尹錫悦(ユン・ソクヨル)弾劾審判の判決日程が、遅れに遅れている。盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領と朴槿恵(パク・クネ)元大統領弾劾事件の場合、2週間以内に判決が出ていることとくらべ、今回は異常なまでの遅れである。これだけ遅れているのは、憲法裁判官の間で意見の相違が大きく、決定が難航しているという分析が有力視されている。これに慌てているのが左派陣営である。早く尹氏の弾劾決定を受けて、大統領選挙に臨みたいからだ。
『ハンギョレ新聞』(3月31日付)は、「尹大統領弾劾審判、4月18日以降に持ち越される『最悪のケース』へと高まる懸念」と題する記事を掲載した。
2月25日、尹大統領弾劾裁判の弁論が終結した後、遅くとも3月中旬には決定宣告が出るだろうという期待が多かった。3月中旬には、20日か21日の判決を目標に、評議が順調に進んでいると把握されていた。
(1)「宣告日程が決まらないなど、雰囲気が急変したことで、今後の日程さえ見通しが立たなくなった。最後の争点整理過程で、これまで沈黙していた誰かが「別の声」をあげたものと推定される。24日、ハン・ドクス首相弾劾宣告では、尹大統領弾劾事件の行方を推し量ることができるという予想とは裏腹に、憲法裁は全くヒントを残さなかった。むしろ5(棄却)対2(却下)対1(認容)で、裁判官が「分化」したことだけが確認された」
ハン・ドクス首相弾劾宣告では、8人の憲法裁判官のうち5人が棄却、2人が却下で認容1人であった。このように意見が分かれたことから、尹大統領弾劾でも意見が分かれているとの見方が強まっている。この背後には、最大野党「共に民主党」が、執拗なまでに政策遂行を妨害した事実が浮かび上がったことだ。尹氏だけの責任でなく、「共に民主党」にも責任があるという見方である。
(2)「裁判官が、どのような点において意見の相違があるかをめぐり、憲法裁の外部では様々な分析が飛び交っている。まず、決定文の作成などの手続き的問題が指摘され、時間がかかっているとみられている。検察の調書と弾劾裁判での陳述に違いがあるが、決定文の草案が検察調書を基盤に作成されており、これを法廷陳述に変えるのに時間がかかっているという推定だ。判決があまりにも遅くなり、尹大統領弾劾事件の罷免に必要な認容の定足数6人に達しないのではないかという懸念の声もあがっている」
弾劾は、「政治裁判」である。国会の弾劾告発では当初、「内乱罪」が含められていたが、後に削除されている。内乱罪が要件でない弾劾告発であれば、純粋な政治的判断が問われてくる。憲法裁判官も難しい判断を求められる。
(3)「6人以上が認容の意見を出さなければ、罷免は成立せず、尹大統領は職務に復帰する。元最高裁判事は30日、ハンギョレとの電話インタビューで「こんなに遅くまで結論が出ないのは、定足数6人を満たしていないからかもしれない。一人が別の意見を出したことで、それに同調した人が出てきた可能性もある」とし、「棄却や却下の論理がいくらつじつまが合わなくても、裁判官がそのように主張して意見を貫くと、方法がない」と語った」
6人の裁判官が、意見の一致がなければ「棄却や却下の可能性もある」との見立ても出ている。尹大統領の行動にも「一定の合理性があった」という判断があるから、意見がまとまらないのであろう。
(4)「4月まで持ち越された尹大統領弾劾宣告の最終ラインはムン・ヒョンベ裁判官とイ・ミソン裁判官が退任する4月18日だ。4月10日は両裁判官退任前の「8人体制」でできる最後の定期宣告日だ。憲法裁は弁論が終結したパク・ソンジェ法務部長官の弾劾事件も「8人体制」で結論を出す方針だという。結論を出さなければならない「課題」が山積しているのだ」
4月18日には、2人の裁判官が退任する。そうなると、4月10日が「8人裁判官」最後の体制という。この日に、結論を出さなければならない。
(6)「このような状況で、両裁判官の退任までに尹大統領弾劾事件の結論が出ない可能性まで取りざたされている。裁判官の間で激論が続き、尹大統領弾劾案の結論を出すことができず、両裁判官が退任するかもしれないということだ。こうなれば、憲法裁は再び「6人体制」に戻り、事実上任務の遂行が不可能な状態になる。西江大学法科大学院のイム・ジボン教授は、「決定文を整えるのにここまで時間がかかるとは考えられない。政治的な考慮をして時間を引き延ばす裁判官がいるのではないかと疑われる」とし、「国民が承服できる決定を速かに下さなければならないのに、すでに適期が過ぎた。憲法裁判の決定は説得力のある内容も重要だが、時期も重要だ」と指摘した」
4月10日に、結論が出ないケースもあり得るという。左派陣営は、尹大統領弾劾結論が出なければ、大統領選も不可能になる。ヤキモキしている理由はここにある。