香港の大手複合企業、長江和記実業(CKハチソンホールディングス)は、中米パナマ運河周辺の2港湾を含めた世界41の運営権を、米国企業ブラックロック率いるコンソーシアムへ売却する。この案件を巡り、中国側が圧力を強めている。政府関係者が先週に国有企業に自粛を指示したことに現れている。既存の協業には影響しないが、新規案件は当局の認可が得られなくなるという。中国にとって、この港湾管理権売却がいかに痛手であるかを物語っている。
『ブルームバーグ』(3月27日付)は、「中国、李嘉誠氏や一族との新たな取引停止と関係者-国内外の投資調査」と題する記事を掲載した。
中国は香港の富豪、李嘉誠氏とその一族に関係する企業との新たな取引を見合わせるよう国有企業に求めた。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。パナマ運河2港を世界的なコンソーシアムに売却する計画に中国は不満を募らせていた。
(1)「非公開情報だとして匿名を条件に話した関係者によると、今回の指示は先週、高官の要請で国有企業に出された。既存の提携は影響を受けないという。この指示により、国有企業は李氏(96)と関係がある事業活動の認可を直ちに受けられなくなる。また、規制当局は李一族の幅広いビジネス取引に対する理解を進めるため、中国内外で一族がどのような投資を行っているか調査していると関係者は述べた」
今回の港湾売却は、ゴールドマン・サックス・グループのバンカーが仲介した。当初は、96歳の李嘉誠氏にとって、変動が大きい事業からの有利な撤退として投資家に歓迎された。だが、トランプ米大統領はこの取引について、米国が中国の影響下からパナマ運河を取り戻したと主張。中国がこれに不満を抱き、李氏に圧力をかけている。
中国が不満を示しているものの、交渉はまだ妨げられていないもようだ。非公開情報だとして匿名を条件に話した関係者によると、デューデリジェンス(資産査定)や税務、会計、その他の取引条件の最終調整が現在進められており、計画通り4月2日までの最終合意の署名がなお目標になっているという。
中国政府系香港紙の『大公報』は売却を批判し、売却中止を求める報道を連日展開している。26日には「国益を顧みぬ企業は自ら基盤を損なう」とする記事を掲載したほど。中国共産党で香港政策を担う中央香港マカオ工作弁公室なども27日までに計3回、ホームページで大公報の批判記事を転載した。政治介入とみられないようにするため中国政府は慎重との見方もあるが、売却を自主的に撤回するよう圧力を強める構図が浮かんでいる。
香港取引所への届け出によると、CKハチソンとブラックロック率いるコンソーシアムの独占交渉期間は145日間。このため、中国国有企業など他の買収候補が、交渉入りする余地はほとんど残されていないと関係者は指摘している。
(2)「新たな取引の停止命令は、中国の国有企業と李氏に関連する会社との協力禁止を必ずしも意味するわけではない。だが、CKハチソンが米ブラックロック主導のコンソーシアムとパナマ運河などの港湾を売却する取引を行ったことで、同社は米中対立の矢面に立たされることになり、李氏に対する圧力も強まっている」
中国が香港のCKハチソンに圧力をかけている背景には、港湾管理権の売却が中国の戦略的利益や軍事面に影響を及ぼす可能性があると懸念していることだ。中国の一帯一路計画へ悪影響を及ぼす懸念もある。
中国政府は、この売却が国家安全保障や経済的利益に悪影響を及ぼす可能性があるとし、批判を強めている。この問題は、単なる経済的な取引を超え、地政学的な競争や国際的な影響力の争いの一環として注目される。
CKハチソンが、なぜ世界主要港湾41の管理権を一括して売却するか。この背後には、中国経済の長期的な衰退予想が前提になっているとみるべきだ。となれば、今が売却のグッドタイミングという判断になろう。中国経済は、これから人口高齢化が急速に進み人口減社会へ移行する。そうなれば、中国経済の威光が薄れる。港湾管理権を高値(190億ドル=約2兆8600億円)で売却するするチャンスも消える。ビジネス感覚からすれば、当然の判断であろう。「売り時」であったのだ。



