勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2025年04月

    テイカカズラ
       

    ベッセント米財務長官は、4月29日の記者会見で米国の関税措置の影響により、中国で1000万人の雇用が失われる可能性があると指摘した。中国政府は、いずれ中国側の関税政策が持続可能でないことを認識するだろうとも述べた。『ロイター』(4月29日付)が報じた。米国は、中国の状況を詳細に把握しているとみられる。中国の労働集約産業は、現実に大きな痛手を受けている。

    『朝鮮日報』(4月30日付)は、「対米輸出全面ストップ、利益をあきらめて持ちこたえる中国の工場」と題するルポ記事を掲載した。

    4月18日、中国・北京から約200キロ離れた河北省保定市高陽県のタオル工場を訪れた。1990年代から30年ほどタオルを作っていると話す工場長は数百個余りの箱とまだ完成していない半製品のタオルの山を前に「これは全て米国に出荷されるべき物なのに、作業が全て中断した状況だ」と話した。


    (1)「今年に入り、(米電子商取引大手の)アマゾンに納入する1200万元(約2億3000万円)相当の契約を獲得した。普段の800万~900万元の契約に比べると大口だった。輸出企業が必ず納入日を守ってほしいと言っていたので、それを約束したのだが、最近連絡が来て、数日以内に(供給量を)減らさなければならないと言ってきた。輸出企業が商品を(米国に)送る方法を見つけるまで、倉庫にこうやって積んでおくしかない。月間売上高600万元(約1億2000万円)規模の工場にとって1200万元の契約は大口だった。しかし、米中の貿易戦争が始まった今、それがかえって仇になり、工場の未来を脅かしている」

    アマゾンからの大口契約が、突然のキャンセルになった。大量の在庫を抱えて四苦八苦である。

    (2)「この日、取材した高陽県のタオル卸売街は、ほとんどの商店が閉まっており、物騒な雰囲気だった。高陽県は中国有数の紡織産業地帯で、昨年末現在で約4200社の関連企業が立地している。ここで生産されるタオルだけで年間50億枚に達し、中国全体の生産量の3分の1を占める。それでも店を開けていたある問屋は「最近は午後になってから店を開く。不景気に米中貿易戦争まで重なり、仕事が少ないからだ」と話した」

    高陽県のタオル卸売街は、ほとんどの商店が閉まって「休業状態」である。「トランプ恐慌」の襲来である。


    (3)「米国による相互関税は、中国の紡織産業にとって致命的だ。中国紡織工業連合会によると、24年の家庭用繊維製品の輸出額は、前年比5.6%増の484億9000万ドルだった。2022年(1.09%減)、23年(2.38%減)という2年連続のマイナス成長を経て、ようやく増加に転じたところだった。輸出全体の40%近くを占める米国(11.1%)と欧州連合(EU・9.49%)への輸出が増えたためだったが、その頼みの対米輸出が減ることになったのだ。ある卸売業者は、「米国とEUに供給する商品は利益率が高い」とし、大きな打撃は避けられないと懸念した」

    中国の紡織産業は、米国が輸出全体の40%近くを占める大口である。それだけに、トランプ関税の影響は甚大である。

    (4)「対米輸出顧客が多い工場と卸売業者は利益を放棄して持ちこたえるしかない状況だ。高陽県最大の繊維問屋街である「高陽商業貿易城」に入居しているSさんは「皆が原価を下げなければ、生き残ることができない」と話した。Sさんは「工場は人件費を減らして原価を下げ、卸売業者の私たちと(ここで商品を買っていく)輸出業者も価格を下げなければならない。そうやってようやく関税を相殺できる」と話した。前出の工場長は「(営業を担当している)妻にひとまず資金が残らなくても顧客が要求する品質と計画に合わせるよう伝えた。1、2カ月間は稼げなくても構わない。工場を維持することさえできればいい」と述べた」

    ともかく、米中の話合いがついて関税が引下げられるのを待つほかない状態だ。


    (5)「彼らが、米中貿易戦争を長期間耐え抜くことは難しい状況だ。米国に代わる顧客はいないためだ。前出の工場長の場合も生産量全体に占める対米輸出の割合が半分以上を占める。中国政府は、米中貿易戦争がエスカレートすると、「中国が巨大な経済規模を持つ点を忘れてはならない」とし、内需市場に注目するよう呼びかけているが、取材で会った卸売業者や工場関係者は国内で新しい顧客を探す選択肢は考えていないと話した。ある卸売業者は「国内市場の場合、(消費低迷で)価格競争が激しすぎて生き残れない」と話した。中国国家統計局によると、昨年の衣類、靴、帽子、織物の1人当たり消費支出額は前年比0.3%の伸びにとどまった」

    中国国内で、新しい顧客を探す選択肢は考えられないという。国内市場の場合、価格競争が激しすぎて生き残れないからだ。

    (6)「中国の中小工場の悲鳴は、高陽県だけでなく、全国から上がっている。 米自由アジア放送(RFA)は4月18日、中国の浙江省、江蘇省、広東省など主な輸出地域で工場がメーデー(5月1日)連休から操業を中断し、長期休暇に入るところが多いと伝えた。勤務時間を短縮した工場が続出しているほか、従業員は在庫処理のために親戚や知人を動員しているとされる。浙江省、江蘇省、広東省などの貿易業者の工場で10年以上管理職として働いたという人物はRFAのインタビューに対し、「こんな経済状況は数十年間なかった」と語った」

    中国の浙江省、江蘇省、広東省など主な輸出地域では、工場がメーデー(5月1日)連休から操業を中断して長期休暇に入るところが多いという。中国政府は、この状態でも「最後まで戦う」という。メンツの問題である。



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    これまで、米国新政権がスタートした100日間は、政策期待感で平穏なものである。だが、トランプ政権2.0は共和党支持者の間ですら不満が噴出している。共和党議員集会ではどこも、不満の罵声が飛び交う異常な雰囲気になっている。

    『ブルームバーグ』(4月29日付)は、「飛び交う罵声、米共和党議員の集会が大荒れ-トランプ氏への怒り噴出」と題する記事を掲載した。

    米ニューヨーク州選出のマイク・ローラー下院議員(共和)が27日に開催した対話集会は、怒号や罵声が飛び交う混乱した場となった。参加した有権者らは、トランプ大統領や共和党議員に対する不満や怒りをあらわにした。


    (1)「ローラー議員は、「皆さん、私に質問に答えてほしいのであれば、まず質問をさせた上で答えを聞いてください」と訴えた。同州ウェストナイアックの高校に詰めかけた700人の出席者の一部は、自身を中道派と位置付けた同議員を嘲笑した。トランプ氏の政策に対する草の根レベルでの怒りが、有権者とのこうした対話集会で噴出している。貿易戦争や、イーロン・マスク氏の「政府効率化省(DOGE)」が推進する連邦職員の大量解雇など、同氏の政策は物議を醸している」

    トランプ大統領は選挙で圧勝したが、これを「白紙委任状」とみて突飛な政策を打ち出し脱線状態に陥っている。正常化するのか。共和党支持者すら怒りの声を上げている。

    (2)「最近の一連の世論調査で、トランプ氏の支持率は低下。金融市場の混乱や経済に対する不安の高まり、関税がインフレを高進させるとの懸念が背景にある。ABCニュースとワシントン・ポスト紙、イプソスによる共同世論調査によれば、大統領としての職務遂行ぶりに関するトランプ氏の支持率は米成人の39%にとどまった。現在のような世論調査が始まって以降、歴代のどの大統領よりも低い。下院共和党指導部は、今回のような混乱を避けるため対話集会を開催しないよう所属議員らに助言している」

    ABCニュースとワシントン・ポスト紙、イプソスによる共同世論調査によると、トランプ政権は政権発足100日目の支持率が39%と1945年以降で最低となった。ここ80年間、なかったことが起っているのだ。共和党支持者の不満が強いのは当然であろう。



    (3)「トランプ大統領はローラー議員の集会が始まる直前に、自身のソーシャルメディア・プラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」に投稿し、集会の参加者が抗議活動を行った場合、共和党議員は「甘く対応すべきではない。直ちに排除すべきだ」と主張した。ローラー議員(38)は、ニューヨーク州知事選への出馬を検討しているが、州民の多くはトランプ氏に反感を抱いている。議会は、イースターのため2週間の休会中。通常は対面での集会を開くのに適した時期だが、共和党議員で対話集会を開催しているのはほんの一握りに過ぎない」

    議会は、イースターのため2週間の休会中である。通常は、党員と対面で集会を開くのに適した時期である。今回は大荒れを予想して、集会を開くケースが少なくなっている。

    (4)「ローラー議員が、トランプ氏の関税政策を説明し擁護しようとすると、参加者は声を上げて妨害。自身のスタッフに詰め寄った参加者に対し、同議員が離れるよう警告する場面もあった。参加者の多くは集会が終了する前に会場を後にした。少なくとも1人が警察に連行され、警告を受ける人たちもいた。ニューヨーク州オレンジバーグ在住の民主党員、モーリーン・エイチソンさん(60)は「人々の熱心さと民主主義を目にした」と、集会の様子を語った。「だが、ローラー議員が質問に答えていなかったので、皆いら立っていた」と指摘する」

    ローラー議員が、トランプ関税政策を説明すると、抗議が殺到するという異常事態である。党員が、物価への跳ね上がりを知っているからだ。今後の物価が現実に上昇した場合、どのような反応が起こるか、「ゾッ」とするほどである。


    (5)「同様の光景はここ数週間、全米各地で見られ、ソーシャルメディアで拡散。共和党が圧倒的に強い地域でも、こうした事態となっている。ジョージア州選出のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員(共和)が今月、地元で主催した集会では、数人が退場させられ、逮捕者も出た。警察は少なくとも2人に対してスタンガンを使用した。グリーン議員は集会の場で質問を受け付けることをせず、全ての質問を書面で提出させた。その上で一部の質問については、大声で読み上げた上であざけるような態度を取った」

    ジョージア州での共和党議員集会は、大荒れになって逮捕者が出たほどだ。警察は、少なくとも2人に対してスタンガンを使用する事態になった。トランプ氏が、関税へ緩和姿勢を見せ始めている背景には、こういう共和党支持者の抗議行動が影響しているのであろう。



    テイカカズラ
       

    中国は、米中貿易戦争では米国が高関税を撤回しない限り米国と交渉しないと豪語している。だが現実は、水面下で交渉しているのだ。半導体・集積回路関連の8品目の関税を撤廃した。一方、中国当局はG20(主要20ヶ国)蔵相・中央銀行会議で訪米した関係者が4月24日、米国財務省を訪問した写真が撮られている。随行員3人が、門の外で待っている姿だ。中国外務省が、発表している内容と大きくかけ離れている。

    『韓国経済新聞』(4月26日付)は、「『中国、米国産半導体8品目に125%関税撤回』…関税戦争、交渉局面か」と題する記事を掲載した。

    中国が一部の米国産製品に対する報復関税を撤回したという海外の報道があった。両国が報復を繰り返した「関税戦争」が交渉局面に入る可能性があるという見方が出ている。


    (1)「CNNは25日(現地時間)、中国深圳の素材輸入会社の関係者らを引用し、「中国が米国で生産された一部の半導体に対して報復関税125%を静かに撤回したとみられる」と伝えた。中国のある輸入会社の関係者は「メモリーチップを除いた多くの半導体を含む8品目の集積回路に対して関税が免除された事実を知った」と話した。続いて「顧客のために(輸入品を)定期通関する過程でこうした事実を把握した」と説明した。 ある輸入会社はSNSを通じて「(中国当局から米国産輸入品のうち)半導体・集積回路関連の8品目の関税コードが追加関税を免除されるという新しい通知を受けた」と明らかにした」

    中国企業は、米国から輸入の半導体・集積回路関連8品目の関税コードが、追加関税を免除されるという新しい通知を受けた。公式発表されずに、こっそりと行われた。中国は、米国へ対抗して関税を引上げたが、自らのクビを締める結果になったのだ。


    (2)「中国のある経済メディアもこの日、「中国が米国産半導体8品目に対して関税を免除することにした」と報道した。また、中国半導体産業協会の発表を引用し、「これら品目には付加価値税13%だけが課され、10-24日の間に入った製品に関税を出した場合は払い戻しを受けることができる」とし「メモリーチップは関税免除品目に含まれなかった」と伝えた。しかし、この記事は現在削除された状態だ。中国当局の検閲のためか誤報による削除なのかは確認されていない。半導体だけではない。この日、ブルームバーグ通信は「中国政府が医療装備、産業用化学物質など一部の米国産製品に対する関税125%を猶予することを検討中」と伝えた」

    中国当局は、自国に不利な記事を削除させた。これが、雄弁に中国が劣性であることを窺わせている。

    (3)「続いて、「中国政府が米国との関税戦争で特定の産業に負担が加重されていると判断した」と関税猶予措置の背景に言及した。 関税猶予品目に米国産エタンも含まれたことが把握された。世界最大プラスチック生産基地の中国は米国産エタンに依存して工場を運営している。超音波機械など先端医療装備も含まれた。こうした中国の関税免除措置が米中関税戦争の新たな局面を意味するものかどうかが注目される」。

    中国は、米国産エタンも追加関税から除外した。中国が、世界最大プラスチック生産基地でエタンが不可欠であるからだ。超音波機械など先端医療装備も追加関税を撤廃された。


    (4)「最近、トランプ米大統領が中国に向けて何度か交渉を促したからだ。中国はその間、関税問題に関連して米国側と交渉しているという事実を否認してきたが、水面下接触の動きが表れている。 トランプ大統領が23日、「毎日(中国と直接接触)している。(関税関連の合意が)2、3週以内にあるかもしれない」と述べると、中国外務省の報道官はブリーフィングで「米国といかなる協議、交渉もしたことはなく、(関連の言及は)すべてフェイクニュース」と反論した。中国商務省も「(米国との)経済および貿易交渉は進行中でない」と否認した」

    中国は、頑なに米国側と関税問題を交渉している事実を否認しているが、すべて虚勢を張っている結果だ。米国に「負けない中国」というイメージを内外に植え付けようとしているのだろう。

    (5)「トランプ大統領は24日、ホワイトハウスでノルウェーのストーレ首相と会談した後、記者らに「彼ら(米国と中国の代表)は今日午前に会議を開いた」とし、両国間の交渉が進行中だと改めて明らかにした。米時事誌タイムが25日に公開したインタビュー記事でも、トランプ大統領は習主席が自分に電話をかけてきたと明らかにした。しかしインタビューが22日に行われたことを考慮すると、習主席との電話はその以前ということだ」

    トランプ大統領は、習近平国家主席が電話してきたとしている。外部の者には、「嘘か真か」判断できないが、中国の隠蔽主義によれば、「まんざら嘘」とも言えなくなろう。


    (6)「中央日報の取材陣はこの日午前7時ごろ、中国財政省の当局者が10人ほどの随行員を同行してホワイトハウスの隣にある米財務省庁舎で入る姿を確認した。この当局者の詳細は確認されていないが、全員が現在ワシントンで開催中の主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議場への入場に必要な身分証を着用していた。この日の米中両国の「財務省会議」は韓米「2プラス2通商協議」開始の1時間ほど前に始まった。韓米関税交渉が米中間の水面下接触に続いて行われたということだ」

    取材陣は4月24日午前7時ごろ、中国財政省当局者が10人ほどの随行員と、ホワイトハウスの隣にある米財務省庁舎へ入る姿を確認し写真に撮っている。中国外務省は、こうした事実も否定している。



    あじさいのたまご
       

    中国外交部が突然、「米国に屈しない」という動画を発表した。他国へ協調呼掛けているが、狙いは国内の動揺を抑える目的であろう。しかし、水面下では米国と連絡を取っていることは明らか。その事実を伏せて、「いざ、戦わん」と動画を流している目的は複雑怪奇である。

    『TBS』(4月29日付)は、「中国『決してひざまずくことはない』“トランプ関税”批判する動画公開」と題する記事を掲載した。

    アメリカと中国の貿易摩擦が激化するなか、中国外務省はトランプ政権による高関税政策を批判する動画をSNSで公開しました。タイトルは、「決してひざまずくことはない」です。


    (1)「英語でトランプ政権による高関税政策を批判する2分19秒の動画である。「“台風の目”というものを知っているか?一見、平穏のように見えて、それは流血の嵐を招く致命的な罠である」としています。「いじめに頭を下げるのは毒を飲んで渇きを癒すようなもの、さらなる危機に陥るだけだ」としています」

    英語であることから一見、海外向けと見せかけているが、狙いは国内の動揺を抑える目的であることは間違いない。

    (2)「映像では、アメリカが過去にプラザ合意で円高を迫った例を挙げ、「日本経済を長期の低迷に追い込んだ」と指摘。「歴史が証明しているように、妥協をしても許しを得ることはできず、ひざまずけばさらなるいじめを招くだけだ」として、「中国はひざまずかない」「退かない」と強調しています。また、「世界に占めるアメリカの貿易のシェアは5分の1に満たない」として、国際社会に結束を呼びかける内容となっています」


    プラザ合意は、為替調整が目的であった。日本が円高で国力が衰退したのではなく、「円高不況」という間違った見方に政府が動揺し、政策金利を引下げて不動産バブルを引き起した。円高は、交易条件改善であり好況の要因である。それを不況と間違えたことが、失策であった。中国政府は、こういう理論的な背景を無視して「円高不況論」に惑わされている。そう言っては失礼だが、表面的な理解に止まっている。

    (2)「動画は、公開後2時間で1万回以上視聴されていますが、コメントは書き込めないように規制されています。中国外務省が、こうした動画を公開するのは異例で、郭嘉昆報道官は「この動画が中国の立場をよりよく理解する助けになることを願っている」とコメントしています」

    中国は、すでに米国の高関税に苦しんでいる。輸出貨物は劇的な減少になっているのだ。地方の3線~4線の都市には越境ECを奨励する「特区」を設けて、輸出を増やす戦略を始めている。内需充実ではなく、あくまでも輸出に拘っている。内需が、回復不能なほどの冷え込みになっている証拠だ。米国に屈しないならば、内需を振興して輸出に依存しない経済システムへ転換すべきである。空元気を付けて、「負けないぞ!」と言っているのは、国家としていかがなものかと言うほかない。


    『時事通信』(4月28日付)は、「実は苦境の習政権◇トランプ関税、政局に影響も」と題する記事を掲載した。

    米中貿易戦争について、「いずれ選挙がある米国より独裁体制の中国の方が世論を気にしなくてよいので有利」との見方があるが、本当にそうなのか。実際には、習近平政権は経済失速で主流派(習派)の勢力が衰えており、トランプ関税への対応を誤って国内の不況がさらに悪化すれば、政局の新たな不安定要素となる恐れがある。

    (3)「中国商務省の国際貿易交渉代表(閣僚級)が交代した。相互関税などでトランプ氏が新たな貿易戦争を仕掛けてきた時期の異動で、意外な人事だ。4月16日に発表された人事で同代表に起用されたのは、世界貿易機関(WTO)大使だった李成鋼氏。次官級からの昇進となった。一方、前任者の王受文氏の転出先は未公表。北京の消息筋はロイター通信に対し、王氏はタフな交渉官で、米当局者と衝突してきたと指摘した上で、ブルドッグに例えた。習近平国家主席が好きな戦狼外交官のようなタイプなのだろう」

    中国商務省は、国際貿易交渉代表(閣僚級)が交代した。前任者の王受文氏は、タフな交渉官で米当局者と衝突してきたという。その人物が交代したのだ。


    (4)「中国側はトランプ関税に猛反発し、次々と報復措置を取っているが、その一方で、強硬派の大物交渉官を外したわけだ。香港紙『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』も、この交代は米国との貿易戦争終結に向けた突破口を中国側が探っていることを示すのかもしれないと指摘した」

    香港紙は、国際貿易交渉代表交代が貿易戦争終結に向けた突破口を探っている証拠とみている。

    (5)「同紙によると、中央財経委弁公室常務副主任の韓文秀氏は中華全国供銷合作総社の理事会主任に転じるとの説が流れている。同総社は公的な農業支援組織で、理事会主任は閣僚級ながら、中央財経委の運営を担う要職からの異動であれば、明らかに左遷である。韓氏は、旧国家計画委(現国家発展改革委)出身。2018年、同弁公室副主任に起用され、すぐに常務副主任に昇格した。経済失速の主因となった極左的な民営企業バッシングやゼロコロナ政策を推し進めた「下手人」の一人だった。国内経済は改革・開放時代になってから最悪の状態で、政権主流派が落ち目のところにトランプ氏のハードパンチだ」

    中央財経委弁公室常務副主任の韓文秀氏も交代説が流れている。韓氏は、経済失速の主因となった民営企業バッシングや、ゼロコロナ政策推進の「下手人」の一人とされる。その人物が交代とみられる。こうして、中国政府は、柔軟体制に切替えていると指摘されている。




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    米国は、自ら始めた関税戦争の影響が国内物価の引上げというブーメラン現象になってきたことに気づいた模様だ。海外自動車への25%関税が、米国内の自動車販売に悪影響及ぼすことで、米国内で自動車生産する企業には「上乗せ関税」を行わないとラトニック商務長官が発言。正式には29日(現地時間)、トランプ大統領から発表される。

    『ロイター』(4月29日付)は、「トランプ氏、自動車関税の影響軽減へ 29日発表=米当局者」と題する記事を掲載した。

    米政府当局者は、トランプ政権が29日に自動車関税の影響を軽減する措置を講じると明らかにした。国産車で使用する外国製部品に課される関税の一部を緩和するほか、国外で製造された自動車に課す関税が、他の関税に上乗せされないようにするという。


    (1)「ラトニック商務長官は、声明で「トランプ大統領は国内自動車メーカーと米国の偉大な労働者の双方と重要なパートナーシップを築いている」とし、「この合意は、国内で製造する企業に恩恵を与えると同時に、米国への投資と国内生産拡大を表明したメーカーに道を開くもので、大統領の貿易政策にとって大きな勝利だ」と述べた」

    ラトニック氏は、トランプ側近を自任しているだけに、今回の政策転換が自らの進言に基づくことを臭わせている。いずれにしても、トランプ関税の大きな山の一つが解決する。

    (2)「自動車メーカーは先に、トランプ氏が米自動車大手3社や1000社を超えるサプライヤーが拠点を置くミシガン州を訪問する前に、自動車関税の軽減を発表するとの見方を示していた。米自動車業界団体の連合は先週、トランプ大統領に対し輸入自動車部品に25%の追加関税を賦課しないよう求める書簡を送り、こうした関税で自動車販売台数が減少し、価格を押し上げることになると警告した。トランプ氏はこれまで、自動車部品に対する25%の関税を5月3日までに発動する計画を示している」

    米自動車業界団体は、次のような書簡をトランプ氏の元に送っていた。


    『ロイター』(4月23日付)は「米自動車部品関税は価格上昇と販売減少につながる、業界団体が警告」と題する記事を掲載した。

    米自動車業界団体の連合は22日付の書簡で、トランプ大統領に対し輸入自動車部品に25%の追加関税を賦課しないよう求め、こうした関税で自動車販売台数が減少し、価格を押し上げることになると警告した。

    (3)「書簡は、米ゼネラル・モーターズ(GM)、トヨタ自動車、独フォルクスワーゲン(VW)、韓国の現代自動車などの大手自動車メーカーやサプライヤーを代表する複数の業界団体が合同で、グリア米通商代表部(USTR)代表とラトニック商務長官、ベッセント財務長官宛てに送付した。トランプ氏は先に、5月3日までに自動車部品に25%の追加関税を発動する予定だと発言している」

    自動車部品への25%追加関税が、5月3日までに発動される予定である。自動車業界は、これが発動されれば米国自動車産業が大きな痛手を被るとして取り止めを求めたもの。


    (4)「書簡は、「自動車部品への関税は世界の自動車サプライチェーン(供給網)を混乱させ、消費者にとっての自動車価格の上昇や販売店での販売台数減少につながる連鎖反応を引き起こすとともに、保守や修理の費用も引き上げる」と訴えた。フォード・モーターは先週、トランプ氏による自動車関税が続けば、新車価格を引き上げる方針を示した。ミシガン州にある自動車研究センター(CAR)は今月、トランプ大統領が4月3日に発動した輸入自動車に対する25%の追加関税は、2025年に米国内の自動車メーカーに約1080億ドルのコスト増をもたらすことになるとの分析を発表している」

    すでに発動された輸入自動車への25%追加関税は、2025年に米国内の自動車メーカーに約1080億ドル(約2兆0449億円)のコスト増をもたらすとの分析が発表されている。これは、トランプ関税の趣旨と全く異なる結果だ。トランプ氏が、米国内で生産し、また生産予定の企業を含めて、海外企業の輸入する自動車追加関税の取り止めは、現実に目を向け始めたことを表している。



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