米当局は、中国の人工知能(AI)スタートアップ、DeepSeek(ディープシーク)が、シンガポールのサードパーティーを通じて米エヌビディアの先端半導体を購入し、半導体販売を巡る米国の規制を回避したか調査している。
『ブルームバーグ』(1月31付)によれば、非公開情報だとして匿名を条件に話した関係者によると、ホワイトハウスと米連邦捜査局(FBI)の当局者もディープシークがシンガポールの仲介者を使い、中国への販売が禁止されているエヌビディアの半導体を購入したか確認を進めている。こうした状況から、中国へのエヌビディア製半導体の中国輸出を禁じるように、米国下院中国特別委員会は要請した。
『ロイター』(1月31日付)は、「米下院中国特別委がエヌビディア製半導体の輸出規制要請、ディープシーク巡り」と題する記事を掲載した。
米下院中国特別委員会の指導部がトランプ政権に対して、中国の新興人工知能(AI)企業ディープシークが利用しているとされるエヌビディア製半導体の輸出規制を検討するよう要請した。同委員会委員長で共和党のジョン・ムーレナー議員と民主党筆頭委員のラジャ・クリシュナムルティ議員が、29日付けでマイケル・ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)に送った書簡の内容が、30日明らかになった。
(1)「両議員は書簡で、トランプ大統領が「戦略的な敵対勢力に関連した情勢」に照らして商務省と国務省主導で米国の輸出管理制度を徹底的に見直すよう指示した点に言及。「この見直しの一環として、エヌビディアの『H20』や同規格を輸出管理の対象にする国家安全保障上のメリットを考慮してほしい」と述べた。また両議員は、ディープシークが最近公表したAIモデルにはエヌビディアのH20が大量に使われており、このH20は現時点では米国の輸出管理対象になっていないと指摘した」
イタリアのデータ保護当局は1月30日、中国ディープシークの人工知能(AI)アプリのイタリア国内でのアクセスを制限したと発表した。ディープシークに対し個人データの取り扱いを巡り説明を求めたものの、提示された情報は「不十分」だったと説明した。調査を開始したとも明らかにした。すでに、豪州政府もディープシークのAIアプリ利用を控えるように発表している。
こうした問題が発生していることもあり、米国下院の中国特別委員会がエヌビディア製半導体の中国輸出の禁止措置を要請しているのであろう。
『ブルームバーグ』(1月31日付)は、「米、DeepSeekがエヌビディア半導体をシンガポール経由で入手か調査」と題する記事を掲載した。
米当局は中国の人工知能(AI)スタートアップ、DeepSeek(ディープシーク)がシンガポールのサードパーティーを通じて米エヌビディアの先端半導体を購入し、AIタスクに使用される半導体販売を巡る米国の規制を回避したか調査している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
(2)「トランプ大統領が、次期商務長官に指名したハワード・ラトニック氏は29日開かれた上院の指名承認公聴会で、ディープシークが米国の輸出規制を回避したとの見方を示した。ラトニック氏は、「彼らが大量購入し、回避する方法を見つけたエヌビディアの半導体でディープシークモデルを動かしている」と主張。「終わりにしなければならない。彼らがわれわれと競争するつもりなら、そうすればよい。だが、われわれとの競争でわれわれのツールを使うのをやめてほしい。従って、私はその点に関して非常に厳しく対応するつもりだ」と発言した」
次期商務長官に指名されているハワード・ラトニック氏は、上院の指名承認公聴会で「エヌビディアの半導体でディープシークモデルを動かしている事態を終らせる」と発言した。輸出禁止含みである。
(3)「ディープシークが今回示した飛躍的な前進は、中国を先端技術から遮断しようとする米国の試みの有効性に関して議論を引き起こした。さまざまな半導体と製造装置を対象とする同規制は、中国の半導体産業発展の取り組みを遅らせ、中国を軍事的優位に立たせる潜在力を秘めるAIにアクセスできないようにすることを目的としている。ディープシークは、モデル開発に使用したAI半導体を完全には明らかにしていないが、先月リリースされたV3モデルはエヌビディアの「H800」を2048個使って訓練されたと研究者は論文で指摘」
ディープシークは、すでにモデル開発に使用したAI半導体がエヌビディアの「H800」であることを明らかにしている。
(4)「H800は、バイデン前米政権が高性能なバージョンへの中国のアクセスを制限したことを受け、エヌビディアが中国市場向けに開発したものだ。その後、米当局は2023年10月にH800などエヌビディア製半導体を中国向けに禁止したため、エヌビディアは同市場向けに「H20」と呼ばれ、性能をさらに落とした別の半導体を設計することになった。トランプ政権当局者は現在、H20も制限するかどうか協議を始めている」
エヌビディアは、中国市場向けに「H20」と呼ばれ、性能をさらに落とした別の半導体を設計することにしている。米国下院中国特別委員会は、半導体の対中全面禁輸方針であるから、「H20」輸出が不可能になる可能性が強まっている。