勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2025年02月

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    米国のドナルド・トランプ大統領は27日、中国からの輸入品に対する関税を来週からさらに10%上乗せすると表明した。合成麻薬フェンタニルの取引における中国の役割を理由に挙げた。新たな措置は3月4日の発動を予定している。トランプ氏は今月初めに中国からの輸入品に対して10%の追加関税を発動済みで、上乗せ幅は倍の20%になる。

    中国企業は、すでに「トランプ関税」引上げを予測して、海外移転を早めている。問題は、こうした生産機能の移転によって、産業空洞化が起こることだ。ますます雇用減少に見舞われることになる。

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月28日付)は、「トランプ関税かわす中国メーカー、生産移転を加速 東南アジアでの生産を拡大」と題する記事を掲載した。

    トランプ米政権が2月初めに中国からの輸入品に新たに10%の関税を課したことを受け、中国の電子機器メーカー、安集利安科技は追加関税を回避する計画を推し進めた。現在、10%の関税と今後起こり得る追加措置により、安集利安はマレーシアでの生産体制を急ピッチで整え、春には最初の製品を米国に出荷することを目指している。安集利安のエグゼクティブ・バイスプレジデント、ルノー・アンジョラン氏は「作業の加速を余儀なくされている」と述べた。同氏は他の工場を視察するためインドを近く訪問する予定だ。


    (1)「多くの中国製造業者にとって、トランプ氏の政権復帰は、東南アジアを中心に工場を開設したりパートナー企業を見つけたりする計画に緊急性をもたらした。世界の工場としての中国を補う選択肢を見つける「チャイナ・プラスワン」戦略に着手した外国企業もあり、他国での生産を拡大している。一部の工場は、関税で米国のバイヤーのコストが上昇する中、価格を引き下げて製品の魅力を維持する方法を模索している。しかし、中国の多くの業界では利益率がすでに低く、価格を引き下げる余地は限定的だ」

    中国企業自体が、「チャイナ・プラスワン」戦略を構築せざるを得ない時代になった。「トランプ空襲」に備えて「疎開」することだ。この疎開は、片道切符になる。再び、中国へ戻ることはない。

    (2)「関税回避の方法を探る中国企業は、ベトナム、インドネシア、タイなどで生産を拡大している。中国商務省によると、東南アジア諸国連合(ASEAN)の製造業への中国からの直接投資は2023年に約91億ドル(約1兆3600億円)となり、18年の約45億ドルから増加した。調査会社ファソム・コンサルティングの分析によると、22年以降、東アジアおよび太平洋地域への中国からの投資の大半は、工場や新規事業を新設する「グリーンフィールド投資」が占めている」

    中国は、ベトナム、インドネシア、タイなど東南アジア諸国連合(ASEAN)製造業への直接投資が、2023年に約91億ドル(約1兆3600億円)となり、18年の約45億ドルから倍増した。


    (3)「イリノイ州を拠点とする家庭用品会社ハニー・キャン・ドゥー・インターナショナルのスティーブ・グリーンスポン最高経営責任者(CEO)は、トランプ政権による対中関税第1弾の導入前は自社製品の約50%を中国で、残りをベトナムと台湾で生産していたと推定している。現在では中国での生産は約20%に減少する一方、ベトナムが約60%、台湾が残りの20%を占めている。同社の中国の請負業者でベルベットハンガーを製造する企業は、カンボジアに工場を設立中だ。グリーンスポン氏は約6カ月で完成すると予想しており、工場が稼働し次第、生産をそこに移転させることを提案している。グリーンスポン氏は「2025年末の時点で、中国で重要な事業を行っているとは考えにくい」と述べた」

    イリノイ州を拠点とする家庭用品会社CEOは、米中関税戦争が起こる前の生産で、中国が50%を占めていた。現在は、中国生産が約20%に減少しており、25年末はゼロ予測である。

    (4)「サプライチェーンの移転は容易ではない。新しい場所を探し、施設を建設し、労働者を訓練し、現地の規制を理解し、生産の品質とスピードを向上させるには時間とコストがかかる。一部の製造業者は、中国では堅固なインフラとサプライチェーンが確立しており、他国よりも事業展開が容易だと指摘する。一部の生産を他国に移したとしても、製品の原材料は主に中国から調達する必要があるとの声も多く聞かれる」

    生産機能の移転は、生やさしい話ではない。一部の生産を他国に移したとしても、製品原材料は主に中国から調達する必要がある。


    (5)「安集利安のアンジョラン氏は、欧州やオーストラリアの顧客を増やそうとすることは可能だが、関税が引き上げられても米国の顧客を諦めることはないと話した。同社が製造する製品の約半分が米国の顧客向けだと推定している。トランプ氏の関税政策は急激な変化を伴うものの、アンジョラン氏は何もせずに事態の収束を待つ余裕はないと語った。中国製造業者にとって、米国企業に製品を販売することはますます困難になると彼は考えている。「これはわれわれが単に回避できる巨大な潮流ではない」とアンジョラン氏は述べた」

    安集利安のアンジョラン氏は、関税が引き上げられても米国市場を諦めないという。それだけ、米国市場の魅力が大きいことだ。米中対立が、中国企業を追い詰めている。


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    中国と東南アジア諸国は、南シナ海を巡る紛争で武器購入先を中国から韓国へ変更する動きが増えている。東南アジア諸国は、韓国とは軍事的軋轢がないことで、韓国製兵器購入に関心を強めている。韓国は、「漁夫の利」を得られそうである。日本は、武器輸出規制で自重している。

    『朝鮮日報』(2月27日付)は、「『韓国製に乗り換えます』、東南アジア諸国が中国製兵器を使わない理由とは」と題する記事を掲載した。

    韓国が、兵器輸出の恩恵にあずかるかもしれないという見方がでている。東南アジア諸国では政治的リスクが大きい中国よりも、韓国が作った兵器を求めているという見方だ。

    (1)「香港紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』(SCMP)は15日(現地時間)、「中国と東南アジア諸国の間における軍事的緊張が高まっていることから、東南アジア地域の中国製兵器への依存度は下がっている。その隙間に韓国が入ってきて、東南アジアの兵器市場で(韓国は)中国の最大のライバルになった」と報じた。中国は南シナ海の約90%に対して領有権を主張しており、ベトナム・フィリピン・台湾・マレーシア・ブルネイなどの東南アジア諸国と摩擦を起こしている。このため、東南アジア諸国では主な兵器調達先だった中国に代わる国を探しているが、コストパフォーマンスに優れ、政治的リスクが小さい韓国の兵器が急速に裾野を広げているというのだ」

    韓国は、ポーランドへ戦車を輸出するなど兵器輸出に力を入れている。低コスト・高品質が評価されている理由だ。ポーランドへは、2022年に基本契約としてK2戦車1000台の輸出が決まったほど。現在、二次輸出契約が進んでいる。東南アジア諸国が、韓国の兵器に注目するのはごく自然な流れと言えよう。


    (2)「その代表的な例が、南シナ海で中国と物理的な衝突まで起こしているフィリピンだ。フィリピンは年内にも韓国製の超音速軽戦闘機FA-50を12機追加購入するため交渉中だ。2014年に既にFA―50を12機導入して使用しているが、交渉が妥結すればその数が倍増することになる。また、南シナ海での衝突に備え、2028年までに遠海警備艦(オフショア巡視船、OPV)6隻など12隻以上の韓国製艦艇を配備する計画だ」

    フィリピンは、超音速軽戦闘機FA-50を12機追加購入する。さらに、遠海警備艦(オフショア巡視船、OPV)6隻など12隻以上の韓国製艦艇を配備する。

    (3)「マレーシアも2023年にFA―50を18機注文したという。韓国製高等訓練機(T-50)の最初の顧客であるインドネシアは、2021年に追加で6機注文した。韓国で建造された潜水艦も3隻使用している。旧ソ連の兵器を使用してきたベトナムも、韓国製兵器の新たな顧客に浮上している。約20門の韓国製K9自走砲導入交渉が最終段階に入っており、近く契約締結を控えているとのことだ。中国との領有権問題に絡んでいない国々も、最近は中国製兵器の購入を躊躇しているようだ。タイでは、中国製潜水艦の導入失敗で中国製兵器に対する信用が下がっているという。タイは2017年に中国製潜水艦3隻を購入する契約を結んだが、2023年の欧州連合(EU)による中国向け兵器輸出禁止措置でドイツ製エンジンが搭載できなくなり、2023年に事実上、導入を取りやめた」

    マレーシア・インドネシア・ベトナム・タイなども韓国製兵器輸入先として名前が上がっている。これまで、兵器輸出国として、ロシアが圧倒的シェアを持っていたが、ウクライナ戦争で輸出余力を失い韓国などの新規輸出国が登場している。


    (4)「韓国製兵器のメリットは、優れた品質と手ごろな価格だ。ダニエル・K・イノウエ・アジア太平洋安全保障研究センター(米ハワイ・ホノルル)のラミ・キム教授は「韓国の兵器は優れた品質を持ち、米国および西側諸国に比べて低価格で、引き渡しの効率性の面で際立っている」と語った。米国・中国・ロシアに比べて地政学的リスクが少ないという点もメリットだ。シンガポール南洋理工大学ラジャラトナム国際学院(RSIS)のコリン・コー主任研究員は、「韓国は東南アジア地域に歴史的・政治的負担がない。東南アジアで誰も韓国を脅威と考えていない」と言う。その上で、「韓国文化はかなり受け入れられている。こうしたソフトパワーは、韓国が東南アジアで政治的・経済的合意はもちろん、軍事的合意を推進する上でも非常に有用な手段だ」と述べた」

    東南アジア諸国が韓国製兵器に注目しているのは、米国・中国・ロシアに比べて地政学的リスクが少ない点だ。前記3ヶ国の兵器を購入すると、「紐付き」とみられるリスクが発生する。その点、韓国では政治的に安心という理由だ。

    (5)「米シンクタンク、ランド研究所ティモシー・ヒース上級研究員は、「韓国との兵器取引は、中国や米国と協力するのに比べて政治的リスクが少ない。韓国は、米中間の緊張を利用できる有利な立場にある」と分析した」

    韓国は、米中対立から離れていることで「漁夫の利」を得る感じだ。昨今の韓国経済は暗い話で充満しているが、この兵器輸出は久しぶりの「明るい」話題であろう。



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    中国の新興民営企業ディープシークが、低コストで高性能の生成AI(人工知能)モデルを開発したことが、中国の「科学技術の自立自強」の模範として称賛されている。国内で暗い話ばかりの中国にとっては、ディープシークが米国から低評価さえながらも、明るいニュースであることは間違いない。だが、統制強化する習近平氏は、自らの政策が正しいゆえにディープシークが生まれたと「我田引水」の挙に出ている。これは逆に、「科学技術の自立自強」を阻むものと指摘されている。

    『時事通信』(2月26日付)は、「ディープシークの不安、民営企業統制を強化する習政権」と題する記事を掲載した。

    中国共産党政権は2月17日、民営企業座談会を約6年ぶりに開き、習近平国家主席(党総書記)が演説した。座談会と言っても、習主席を含め、最高指導部の党政治局常務委員会メンバー7人のうち4人が出席する重要な公式行事。低迷する国内経済へのてこ入れのため、民営企業支援の姿勢をアピールする狙いがある。


    (1)「最も注目された企業側参加者は、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏。同社は2020年、馬氏が自国金融行政の保守性を公然と批判したことなどから、習政権の民営企業たたきで目の敵にされた。その一件の後、馬氏は今回の座談会のような公式行事には一切出ていなかった。国営中央テレビのニュース映像によると、習主席は座談会の終了後、多くの民営企業家と握手を交わし、その中に馬氏もいた。馬氏が伝統的な中山服(人民服)を着ていたのは、保守派主導の習政権に恭順の態度を示すためだったと思われる」

    アリババ創業者の馬雲氏は、習主席の怒りが解けて民営企業家として座談会出席が許された。「帝王」の逆鱗に触れると、こういう仕打ちを受けるのだ。

    (2)「習主席は、民営企業が困難と試練に直面していることを認めながらも、それは産業のモデル転換・レベル向上の過程で生じるもので、「部分的であって全体的ではなく、一時的であって長期的ではない」と主張。この状況を切り抜けるため、思想と行動の両方を党中央の国内外情勢に対する判断と統一するよう求めた。つまり、目下の困難は習政権の政策のせいではなく、党の指導に従っていれば大丈夫と言いたいようだ。前回の民営企業座談会での習主席の演説は、党中央との思想・行動統一を求めてはいなかった。習主席は、これまでの公式報道を見る限り、今回は民営企業の存在意義を強調することはなく、むしろ民営企業の「報国」(国のために尽くすこと)に重点が置かれた」

    習氏は、民営企業の苦境が一時的現象として片付けている。そして、民営企業の思想と行動の両方で、党中央の国内外情勢に対する判断と統一すれば、民営企業は危機を乗り切れるとした。民営企業の「報国」を求めたのだ。戦時中の日本企業が、政府から資材や資金の割当てを受けるような話だ。習氏の認識が、「教祖」的になっている感じで気になるところだ。


    (3)「中国でも、民営企業の発展には何より自由なビジネス環境が重要だという説がある。香港メディアによると、検索エンジン大手の百度(バイドゥ)創業者で会長兼最高経営責任者(CEO)の李彦宏氏は同11~13日にドバイで開かれた世界政府サミットで、他の参加者からディープシークの成功について問われると、「イノベーションは計画できない。イノベーションがいつ、どこに出てくるかは分からず、できるのはそのために有利な環境をつくることだけだ」と答えた」

    中国でも、民営企業の発展には何より自由なビジネス環境が重要という認識が広まっている。

    (4)「国営通信社『新華社』の元記者で作家の呉暁波氏も15日、インターネット上で「『杭州六小竜』(注:最近、有名になった杭州トップ6の先端テクノロジー企業。ディープシークも含まれる)は、計画して生まれたわけではない」と題する論評を発表。これら6社の創業者はいずれも国家プロジェクトに支援された経営者ではないとした上で、「馬雲」「イーロン・マスク」や「杭州六小竜」を単純にまねするのではなく、イノベーションのための多くの失敗を受け入れる国・都市の雰囲気をつくり出さねばならないと指摘した」

    杭州トップ6の先端テクノロジー企業(「杭州六小竜」)は、国家プロジェクトから生まれたものでない。自由な雰囲気の中から、自然発生的に発展したのだ


    (6)「アリババやディープシークなどを生んだ杭州には、失敗を受け入れる雰囲気があるのであろう。ネットサービス大手の騰訊(テンセント)や華為が創業した経済特区の深圳市(広東省)と環境が似ているのかもしれない。深圳は、かつて政治的自由があった近隣の国際金融センター・香港の影響下で発展を遂げた。習政権は、前回の民営企業座談会で民間ビジネスへの支援を確約したにもかかわらず、その後、「資本の無秩序な拡大を防止する」と称して、民営企業に対する締め付けを強め、これが経済落ち込みの一因になった」

    杭州は中国八大古都だけに、しだれ柳がよく似合う街だ。奈良を思わせる雰囲気がある。ゆったりした気風が、伸び伸びとした精神を生んでいるのだろう。民営企業の独創性を生むには、上から押さえつける統制方式が向かないのだ。


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    米国の対ソ戦略の基本は、ロシアによる中国への完全依存度を剥がすことにある。中ロ蜜月関係に杭を打ち込むとしているが、中国は早くも警戒姿勢を強めている。ロシアは、3年間のウクライナ戦争で疲弊しきっており、中国の支援なしには経済が円滑に回らない状態へ落込んでいる。米国は、このロシアの窮状を「救うべく」中国に代わって支援する姿勢をみせている。

    『ブルームバーグ』(2月27日付)は、「ロシアは中国に『完全に依存』、引き剥がし狙うールビオ米国務長官」と題する記事を掲載した。

    米国のルビオ国務長官は、ロシアと中国との間に不和の種をまくことなく両国の関係を希薄化させたいと述べ、ロシアの中国との緊密な関係を管理する米国の戦略を打ち出した。


    (1)「ルビオ氏は、保守系メディアのブライトバート・ニュースに対し、ロシアについて「中国との関係から引き剥がすことに完全に成功するかはわからない」としつつ、「中ロを対立させることが世界の安定に有益だとも思わない。両国とも核大国だからだ」と語った。一部のアナリストは、トランプ大統領のロシアに対する最近の歩み寄りを、ニクソン元大統領とは逆のやり方で中ロを分断させる試みだと捉えてきた。ニクソン氏は約53年前に歴史的な中国訪問を果たし、ソ連の世界的な影響力を突き崩すとともに中国を米国に引き寄せ、その後数十年にわたって国際的なパワーバランスをシフトさせた」

    トランプ氏は、ニクソンを尊敬している。ニクソンが行った中ソ離間作戦を、今度再び行おうとしているのだ。ニクソンは、米国から中国へ接近してソ連を孤立させた。トランプ氏は、米国がロシアへ接近して中国を孤立させる戦術である。

    (2)「中国政府は、ウクライナでの戦争終結を巡り米国と協議したロシアを称賛したが、米ロの雪解けが中国にとって何を意味するかは明らかでない。中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は、2022年のウクライナ全面侵攻開始直前に「制限のない」友好を宣言し、国際舞台での対米姿勢で団結している。中国外務省の林剣報道官は、ルビオ氏の発言に反論し、中ロの関係はいかなる第三者によっても影響されないと主張した」

    ロシア経済が、これから苦境に向う中で、中国はどれだけ支援できるかだ。従来のロシアは、中国に対して上位であった関係が完全に崩れている。ロシア社会では、受入れがたい事態の到来である。ここへ、米国が割って入ろうとしている。


    (3)「同報道官は27日、北京で開いた定例記者会見で「中ロの間に不和の種をまこうとする米国の試みは失敗に終わる」と述べ、「中国とロシアは、いずれも長期的な発展の戦略と外交政策を持つ。国際情勢がどう変化しようとも、中ロ関係は独自のペースで前進していくだろう」と続けた」

    中国外務省は、米国の動きに反発している。当然であろう。習近平にとっては、プーチン氏は無二の盟友である。その盟友が、米国と握手する事態は想像もできないであろう。

    (4)「ルビオ氏は、ロシアが中国の「恒久的なジュニアパートナー」となり、2つの核大国が米国に立ち向かってくるようになるのなら、中ロ関係の緊密化は米国にとって問題になると警告。米国主導の制裁で孤立するロシアはここ数年、中国市場へのアクセスによって経済を維持することができ、習氏はプーチン氏に外交的なシェルターを提供している。「ロシアは、対米関係の改善を望もうが望むまいが、同国は完全に中国に依存するようになってしまったためにそれができない状況に陥っているかもしれない。それは、われわれがロシアを切り離したからだ。米国にとってより良い結果は、関係を築くことで生まれる」とルビオ氏は論じた」

    米国が、中国からロシアを引離すには、ロシアへ経済的便益をどれだけ提供できるかにかかっている。その意味で、欧州がロシアに対して「寛容」になれるかも大きな要因だ。ロシアが、今のように欧州を威嚇し続けていては、欧州のロシア警戒論は続くであろう。



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    日産自動車は、創業以来の経営危機に直面している。ホンダとの統合で「子会社化案」を拒否した結果、世界の格付け会社3社から「投資不適格」という最悪の格付けを受ける事態へ直面している。この事態を招いた内田社長の責任は重く、日産社内で社長交代準備が始まった。

    『ブルームバーグ』(2月27日付)は、「日産が内田社長交代で準備、経営悪化やホンダ交渉失敗受け-関係者」と題する記事を掲載した。

    日産自動車は27日までに、内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)を退任させることを視野に調整を始めた。業績悪化に加えてホンダとの共同持ち株会社設立交渉が頓挫したことなどを受け、経営責任を明確化させ人心を一新して出直しを図る狙いがある。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。


    (1)「公表前の情報だとして匿名を条件に話した関係者らによると、日産は就任から5年以上が経過した内田氏の後継候補の検討に着手した。同社は3月中旬にターンアラウンド(再生計画)の詳細について発表する方向で、4月には幹部人事の刷新を予定している。カルロス・ゴーン元会長の逮捕以降の混乱を経て、長く経営トップを務めてきた内田氏が退任すれば日産は一つの区切りを迎えることになる。業績再建は今にいたるも道半ばのままで自動車業界の競争激化で新たなパートナー探しも急務となっており、次期トップには重い責任が課せられることになる」

    日産が、今日の窮地を招いたのは社長である内田氏の責任である。事態が、ここまで悪化した以上、早急な退任によって体制立直しは常識であろう。

    (2)「内田社長の退任に関する報道について、市場は歓迎しているようだ。日産の株価は27日の東京市場での取引で上昇に転じ、一時前日比4.7%高の450.5円まで買われた。また、同社のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は27日朝、仲値の気配が155bpを示している。前日より約33bp低い水準で、CMAのデータによると昨年12月中旬以来の低下幅となる。CDSのスプレッドのタイトニングは会社に対する信用力が市場で高まっていることを示している」

    市場は、内田氏の社長退任を歓迎している。社内外から、すでに不信任を突きつけられたのであろう。


    (3)「日産は、米国や中国の販売不振などで業績が悪化。今期(2025年3月期)純損益は800億円の赤字に転落する見通しで、タイなどでの工場閉鎖を伴い全世界で9000人を削減するリストラ案を進めている。内田社長はホンダとの共同持ち株会社設置構想でも先頭に立って交渉を進めてきたが、2月13日に協議を打ち切ることを正式発表、破談に終わった」

    ホンダは、内田氏の社長退任後に再度の「統合」を申し入れるとも伝えられている。格付け3社から「投資不適格」とされる不名誉な事態だけに、ホンダの「子会社化」でも存続できれば「御の字」と言うべきかも知れない。

    (4)「ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストは、報道について日産自身が内田社長退任に動き始めたことは、「生き残りのためのパートナーを獲得する上で、日産がまだ当事者能力を有しているということを示唆するものだ」と評価。市場の反応については、内田氏自身が再建にめどがついた時点での退任の可能性を示していたものの、実際の時期は明確にされておらず、退任までの時間がこれまでの想定ほど遅くはないと解釈された可能性があると述べた」

    日産は、内田氏の社長退任の動きが始まったことで、未だ生残りの当事者能力を持っている、とまで言われている。日産にとって、これ以上ない「侮辱」であろうが、実態はここまで零落しているのだ。

    (5)「内田氏は、1991年に同志社大学神学部を卒業後、日商岩井(現双日)を経て2003年に日産に入社。購買担当を中心に歩み、中国事業のトップを務めたあと19年12月に社長に就任していた。日産を巡っては、台湾の鴻海精密工業も提携を目指しており、必要であれば日産の大株主である仏ルノーが保有する株式の買い取りも検討しているほか、米投資ファンドのKKRが日産の資金調達に関して協議を始めていることも明らかになっている」

    内田氏が、神学部卒業とは始めて知った。ビジネスの世界とは、全く異質の学問を学んだ訳だ。内田氏は、精神的にも「企業統合」という会社の命運を左右する大勝負に耐えられなかったであろう。ある面で、お気の毒であったと思う。


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