勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2024年12月

    テイカカズラ
       

    韓国の少子化はすでに世界一であるが、これによって高齢化が猛スピードで進んでいる。12月23日時点で65歳以上の住民登録人口は、全体の20.0%を占めた。国連は65歳以上の占める割合が7%以上を高齢化社会、14%以上を高齢社会、20%もしくは21%以上を超高齢社会と分類している。この定義によれば、韓国も日本同様の超高齢社会になった。

    問題は、政府の対策が追いついていないことだ。日本は、29.1%(2023年10月現在)で世界一だが、早めに対策を講じてきた。日韓逆転は2045年と予測されるが、合計特殊出生率の低下しだいでは、早まる可能性が大きい。K―POPなどと浮かれてはいられないのだ。

    『ハンギョレ新聞』(12月26日付)は、「日本より急速に『高齢者の国』化する韓国 低成長 貧困問題が目前に」と題する記事を掲載した。

    韓国は、わずか7年で高齢社会から超高齢社会に突入するなど、世界で例のないほど急速に老いていっている。23日に総人口の20%を超えた。韓国は急速な高齢化だけでなく、低成長の常態化、貧弱な福祉、少子化問題に至るまで多層的な課題に直面しており、社会全般への悪影響が懸念される。

    (1)「韓国は2000年に、総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が7.3%となり高齢化社会に突入したが、それからおよそ24年で超高齢社会となった。世界で最速だ。フランスは154年、ドイツは76年かかっており、これまでの最速だった日本(35年)よりも11年速い。統計庁によると、韓国は2044年に高齢者の割合が36.7%となり、日本(36.5%)を上回って世界で最も高齢化した国となる見通しだ」

    儒教文化圏の韓国は、「女性差別」が激しい国である。男性が、家事・育児に参加しないことも手伝い、合計特殊出生率は世界一低い危機状態である。これが、人口高齢化を加速している。

    (2)「さらに深刻なのは、少子化の常態化まで重なっていることだ。合計特殊出生率は昨年ついに0.72にまで下落。これにより、2020年には出生児数より死者数の方が多くなる、いわゆる「デッドクロス」と呼ばれる人口の自然減少がはじまった。生産年齢人口(15~64歳)が減るとともに高齢者人口が急速に増えることで、韓国の人口構造は40~60歳の多い現在のつぼ型から、2050年には高齢層の人口が圧倒的に多い逆ピラミッド型へと変化する見通しだ」

    人口高齢化の加速現象は、生産年齢人口を減らしており経済成長率を引下げる要因になっている。

    (3)「急速な少子化と高齢化は、経済に直接的な悪影響を及ぼさざるを得ない。ソウル大学人口政策研究センターのイ・サンリム責任研究員は、「高齢者の増加に伴って購買力が低下するだろう」として、産業的にも「若い人が減るため革新性が落ち、高齢者は引退するので熟練性も低下する」と語った。実際に韓国経済研究院(韓経研)は「人口構造の変化が国内総生産(GDP)に及ぼす影響の推定および示唆点」と題する報告書で、「少子高齢化の深化で生産可能人口が1%減少すると、GDPは約0.59%のマイナス成長となる」と分析している」

    生産年齢人口が1%減少すると、GDPは約0.59%のマイナスになる。韓国経済にとっては、「踏んだり蹴ったり」の厳しい事態が起こる。

    (4)「統計庁の将来人口推計によると、生産年齢人口100人当たりの65歳以上の人口を意味する「老年人口指数」は、2022年24.8である。だが、2030年38.0、2040年59.1、2050年77.3、2060年90.3、2072年104.2と、大きく上昇する見通しだ。延世大学のチェ・ヨンジュン教授(行政学)は、「低成長社会に突入する中で高齢化が深刻化すると、成長率がより下がる可能性が高い」とし、「高齢者の生活の質を高めるために(福祉)支出を増やそうという意見と、経済のために(高齢者)福祉の支出を減らそうという声が、同時に高まるということが発生しうる」と懸念を示した」

    韓国は将来、高齢者と現役との間で「成果配分」で揉める時代が来ると予測される。日韓対立に加え、国内の「分配争い」が始まるという暗い見通しである。

    (5)「韓国の高齢者の貧困は、先進国で圧倒的な1位だ。65歳以上の高齢者の貧困率は40.4%(2020年)で世界最高水準であり、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均(14.2%)の3倍近い。代表的な老後所得保障制度である国民年金の歴史が浅いうえ、基礎年金や各種の福祉政策などが貧弱だからだ。やむを得ず生計のために働いている高齢者の割合も、世界最高水準だ。OECDの資料によると、昨年の65歳以上の高齢者の経済活動参加率は38.3%で、OECD平均(16.3%)の2.4倍だ」

    韓国の高齢者は、すでに「貧困化率」で世界最高水準にある。今後、ますますその傾向が高まる。韓国の未来は、暗いことになりそうだ。

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    韓国政界は、機能停止の渦中にある。高位公職者犯罪捜査処(公捜処)は25日、2回目の出頭要求にも応じない尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に対する逮捕状請求をめぐり「あまりにも遠い段階」とし「まだ検討する部分が多い」と明らかにした。要するに、尹大統領の逮捕は差し迫った事態でないことが明らかになった。尹大統領が最後まで出頭しない場合、公捜処が3回目の出頭要求をするのか、逮捕状請求をするのかに耳目が集中する中、公捜処は「逮捕状請求はあまりにも遠い段階」という立場を明らかにしたのだ。

    この事態を苦々しくみているのが、最大野党「共に民主党」代表の李在明氏であろうとの予測がされている。早期の大統領選になれば、李氏が当選の可能性があるからだ。ただ、李氏は選挙法1審で有罪判決を受け目下、控訴審に身を委ねている。有罪になれば、10年間の立候補が禁じられる。それだけに、早く尹氏が有罪になれば、李氏が有利になるとソロバンを弾いているとみられる。駆け引きしているのだ。

    『中央日報』(12月25日付)は、「弾劾事態が政界に送った警告状」と題するコラムを掲載した。筆者は、チェ・ジンウォン/慶煕大公共ガバナンス研究所教授である。

    憲法裁判所が、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の12・3非常戒厳宣言行為が、正当な政治・統治行為かどうかを審理して判決するまでもう憲法裁の時間だ。弾劾以降、政界は次期大統領選挙をめぐり深刻な対立を予告している。憲法裁がいつ判決を出すのかという時点をめぐっても激しく対立している。8件の事件、12件の容疑で裁判を受ける李在明(イ・ジェミョン)民主党代表の次期大統領選挙出馬可否と直結しているからだ。

    (1)「憲法裁は、180日以内に結論を出さなければいけないが、順調には進まないと予想される。弾劾賛成・反対側の市民団体がそれぞれ大規模集会を予告しながら味方に有利な判決が出るよう圧迫する支持層結集戦略を見せているからだ。政界もこれに乗る勢いだ。すでに政略的な政界の早期大統領選挙時計は作動している。弾劾の受恵者である李在明代表は、すでに「憲法裁は手続きを迅速に進めるべきだ」と圧力を加えている。李代表は「国政安定協議体」も提案し、地域貨幣予算のための補正予算編成に言及するなど国政主導権争奪戦に動いている」

    憲法裁判所は、180日以内に結論を出さなければならないが、ギリギリまで遅れるであろう。李在明氏は、早急に結論を出せと圧力をかけている。自分の控訴審判決が出る前に、憲法裁判所の結論が出れば、有利になるからだ。露骨である。

    (2)「国民の力は、弾劾賛成党論を提案した韓東勲(ハン・ドンフン)代表を辞任させるなど民心に逆行している。国民の力は、「李在明有罪」の反射利益を期待する戦略で早期大統領選挙での幸運を願っている。政界は、弾劾後にも戒厳事態を呼んだ陣営対決をまともに反省していない。手段を問わず権力を握ろうとする「選挙至上主義」に固執している。こうした態度に固執すれば国民は怒りの鉄槌を下すだろう」

    与党「国民の力」は、李氏に有罪判決が出れば、与党へ有利になると踏んでいる。

    (3)「もう政界は、小細工をやめて責任ある行動をとらなければいけない。多数決の暴政で法治主義を脅かす民衆扇動家の「民主政」と、戒厳を宣言する僭主扇動家の「僭主政」がもつれて民主共和国がどのように墜落するかを省察し、これを治癒・予防することに力を合わせる必要がある。2つのことが重要だ。「尹錫悦有罪」が、「李在明有罪」を隠す免罪符になってはいけない。政界が相手陣営の「有罪」で自分たちの陣営の過ちを隠そうとする手法から抜け出さなければいけない」

    「尹錫悦有罪」が、「李在明有罪」を隠す免罪符になってはいけない。これでは、韓国政治が浄化されないのだ。大統領弾劾という非常事態は、今回を最後にもう終らせるべきだ。

    (4)「1つ目、戒厳勢力に対する与党の粛静が求められる。戒厳事態は、逮捕・拘禁などで政治的競争者を除去しようとしただけに政治失踪を象徴する。政治は、複数の人たちが対話をして公論をすることだ。戒厳は、言葉でなく強圧的武力を使用したという点で極めて反政治的だ。今回の事態は、21世紀の脱冷戦時代に「冷戦(反共)自由主義哲学」で武装した戒厳勢力が反則負けを喫したようなものだ。「金建希(キム・ゴンヒ)特検」を前面に出して、自身の司法リスクを防弾しながら大統領選掌握を狙った李在明代表を捕らえようとした尹大統領は逆に捕虜の身になった」

    このパラグラフは、秀逸である。尹大統領の本音部分を、ズバリ指摘している。これが、真相であろう。

    (5)「2つ目、民主党の自省が必要だ。民主政治は、混合政を追求する民主共和政とは違い、多数派と少数派が対立する不安定な政治体制だ。このため民衆扇動家と僭主扇動家が競争する中で没落するとみるアリストテレスの「政体循環論」で今回の事態を眺める必要がある。今回の事態は、尹錫悦大統領と与党の責任だけでなく、立法独裁と弾劾を乱発しながら極端政争を誘発した野党にも責任がある。特に民主党は、李代表の犯罪容疑を捜査した検事を次々と弾劾した。選挙法1審で有罪を受けた李代表は、2審の裁判を遅延させようとした。政界は、弾劾後に尹錫悦も李在明も法の上にいないことを立証し、国民の信頼を得なければいけない」

    最大野党「共に民主党」の責任も重い。李代表の犯罪容疑を捜査した検事が、次々と弾劾されたからだ。韓国政治は、民主主義からほど遠い感じが強い。与野党ともに、深い反省が必要であろう。



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    ホンダ・日産・三菱で世界3位
    トヨタは中国でEV工場を建設
    EV世界決戦は日本が断然有利
    ラピダス最先端半導体が武器に

    EV(電気自動車)の登場が、世界の自動車業界を「100年に1度」の激変期に変えた。動力源がガソリンから電気へ変わって、自動車製造方法が大変革を起こしたからだ。EV部品は、内燃機自動車の3分の1で済むとされる。それだけに、他産業からの新規参入が跡を絶たない「激戦産業」へ変貌した。その象徴が、中国にみられる「EV地獄」である。

    自動車は、日本経済の基盤産業である。2022年で、全就業者の1割(約560万人)、名目GDPの2.5%(約14兆円)を占めている。戦後、日本経済の工業化を支えたのは、この自動車と家電であった。雇用吸収力が高く、政府が産業政策として支援した理由もここにあった。

    時代は変わり、政府といえども自動車再編へ口出しできる環境にない。企業の自主的判断で、再編を進める以外に道はないのだ。今回、ホンダと日産自動車が統合することで基本合意した。26年8月をメドに共同で持ち株会社を設立し、統一すると発表したが、政府はもちろん蚊帳の外である。

    この両社の統一案について、日産自動車の前会長ゴーン氏(逃亡中)は、否定的見解を表明した。「両社の間に補完性がないように見える。産業上、意味が無い。うまくいくだろうか」と懐疑的な見方だ。「二社とも日本の自動車会社で、強い分野も弱い分野も同じだ」として相乗効果は望みづらいと分析した。両者間の重複する技術などの取捨選択は、難題になると指摘している。

    ゴーン氏の指摘は、正しいだろうか。ゴーン氏は、逃亡中の身である。世界の自動車を取巻く状況が、必ずしも十分に把握されているとは思えない箇所があるからだ。それは、「二社とも日本の自動車会社で、強い分野も弱い分野も同じ」という部分である。合併相手が海外企業であれば、統合は成功すると言えないからだ。現に、フランスのルノーと日産の資本提携は、意思疎通面で円滑でなかった面がみられた。企業は、国籍にかかわらず、技術的に補完できる条件を備えていれば、円滑に行くものなのだ。

    特に、冒頭に指摘した「100年に1度の激変期」を乗り越えられる条件として、技術的な補完性が重要な要因になる。製造業での企業統一は、技術的な補完性が重要な要因である。具体的に言えば、日産自動車はEV、ホンダはHV(ハイブリッド車)、参加が有力視される三菱自動車は、PHV(プラグインハイブリッド車)で、でそれぞれ相互補完できる関係にある。ゴーン氏の指摘が、間違いであることを示唆している。

    ホンダ・日産・三菱で世界3位
    今回のホンダ・日産の統一では、両社の販売台数が年間700万台を上回り、三菱自動車を加えれば800万台を超える点に注目が集まっている。現在の世界1位はトヨタ、2位がフォルクスワーゲン(VW)、そして3位は、韓国の現代自に代わって、ホンダ・日産・三菱がランクインするからだ。

    世界自動車販売台数(2023年)
    1位 トヨタ      1123万台
    2位 VW        923万台
    3位 ホンダ・日産・三菱 813万台

    販売台数が増えることは、生産合理化効果が高まることを意味する。具体的に、次のような効果が期待できる、としている。

    ホンダと日産は、7つの分野で統合効果を引き出す。
    1)車の基礎構造となる車台の共通化を目指す。
    2)同じ車台をベースに内外装の異なる独自車種を両社が投入する。
    3)研究開発拠点は統合する。
    4)生産体制も見直す。世界にある両社の生産拠点を相互に利用する。
    5)工場稼働率を高め、人件費などの固定費削減につなげる。
    6)部品共同調達を広げることで供給網を最適化し、規模拡大による競争優位性を確保する。
    7)販売金融サービスの統合。

    こうした統合による合理化目標に対して、格付け企業はどのような評価をしているか。ムーディーズ・レーティングスは、両社の信用力に全体的にはポジティブであるものの、ホンダにとってはリスクを伴うと、指摘した。ムーディーズのシニアアナリストのディーン・エンジョー氏は、事業規模の拡大は特に信用指標が低い日産にとって信用力の強化につながると指摘。両社は研究開発コストを共有することも可能になると述べた。『ブルームバーグ』(12月23日付)が報じた。

    ホンダの四輪車事業の利益率は、二輪車事業に比べて低いのが悩みである。これが、日産の自動車事業を吸収することで、収益の柔軟性を低下させると指摘する。ホンダにとってはリスクを伴うとしている点だ。ホンダは、企業統一で営業利益率10%を目標にした。実現できれば、自動車の世界企業として恥ずかしくない経営基盤が確立される。トヨタですら、10%の営業利益率は、2015~16年に達成しただけである。(つづく)

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    自動車は、販売後のサービス提供で収益化を図る時代へ向っている。SDVは、無線通信を利用してソフトウェアの更新を行い、新しい機能を追加したり、既存の機能を改善したりすることだ。これにより、車両が販売された後も継続的に進化し続けることが可能になり、自動車メーカーには新たな収益源になる。日本では、トヨタがこのSDV戦略によってROE(自己資本利益率)20%を目標にする経営戦略を立てた。

    『日本経済新聞 電子版』(12月25日付)は、「トヨタ、ROE目標20%に倍増 世界の車大手でトップ級」と題する記事を掲載した。
     
    トヨタ自動車は、自己資本利益率(ROE)の目標を2倍の20%とする。上場企業の平均(23年度で9%台)を大きく上回り、世界の車メーカーでトップ級となる。販売後の車にサービスを提供するなど事業モデルを革新し、株主還元を積極化する。日本企業が資本効率を重視する流れが強まりそうだ。

    (1)「トヨタのROEは近年、9~16%弱で推移してきた。2025年3月期の市場予想は11%が見込まれている。直近ではROEの具体的な目標を掲げていなかった。効率的な経営の目安であり投資家が重視するROEを引き上げ、市場評価を高める。トヨタ幹部はROEについて「世界で勝つためには20%くらいを安定的に出さないといけないのではないかという話をしている。小さなアセット(資産)から大きな売り上げを生み出す」と話す。達成時期は明らかにしていないが、30年前後を想定しているとみられる」

    ROE20%目標は、2030年ころを達成時期に想定している。後述の通り、トヨタとNTTの共同開発によるSDVは、この頃を実用化時期としているので、これも目標達成の手段になっているのであろう。

    (2)「ROE改善策の一つは、事業モデルの革新だ。車の販売後に様々なサービスを提供し、新車販売に頼らない事業モデルを構築する。トヨタ車は世界で累計3億台超生産されており、潜在需要は大きいとみる。今でも部品交換や定期点検、販売金融などを展開し、こうした事業の営業利益は「毎年1000億円以上拡大している」(宮崎洋一副社長)という。新たに注力するのが、販売後の車に無線通信を使って機能を追加するサービス事業だ。運転支援や事故防止などの機能を加えたり、自動運転の精度を向上させたりする。「ソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)」と呼ばれ、米テスラがサービスを提供している。ソフトウェアが中心となるため、高収益が見込まれている。トヨタも技術開発を強化し、実証実験を重ねている」

    トヨタとNTTは10月末に、自動車の交通事故防止のためのAIや通信基盤開発で提携すると発表した。NTTの次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」を活用し、自動運転技術を向上させる。トヨタは、ソフトが車両の機能や特徴を決める「SDV」(ソフトウエア・デファインド・ビークル)の開発を進めている。両社で、2025年以降に共同開発を始め、30年以降の普及をめざすとしている。30年までに計5000億円規模を開発投資する。トヨタは、このSDVを活用して「ニュー・ビジネス」へつなげるのだろう。

    (3)「もう一つは、株主還元の拡充だ。金融機関の保有株売却の意向を受けて自社株買いを積極化しており、9月には25年4月までの取得枠の上限を1兆2000億円と従来から2割引き上げた。配当も安定的に増やす方針で、前期の配当総額は1兆円を超えた。配当と自社株買いを合わせた総還元性向は今期に5割を超す可能性がある」

    ROE20%達成には、株主還元策の拡充が前提になる。自社株買いと安定的増配を行う見通しを立てている。ここに注目すべきだろう。トヨタには、100年に1度とされる自動車激変期を、難なくクリアする技術的裏付けがあることだ。

    (4)「トヨタにとって、ROE20%は簡単ではない。ROEは純利益を自己資本の期中平均で割って求める。自己資本が前期平均の31兆円なら、純利益は6兆円超となる計算だ。最高益だった前期(4兆9449億円)から1兆円以上の上積みが必要になる。自己資本が35兆円なら純利益は7兆円となる。事業モデルの革新による利益水準の引き上げとともに、資産の有効活用や自己資本の最適化が達成のカギを握る。トヨタは総資金量(金融事業を除く、現預金など)が24年3月期で15兆円と、総資産(90兆円)の2割弱まで積み上がっている。総資金量は1年前に比べて3割増えた。圧縮に乗り出したものの、政策保有株やグループ株もなお多い。余剰な資産をどう効率化するかが課題となる」

    トヨタはROE20%を達成する前提として、事業モデルの革新による利益水準の引き上げとともに、資産の有効活用や自己資本の最適化を行う。余剰資産の効率化が課題になってきた。まさに、「持てる者の悩み」というところだ。日産自動車が聞いたら、垂涎の的であろう。



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    韓国社会は、政治的関心が高い反面で将来への不安心理が高まる「矛盾した構造」に陥っている。自信をもって大統領弾劾訴追案に賛成したのであれば、意気揚々とすべきであろう。だが、逆に不安に陥るという矛盾した心理状態で、財布の紐を締めるアベコベ現象を呈している。

    『ハンギョレ新聞』(12月25日付)は、「韓国、『内乱ショック』で消費心理が急激に冷え込む コロナ禍以来最大幅の萎縮」と題する記事を掲載した。

    韓国では「12・3内乱事態」ショックの余波で、消費心理が新型コロナパンデミック以来最も大幅に悪化した。

    (1)「韓国銀行が24日に発表した消費者動向調査の結果によれば、12月の消費者心理指数(CCSI)は88.4で、前月より12.3ポイント下がった。これは新型コロナパンデミックの衝撃が襲った2020年3月(-18.3ポイント)以来最大幅の下落だ。指数自体も2022年11月(86.6)以来2年1カ月ぶりの最低水準だ。内乱事態のショックで消費心理が急激に冷え込んだと分析される」

    12月の消費者心理指数が88.4で、前月より12.3ポイントもの急落である。大統領弾劾ショックである。

    (2)「消費者心理指数は、現在の生活状況・生活状況見通し・家計収入見通し・消費支出見通し・現在の景気判断・今後の景気見通しからなる6つの指数を利用して算出した指標だ。指数が100より大きければ消費者の期待心理が長期平均(2003~2023年)より楽観的という意味であり、100未満ならば悲観的という意味だ」

    消費者心理指数の構成項目からみて、経済に対する総合的判断である。これが、韓国社会の偽らざる「現状判断」である。先行き警戒論である。

    (3)「韓国銀行のファン・ヒジン統計調査チーム長は、「米国大統領選挙結果にともなう輸出鈍化の懸念などで11月にも小幅に下落したが、今月初めの非常戒厳事態でさらに大幅に下落した」として、「政治的不確実性がどれくらい早く解消され安定を取り戻すかによって、消費心理の回復速度も決まるだろう」と話した。これに先立って韓国銀行のイ・チャンヨン総裁は18日、物価説明会で「(内乱事態以後)様々な不確実性のために急激に下がった消費心理を安定させることが何より重要だ」と診断している」

    大統領弾劾訴追が、憲法裁判所で認められれば初夏には次期大統領選挙になる。ただ、朴槿恵大統領弾劾の際にも明らかになったが、2年間の個人消費は停滞する。早期回復は期待薄である。

    (4)「消費者心理指数を構成する6つの指数が全て大幅に下落した。現在の経済状況に対する認識を示す現在の景気判断(52)と、6ヶ月後の景気見通しを示す今後の景気見通し(54)が最も大幅(18ポイント)に下落した。各々2020年3月以降、2022年7月以降で最大の下落幅だ。現在の生活状況(4ポイント)、生活状況見通し(8ポイント)、家計収入見通し(6ポイント)、消費支出見通し(7ポイント)も軒並み下がった」

    景気悪化見通しが、最も大きいことが分る。これは、雇用不安や小幅賃上げという連想に繋がっている。

    (5)「住宅価格見通し指数(103)は前月より6ポイント下落した。マンション売買価格の上昇傾向が鈍化した影響で、9月(119)に約3年ぶりの最高水準を示して以来3カ月連続で下がっている。韓国銀行が10・11月連続で基準金利を引き下げたが、金利水準見通し指数(98)は前月より5ポイント上昇した。6カ月後の金利水準は今より低くなるだろうという見通しが依然として優勢だが、家計融資の規制および管理強化にともなう融資金利の上昇基調が影響を及ぼしたと韓銀は分析した」

    住宅価格見通しまで悪化させている。政治不安の招く範囲が、広範に渡ることを示している。

    (6)「今後、1年間の物価見通しを示す期待インフレ率は2.9%で、前月より0.1ポイント上昇した。消費者物価の上昇率が鈍化し、今年5月以降は下落傾向を示していたが上昇に反転した。最近、ドルに対する韓国ウォンの価値が急落し、米国発のインフレ圧力が高まるだろうという見通しなどが影響を及ぼしたものと分析される」

    政治不安によってウォン相場下落を招き、これが国内物価を上昇させるという、きわめて整合的な見通しになっている。驚くほど論理的である。この韓国社会が、大統領弾劾でお祭り騒ぎを演じ後で不安心理に陥るのは、これまた不可解な現象である、

    (7)「今回の調査は12月10~17日に全国2500世帯を対象に行われた。回答の90%以上が国会による尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾訴追案の可決(14日)以前に集められたものだと韓銀は明らかにした」

    来年1月の消費者心理指数は、さらに悪化している。調査期間が、100%大統領弾劾訴追案可決後になるからだ。仮に、大統領逮捕の事態になれば、底なしの悪化になろう。


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