勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2024年12月

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    フランスの株式市場では18日、仏自動車大手ルノーの株価が一時前日比7%高と急騰した。同社が株式を保有する日産自動車がホンダと経営統合に向けた協議に入るとの報道を好感したもの。ルノーは、ホンダと日産の経営統合に前向きのようだ。米ブルームバーグ通信は18日、ルノー関係者の話として「日産に資金支援をするつもりはなく、経営強化の手段を日産自身に見つけてほしいと考えている」と伝えた。また関係者は、日産の経営判断には大株主のルノーの合意が必要だと指摘したという。『日本経済新聞 電子版』(12月19日付)が報じた。

    ルノーは、日産株の43%を保有する筆頭株主だったが、2023年11月に資本関係を見直し、15%ずつの相互出資で合意した。現在は日産への出資比率を引き下げる途上で、35.7%を保有する。ルノー所有の日産株売却先は、日産が決定権を持っている。

    『日本経済新聞 電子版』(12月21日付)は、「ルノーが選んだ独自路線、ソフト開発強化 陰る日仏連合」と題する記事を掲載した。

    四半世紀前、経営危機の日産自動車へ手を差し伸べたのがルノーだった。日産への支配力を強めようとしたこともあるが、ホンダと日産の経営統合に向けた協議が明らかになった今は影を潜めている。日仏連合の結束が弱まった背景には、ソフトウエア開発などを進めたルノーの独自路線があった。

    (1)「ルノーは、日産へ出資するとともにカルロス・ゴーン氏を最高執行責任者(COO)として送り込んだ。大規模な合理化策で日産を再生させ、日仏連合は車メーカーの協業の成功例とも評された。その後、フランス政府の意向も受けてルノーは日産への支配力を強めようとした。背景にあったのは、規模が一定の正義とされる車産業の考え方だ。規模を拡大してブランド力を高め、車両設計などの標準化を通じたコスト削減を進めるには日産を取り込む必要があった」

    ルノーは日産を取り込んで、世界規模の自動車メーカーを目指した時期がある。現在は、「量より質」の経営へ転換している。台数を追わない経営である。

    (2)「ゴーン氏が2018年に逮捕され、ルノーが新たな経営体制になると風向きは変わる。きっかけの一つが、ルカ・デメオ氏が20年に最高経営責任者(CEO)に就任したことだ。独フォルクスワーゲン(VW)やトヨタ自動車も渡り歩いたデメオ氏はイタリア人で、仏企業のルノーにとって初の外国人CEOだ。100年に1度といわれる自動車業界の大転換に、電気自動車(EV)新会社のアンペアを設立するなどルノーを動かした。デメオ氏は経営幹部を入れ替え、規模にとらわれない戦略を相次ぎ打ち出す。ひとつが異業種連携だ。ここ数年でルノーが打ち出した協業先には、米グーグルや半導体大手の米クアルコム、欧州のソフトウエア関連企業など車メーカー以外の名前が並ぶ」

    現在のルノーCEOであるデメオ氏は、同業よりも異業種連携へ舵を切っている。米グーグルや半導体大手の米クアルコムなどだ。

    (3)「デメオ氏の就任前後、赤字だったルノーの最終損益は、ロシアからの撤退があった22年12月期を除くと上昇傾向にある。23年の最終損益は21億ユーロの黒字(約3400億円)と、18年以来の高水準を記録した。直近2年で、同社の株価は約4割上昇した。日産はこの間、ほぼ横ばいだ。中国勢の台頭などで逆風が吹く足元も大崩れはしていない。路線転換の道筋を付けたデメオ氏には昨年、業界紙の米オートモーティブニュースから車業界で最も影響力のあるリーダーに与えられる賞が授与された」

    デメオ氏の戦略転換は、見事に的中した。23年の最終損益は約3400億円で、18年以来の最高益である。

    (4)「ある日産幹部は、「長年連れ添った配偶者が自分だけの新居を求め始めた」と表現する。日仏連合に依存しないというルノーのスタンスは、出資の対等な関係への修正を目指していた日産にとっては好都合でもあり、23年に両社は出資比率を15%ずつにすることで合意した。ただ、新技術を中心に独自の道を歩み、ヒット車も投入するルノーと日産の差は開き続けた。22年に発売した軽EV「サクラ」以降売れ筋の車がない日産は、全従業員の7%に相当する9000人を削減するなど大規模リストラに追い込まれた。今回、救いの手を差し伸べたのはルノーではなくホンダだった」

    ルノーは、日産依存経営から脱皮している。それが、今回の日産・ホンダの統合報道に冷静に対応し、「賛意」を示しているのであろう。

    (5)「今なおルノーは、日産の筆頭株主だ。保有する日産株の一部を段階的に放出するため、日産株の22.8%(9月時点)を信託銀行に置いている。日産とホンダの統合が実現すれば、世界の車産業の競争構図を大きく変える可能性がある。同時に、長年の「盟友」だった日産とルノーの距離が、さらに広がる契機にもなりえる」

    ルノー所有の日産株は、売却先決定について日産の意向に従う条件になっている。それでも、なお15%所有の大株主である。日産が、ホンダと統合する場合、ルノーの意向を聞くのは常識であろう。

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    経営再建中の東芝は12月20日、上場廃止から1年を迎えた。「物言う株主」との対立が長引く中、国内投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)傘下で非上場化を選択した。混乱は収束し、構造改革の成果も見えつつある。目下の最大の課題は成長戦略だ。かつての名門企業は、再び輝きを取り戻せるか。4~9月期は、1136億円の営業黒字を計上した。

    『日本経済新聞 電子版』(12月20日付)は、「東芝、ファンドが壊す『縦割り』 上場廃止2年目の宿題」と題する記事を掲載した。

    東芝が株式を非公開化してから20日で1年が経過した。エネルギーやインフラ機器といったハードを中心に収益改善が進み、2024年4〜9月期はすべての事業部門で営業黒字となった。ファンド主導の再建に一定の成果が出た一方で、これまで成長の柱に掲げてきたデジタル戦略は影を潜める。縦割りを打破し、会社全体で相乗効果を出す戦略を示せるかが問われる。

    (1)東芝は23年12月20日に上場を廃止し、投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)の傘下での経営再建を進めている。最初の1年間はリストラが中心で、本社の経理や人事などの間接部門などの組織数を4割減らす。国内従業員の5%にあたる3000人超にのぼる人員削減も実施した。不採算受注の絞り込みも徹底し、24年4〜9月期の営業利益は前年同期比3.2倍の705億円に回復。前年同期に赤字だったビルシステム、ハードディスク駆動装置(HDD)が黒字に転換した」

    2015年に始まった経営の混乱は今、ようやく非上場化で「安息の場所」を得たであろう。東芝が、日本経済に果した役割は大きかっただけに、早い再建が待たれる。

    (2)「JIP副会長で東芝副社長の池谷光司氏は、「まずは一つ一つのハードを強くすることが重要だ」と、非公開化2年目を迎えるのにあたり、日本経済新聞の取材に応じた。エネルギーや水処理、防衛といったインフラ事業での成長投資がテーマとなる。注力分野の一つとなるエネルギー事業では、送配電網に使用する電力機器をインド南部の工場や浜川崎工場(川崎市)で25年10月以降に増産を始める。大量に電力を消費する人工知能(AI)用データセンターの建設ラッシュや、再生可能エネルギー発電の増加を受けて、世界的に増える送配電網需要の取り込みを目指す。「5年後をめどに、エネルギー事業の売上高を25年3月期計画比5割増の1兆円に引き上げる」(池谷副社長)考えだ」

    データを使ったデジタル戦略のビジネスを掲げているが、当面は「利益を出す」ことに全力を挙げる。エネルギーや水処理、防衛といったインフラ事業での成長投資で基盤を固める戦略だ。

    (3)「防衛予算の拡大を見据え、防衛事業でも投資を増やす。2027年3月期までの3カ年で、レーダーシステムや誘導機器など防衛装備品を生産する横浜事業所(横浜市)などに約150億円を投じる。前の3年間と比較して2.5倍に近い水準となる見通し。これまでは島田太郎社長がインフラ機器から収集されるデータを使ったデジタル戦略を掲げてきたが、現在は生産設備などへの投資が中心となる。「データ関連ビジネスで稼げる体制をつくるには時間がかかる」(池谷副社長)とし、エネルギーやインフラの新設や機器更新などで安定的に稼ぐ戦略を優先する」

    国際情勢の急変で、防衛予算は拡大方向だ。将来的には、輸出も同盟国を視野に入れる時代が来るに違いない。国内市場だけでは、防衛産業の発展に限界があるからだ。日本の安全保障上も重要な役目を果す。

    (4)「需要が見込める分野に資金を集中投下することで個々の事業の収益性は高まった。だが、事業間の相乗効果は見えていない。早期退職制度に応募して11月末に退職した元社員は「各事業の利益は出ており、改革の効果は出ている。ただ、会社全体としてどこに向かっているのかビジョンが分からなかった」とこの1年を振り返る」

    この1年は、東芝にとって「怒濤の1年」であったに違いない。本社も川崎に移し、心機一転の構えである。

    (5)「東芝は15年に不正会計が発覚し、16年に米原発子会社の巨額損失が明らかになった。17年に財務基盤を立て直すために増資したものの、複数のアクティビスト(物言う株主)が大株主となり、株主の意向に経営方針が左右される事態に陥った。経営の混乱の中で、売上高はピークの4割まで縮小した。日立製作所や三菱電機などの重電大手はデジタルとハードを組み合わせた事業を軸に再成長のフェーズに入った。池谷副社長は「営業利益率10%を達成し、早期に再上場を目指す」と話す。個々の事業の収益を改善するだけの段階から脱し、会社全体で稼げる戦略を描けるか。周回遅れを解消し、再び株式市場で光る東芝となるために欠かせない」

    名門・東芝は、粉飾決算と米原発子会社の巨額損失によって「転落」した。複数のアクティビストによる経営干渉で、経営の混乱に輪をかけた。不運が重なった。基本的な技術基盤が損なわれていなければ、立ち直りは早いであろう。

    あじさいのたまご
       

    韓国半導体の弱体化が、話題に上がっている。サムスンは、5ナノ半導体で歩留まり率が20~30%とされ大赤字に陥っているのだ。こういう「弱いサムスン」では、次期米国大統領トランプ氏が、韓国を同盟国として正当な扱いをしないのでないか。そういう危惧の念が、韓国で上がっている。トランプ氏は、「ディール」(取引)外交である。韓国に「売り物」がなくなれば、まともな扱いをしてくれないのでは、というものだ。

    『レコードチャイナ』(12月20日付)は、「韓国半導体が『絶体絶命の危機』に、原因は勤勉さの喪失」と題する記事を掲載した。

    韓国メディア『韓国経済』(12月19日付)は、「主要企業の最高経営責任者と韓国を代表する碩学で構成された韓国工学翰林院が、韓国半導体の状況を『絶体絶命の危機』と判断した」と報じた

    (1)「韓国主要企業の最高経営責任者(CEO)と韓国を代表する碩学で構成された韓国工学翰林院が、韓国半導体の状況を『絶体絶命の危機』と判断した」と報じた。危機の原因としては「し烈さと勤勉さの喪失」が挙げられたという。記事によると、韓国工学翰林院の半導体特別委員会は18日に開催した研究結果発表会で、韓国半導体の世界との技術格差が「目に見えて縮まった」と指摘し、「半導体特別法」の必要性を訴えた。同法案には、半導体分野の研究開発(R&D)従事者が週52時間以上働くことを認める「ホワイトカラーエグゼンプション」関連の規定が盛り込まれている」

    韓国は、残業時間の長いことで知られている。これを抑制すべく、残業を含めて「週52時間制」が制定された。違反すれば、経営者が罰せられるという強制力を持っている。R&Dの現場では、こういう中途半端な制約で研究が中断される弊害が生じている。

    日本の残業時間上限は、原則として月45時間、年間360時間だ。特別な事情がある場合でも、年間720時間(月60時間)を超えることはできない。この日本の例から見ても、韓国の残業規制は極めて厳しい。

    (2)「発表会では、「台湾TSMCなど海外のライバル企業は研究に没頭しているが、韓国は習52時間勤務制のため夕方になると研究所から明かりが消える」との指摘や、「数カ月遅れただけで格差が広がる業界の特性を考えると、特別法を可決させなければ広帯域メモリ(HBM)の技術覇権を維持できない」との主張が出た。また、韓国政府の支援が主要国に比べて不足しているとの批判も上がったという」

    TSMCの研究職は、3交代制で24時間ぶっ通しの研究がされている。これは、膨大な研究員を雇う必要がある。

    (3)「あるファブレス(半導体設計)企業のCEOは「トランプ次期大統領は半導体とテックに対する理解が深い」とし、「半導体で競争力を失った韓国をトランプ次期大統領が相手にしてくれるだろうか」「韓国が最高の対米交渉カードをなくしてしまいそうで心配だ」などと懸念を示した。ソウル大学のイ・ヒョクチェ電気・情報工学部教授は、「韓国の秘密兵器である勤勉さが失われつつある」とし、「あと30分研究を続ければ結果が得られるのに、退勤して翌日に再開して集中力と効率を浪費するのが韓国の現実」と指摘した。さらに、半導体業界の人材不足と頭脳流出の深刻さについても警告したという」

    あと30分の研究で結果が得られるのに、残業規制で退勤し翌日に再開している。これでは、集中力と効率を無駄にしている。このように、韓国では一度、規制がかけられると、どうにもならなくなる例が多い。

    (4)「韓国半導体業界を代表するサムスン電子は最近、ファウンドリ(半導体受託生産)で台湾TSMCとの格差が拡大し続けている。今年7~9月期のサムスン電子のファウンドリ市場シェアは9.3%で前四半期比2.2ポイント減少した。TSMCは64.9%で2.6ポイント増加し、3位の中国SMICは6%で0.3ポイント増加した。サムスン電子としてはTSMCではなくSMICをけん制しなければならない状況となっている。さらに、サムスンが圧倒的優位に立っていたDRAMも、中国勢の低価格攻勢にさらされて危機を迎えているとされている」

    サムスンにみられる技術の壁は、基礎研究力の不足による。応用研究だけに目が向いており、基礎研究を軽視してきた咎めが現在、噴出しているのだ。

    (5)「この記事を見た韓国のネットユーザーからは、「週52時間制は韓国経済の没落に多大なる影響を与えた」「サムスンを苦境に立たせたのは文在寅(ムン・ジェイン)政権」「『共に民主党』がこの国をこんな状態にしたのに、大統領を弾劾して『共に民主党』代表が大統領になろうとしている。こんな国を誰が相手にする?」「などの声が上がっている」

    文在寅時代の規制は一律であり、例外を設けて弾力的運用する知恵が足りなかった。これを是正しようとすると、左派が猛烈に反対する。どうにもならない面もある。

    テイカカズラ
       

    習主席は12月10日、北京を訪れた世界銀行、国際通貨基金(IMF)などの責任者との会見で次のように強調した。「真の多国間主義」「平等で秩序のある世界多極化」「包括的で寛容な経済グローバル化」の重要性を指摘したのだ。中国が自由貿易の守護者であるかのような主張である。日本に対しては、一方的な海産物輸入禁止を行っている。福島原発処理水の海洋放出が有害であるという理由だ。国際的に受入れられない理由を持ち出している。

    『時事通信』(12月19日付)は、「習主席、トランプ氏に対抗の構えー貿易戦争で強気の戦略」と題する記事を掲載した。

    中国の習近平国家主席は、対中貿易戦争を仕掛けてくるトランプ次期米大統領に対抗する構えを見せている。国内経済は苦境にあるが、習政権は強気の姿勢で中国式の「デカップリング(分断)」戦略を進めていこうとしているようだ。

    (1)「習主席は12月10日、北京を訪れた世界銀行、国際通貨基金(IMF)などの責任者との会見で「関税戦、貿易戦、科学技術戦は歴史の潮流や経済の規律に反しており、勝者はあり得ない。中国は一貫して自分のことをきちんとやることに集中して注力する姿勢を堅持し、自らの主権、安全、発展の利益を断固として守る」。米中関係に触れて、こう強調した。また、中国共産党の指導部である政治局の会議(9日)と経済政策の基本方針を決める中央経済工作会議(11~12日)は「重点分野のリスクと外部の衝撃を防止、解消する」必要があるとの認識を示した。「リスク」は中国の指導者や当局者がよく使う言葉だが、最高レベルの会議で「外部の衝撃」が取り上げられるのは珍しい」

    「外部衝撃」とは、外部から受けるショックだ。さしずめ、トランプ「直撃波」であろう。

    (2)「中央経済工作会議の公式発表によると、リスクを特に警戒すべき「重点分野」とは不動産と金融を指す。「外部の衝撃」が具体的に何なのかは言及がなかった。主にトランプ氏による貿易戦争を指すのだろう。会議で明言されたが、公式発表では伏せられたと思われる。同工作会議では外部の衝撃に加え、「外部の圧力増大」「外部の挑戦」も指摘され、国内の団結が呼び掛けられた。危機感の高まりを感じさせる。一連の重要会議の開催前、習主席は11月16日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれたペルーの首都リマでバイデン米大統領と会談し、米中関係全体について論じた。中国外務省の発表によれば、習主席は「過去4年、中米関係は紆余(うよ)曲折があったものの、対話と協力も展開し、全体としては安定を実現した」と評価した上で、「台湾問題」「民主と人権」「道と制度」「発展の権利」が中国側の4本のレッドライン(越えてはならない一線)であり、「挑戦は許さない」と強く警告した」

    中国側の4本のレッドラインとは、「台湾問題」「民主と人権」「道と制度」「発展の権利」である。米国は、これらの点について「触れるな」という要求である。

    (3)「レッドライン列挙は、トランプ氏に対する警告とみられる。特に台湾問題については、米側に対し、「頼清徳(総統)と民進党当局の“台独”(台湾独立)の本性」をはっきり認識して、“台独”に明確に反対するよう要求したという。中国の指導者が外国要人との会談で台湾総統を名指しするのは異例。米側に強くくぎを刺す狙いがあるのだろう。「民主と人権」は、「中国を非民主的とか人権侵害とか非難するな」。「道と制度」は、「中国の特色ある社会主義の路線に文句を言うな」。「発展の権利」は、「中国の経済発展を妨害するな」という意味と思われる。言い方も命令のようで、かなり挑戦的である。

    中国の言う「レッドライン」は、言い換えれば自国の「弱み」を公表している。ここに触れたら、逆襲するというのだ。

    (4)「中国側の言い分では、中国が一方的に外国からいじめられているように聞こえるが、実際には中国自身、外国に対する貿易制裁を乱発してきた。近年でも、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を口実に日本の水産物輸入を禁止。コロナ禍の起源問題を巡って対立したオーストラリアに対しては、牛肉やワインなどの禁輸で報復した」

    中国は、日本へ意味のない報復をしている。日本を怒らせて何の得があるのか。日本の対中輸出品が断絶すれば、高速鉄道は動かなくなる。ブレーキのシュー(摩擦材)など多くの部品・素材が使われている。

    (5)「習主席は2020年、「国際産業チェーンの中国に対する依存関係を強め、外部の人為的供給遮断に対する強力な反撃・威嚇力を持つ」という戦略を打ち出し、それに基づいて、第14次5カ年計画(21~25年)に国内大循環主体論が盛り込まれた。さらに、その後、「極限思考を堅持し、大きな風浪、さらには驚くべき大波の重大な試練を受ける準備をする」「国内大循環の構築により、極端な状況下でも国民経済が正常に運営できるよう保証する」といった考えを明らかにしている」

    中国が、製造業へ大きく傾斜している理由は、「極端な状況下でも国民経済が正常に運営できるよう保証する」目的にある。戦時経済体制に移っているのだ。周辺国は、この認識を忘れないことだ。「ニーハオ」の裏には、「トゲ」がありそうだ。

    (6)「中国に対する外国のデカップリングは許さないが、中国は外国に対するデカップリング能力を高めるというわけだ。対中強硬派が、ひしめくトランプ政権にそのような楽観論が当てはまるのか。また、高度経済成長期の中国ならまだしも、経済が失速して低迷が続く今の中国が超大国・米国とのデカップリング合戦に耐えられるのか。危うさがあることは否定できない」

    中国は、明らかに「虚勢」を張っている。強いぞと言っているのだが、もう少し「上品な物言い」はできないのだろうか。それだけ、経済的に切羽詰まっているのだろう。


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    自民・公明の与党は、20日に正式決定する税制改正大綱で、「年収103万円の壁」の具体的な引き上げ幅として「123万円」が示される。国民民主党を加えた3党幹事長では、「178万円を目指す」と合意していたのとは、ほど遠い内容である。この裏には何があったのか。国民民主の強気一本の主張が、7兆円もの歳入減をもたらすという「現実」によって押し返されたようだ。

    『毎日新聞 電子版』(12月20日付)は、「『この世界、一途では…』 年収の壁引き上げ幅 強気の与党 思惑は?」と題する記事を掲載した。

    与党が20日に正式決定する税制改正大綱には、「年収103万円の壁」の具体的な引き上げ幅として「123万円」が示される。国民民主党を加えた3党幹事長で「178万円を目指す」と合意したのとは、ほど遠い内容だが、自民は教育無償化を目指す日本維新の会にも秋波を送り、「両にらみ」で国民民主の歩み寄りを促す構えだ。

    (1)「国民民主の玉木雄一郎代表(役職停止中)は18日、「3党の幹事長間で合意したにもかかわらず見切り発車とは驚きました。維新と(2025年度当初予算案賛成で)握る算段がついたということなのでしょうか」と自身のX(ツイッター)で自公への不満をこうぶちまけた。自公が、少数与党の衆院で議案を通すには、一部野党の協力が欠かせない。自公が123万円への引き上げを与党税制改正大綱に明記する調整に入ったことを受け、国民民主側が17日に「協議打ち切り」を宣言したのは、自民の譲歩を期待したからだった」

    国民民主党の主張する「178万円の壁」は、最低賃金の上昇率73%(75万円)分の引き上げを根拠にしている。この場合、800万円の家計は、減税額が年22.8万円で、財政負担は年7.3兆円と巨額だ。一方、与党の主張する「123万円の壁」は、95年以来の物価上昇率10%(10.3万円)に基づく。この場合、500万円の単身者で年1万円、800万円の家計で2万円の減税になる。財政負担も1.1兆円ですむ。与党案の背景には、大幅な財政赤字を抱える財政との「バランス論」である。

    (2)「ところが、新たな連携先として維新が急浮上してきた。維新は、教育無償化に向けた協議体設置を与党が約束したとして今年度補正予算に賛成。さらに維新の前原誠司共同代表は18日夜、BSフジのテレビ番組で、「来年から所得制限なしに私学も含めて無償化が行われることになれば、来年度予算案に賛成する可能性はある」と述べた。衆院で国民民主より多い38議席を持つ維新が予算成立に協力すれば、与党が国民民主と協力する優先順位は落ちる。官邸幹部は「『国民民主が言っているから』と言って178万円まで上げるのでは、他の野党に突っ込まれてしまう」と国民民主の要求を突き放した」

    維新共同代表の前原誠司氏は、石破首相とは「昵懇」である。趣味(鉄道オタク)で結ばれた長年の友人である。与党は、維新の高校授業料無償化案(5000億円弱)を受入たほうが、財政的にはるかに負担が楽になる。与党は、こういう「物心両面」の繋がりで維新の提案へ歩み寄ったとみられる。

    (3)「自民中堅は、「国民民主の『離脱』を深刻には考えていない。向こうもこのままじゃ立場がないだろう」と、いずれ国民民主側が折れてくるとの見方を示す。24年度補正予算が、国民民主以外の野党の協力も得て、すでに成立していることも与党の強気につながっている。自公は補正予算で、維新や国民民主から協力を取り付けたのみならず、被災地支援強化を求める立憲の修正要求を反映させ、一定の支持を得た。本予算でも、協力枠組みをめぐり複数の選択肢を模索している」

    自民党は、強気になっている。「義経の八艘飛び」である。少数与党の生きる知恵であろう。

    (4)「そうした事情もあり、国民民主も、自公との決裂は明言していない。協議再開の可能性について古川元久税調会長は「ボールは向こう(自公)にある」と与党の反応を待つ一方、与党税制大綱などを反映した税法改正が来年の通常国会で議論されることから「税法(改正案)が、出てからやってきてもいい」と年明けの協議再開に含みを持たせる。政権からは「維新も国民民主も信用できない。どちらからも協力を得られないことを考えておかないといけない」と不安視する声も上がるが、与党ペースになりつつあるのは確かだ。立憲幹部は「維新と握れれば、与党は別にうるさい国民と握る必要もない。維新が政権に歩み寄るのは、野党全体としてはマイナスだ」と不満を漏らす。ある自民関係者は、「この世界、一途ではダメだ。国民民主だけじゃなくて、ちゃんと維新とも交渉しておかないとな」と話した」

    国民民主にとっては、維新というライバルが登場した。維新の出自は、もともと自民党である。発想の根源が、自民寄りであっても不思議はないのだ。ありがたいことは、日本の政界が、韓国と全く違う点である。妥協が成立するのは、民主政治の根幹である。


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