フランスの株式市場では18日、仏自動車大手ルノーの株価が一時前日比7%高と急騰した。同社が株式を保有する日産自動車がホンダと経営統合に向けた協議に入るとの報道を好感したもの。ルノーは、ホンダと日産の経営統合に前向きのようだ。米ブルームバーグ通信は18日、ルノー関係者の話として「日産に資金支援をするつもりはなく、経営強化の手段を日産自身に見つけてほしいと考えている」と伝えた。また関係者は、日産の経営判断には大株主のルノーの合意が必要だと指摘したという。『日本経済新聞 電子版』(12月19日付)が報じた。
ルノーは、日産株の43%を保有する筆頭株主だったが、2023年11月に資本関係を見直し、15%ずつの相互出資で合意した。現在は日産への出資比率を引き下げる途上で、35.7%を保有する。ルノー所有の日産株売却先は、日産が決定権を持っている。
『日本経済新聞 電子版』(12月21日付)は、「ルノーが選んだ独自路線、ソフト開発強化 陰る日仏連合」と題する記事を掲載した。
四半世紀前、経営危機の日産自動車へ手を差し伸べたのがルノーだった。日産への支配力を強めようとしたこともあるが、ホンダと日産の経営統合に向けた協議が明らかになった今は影を潜めている。日仏連合の結束が弱まった背景には、ソフトウエア開発などを進めたルノーの独自路線があった。
(1)「ルノーは、日産へ出資するとともにカルロス・ゴーン氏を最高執行責任者(COO)として送り込んだ。大規模な合理化策で日産を再生させ、日仏連合は車メーカーの協業の成功例とも評された。その後、フランス政府の意向も受けてルノーは日産への支配力を強めようとした。背景にあったのは、規模が一定の正義とされる車産業の考え方だ。規模を拡大してブランド力を高め、車両設計などの標準化を通じたコスト削減を進めるには日産を取り込む必要があった」
ルノーは日産を取り込んで、世界規模の自動車メーカーを目指した時期がある。現在は、「量より質」の経営へ転換している。台数を追わない経営である。
(2)「ゴーン氏が2018年に逮捕され、ルノーが新たな経営体制になると風向きは変わる。きっかけの一つが、ルカ・デメオ氏が20年に最高経営責任者(CEO)に就任したことだ。独フォルクスワーゲン(VW)やトヨタ自動車も渡り歩いたデメオ氏はイタリア人で、仏企業のルノーにとって初の外国人CEOだ。100年に1度といわれる自動車業界の大転換に、電気自動車(EV)新会社のアンペアを設立するなどルノーを動かした。デメオ氏は経営幹部を入れ替え、規模にとらわれない戦略を相次ぎ打ち出す。ひとつが異業種連携だ。ここ数年でルノーが打ち出した協業先には、米グーグルや半導体大手の米クアルコム、欧州のソフトウエア関連企業など車メーカー以外の名前が並ぶ」
現在のルノーCEOであるデメオ氏は、同業よりも異業種連携へ舵を切っている。米グーグルや半導体大手の米クアルコムなどだ。
(3)「デメオ氏の就任前後、赤字だったルノーの最終損益は、ロシアからの撤退があった22年12月期を除くと上昇傾向にある。23年の最終損益は21億ユーロの黒字(約3400億円)と、18年以来の高水準を記録した。直近2年で、同社の株価は約4割上昇した。日産はこの間、ほぼ横ばいだ。中国勢の台頭などで逆風が吹く足元も大崩れはしていない。路線転換の道筋を付けたデメオ氏には昨年、業界紙の米オートモーティブニュースから車業界で最も影響力のあるリーダーに与えられる賞が授与された」
デメオ氏の戦略転換は、見事に的中した。23年の最終損益は約3400億円で、18年以来の最高益である。
(4)「ある日産幹部は、「長年連れ添った配偶者が自分だけの新居を求め始めた」と表現する。日仏連合に依存しないというルノーのスタンスは、出資の対等な関係への修正を目指していた日産にとっては好都合でもあり、23年に両社は出資比率を15%ずつにすることで合意した。ただ、新技術を中心に独自の道を歩み、ヒット車も投入するルノーと日産の差は開き続けた。22年に発売した軽EV「サクラ」以降売れ筋の車がない日産は、全従業員の7%に相当する9000人を削減するなど大規模リストラに追い込まれた。今回、救いの手を差し伸べたのはルノーではなくホンダだった」
ルノーは、日産依存経営から脱皮している。それが、今回の日産・ホンダの統合報道に冷静に対応し、「賛意」を示しているのであろう。
(5)「今なおルノーは、日産の筆頭株主だ。保有する日産株の一部を段階的に放出するため、日産株の22.8%(9月時点)を信託銀行に置いている。日産とホンダの統合が実現すれば、世界の車産業の競争構図を大きく変える可能性がある。同時に、長年の「盟友」だった日産とルノーの距離が、さらに広がる契機にもなりえる」
ルノー所有の日産株は、売却先決定について日産の意向に従う条件になっている。それでも、なお15%所有の大株主である。日産が、ホンダと統合する場合、ルノーの意向を聞くのは常識であろう。




