勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2024年12月

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    中国人民解放軍の陳輝政治委員が、陸軍上将(大将)に昇進し、陸軍で政治的忠誠心の強化と人員の管理を担当する。陳氏は、陸軍勤務経験がない。国営新華社通信が23日報じた。陸軍経験のない陳氏の抜てきは予想外で、共産党の習近平総書記(国家主席)が、軍の統制強化を図ろうとしているとみられる。

    中国軍幹部の昇進や異動は、政治工作部による評価過程の審査を経る。自らの昇進が、政治工作部の評価によって命運が決まるだけに、高い評価を得るために賄賂が横行すると指摘されている。政治工作部が、汚職の温床になっているのだ。

    最近、驚くべきことは陳輝政治委員の上将昇進式で、およそ30人いるとされる現役上将のうち、4人がこの会合を欠席したと香港紙『星島日報』が24日伝えた。いずれも中国共産党の序列で上位約200人の中央委員を兼務している。欠席は、当局から「汚職嫌疑」を受けて調査されているとみられる。中国人民解放軍の汚職は、「底なし沼」となっている。

    『ブルームバーグ』(12月24日付)は、「中国人民解放軍で異例の人事、臆測呼ぶー習氏の統制強化図る動きか」と題する記事を掲載した。

    中国人民解放軍の陳輝政治委員が上将に昇進し、陸軍で政治的忠誠心の強化と人員の管理を担当する。国営新華社通信が23日報じた。陸軍経験のない陳氏の抜てきは予想外で、共産党の習近平総書記(国家主席)が軍の統制強化を図ろうとしているとみられる。

    (1)「陳氏(61)は以前、空軍に所属し、今年4月に新設された軍事宇宙部隊の政治委員に任命されていた。陳氏は秦樹桐氏(61)の後任となるが、秦氏退任の正式な理由は明らかにされていない。秦氏の前任者は、事実上の定年である65歳で退任した。国営中央テレビ(CCTV)の映像によると、秦氏と陸軍の李橋銘司令官は、陳氏の昇進式に姿を見せなかった。これは明らかに異例の事態で、臆測を呼んでいる。秦、李両氏の欠席理由について、国防省にコメントを求めたが、すぐに回答はなかった」

    中国軍の幹部クラスの交代は、ほとんどすべて汚職が原因で退任させられた「後釜人事」である。これほど、「カネの臭い」に弱い軍隊も珍しいが、「党の軍隊」であって「国民のための軍隊」でないことが生きがいを奪っているのか。あるいは、汚職が大将クラスの「権利」になっているのかも知れない。不思議な軍隊である。

    (2)「人民解放軍は、現役の兵員数で世界最大の軍隊だが、2人の国防相が相次ぎ更迭され、複数のロケット軍幹部が解任されるなど汚職を巡る不祥事に巻き込まれている。米国の国防総省は、中国が軍の現代化を進めるという目標を達成する上で、汚職調査が障害となる可能性があると分析している」

    汚職にまみれている人民解放軍は、軍隊としての規律も士気も保てないであろう。上官が、賄賂で懐を温めていることが知れ渡っている軍隊において、戦意は低くならざるを得まい。政治工作部の政治委員に「ゴマをすって」昇進を狙う。驚くべき軍隊である。

    『日本経済新聞 電子版』(12月24日付)は、「中国軍上将4人が会合欠席、香港紙報道 汚職調査拡大か」と題する記事を掲載した。

    中国人民解放軍の23日の重要会合に、軍階級の最高位である「上将」4人が欠席したことが波紋を広げている。中国軍では収賄など汚職による幹部の粛清が相次ぐ。規律を徹底するため調査を拡大した可能性がある。

    (3)「中国軍の最高意思決定機関である中央軍事委員会は23日、北京市内で上将の昇進式を開いた。同委トップを兼ねる習近平国家主席が出席し、陸軍の陳輝政治委員を上将に任命した。香港紙の星島日報は24日、およそ30人いるとされる現役上将のうち、4人がこの会合を欠席したと伝えた。陸軍の李橋銘司令官と秦樹桐前政治委員、海軍の袁華智政治委員、人民武装警察部隊(武警)の王春寧司令官だ。いずれも中国共産党の序列で上位約200人の中央委員を兼務する。

    上将昇進式で、およそ30人いるとされる現役上将の4人が、式典に欠席している。軍の重要な式典である。現役の上将が、こういう式典を欠席するのは尋常なことではない。軍人は本来、式典が好きなはずだ。きらびやかに飾って、出席する場であるからだ。

    (4)「星島日報によると、秦氏と袁氏は10月下旬の軍の幹部会議、王氏は11月21日の全国公安機関のビデオ会議にもそれぞれ姿を見せていなかった。汚職調査の対象になった可能性がある。習指導部は6月、李尚福前国防相と魏鳳和元国防相について贈収賄などを理由に党籍を剝奪した。国防省は11月、中央軍事委の苗華委員の職務を停止し「重大な規律違反」の疑いで調べていると発表した。苗氏の職務停止により、中央軍事委メンバーは主席の習氏のほか副主席2人と委員2人の計5人体制となった。同委は17年以降、7人で構成してきた。事実上2人が欠員する異例の状況が続く」

    腐敗する軍隊の士気は、高いはずがない。「上将」自体が、政治工作部に推薦によるのだろう。賄賂を贈って得た上将であれば、「賄賂資金」の回収をすべく収賄に陥るのだ。腐敗の連鎖である。






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    中国は、これまで頑なに財政赤字拡大へ抵抗してきたが、景気の実態が予想以上に悪化していることから、ようやく財政赤字拡大へ舵を切り始めた。もっとも、中国では事前宣伝が激しく、蓋を開けてみると「小規模」という拍子抜けの事態が頻発している。今回も、前宣伝で煽っておいて「食い逃げ」することも計算に入れておくべきだ。

    『ロイター』(12月24日付)は、「中国、来年の特別債発行過去最大の3兆元 消費や企業支援=関係筋」と題する記事を掲載した。

    中国当局は来年、3兆元(4110億ドル)相当の特別国債を発行することで合意した。関係筋が明らかにした。中国当局が景気テコ入れを強化する中、発行規模を今年の1兆元から大幅増額し過去最大規模とする。調達資金は、消費促進を狙った補助金プログラム、企業の設備更新、技術革新をけん引する先端分野への投資などに充てる。

    (1)「関係筋によると、「2つの主要な」プログラムと「2つの新しい」プログラムに約1兆3000億元、電気自動車(EV)、ロボット、半導体、グリーンエネルギーなど「新生産力」と呼ばれる先端製造業に1兆元余り、残りは大手国営銀行の資本増強に振り向けるという。新しい 「イニシアチブ」は、消費者が古い車や家電製品を下取りに出し、新品を割引価格で購入できる耐久消費財の補助金プログラムと、企業の大規模な設備更新を補助するプログラムで構成する。「主要な」プログラムは、公式文書によると、鉄道・空港の建設、農地の整備、重要地域の安全保障能力構築といった国家戦略実施プロジェクトを指す」

    1)「2つの主要な」プログラムと「2つの新しい」プログラムに約1兆3000億元。
    2)電気自動車(EV)、ロボット、半導体、グリーンエネルギーなど「新生産力」と呼ばれる先端製造業に1兆元余。
    3)残りは大手国営銀行の資本増強に振り向ける。
    4)新しい「イニシアチブ」は、消費者が古い車や家電製品を下取りに出し、新品を割引価格で購入できる耐久消費財の補助金プログラムと、企業の大規模な設備更新を補助する。

    (2)「OCBC銀行のアジアマクロ調査責任者は、市場予想を上回る規模だと指摘。「中央政府が追加レバレッジを提供できる唯一の機関で、中央レベルの債券発行は前向きと受け止められ、成長への追加支援となる可能性が高い」と述べた。国家発展改革委員会(発改委)は13日、今年の超長期特別国債発行で調達した1兆元について、約70%を「2つの主要」プロジェクトに、残りを「2つの新しい」計画に投じたと明らかにしている」

    今年の超長期特別国債発行で調達した1兆元は、「2つの主要な」プログラムと「2つの新しい」プログラムへ充当した。来年はこれらプログラムに約1兆3000億元と3000億元増やす計画だ。

    「2つの主要な」プログラムとは、次の内容である。
    鉄道・空港の建設  交通インフラの整備を進め、経済の活性化を図る。
    農地の整備  農業生産性の向上と食料安全保障の強化を目指す。

    「2つの新しい」プログラムとは、次の内容だ。
    耐久消費財の補助金プログラム  消費者が古い車や家電製品を下取りに出し、新品を割引価格で購入できるよう支援する。
    企業の大規模な設備更新の補助プログラム  企業が最新の設備を導入する際の費用を補助し、技術革新を促進する。

    (3)「来年の特別国債発行額は、2023年国内総生産(GDP)の2.4%に相当する。07年にはGDP比5.7%に相当する1兆5500億元発行した。ロイターは先週、中国指導部が25年の財政赤字目標をGDP比4%に引き上げることで合意したと関係筋情報を引用して伝えた」

    25年の特別国債発行額3兆元は、2023年国内総生産(GDP)の2.4%に相当するという。今年の1兆元から大幅増額し過去最大規模になる。


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    経済産業省は25日、次世代半導体を製造するラピダス向け法案の議論を始める。政府系機関による出資や劣後債の引き受け、税制優遇などを通じて国内での次世代半導体の量産を支援する。2025年度の予算案では、関連費用に3328億円を計上した。

    『日本経済新聞 電子版』(12月24日付)は、「ラピダス法案の議論開始へ関連予算は25年度3328億円」と題する記事を掲載した。

    経産省は、次世代半導体の支援法案に関する有識者委員会を25日に初めて開く。ラピダスが念頭にある。同社は25年春から北海道千歳市で最先端品の試作を始める。政府はこれまで9200億円の研究委託費を拠出してきた。

    (1)「27年の量産に向け、今後は政府系機関による出資や劣後債の引き受けといった金融支援、資本増強で発生する登録免許税の負担を軽減する税制優遇などを進める。出資の担い手を経産省傘下の情報処理推進機構(IPA)にすることも検討する。法案は25年の通常国会への提出を目指す。事業の透明性を高めるため、経産相が生産計画を承認する。進捗を有識者が監視する仕組みも取り入れる」

    政府が、ラピダス関連予算を決定している裏には、ラピダスの「2ナノ」最先端半導体開発が、予定通りに進んでおり「空振り」でないことで自信を深めているのであろう。ただ、財務官僚の中には、最新の技術開発情報を把握せず、「思い込み」で反対論を唱え一般メディアへ接触している様子は、報道される記事で手に取るようにわかる。

    (2)「委員会に先んじて政府は24日、25年度の予算案で次世代半導体関連に3328億円の計上を決めた。経産相と財務相の折衝で合意した。ラピダスの出資にはそのうち1000億円を充てる」

    経産相と財務相の予算折衝では、25年度予算でラピダスへ1000億円の出資を決定した。政治レベルでは、ここまでラピダス支援体制がしっかりと組まれている。

    『日本経済新聞 電子版』(10月24日付)は、「ラピダス量産へ『脱炭素電源の供給拡大』 武藤経産相」と題する記事を掲載した。

    武藤容治経済産業相は10月24日、北海道千歳市を訪れ、次世代半導体の量産を目指すラピダスの工場建設地を視察した。武藤氏は視察後に記者団の取材に応じて「本格的な量産には質、量ともに安定的な脱炭素電源の供給確保が重要だと説明を受けた。経産省として供給拡大に取り組む」と明言した。

    (3)「ラピダスの工場が立地する北海道では現状、原子力発電所は稼働していない。北海道電力は泊原発の再稼働を目指しており、原子力規制委員会が審査を続けている。武藤氏は「泊原発は北海道の電力供給を支え、脱炭素化のカギとなる重要な電源だ」と述べた。原子力のほか風力発電や地熱発電も重視する考えを示した」

    ラピダスは、2025年春から試験生産を始める。半導体工場は電力を大量に使用するだけでなく、二酸化炭素(CO2)を排出しない脱炭素電源へのニーズも高い。地元の北海道電力は、泊原子力発電所を再稼働し、火力発電の燃料の削減効果を出す方針を決めた。

    (4)「視察には、ラピダスの東哲郎会長や小池淳義社長が同行した。ラピダスは建設中の第1工場で回路線幅が2ナノ(ナノは10億分の1)メートル相当の半導体の2027年の量産を目指す。小池社長は、2ナノの量産がうまくいけば、第2工場を建て、さらに高性能である「1.4ナノの製造を計画している」と説明した」

    ラピダスは、すでに第2工場を建て、さらに高性能である「1.4ナノの製造を計画している」とまで展望している。2ナノの技術開発に成功したので、第2工場まで展望していることは政府の予算措置をスムースに進めている背景であろう。

    次世代半導体の製造に欠かせないのは、オランダASMLホールディングの極端紫外線(EUV)露光装置である。12月、千歳工場での設置作業が始まっている。記者会見したラピダス小池淳義社長は、回路線幅2ナノメートル半導体の製造に向けて順調に進んでいることを強調した。その上で、「導入されるEUV露光装置は1台や2台ではない」と話した。生産能力を表すことになりかねないため台数を極秘にする、と言葉を濁したのだ。先行きに、強い自信をみせたのである。

    ASMLは今秋、世界のEUV露光装置の受注状況について、「発注を取消した企業もあるが、新規に発注増に転じている企業もある」として、受注状況に変化がないことを強調した。発注を取消した企業は、すぐにサムスンであることは予測できた。ただ、ラピダスがサムスンの穴を埋めているとは想像もできなかった。ラピダスは、サムスンに取って代わる勢いであることを示唆している。

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    ホンダと日産は、経営統合を目指し協議を進めることで合意した。両社は、乗用車が事業の中心で、海外展開する国も重なっている。統合効果を生み出すには、重複する投資や管理体制の見直しなど、多くの課題が横たわっている。23日に行われたホンダ・日産自動車・三菱自動車3社の社長記者会見で、救済でなく最適化であると強調された。

    ホンダと日産とでは、社風の違いがある。この問題点は、経営統合会社のトップがホンダから出ることや、役員構成もホンダが多数という合意書ができているので解決可能だ。ホンダのリーダーシップで、「内紛リスク」が軽減されよう。ただ、ホンダ側の「度量」の広さが求められる。

    『毎日新聞 電子版』(12月23日付)は、「ホンダと日産、急転直下の統合協議 背景にある危機感と狙い」と題する記事を掲載した。

    ホンダと日産自動車が経営統合に向け協議入りすることで基本合意した。歩んできた歴史も得意とする自動車の分野もまったく異なるメーカーによる急転直下の経営統合は、急拡大する米国や中国の電気自動車(EV)メーカーに対する危機感の表れだが、業績が低迷し外資などから標的とされる日産を救済する狙いもある。「100年に1度」と呼ばれる変革期を乗り越える新しい価値を提供できるのか。統合に死角はないのか。

    (1)「『新興勢力も含め(競合と)戦う力を2030年ごろには持っていないと勝負にならない。自動車の電動化も単独でやろうとすると、かなりの研究開発費や投資が発生し、個社でやると非常に厳しい。経営統合が一つの解決手段になる』――。東京都内で23日、記者会見したホンダの三部敏宏社長は統合協議を始める理由についてこう力を込めた。

    自動車企業は、EVという大きな壁が立ちはだかっている。EVは、まだその入り口にあり、今後の技術革新によって優劣に大きな差が出る。経営統合の意味は大きい。

    (2)「自動車業界はEVへのシフトや、中国など新興勢力の参入で競争が激しさを増している。ガソリン車が主流だった時代は日本勢が世界を席巻していたが、EVだとエンジンはなく、モーターなどの少ない部品を組み立てれば完成するため、自動車メーカーでなくても参入が可能だ。特に次世代のEVはスマートフォンのようにソフトウエアを更新することで、自動運転やエンターテインメントなどの機能を追加することができるようになる。「スマホ化」した自動車はSDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)と呼ばれ、米テスラが先行して実用化。中国ではIT大手の華為技術(ファーウェイ)や百度(バイドゥ)、スマホ大手の小米科技(シャオミ)といった顔ぶれが開発競争に参入している」

    SDVは、コネクテッドカーの一部である。コネクテッドカーは、インターネットや他のデバイスと接続されることで、さまざまなサービスや機能を提供する自動車である。実は、日本がこの分野で先頭を切っている。NTTが、トヨタと連携し開発中である。ホンダ・日産もこのコネクテッドカー開発の恩恵によくせるであろう。

    (3)「SDVは、車に搭載するソフトウエアの研究や開発が競争の軸となるため、日本の自動車メーカーは、これまで得意としてきたハードウエア中心のものづくりからの大きな転換を迫られている。だが「ソフトウエア開発は4桁億円ぐらいの開発費がかかる」(三部社長)というほど、巨額の費用が必要となる。そのためライバルも含めた協力関係を作ることになった」

    SDV開発は、巨額の資金が必要だ。統合効果が期待できる分野だ。

    (4)「ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹・代表アナリストは、「今世界のメーカーはEVへの構造転換が計画通りに行かず苦労している。EVへの投資と内燃機関(エンジン)の二重投資が経営効率を悪化させることになる。そうすると規模が重要になり、補完する関係というのはどうしても必要」と指摘。「日産がここで動かなければ、業績が回復せず、下手すれば乗っ取られる。日産を強くするためにホンダと経営統合するというのは説得力ある選択肢だ」と話している」

    日産は、台湾のホンハイからも統合を目指していると報じられている。外為法上の制約もあるので、ホンハイの合併は困難である。それだけに、ホンダが日産をリードしなければならない立場だ。

    (5)「3社は、ホンダがハイブリッド車(HV)、日産はEV、三菱はプラグインハイブリッド車(PHV)など、それぞれの強みが異なる。日産は主戦場の北米で需要が拡大するHVを市場投入できず深刻な業績不振に陥ったが、経営統合が実現すれば、ホンダが日産にHVを供給することができる。逆に、米で人気のピックアップトラックを日産からホンダに提供し、相互補完ができる」

    三菱自動車もホンダ・日産の統合に参加する可能性が出てきた。ホンダがHV、日産はEV、三菱もPHVという技術を持っている。相互補完のメリットはある。


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    中国自動車市場は、価格競争が「底なし」の様相を呈している。新興EVメーカーは大部分が赤字経営であり、いつ破綻しても不思議ではないほど切羽詰まった状況に追込まれている。こういう中で、トヨタ自動車はEVを生産する新工場を建設する。上海市内で高級車ブランド「レクサス」を生産するもの。中国生産は、これまで現地メーカーとの合弁会社が担ってきたが、トヨタとして初めて単独で建設して運営する。

    米国GM(ゼネラル・モーターズ)と、中国の上海汽車集団(上汽集団)の合弁会社である上汽GMは9月14日、キャデラック・ブランドの新型SUV・EVの販売予約受け付けを開始したが、旧モデルの同等グレードより12万元(約238万円)も引き下げたほど。

    ドイツのVW(フォルクスワーゲン)と上汽集団の合弁会社である上汽VWも、9月10日に発売した上級セダン「パサート・プロ」の価格を15万9900元(約317万円)からに設定した。これは、プラグインハイブリッド車(PHEV)である。上級セダンを代表する人気モデルだったティアナとパサートだが、今の価格は大衆車並みに引下げている。

    GMやVWが、価格を大幅に引下げている。トヨタのレクサスEVは、これらに十分対抗できる価格で勝負するのであろう。「パフォーマンス型電池」の登載(性能は後記)であろう。トヨタEVの真価が問われる。

    『日本経済新聞 電子版』(12月23日付)は、「トヨタ、中国・上海にレクサスEV新工場 初の単独運営」と題する記事を掲載した。

    トヨタ自動車は、中国で電気自動車(EV)を生産する新工場を建設する方針を固めた。上海市内で高級車ブランド「レクサス」を生産する。中国生産は、現地メーカーとの合弁会社が担ってきたが、トヨタとして初めて単独で建設して運営する。

    (1)「中国から海外メーカーの撤退が相次ぐ中、外資をつなぎ留めたい中国と単独で工場を運営したいトヨタの思惑が一致した格好だ。複数の関係者が明らかにした。上海市内の用地を確保して建設する方針で、2027年ごろの稼働をめざす。中国で販売するレクサス車を中心に生産する。23年の中国でのレクサスの販売台数は約18万台だった。トヨタの中国生産は合弁会社が担っており、第一汽車集団との「一汽トヨタ」と、広州汽車集団との「広汽トヨタ」の2社がある。23年には、中国で175万台を生産した。一方、中国で販売するレクサスについては、主に日本で生産し輸出していた」

    レクサスは、これまで日本国内で生産し輸出してきた。27年から上海でレクサスEVを生産するのは、新生産方式を採用してコストダウンし、中国現地EV企業へ競争を挑むのであろう。

    (2)「中国は、18年からEVなどの新エネルギー車では、外資メーカーも単独資本での進出ができる規制緩和がなされ、同年に米テスラが単独で進出を決めEV工場を稼働させた。EVの普及が進む中国には、部品の供給網が整っており、調達がしやすい利点もある。中国当局も、高付加価値が見込めるレクサス向けの新工場を誘致することで、外資の自動車メーカーの投資をつなぎ留める思惑があるとみられる。日本メーカーとして中国での単独資本での建設はトヨタが初とみられる」

    日産やホンダは中国市場で苦戦しているが、トヨタは「世界の王者」として本格的なEV挑戦に出る狼煙となる。

    (3)「日本の自動車メーカーは、EVに強みを持つ現地勢との競争が激化し、中国市場で劣勢が続く。ホンダや日産自動車は、23年の販売が前年比で10%超減少した。三菱自動車は23年10月に中国での生産と販売から撤退を表明した。日産も、現地工場の一部を閉鎖し生産能力を1割減らすなど生産体制の縮小を迫られている。ただ、トヨタは他社と比較すると落ち込み幅は小さい。23年の中国販売は、190万台で2%減にとどまった。中でも高級車ブランドのレクサスは、前年比で3%増と堅調に推移する」

    高級車ブランドのレクサスは、23年に前年比で3%増と堅調に推移した。これは、トヨタの潜在的に強い競争力を秘めていることを証明する。上海でのレクサスEV工場は、トヨタの強さを示す象徴的な事例となろう。

    (4)「レクサスは、35年に世界販売の100%をEVにし、30年時点では100万台のEVを販売する計画を掲げる。中国や北米・欧州では30年時点で販売する全車両をEVにする方針だ」

    トヨタ自動車は現在、EV「世界カー」とも言うべき高品質のEVを開発している。26年から世界市場へ投入するが、全固体電池ではない。現在のリチウムイオン電池の性能を一段と高めた「パフォーマンス型電池」である。これは、中国EVに登載されている電池性能と次元が異なる、トヨタ独自の開発である。次のような内容だ。

    1)エネルギー密度を高める:航続距離1000kmを実現する。
    2)急速充電を行う:20分以下で充電を完了する。
    3)コスト削減:20%削減する。

    1回の充電で、1000kmもの走行が可能になる。中国の400km程度からみれば、2.5倍の航続距離になる。しかも、給電時間が嘘のように短縮される。中国では、急速充電ですら30分から1時間もかかっている。普通充電では、6~8時間とされる。この長い給電時間が、一挙に短縮される。しかも、電池コストが20%も削減できるのだ。トヨタに勝算があるのだろう。


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