トランプ米大統領の発表した自動車関税は、日本にとって最大の対米輸出品目の自動車を直撃する。関税は、現在の2.5%から27.5%へ引き上げられる。日本のGDPは、0.3%程度下押しするほどの影響が予測される。関税は自動車企業に対して、米国で増産するか国内の雇用維持かという難しい選択を迫っている。石破首相は、「喧嘩しても得るところはない」と米国との交渉論を優先さえる構えだ。
『毎日新聞』(3月27日付)は、「米国で増産か、国内雇用の維持か 車関税、自動車業界のジレンマ」と題する記事を掲載した。
トランプ米政権が、自動車や主要自動車部品に対する25%の追加関税を4月3日以降順次発動する。日本や欧州などの国内産業や雇用を大きく揺るがし、米国自身も「返り血」を浴びかねない事態で、関係者に衝撃が広がっている。トランプ氏の強硬措置に成算はあるのか。
(1)「今回の関税強化策が完成車だけでなく部品も対象にしたことで、自動車部品メーカーも含めて業界全体に衝撃が広がった。「我々には現地生産拡大は極めて難しい。大変なことになるが、やれることもない」。ある大手自動車部品メーカー幹部は表情をくもらせた。別の部品メーカー関係者は、関税強化で製造コスト全体が上昇することで「仕入れ先も取引価格を下げてくる可能性がある」と懸念を口にした」
みずほリサーチ&テクノロジーズ(RT)によると、今回の自動車関税の影響で単価の低い車種の輸出停止を余儀なくされ、対米自動車輸出が4割ほど減少する場合、日本経済への影響額は1兆8271億円に上ると試算される。名目国内総生産(GDP)を約0.3%下押しする計算という。この金額は、訪日観光客増加分でカバーできる可能性がるものの、当該業界への影響は甚大だ。
(2)「米政府高官によると、米国で販売される自動車エンジンのうち、ドイツ製が24%、日本製が23%で、韓国製は8%。3カ国で50%を超え、米国製エンジン(19%)を大きく上回る。米政権は、日本やドイツなどが重要部品の生産拠点を自国にとどめていると主張し、「『詐欺師』たちが米国を、外国部品を組み立てるだけの低賃金の作業場に変えてしまった」(政府高官)と痛烈に批判。国内製造業の復活を掲げ、海外メーカーに米国内生産を増強するよう求めている」
日本、ドイツ、韓国は、対米自動車輸出で稼いできた。米国は、執拗に米国内の生産を求めている。米国内よりも国内の方が安く生産できる、メリットを生かしてきた結果だ。
(3)「各社には簡単に応じられない事情がある。新規の工場進出は一般的に計画から4年前後はかかるとされ、完成時には政権が代わっている可能性がある。既存の工場で余った生産能力を活用できれば、ある程度は増やせるものの「それでも多額の投資が必要。市場が求める車種が作れるかどうかも判然としない」(自動車大手幹部)。自動車メーカーより米国内の生産拠点網や企業体力で劣る部品メーカーにとっては、生産増強のハードルは一段と高い」
トランプ関税がかかったからと言って、すぐに米国内で増産できるものでない。この間は、関税負担をしのぐほかない。日本車の競争力が、揺るがなければ価格転嫁も可能だ。
(4)「加えて、米国での生産増強に伴って日本国内での輸出向けの生産が縮小すれば、産業の空洞化が進みかねない。雇用や人材育成、技術水準の確保といった観点から国内で年300万台規模の生産体制を維持してきたトヨタ自動車をはじめ、550万人が従事するとされる自動車関連業界に広く影響が及ぶのは必至だ。ある業界関係者は「『米国か、日本か』の二択にはしたくない。これからどうすれば良いのか」とこぼした」
トヨタは、最低限300万台の国内生産を維持することを前提にしている。これが、雇用や人材育成、技術水準の確保のうえで不可欠としているからだ。となると、利益を一部削っても国内生産を優先させるであろう。
(5)「政府関係者によると、近く岩屋毅外相がルビオ米国務長官と会談し、改めて適用除外を求める方向で調整している。外務省幹部は「発動されてからが本番。そこからどう交渉していくかが肝心だ」と語るが、4月3日の関税発動はほぼ不可避で、具体的な打開策は見えない。米政権の求めに応じて米国内での生産を増やせば、それだけ国内生産が縮小し雇用も減りかねない。自動車業界はジレンマを抱えながら、当面難しい経営判断を迫られそう」
日本政府は、報復という手荒なことでなく「話合い路線」で解決しようとしている。米国へは、安全保障という重大問題を抱える以上、「短兵急」な対応ができないのだ。





