勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2025年01月

    あじさいのたまご
       

    土地本位制崩壊の後遺症
    習氏の経済音痴が命取り
    権力強化に12年間費消
    毛沢東追随は「死の道」

    中国経済は、日本が過去に辿った苦しい道を歩んでいる。不動産バブル崩壊という条件が同じである以上、中国経済の足跡が日本に似ることは当然だ。しかも、合計特殊出生率の低下まで同じという瓜二つの経済構造になった。中国は、こういう状況で現実から何をつかみ取るか、である。それが、中国の今後を大きく左右することは間違いない。

    習近平国家主席は、毛沢東路線の追随者である。習氏は、毛沢東が思い描いた世界覇権の夢を、「中華の夢」として実現を期す。中国に、それを現実化できる経済的要因が備わっているどうか。そういう根本的な議論を忌避し、危機に臨めば「統制強化」で乗切る強硬策を採用している。国内で妥協することが、習氏自らの権力基盤を弱体化させることになるのでは、と恐れているのだ。毛沢東が晩年、冒した多くの政策ミスを習氏もすでに嵌まり込んでいる。

    トウ小平は、こうした毛沢東の独善主義を戒めて集団指導体制へ切替えた。だが、習氏は「聞く耳持たず」である。独善路線を歩み続けている。不動産バブル崩壊も合計特殊出生率の低下も、中国経済の根幹を揺るがす厳しい現実に目を塞ぎ、「世界覇権」の夢に酔っているのだ。毛沢東の「妄想」と実によく似ているのである。

    理念のみに酔う人間は、独裁者になると言われている。「原理主義者」であるからだ。毛沢東も習近平氏もこの部類に入る。中国経済の現実は、もはや妄想を許す事態にはない。庶民の生活は、消費よりも貯蓄を重視する切り詰めた生活を余儀なくされている。特に、この傾向は若者に顕著だ。根強い悲観論は既に、自動車からタピオカミルクティーに至るまで消費者物価の下落を招いており、中国の長期的な潜在成長力に打撃を及ぼしている。

    中国社会から現在、楽観主義が失われている。1978年の改革解放政策以来だ。中国の若者世代は「実存的不安」を抱えており、その不安が経済停滞とともに深まるばかりだ。実存的不安とは、自己の存在そのものに関する究極の不安である。「自分の人生には意味がない」という根本的な孤独感だ。こういう不安が、無差別殺人などを引き起している背景にある。中国社会は、完全に行き詰まっているのだ。習氏は、これを統制強化で鎮めようとしている。こうして、悪循環が始まっている。

    習氏が、根本的な解決策である「人間性回復策」を取らない限り、事態はさらに悪化しよう。経済政策の180度転換が不可欠な局面である。こうして、習氏の国家主席4期目を阻む要因が増えているのだ。

    土地本位制崩壊の後遺症
    中国は、不動産バブル崩壊の渦中にある。地価が下落し続けているからだ。土地国有制の中国では、地方政府が民間などへ売り渡した土地売却収入が、地方政府の貴重な歳入源になっている。その土地売却収入が24年は、前年比16.0%の減少になった。3年連続の減少で、16年以来8年ぶりの低水準である。23年は、同13.2%減であったから、落込み幅が拡大している。

    土地売却収入の減少は、地方政府の行政執行上で大きなブレーキになっている。公務員の給料支払まで支障を来す事態である。こうした事態は、なぜ起こったのか。それは、「土地本位制」(学術用語でない)が経済の骨格を形成しているからだ。中国は今、土地が「通貨」の役割を果すという、かつてどこの国も経験しない暴走を演じた咎めを受けている。

    日本も不動産バブルが崩壊した。だが、地方自治体はほとんど無傷であった。土地売却益に依存する税収構造でないからだ。銀行貸出でも不動産担保は、決して安全でないことが理解されている。地価が変動する結果である。不動産担保では、時価の6割程度が担保の限度とされる。日本の不動産バブル時は、6割どころか10割以上という異常貸付もあって、金融機関が大きな痛手を被った。

    日本の場合は、企業と金融機関にバブル崩壊の傷跡を残した。中国はこれに加えて、地方政府が土地売却益を歳入減にしたことから、日本以上の大きなダメージを受けている。それが今、始まったばかりである。習氏には、こうした「土地本位制」のからくりが理解できず、毛沢東の見果てぬ夢を追いかけている。この空想に浸るよりも今は、足下の揺らぐ経済基盤を見つめ直すべき貴重な時期なのだ。

    習氏は、多くの経済顧問を抱えている。彼らは、西側経済学を履修した優秀なスタッフとされている。だが、習氏の「聞く耳持たぬ」事態によって、経済顧問の役割が果たせずにいるのだ。例えば、物価が下落していることは、需要不足と供給過剰の結果である。習氏には、この構造が理解できないという。「物価が下がれば国民は喜ぶはず」という認識である。

    この一言で、経済顧問は物価問題を議論する空しさを悟ったというのだ。現状は、供給過剰経済に陥っている。この現実を、経済政策によってどのように改めるか。こういう構造改革論が、習氏によって封じ込められている。悲劇的と言うほかない現状である。

    習氏の経済音痴が命取り
    習近平氏の認識によれば、物価は小幅上昇にとどまっており、「歓迎」すべき事態であろう。24年の消費者物価上昇率は、0.2%である。23年は、0.4%であったから、24年はさらに鈍化している。消費者物価上昇率が、ほぼ「ゼロ圏」に止まっているのは、生産者物価上昇率がマイナスへ落込んでいる結果でもある。生産者物価上昇率は、2年連続のマイナスに終わった。27ヶ月連続でマイナスである。過剰生産の結果である。
    (つづく)

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    https://www.mag2.com/m/0001684526



    テイカカズラ
       

    中国のEV(電気自動車)輸出は、23年がピークであった。24年は、前年比10.4%減の98万7000台へ。EUの関税引き上げが、中国EV輸出にストップを掛ける形になった。中国にとって、EV輸出が経済成長のカギを握っていただけに、これからの輸出動向に影を及ぼしている。

    『東洋経済オンライン』(1月29日)は、「中国のEV輸出台数、2024年は『1割減少』の意外」と題する記事を掲載した。この記事は、中国『財新』の転載である。

    (1)「急拡大してきた中国の自動車輸出に変調の兆しが現れた。中国汽車工業協会が1月発表したデータによれば、2024年の中国の自動車輸出台数は585万9000台と前年比19.3%増加。輸出台数が日本を抜いて世界一になった2023年(57.9%増)に比べて、伸び率が38.6ポイント低下した」

    中国の2024年の自動車輸出台数は、前年比19.3%の増加である。ただ、23年の同57.9%増から、大きく鈍化した。

    (2)「2024年の輸出拡大を牽引したのは、ガソリンや軽油を燃料とするエンジン車である。ロシア、メキシコ、アラブ首長国連邦、サウジアラビアなどでの販売好調に支えられ、エンジン車の輸出台数は前年比23.5%増の457万4000台に達した。(訳注:日本の自動車輸出台数は2024年1月から11月までの累計で前年同期比4.3%減の約3817500台にとどまっており、通年でも中国が世界一を維持したとみられる)」

    24年の自動車輸出台数では、2年連続で中国が世界1位になった。

    (3)「エンジン車とは対照的に、EV(電気自動車)とPHV(プラグインハイブリッド車)の輸出台数は合計128万4000台と前年比6.7%の増加にとどまり、伸び率は2023年(77.6%増)に比べて70.9ポイントも急落した。そのうちEVの輸出台数は98万7000台と、前年比10.4%の減少を記録。一方、PHVは29万7000台と同190%増加し、明暗が分かれた。EVの輸出台数がにわかに減少に転じたのは、欧州連合(EU)の反補助金調査の影響が大きい。EUは2024年7月から中国製EVに対する追加関税の暫定適用を開始し、10月から正式適用に移行した」

    24年の中国EV輸出台数は98万7000台と、前年比10.4%減である。

    (4)「業界団体の全国乗用車市場信息聯席会のデータによれば、2024年1月から11月までの期間に中国からEUに輸出されたEVは53万2000台と、前年同期比6%減少。11月単月の輸出台数はわずか2万5000台と、前年同月比67%も落ち込んだ。中国製EVへの逆風が吹くのはEU市場だけではない。東南アジア市場で最大の輸出先だったタイでは、同国の景気減速や自動車ローンの審査厳格化が響き、(エンジン車を含む)自動車市場全体が不振に陥っている」

    EVの輸出減は、EUや東南アジアで共通である。最大の輸出先であるタイも、景気減速に巻き込まれている。

    (5)「自動車専門メディア『オートライフ・タイランド』のデータによれば、タイ市場の2024年のEV販売台数は7万137台と、前年比8.1%減少した。タイ市場ではBYD(比亜迪)、上汽MG、哪吒汽車(ネタ)の3ブランドで2024年のEV販売台数の6割を占めるなど、中国勢の強さが目立つ。販売台数に目を転じると、BYDは前年比11.9%減、上汽MGは同28.9%減、哪吒汽車は同37.6%減といずれもマイナス成長だった」

    タイの2024年EV販売台数は7万137台と、前年比8.1%減である。EVの伸び悩みがハッキリしている。

    (6)「中国国内市場は、EV販売の伸びが鈍化する一方、PHVの人気が急上昇している。海外市場でも中国に続き、同様の傾向が現れつつある。海外では、充電インフラの整備が(中国よりも)遅れており、EV普及のボトルネックになっている。その点、PHVはEVよりも価格が安く、長距離ドライブでも電池切れの心配がないため、成長余地が大きい。中国汽車工業協会の陳士華・副秘書長は、今後のPHVの輸出拡大に期待を示した。同協会は2025年の中国自動車輸出がPHVの伸びに牽引され、2024年比5.8%増の620万台に達すると予想している」

    EVの伸び悩みの一方、PHVの人気が急上昇している。充電インフラの整備が、遅れている結果だ。発展途上国では、充電インフラ整備が、普及のポイントになる。

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    中国のAI企業ディープシークのAI「R1」モデルは、低コスト開発で一時は市場の寵児になったが、早くも疑惑論で調査が始まる騒ぎになっている。オーストラリアのチャーマーズ財務相は29日、ディープシークが開発したAIモデルの使用に注意するよう国民に呼びかける事態となった。チャーマーズ氏は、記者会見で「豪国民にはこの新しいテクノロジーに慎重になることを求めたい」と述べた。米ホワイトハウスのレビット報道官は28日、ディープシークが国家安全保障に与える影響について国家安全保障会議(NSC)が精査していると明らかにした。

    『ブルームバーグ』(1月29日付)は、「DeepSeekがオープンAIデータ不正入手か マイクロソフト調査中」と題する記事を掲載した。

    マイクロソフトとオープンAIは、中国の人工知能(AI)新興企業DeepSeek(ディープシーク)と関連のあるグループが、オープンAIの技術から出力されたデータを不正な方法で入手したかどうかを調査している。事情に詳しい関係者が明らかにした。

    (1)「関係者によると、マイクロソフトのセキュリティー研究者は昨年秋に、ディープシークと関連があるとみられる複数の人物が、オープンAIのアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)を使用して、大量のデータを流出させているのを確認した。機密事項だとして関係者は匿名を条件に話した。ソフトウエア開発者は、APIを使用するためのライセンス料を支払うことで、オープンAIが独自に開発したAIモデルを自社のアプリケーションに統合することができる」

    ディープシークが昨秋、オープンAIから大量のデータを流出させていることが確認されている。ソフトウエア開発者が、オープンAIからデータを使用する場合、ライセンス料を支払うことになっている。ディープシークは、これを払わなかったとすれば、「知財窃盗」になる。これならば、低コストでAIモデルを発売できる。

    (2)「関係者によると、オープンAIの技術パートナーであり最大の出資者でもあるマイクロソフトが、不審な活動についてオープンAIに通知した。そのような活動は、オープンAIの利用規約に違反する恐れがあるが、取得できるデータの量に関するオープンAIの制限を取り除く目的で行われた可能性があると関係者は述べた」

    ディープシークが、オープンAIのデータ大量に流出させていたことが立証されれば、「英雄が一転して犯罪者」になりかねない。豪州財務相が、ディープシークのAIモデル使用に注意を促しているほどだ。

    (3)「ディープシークは今月、人間の推論方法を模倣できる新しいオープンソースAIモデル「R1」を発表した。これにより、オープンAIやグーグル、メタ・プラットフォームズなどの米企業が独占してきた市場に衝撃が走った。ディープシークは、R1が数学的タスクや一般知識など、AI業界のさまざまなベンチマークにおいて、米国の大手開発会社の製品と肩を並べるか、それを上回る性能を発揮するとしている。一方、その開発コストは、それらの企業の数分の一で済んだという」

    ディープシークは、知財窃盗疑惑が降りかかってくると、信頼問題が大きく揺らぐことになる。「R1」は、オープンAIモデルを「母艦」にしており、受けた質問はオープンAIモデルを使って答えを出していたのだろう。

    (4)「トランプ米政権で暗号資産とAIの責任者に起用されたデービッド・サックス氏は28日、ディープシークがオープンAIのモデルのアウトプットを参考に技術を開発した「相当な証拠」があると述べた。オープンAIは、サックス氏のコメントに対応した発表文で、ディープシークに関する部分には直接言及しなかった。オープンAIの広報担当者は「中国を拠点とする企業およびその他の企業が常に、米国のAIをリードしている企業のモデルを模倣しようとしていることをわれわれは知っている」とした上で「AIのトップ企業として知的財産を守るための対策に取り組んでいる。(そのために)米政府と緊密に協力することが極めて重要だと考えている」と説明した」

    オープンAIは、中国AI企業が米国モデルを模倣しようとしていることを認識していたとしている。今後は、米国政府と緊密に知的財産を守るための対策を取る、としている。ここまで明かされてくると、ディープシークの「知財窃盗疑惑」は動かせぬ事実になってきた。


    あじさいのたまご
       

    中国の人工知能(AI)新興企業ディープシークは、米国の最高性能モデルに匹敵するAIの機能をより低コストで最高性能チップを使わずに達成したと発表した。なぜ、それが可能になったのか。米国内で、その謎解きが始まった。結論は、チャットGPTを模倣したというものだ。米国は、この事態に防御策を取り始めた。

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月29付)は、「中国ディープシーク、どうやって米国を出し抜いたか」と題する記事を掲載した。

    経験は邪魔になると考え、若い中国人技術者を雇用・活用する。さらに、プログラミングを巧妙に簡略化し、米国の規則の抜け穴を利用して先端半導体を入手する。これは中国のAI(人工知能)新興企業ディープシークが採用した手法だ。それによって開発されたAIプログラムは世界を震撼させた。これまでは、優れたAIの開発には高価な最先端コンピューターチップが大量に必要であり、中国企業はそうしたチップを入手できないため競争するのは難しいと考えられていた。ディープシークは才覚によってそうした予想を覆し、ウォール街に1兆ドル(約156兆円)の大損害をもたらすとともに、米テック企業に自社の手法の見直しを迫った。

    (1)「ディープシークを率いる梁文鋒氏は、2023年に中国の出版物に掲載されたインタビューで、大半の技術者のポストを埋めているのは、新卒者か実務経験が1~2年の人だと答えた。また、経験が障害になり得ると述べ、「何かをする時、経験のある人はためらいもなく、これはこのやり方でやるべきだと伝えてくるだろうが、経験のない人はそのやり方について、何度も検討を重ね、真剣に考えることを強いられる。そして現在の実際の状況に合った解決法を見つける」と語った。彼らが考え出した手法は現在、シリコンバレーで最も優秀な人々の研究対象になっている」

    ディープシークは、AIの専門家でなく未経験者に開発させた。奇想天外な方法で、「抜け道」を探させたのだ。楽して儲かる方法である。

    (2)「ディープシークの戦術は、独自の発明や、同社と同様に制限を受けている中国のAI企業が採用している技術を利用して、AIモデルを訓練するのに必要なデータ処理量を減らすというものだった。ディープシークは、質問を受けてから答えにふさわしい本を探し出すよう訓練された。このため半導体への負担は、全ての作業を一度にこなすよう求められる場合よりも小さくなる。米シンクタンク「ランド研究所」でAIを研究しているレナート・ハイム氏によれば、これら全ての点を考慮すると、ディープシークが取ったこうした近道は、AIの訓練に要するコストを競合AIモデルと比べて極めて低くすることに貢献した」

    ディープシークは、事前にすべて学習させるのでなく、質問を受けてから答えを探し出す方法を採用した。これだと膨大な事前コストを省ける。

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月29日付)は、「ディープシークはチャットGPTから『知識蒸留』、米AI責任者」と題する記事を掲載した。

    中国の人工知能(AI)スタートアップ企業ディープシークが世界を驚かせた最新のAI4モデルは、米オープンAIのコンテンツを学習させる手法を用いて開発された。第2次トランプ政権でAIの政策責任者を務めるデービッド・サックス氏が指摘した。

    (3)「サックス氏は28日、FOXニュースに出演し、ディープシークは「知識蒸留」と呼ばれる手法を採用していると説明した。新しいAIモデルが既存モデルに何百万もの質問を繰り返すことで、既存モデルの知識を学び、推論プロセスを模倣する開発手法だ。シリコンバレーの著名ベンチャーキャピタリストとして知られるサックス氏は、「ディープシークがオープンAIのモデルから知識を蒸留したという確固たる証拠がある」と指摘。「オープンAIがこれを喜んでいるとは思えない」と話した。サックス氏は、今後は米国のAI開発企業が自社のAIモデルを知識蒸留から守るために対策を講じるだろうと述べ、そうした措置で「一部の模倣モデルの開発ペースは確実に減速するはずだ」と語った」

    知識蒸留とは、既存モデルに何百万もの質問を繰り返すことで、既存モデルの知識を学び、推論プロセスを模倣する開発手法である。ディープシークは、この知識蒸留を行ったとみられている。その既存モデルが、チャットGPTであったとされている。いかにも、「抜け道探しの中国がやりそうなことだ。「上に政策あれば、下に対策あり」は、中国古来の抜け道探しの王道だ。



    あじさいのたまご
       

    韓国経済を支えてきたサムスン電子が、昨年10~12月期の営業利益でSKハイニクスに抜かれる事態となった。SKハイニクスは、AI半導体の素材になる高帯域幅メモリー(HBM)が好調であったことが寄与した。サムスンは、技術的障壁でこの分野へ進出できずにいる。

    『ハンギョレ新聞』(1月24日付)は、「SKハイニックス、第4四半期の営業利益8800億円 サムスン電子を抜き首位浮上」と題する記事を掲載した。

    SKハイニックスのキム・ウヒョン最高財務責任者は、「(技術競争力さえあれば)メモリー企業も(業況と関係なく)安定した利益を創出できる可能性を確認したという点で、今回の実績は大きな意味を持つと思います」と胸を張った。

    (1)「SKハイニックスは昨年第4四半期、危うい業況の中でも史上最高実績の記録を塗り替えた。サムスン電子を抜いて韓国企業の中で第4四半期の営業利益1位も占めた。高帯域幅メモリー(HBM)をはじめとする人工知能(AI)メモリーの競争力が引き出した結果だ。新年にはメモリー業況の両極化が続き、両企業の半導体事業間の格差がさらに広がる見通しだ」

    SKハイニクスが、韓国企業の中でサムスンを抜いて第4四半期の営業利益1位に輝いたのは初めてだ。この傾向は、今後も続くとみられる。サムスンの凋落が明白になった。

    (2)「SKハイニックスは23日、昨年第4四半期(10~12月)に売上19兆7670億ウォン(約2.1兆円)、営業利益8兆828億ウォン(約8800億円)を記録した。直前四半期より売上は12.5%、営業利益は15.0%増え過去最大値だ。昨年は、年間でも売上66兆1930億ウォン(約7.2兆円)、営業利益23兆4673億ウォン(約2.55兆円)を上げ、史上最高記録を塗り替えた」

    SKハイニクスは、AI半導体エヌビディアへの納品が高収益を実現している。サムスンはかつて開発を中止したことが今や、社運を揺るがす事態になっている。

    (3)「韓国国内での「営業利益1位」の王冠も獲得した。昨年第3四半期にはサムスン電子が9兆1834億ウォン、ハイニックスが7兆300億ウォンを記録し、それぞれ1、2位を占めたが、第4四半期はハイニックスがサムスン電子(6兆5000億ウォン)を上回った。サムスン電子が第3四半期に続き、第4四半期にもマイナス成長を続けた結果だ。「半導体酷寒期」のような特殊な状況を除けば、サムスン電子が1位を譲るのは珍しいことだ」

    サムスンが、SKハイニクスから営業利益1位の座を奪回することは極めて困難になった。技術力が追いつかないからだ。

    (4)「両社の悲喜を交錯させた決定的要因は、AIメモリーに関する技術力だ。ハイニックスは第4世代高帯域幅メモリー(HBM3)を「AIチップの第1人者」であるNVIDIAに独占供給したのに続き、第5世代製品(HBM3E)の物量も大部分引き受けている。今やハイニックスの売上のうち、HBMの割合が20%を超えるほどだ。データセンターに使われる第5世代DRAM(DDR5)とNAND基盤保存装置(eSSD)もハイニックスの成長を牽引した高付加価値製品だ。中国発の物量攻勢とスマートフォン、パソコンの需要の萎縮で旧型メモリー価格が下がる局面でも実績が改善された背景だ」

    SKハイニクスは、高帯域幅メモリー(HBM)が稼ぎ頭になった。独占的な強みを発揮している。

    (5)「今年は旧型メモリーを中心に業況が悪化し続け、業界の両極化がさらに明確になる見通しだ。AIブームに乗ったハイニックスは、旧型メモリーへの依存度を急速に減らしている反面、サムスン電子は不確実性が高い状況だ。ハイニックスはDRAMの売上に占める旧型製品(DDR4・LPDDR4)の割合が昨年の20%から今年は一桁に縮小するとみている。サムスンはこの比重を明らかにしていない」

    旧型メモリー市況の回復が遅れている。サムスンは、これに足を引っ張られる。SKハイニクスは、受注品のHBMが高収益を支える。対照的な動きだ。

    (6)「ハイニックスの成長を牽引したAIブームは今年も続くとみられる。ビックテック企業に加え、最近、米国をはじめとする主要国では政府レベルのAI投資の熱気も現れている。ハイニックスは「長期的なHBM需要の成長は疑いの余地がない」と語った。ハイニックスの技術優位も当分維持される見通しだ。ハイニックスは第6世代高帯域幅メモリー(HBM4)の基盤となる11~12ナノメートル工程でもサムスンをリードしているとの評価を受けている」

    SKハイニクスは、11~12ナノメートル工程の歩留まり率でサムスンを上回っている様子だ。こうなると、サムスンの凋落は決定的になる。サムスンは危機だ。

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