土地本位制崩壊の後遺症
習氏の経済音痴が命取り
権力強化に12年間費消
毛沢東追随は「死の道」
中国経済は、日本が過去に辿った苦しい道を歩んでいる。不動産バブル崩壊という条件が同じである以上、中国経済の足跡が日本に似ることは当然だ。しかも、合計特殊出生率の低下まで同じという瓜二つの経済構造になった。中国は、こういう状況で現実から何をつかみ取るか、である。それが、中国の今後を大きく左右することは間違いない。
習近平国家主席は、毛沢東路線の追随者である。習氏は、毛沢東が思い描いた世界覇権の夢を、「中華の夢」として実現を期す。中国に、それを現実化できる経済的要因が備わっているどうか。そういう根本的な議論を忌避し、危機に臨めば「統制強化」で乗切る強硬策を採用している。国内で妥協することが、習氏自らの権力基盤を弱体化させることになるのでは、と恐れているのだ。毛沢東が晩年、冒した多くの政策ミスを習氏もすでに嵌まり込んでいる。
トウ小平は、こうした毛沢東の独善主義を戒めて集団指導体制へ切替えた。だが、習氏は「聞く耳持たず」である。独善路線を歩み続けている。不動産バブル崩壊も合計特殊出生率の低下も、中国経済の根幹を揺るがす厳しい現実に目を塞ぎ、「世界覇権」の夢に酔っているのだ。毛沢東の「妄想」と実によく似ているのである。
理念のみに酔う人間は、独裁者になると言われている。「原理主義者」であるからだ。毛沢東も習近平氏もこの部類に入る。中国経済の現実は、もはや妄想を許す事態にはない。庶民の生活は、消費よりも貯蓄を重視する切り詰めた生活を余儀なくされている。特に、この傾向は若者に顕著だ。根強い悲観論は既に、自動車からタピオカミルクティーに至るまで消費者物価の下落を招いており、中国の長期的な潜在成長力に打撃を及ぼしている。
中国社会から現在、楽観主義が失われている。1978年の改革解放政策以来だ。中国の若者世代は「実存的不安」を抱えており、その不安が経済停滞とともに深まるばかりだ。実存的不安とは、自己の存在そのものに関する究極の不安である。「自分の人生には意味がない」という根本的な孤独感だ。こういう不安が、無差別殺人などを引き起している背景にある。中国社会は、完全に行き詰まっているのだ。習氏は、これを統制強化で鎮めようとしている。こうして、悪循環が始まっている。
習氏が、根本的な解決策である「人間性回復策」を取らない限り、事態はさらに悪化しよう。経済政策の180度転換が不可欠な局面である。こうして、習氏の国家主席4期目を阻む要因が増えているのだ。
土地本位制崩壊の後遺症
中国は、不動産バブル崩壊の渦中にある。地価が下落し続けているからだ。土地国有制の中国では、地方政府が民間などへ売り渡した土地売却収入が、地方政府の貴重な歳入源になっている。その土地売却収入が24年は、前年比16.0%の減少になった。3年連続の減少で、16年以来8年ぶりの低水準である。23年は、同13.2%減であったから、落込み幅が拡大している。
土地売却収入の減少は、地方政府の行政執行上で大きなブレーキになっている。公務員の給料支払まで支障を来す事態である。こうした事態は、なぜ起こったのか。それは、「土地本位制」(学術用語でない)が経済の骨格を形成しているからだ。中国は今、土地が「通貨」の役割を果すという、かつてどこの国も経験しない暴走を演じた咎めを受けている。
日本も不動産バブルが崩壊した。だが、地方自治体はほとんど無傷であった。土地売却益に依存する税収構造でないからだ。銀行貸出でも不動産担保は、決して安全でないことが理解されている。地価が変動する結果である。不動産担保では、時価の6割程度が担保の限度とされる。日本の不動産バブル時は、6割どころか10割以上という異常貸付もあって、金融機関が大きな痛手を被った。
日本の場合は、企業と金融機関にバブル崩壊の傷跡を残した。中国はこれに加えて、地方政府が土地売却益を歳入減にしたことから、日本以上の大きなダメージを受けている。それが今、始まったばかりである。習氏には、こうした「土地本位制」のからくりが理解できず、毛沢東の見果てぬ夢を追いかけている。この空想に浸るよりも今は、足下の揺らぐ経済基盤を見つめ直すべき貴重な時期なのだ。
習氏は、多くの経済顧問を抱えている。彼らは、西側経済学を履修した優秀なスタッフとされている。だが、習氏の「聞く耳持たぬ」事態によって、経済顧問の役割が果たせずにいるのだ。例えば、物価が下落していることは、需要不足と供給過剰の結果である。習氏には、この構造が理解できないという。「物価が下がれば国民は喜ぶはず」という認識である。
この一言で、経済顧問は物価問題を議論する空しさを悟ったというのだ。現状は、供給過剰経済に陥っている。この現実を、経済政策によってどのように改めるか。こういう構造改革論が、習氏によって封じ込められている。悲劇的と言うほかない現状である。
習氏の経済音痴が命取り
習近平氏の認識によれば、物価は小幅上昇にとどまっており、「歓迎」すべき事態であろう。24年の消費者物価上昇率は、0.2%である。23年は、0.4%であったから、24年はさらに鈍化している。消費者物価上昇率が、ほぼ「ゼロ圏」に止まっているのは、生産者物価上昇率がマイナスへ落込んでいる結果でもある。生産者物価上昇率は、2年連続のマイナスに終わった。27ヶ月連続でマイナスである。過剰生産の結果である。



