(4)「中国は、このパターンを回避しなければならない。少なくとも現時点では、そうなってはいない。日本から得られる大きな教訓は、問題の(家計という)根本原因に当たるよりも、対症療法をとりがちな政府は、経済的に「失われた数十年」に陥りやすいということである。習主席と李強首相が、これらの教訓からどの程度の学びを得ているかは不明だ。デフレの力学も市場に信頼感をもたらしていない。物価は6四半期連続で下落しており、現四半期も下落が続くようであれば(その可能性は非常に高いと思われる)、1990年代後半のアジア金融危機時の中国経済の状況に並ぶ」
中国社会では、伝統的に「個人」という概念は「邪悪」とされている。「私」ではなく、「我々」が優先するのだ。この結果、家計は無視される。それよりも、インフラ投資が「我々」の概念に一致する。こうした間違った概念が、中国経済を苦しめ続けるに違いない。
(5)「焦点は、中国共産党が低迷する家計需要にどう対処しているか、すなわち短期的な景気刺激策と、それに伴う国債利回りの低下である。これは、1990年代に日本が不良債権問題に対処したのとまったく同じ対応だ。そして、日本は今なおその余波に苦しんでいる。ここで、日本がかつて取った戦略が教訓となる。習指導部は、中国にとってより良い新たな戦略を立てるに当たり、世界の金融システムの力学をいつでも左右できるほど莫大な家計資産の活用に取り組むべきだ。そして、よりダイナミックで競争力のある中国経済の創出を支援すべきである」
中国は、家計を痛み付ける政策でなく、家計に安心感を与える政策に転換すべきだ。具体的には、過剰住宅在庫の処理を行い住宅価値の下落を止めることだ。この「正統派政策」は、習氏が採用しないであろう。よって、中国経済は今後、何十年も苦境に立たされるに違いない。




