勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2024年12月

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    習近平中国国家主席は、国民へ「耐乏生活」を強いることで現在の不動産バブル崩壊後遺症を克服しようとしている。資本主義経済の原理である「市場経済」を無視して、「中国式現代化」で乗切ろうとしているのだ。これは不可能であり、矛盾を拡大するだけだ。こうした誤りに気付かずに、「猪突猛進」する中国は、どこへ行くのか。

    『Forbes Japan』(12月20日付)は、「日本の失敗に学ばぬ中国、最新の過ちは最悪の事態を招くかもしれない」と題する記事を掲載した。

    習近平指導部は、アジア最大の経済大国が最悪の事態へと突き進むのを加速させかねない根本的な過ちを犯している。焦点は、中国共産党が低迷する家計需要にどう対処しているか、すなわち短期的な景気刺激策と、それに伴う国債利回りの低下である。これは、1990年代に日本が不良債権問題に対処したのとまったく同じ対応だ。そして、日本は今なおその余波に苦しんでいる。

    (1)「必要とされているのは、社会的セーフティーネットを構築し、貯蓄よりも消費を促すための大胆かつ緊急の措置だ。習指導部の改革チームがこの大きな経済的空白を埋めるまでは、経済停滞に対して対症療法で時間稼ぎをしているだけにすぎない。中国政府がなるたけ迅速に行動し、実施するべき改善策は他にもある。低迷する不動産セクターの立て直し、より活気ある資本市場の創出、記録的な若年失業率の引き下げ、制御不能なまでに膨れ上がった地方政府の債務削減、国有企業による寡占の抑制、そして透明性の向上などだ」

    習氏は、社会的セーフティーネットを構築するどころか、貧しさに耐えろという間違った方向を選んでいる。「第二の長征」を試している。

    (2)「ことデフレ対策となると、人民元の過剰な家計貯蓄を消費に回すインセンティブほど急を要するものはない。これは構造的な課題であり、資金投入にとどまらない強力な政策対応が求められる。中国の人口動態を考えれば、その重要性は明らかだ。高齢化は、本質的にデフレ要因となる。なぜなら70代の人々は20代や30代と同じようには消費しないからだ。中国の債券利回り低下を受けて、日本を引き合いに出すエコノミストが相次いでいる。習指導部が14年ぶりとなる金融緩和姿勢を示した後、中国国債の価格は急上昇している。10年債の利回りが右肩下がりを続ける中、市場関係者はゼロ金利へと向かう可能性がより現実味を帯びてきたとみている」

    市場は、金融緩和姿勢が中国経済を最悪事態へ追込むとみている。家計への財政支援がない結果、経済が成長軌道へ誘導されないと判断しているからだ。金融緩和だけが突出すれば、人民元安→物価停滞という最悪事態が到来する。10年債の利回りが右肩下がりを続ける理由である。

    (3)「そして、それこそ中国が「ゆでガエル化」し、本当に深刻な危機に陥るときだ。鍋の中のカエルはゆるやかに上昇する水温には気づけず、問題を感知したときにはすでに手遅れとなっている──よく知られたこの寓話が真実であることを世界に証明している主要経済国があるとすれば、それは日本にほかならない。要するに、人は状況が壊滅的になるまで、忍び寄る危機に気づきにくいということだ。経済的な観点から見ると、日本はまさにその典型である。25年以上にわたり歴代日本政府は、不良債権問題への最善の対処法は大量の国債発行、大々的な公的資本注入、ゼロ金利であると考えていた」

    日本は、「コスト・カット」に明け暮れて、賃金をコストとみたことに間違いがあった。賃金は、新規需要をつくり出す源泉である。このことを思い知らされたのだ。中国は、まず家計に自信を持たせる政策を行うべきだが、習氏の「思想」では無視されている。

    (4)「中国は、このパターンを回避しなければならない。少なくとも現時点では、そうなってはいない。日本から得られる大きな教訓は、問題の(家計という)根本原因に当たるよりも、対症療法をとりがちな政府は、経済的に「失われた数十年」に陥りやすいということである。習主席と李強首相が、これらの教訓からどの程度の学びを得ているかは不明だ。デフレの力学も市場に信頼感をもたらしていない。物価は6四半期連続で下落しており、現四半期も下落が続くようであれば(その可能性は非常に高いと思われる)、1990年代後半のアジア金融危機時の中国経済の状況に並ぶ」

    中国社会では、伝統的に「個人」という概念は「邪悪」とされている。「私」ではなく、「我々」が優先するのだ。この結果、家計は無視される。それよりも、インフラ投資が「我々」の概念に一致する。こうした間違った概念が、中国経済を苦しめ続けるに違いない。

    (5)「焦点は、中国共産党が低迷する家計需要にどう対処しているか、すなわち短期的な景気刺激策と、それに伴う国債利回りの低下である。これは、1990年代に日本が不良債権問題に対処したのとまったく同じ対応だ。そして、日本は今なおその余波に苦しんでいる。ここで、日本がかつて取った戦略が教訓となる。習指導部は、中国にとってより良い新たな戦略を立てるに当たり、世界の金融システムの力学をいつでも左右できるほど莫大な家計資産の活用に取り組むべきだ。そして、よりダイナミックで競争力のある中国経済の創出を支援すべきである」

    中国は、家計を痛み付ける政策でなく、家計に安心感を与える政策に転換すべきだ。具体的には、過剰住宅在庫の処理を行い住宅価値の下落を止めることだ。この「正統派政策」は、習氏が採用しないであろう。よって、中国経済は今後、何十年も苦境に立たされるに違いない。

    テイカカズラ
       

    韓国は、政治危機の真っ只中にある。最大野党「共に民主党」は、政権奪取に向って大統領代行の韓悳洙(ハン・ドクス)首相まで弾劾する、手のつけられない迷路に迷い込んでいる。韓首相は、憲法裁判所欠員の3裁判官を選任するにあたって、与野党が合意する人事決定を要望し、結論が出るまでは裁判官を任命しないとした。これが、最大野党を激高させて弾劾訴追を決定した。韓首相が、国会へ何を訴えたか、耳を傾けたい。

    『朝鮮日報』(12月26日付)は、「大統領職を代行する韓悳洙首相、憲法裁判官任命「与野党合意まで保留」、12月26日談話全文」と題する記事を掲載した。

    韓悳洙大統領権限代行・首相(注:その後に弾劾訴追)が26日、「与野党が合意して案を提出するまで憲法裁判官の任命を保留する」と表明した。韓権限代行は、「大韓民国の歴史に与野党合意なしに任命された憲法裁判官は一人もいなかった」として「憲法裁判官任命に対して合理的な国民が異見なく受け入れられる賢明な解決法が必ず必要だ」と述べた。憲法裁判官の任命を強行すべきだという野党の主張に対して、韓権限代行は「大統領権限代行が与野党の政治的合意のない政治的決断を下すことが、果たして韓国の憲政秩序に合致するのか」と述べた。以下は、韓悳洙首相の演説である。

    (1)「私は本日、国民の皆様が深い関心をお持ちの憲法裁判官の任命問題について、私が持っている悩みを率直に申し上げるためにこの場に立ちました。これまでわが国が歩んできた道を振り返ってみると、これより大きな困難が迫っても私たちは常に乗り越え、また乗り越えてきました。それを可能にした力の一つがまさに政治の力でした。理念対立で多くの悲劇を経験した韓国ですが、それでもいつも私たちのそばには陣営の有利不利を越え、国全体を考える政治家たちがいました。政治で解決しなければならないことを政治で解決してくださる大人たちがいらっしゃったので、私たちがここまで来られたのだと思います。今日、私たちが多くの葛藤を経験していますが、禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長、権寧世(クォン・ヨンセ)国民の力非常対策委員長指名者、李在明(イ・ジェミョン)共に民主党代表を含む与野党政治家たちが必ずそのようなリーダーシップを見せて下さるでしょうし、また見せなければならないと私は固く信じています」

    憲法裁判所の3人の裁判官候補が、与野党の合意で決まれば任命すると明言している。


    (2)「不幸なことですが、韓国はすでに3度目の大統領権限代行体制を経験しています。大統領権限代行は、国が危機を乗り越えられるよう安定的な国政運営に専念するものの、憲法機関の任命を含む大統領の重大な固有権限の行使は自制せよというのが、韓国の憲法と法律に盛り込まれた一貫した精神です。もしやむを得ずこのような権限を行使しなければならないのであれば、国民の代表である国会で与野党合意が先になされることが、今まで韓国憲政史で一度も崩れたことのない慣例だと思います」

    韓国憲政史では、憲法裁判所裁判官任命は、与野党合意が先になされるという原則が守れてきた。今回は、この原則を曲げて野党案の候補を任命せよと迫っている。

    (3)「黄教安(ファン・ギョアン)大統領権限代行・首相も、憲法裁の弾劾審判の判断に影響を与える任命はしないという原則に基づいて、憲法裁の判断前には憲法裁判官の任命をせず、憲法裁の判断が出た後に任命しました。このように、大統領権限代行が大統領の重大な固有権限を行使する前に与野党が合意する過程が必ず必要な理由は、法理解釈が交錯して分裂と葛藤が激しいにもかかわらず時間をかけて司法判断を待つ余裕がない時、国民の代表である与野党の合意こそ民主的正当性を確保し、国民の統合を引き出すことができる最後の堤防だからです」

    朴槿恵(パク・クネ)大統領弾劾時でも、大統領権限代行・首相は憲法裁の弾劾審判の判断に影響を与える任命をしないという原則を守った。最大野党は、弾劾裁判を有利にするように候補者決めて選任を迫っている。「多数の暴力」である。

    (4)「事態の早急な収拾と安定した国政運営のために、早急に解決されなければならない重大な事案の一つが憲法裁判官の充員だということに異見を持つ方はほとんどいらっしゃらないと思います。「国民が怒っているから任命すればいいじゃないか。何が問題なのか」とおっしゃる方々もいらっしゃいますが、この問題は残念ながらそんなに簡単に答えを決められないというのが私の悩みです。憲法裁判官は憲法に明示された憲法機関として、その役割と責任が重大です。韓国の歴史を振り返ってみると、与野党の合意なしに任命された憲法裁判官は一人もいなかったという点が、その座の重さを裏付けています」

    韓国の歴史を振り返ってみると、与野党の合意なしに任命された憲法裁判官は一人もいないという、事実を無視してはならない。

    (5)「憲法裁判官の補充について、与野党はわずか1カ月前まで現在とは異なる立場をとり、そしてこの瞬間も真っ向から対立しています。こうした状況で、野党は与野党の合意なしに憲法機関の任命という大統領固有の権限を行使するよう大統領権限代行に働きかけています。このような状況が続くと、ややもすすれば避けられない非常事態が起きない限り、大統領権限代行は大統領の固有権限行使を自制し、安定した国政運営だけに専念しろという韓国憲政秩序のもう一つの基本原則さえ損なわれる恐れがあります」

    1ヶ月前、与党は憲法裁判所裁判官候補を決めようとしたが、野党が反対して決めさせなかった。今度は、野党が自らに有利とみて強引に裁判官候補を決めようとしている。余りにも「党利党略」過ぎるのだ。

    あじさいのたまご
       

    韓国半導体は、中国半導体に技術面で追われていると信じ込んでいる様子だ。NAND型フラッシュメモリは、サムスンやSKハイニクスが世界市場を牛耳っているだけに、中国が、この分野へ進出してきたことに脅威を感じている。だが、これはまだ「取り越し苦労」という段階のようである。その背景をみると、次のような事情があるからだ。

    中国ファーウェイの最新旗艦スマートフォンは、1年前のモデルとほぼ変わらない半導体を搭載していた。スマホの進化は、半導体の技術進歩によって実現する。ファーウェイには、その肝心のハイレベル半導体を入手できず、大きな障害に直面している。中国半導体が、米国の輸出規制によって、技術進歩で大きな網をかけられている結果だ。

    中国は、半導体の製造装置や製品も米国の禁輸対象になっている。中国は、この制約を乗り越えるべく、古い半導体製造装置を使って「マルチパターニング技術」という面倒な過程を導入している。従来1回で済む露光を複数のパターンに分割し、あとでそのパターンを重ね合わせるものだ。手間暇かかって、ズレを生じやすい難点があるという。この方法は、広く知られており、歩留まり率が低く高コストになる。ファーウェイは、この障害に泣かされている。だが、韓国半導体はまだ、こういう中国の裏技を正確に認識していないようだ。

    『中央日報』(12月29日付)は、「『サムスンやSKとも競争可能な水準』、業界が驚いた中国の半導体技術」と題する記事を掲載した。

    中国のメモリー半導体が再び技術障壁を超えた。今度はNANDだ。半導体業界によると、中国の致鈦が新型2テラバイトソリッドステートドライブ(SSD)を最近発売し中国内需市場を中心に販売に入ったことが確認された。SSDはメモリー半導体であるNAND型フラッシュ基盤の製品で、最近人工知能(AI)の発達によりデータ保存・処理量が急増して需要が増加している。

    (1)「半導体分析機関が、一斉にこの製品を入手し分解したところ衝撃的な結果があふれた。初期性能テストで、サムスン電子やSKハイニックスなど先頭圏のNAND企業と十分に競争可能な水準の速度が出た。このSSDは、中国長江存儲科技(YMTC)の第5世代3D NAND技術を基に作られた。YMTCはこの過程で先端パッケージング技術のハイブリッドボンディング工法をさらにアップグレードして量産に適用するのに成功したことが確認された」

    これは、製品の質は韓国メーカーを追っているが、製法が「原始的」なマルチマターニングである。高コストで量産化が困難である。

    (2)「YMTCは、中国企業で初めて3D NAND積層技術を活用したメモリー半導体を量産するのに成功した会社だ。中国国営企業の清華ユニグループ傘下にあり事実上中国共産党の影響力の下にある。世界のNAND市場では業界5~6位圏に入る。2022年に米国はYMTCを輸出統制リストに上げすべての先端半導体装備供給を防いだ。YMTCは、アップルのiPhoneへのNAND供給を目前にしていたが、米議会が直接乗り出してどうにか阻止したほど技術力の側面では既存のメモリー半導体企業を十分に脅かせるという評価を受けている」

    YMTCには、先端半導体製造装置が設置されていないので、「手造り」(マルチパターニング)するしか方法がないのだ。

    (3)「中国のメモリー半導体企業は、旧型メモリー製品であるDDR4を市中価格の半分水準で浴びせ出し韓国企業に打撃を与えている。中国発のメモリー攻勢によって、DRAMの市場価格が下がり続けているだけでなく、メモリー半導体を事実上全量輸入していた中国の電子業界が自国企業の半導体を使い始め韓国企業のシェアも脅かせる姿だ。半導体業界関係者は、「中国がついにDRAMとNANDの両方でメモリー大手3社(サムスン電子、SKハイニックス、マイクロン)に意味ある打撃を与えられる技術水準に入った」と話しているほど」

    中国は、旧型メモリー製品であるDDR4を市中価格の半分の価格で輸出している。それだけに、韓国は中国の技術レベルを買いかぶっているのであろう。政府補助金でダンピング輸出が可能なのだ。

    (4)「NAND世界市場では現在、先頭圏の間で300層前後の超高層競争が展開している。積層段数が多いほど性能が高い。だが、YMTCは、先端半導体装置を自由に購入できず、窮余の策として2つのウエハーを貼り合わせてNANDを作っている。サムスン電子、SKハイニックス、マイクロンと比べ生産原価負担が大きくならざるをえない構造だ。中国のファウンドリー(半導体委託生産)1位のSMICが挑戦している先端半導体製造方式も、やはり米国の規制で工程に必要な極端紫外線(EUV)装備なく既存の方法を応用している。コストと効率の側面で限界がくるほかない構造だ。結局、歯の代わりに歯ぐきで先端チップを作る中国半導体にも近く限界がやってくるとみる意見が次第に増えている」

    YMTCは、技術的壁を乗り越えるべく便宜的に、2つのウエハーを貼り合わせてNANDを作っている。これは、コスト高を招く最大要因だ。歩留まり率の低下という宿命的な技術障害に遭遇している。中国は、手作業でしかハイレベル半導体を作れないのだ。この厳しい現実をみれば、中国半導体が技術的脅威論には該当しない。

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    世界の原油市場は、下落説が強くなっている。2025年は、米国トランプ政権による原油増産政策やOPECプラスの増産が進むとみられる一方、中国経済の不振が需要の伸び悩みにつながるからだ。ウクライナや中東をめぐる地政学リスクで、原油高要因はくすぶるものの、原油価格は下落に向っている。IEA(国際エネルギー機関)が発表した2025年の石油市場は、日量140万バレルの供給超過になると予測する。

    原油相場は現在、WTIベースで1バレルあたり約70ドルである。これが、50ドル見当まで下落するとの見方が強くなっている。日本のガソリン相場は、現在の1リットル約180円が150円程度まで下落可能とされる。

    中国は、需要面で世界の原油相場へ大きな影響を与えている。この中国が、経済減速とEV(電気自動車)へのシフトによって原油需要の低下が見込まれている。

    『日本経済新聞』(12月29日付)は、「中国、原油需要はや天井 輸入量 前年割れ見通し 『エネ安保』にらむ」と題する記事を掲載した。

    世界2位の経済大国、中国の原油需要が業界の想定よりも早く頭打ちになるとの見方が出てきた。乗用車では電気自動車(EV)を含む新エネルギー車の販売台数が月間で初めてガソリン車を抜くなど国家主導で経済構造の転換が進む。表向きの理由は脱炭素だが別の狙いも見え隠れする。中国の動向は原油相場の先行きを左右する。

    (1)「早期ピーク説が浮上したきっかけは、中国税関が毎月公表する原油輸入量だ。10月まで6カ月連続で前年割れとなり、1~11月累計でも前年同期比2%減となった。2024年通年でも前年を下回る可能性が高まっている。中国需要の弱さを受けてWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は1バレル70ドル前後と、年初来安値に近づいている」

    中国の原油輸入量は、24年1~11月累計で前年同期比2%減である。WTI原油先物相場は、1バレル70ドル前後で年初来安値に近づいている。相場が力を失った。

    (2)「原油需要は短期的には景気循環、中長期では省エネの進展など経済構造の変化によって決まる。一部の専門家は景気停滞だけでは足元の需要低迷を説明できないと考え始めている。英キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、キエラン・トンプキンス氏は「中国の需要は構造的に弱まる時代に入りつつある」とみる。丸紅経済研究所の李雪連上席主任研究員も「すでにピークにさしかかった可能性がある」と話す。国際エネルギー機関(IEA)公表の見通しによると中国の原油需要は30年ごろに頭打ちになる予想になっている。仮に原油需要が23~24年に天井をつけたとすれば、IEAの想定よりも速いスピードで中国経済の脱・原油依存が進んでいることになる」

    中国の原油需要は、構造的に弱まる時代に入りつつある。不動産バブル崩壊という歴史的事件に遭遇している以上、当然である。

    (3)「実際、中国の原油輸入量は20年以降、頭打ち感がでており、IEAの想定より早まるシナリオはあり得る。「裏付け」となる動きもある。例えばEVなど新エネルギー車の急速な普及だ。乗用車の新車販売に占める新エネ車の割合は24年半ばにガソリン車を上回るようになった。官民でEV充電設備の整備を進め、24年9月末時点で1143万カ所と前年同期比5割増となった。中国国内の石油製品需要をみるとガソリンやディーゼルなど自動車向け燃料が全体の半分近くを占める。EV普及が原油需要に与える影響は大きい」

    中国の原油需要鈍化は、EV普及によってスピードが速められている。

    (4)「さらに政府は、世界最大規模の石油精製能力の抑制に動き始めている。5月発表の「2024~25年省エネ・炭素削減行動計画」によると、精製施設の再編を通じて25年末に原油の処理能力を年間10億トン以下に抑えるという。27年ごろにピークを迎え、減少に転じる公算が大きい。なぜ政府は脱・原油依存を急ぐのか。温暖化ガスの排出量実質ゼロの達成を目指しているというのが表向きの理由だ。一方でガス排出量が多い石炭の消費や輸入は増えており、ちぐはぐ感は否めない」

    中国は、原油輸入量を減らしている裏で、石炭の消費や輸入を増やすという矛盾した動きをみせている。

    (5)「エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の竹原美佳調査部長は「米国など対外関係の脅威に備え、エネルギー安全保障戦略として再生可能エネなど国内の生産能力を強化する狙いがある」と話す。中国は石油の輸入依存度が7割と、天然ガス(40%)や石炭(7%)に比べて大きい。有事には米国によって供給網を遮断されるリスクがある。脱炭素を標榜しつつ、エネルギー自給率を高めるのが真の狙いとの見立てだ」

    中国が、原油輸入を減らしている理由に米国との有事が想定されているという。台湾侵攻の「夢」を捨てていないのだ。

    (6)「中国需要の構造的な低迷は、原油価格の形成に影響を及ぼす。00年代の原油需要は中国がけん引役だった。現時点でインドが中国に匹敵する需要けん引役になるとの見方は少ない。経済産業研究所の藤和彦コンサルティングフェローは石油輸出国機構(OPEC)加盟国による価格維持政策は限界を迎え、「原油価格は1バレル40~50ドル台が当たり前になる可能性がある」とみていた」

    原油価格は、1バレル40~50ドル台が当たり前になる時代がくる可能性もある。これが実現すれば、日本経済も原油輸入額が約215億ドル減る。


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    韓国半導体は、サムスンのファンドリー事業(受託生産)の赤字で将来性に赤信号が灯っている。サムスンは、米テキサス州テイラー市に半導体工場建設計画を立てたが、当初予定の規模を縮小した。ファンドリー事業の技術的限界の結果とみられている。こうした状況を受けて、韓国の半導体学会はファンドリー事業への危機感を強め、サムスン依存からの脱却を目指している。国営半導体企業の設立構想が出てきた背景である。

    『レコードチャイナ』(12月28日付)は、「韓国半導体 起死回生の『KSMC』設立を計画 経済効果は30兆円以上―中国メディア」と題する記事を掲載した。

    中国メディア『環球時報』(12月27日付)は、韓国メディアの報道を引用し、台湾がTSMCで成功した方式にならい、韓国政府が国営ファンドリー「KSMC(Korea Semiconductor Manufacturing Company)」の設立を計画していると伝えた。

    (1)「記事は、初めに「ソウル新聞など複数の韓国メディアによると、韓国の国家工学アカデミー(NAEK)で先ごろ開かれた検討会で、韓国工業界と学術界から台湾のTSMCのように政府が援助するファウンドリーメーカーの設立が提案されたという。この計画は、国内半導体産業が直面する課題に対処し、世界市場での競争力を強化するために、(最先端、伝統的なものを含めた)多様な製造プロセスを通じてファウンドリとファブレス(工場なし)企業の間でバランスの取れたシステムを構築することを目的としている」

    「国営半導体企業設立構想」は、サムスンがファンドリー事業から撤退する事態を想定したものである。こうした最悪事態に陥ると、多様な製造プロセスが育成できなくなるという危機感が強く出ている。

    (2)「専門家の試算では20兆ウォン(約2兆1500億円)規模の投資で、2045年までに300兆ウォン(約32兆円)の経済効果を生み出すという」と伝えた。続けて、「韓国の半導体業界の関係者によると、今年の半導体の業績は回復基調にあるものの、業界が歴史的に最大の危機を迎えていることに変わりはなく、世界で半導体産業の競争が激化する背景の下で、これまで韓国がリードしていたメモリチップの技術は徐々に弱まりつつあり、投資も先送りされ、人材流出や政策のサポート不足などの問題が業界の発展を難しくしている」

    ファンドリー事業は、20兆ウォン(約2兆1500億円)程度の規模では、競争力を持てないとされている。日本のラピダスのように最低5兆円規模の投資が必要だ。このことからも、「KSMC」は、本格的な事業構想でなさそうだ。

    (3)「データによると、「18~23年で、韓国のメモリチップ輸出額は830億ドルから、ほぼ半分の429億ドルまで減少した」と伝えた上で、専門家の意見として「KSMC構想は業界内の構造的な問題を解決し、台湾のUMC(聯華電子)やPSMC(力晶積成電子製造)のような、特殊な工程にも対応可能なファウンドリ企業と先進的な技術を持つ企業との間で相互補完ができるようになる。現在、韓国はサムスン電子の10ナノ以下の工程へ過度に依存しており、より多くの小型システムの企業が発展できずにいる」

    サムスンは、5ナノ半導体で歩留まり率が20~30%と低く赤字経営である。それだけに、撤退が噂に上っている。これが、韓国の関連技術育成において危機を招くと危惧されている。

    (4)「検討会でも、メモリと先進的なパッケージ技術の積極的な育成とタイムリーな設備投資の実行が主張された。ファブレスの半導体設計やパッケージ業界の成長の鈍化、人材流出、過剰な規制につながる現在のアラームを解決しなければ、韓国の半導体産業は世界の技術競争から脱落し、取り返せないほどの経済的打撃を被るだろう」と紹介し、「専門家は韓国政府が大企業の発展を後押しするのと同時に、中小企業へのサポートも強化し、中小の原材料や部品、設備メーカーへ直接投資することにより、半導体業界の製造システム全体の研究開発力の拡大を促すよう呼び掛けている」と指摘した」

    すでに、ファブレスの半導体設計やパッケージ業界において人材流出が始まっている。これを食止めるべく、KSMC構想が出てきた。

    (5)「記事は、最後に「業界関係者の中には、KSMCのような政府出資の企業が高度な製造プロセスへの挑戦に効果的に対処できるかを心配する声もあり、SKハイニクスからはサムスン電子の古いファウンドリ設備をKSMC計画の一部に利用することなどの提案がされているという」と伝えた」

    サムスン電子の古いファウンドリ設備を、KSMC計画の一部に利用するなどが提案されている。これは、サムスンのファンドリー事業撤退を前提にした話だ。


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