勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2025年05月

    テイカカズラ
       

    韓国経済は、構造的な停滞局面へ入ったようだ。米中貿易戦争というほかに、これまでの成長要因が薄れ、逆に既得権益を狙う動きが一段と拡大している。「構造改革」は不可欠だが、反対する政治勢力によって阻まれている。要するに、危機感が希薄である。こうして、25年経済成長率は%台に止まる見通しで、2年連続で潜在成長率2%に達しない懸念が強い。統計を取り始めた1954年以来の事態である。

     

    『東亜日報』(5月30日付)は、「韓銀が0%台成長を公式化、次期政権の肩が重い」と題する社説を掲載した。

     

    韓国銀行(韓銀)は、今年の韓国成長率の予測値を0.8%に大幅に下げ、「0%台の成長」を公式化した。長期化する内需萎縮や米国発関税戦争が、経済を直撃すると見たのだ。緊急処方で基準金利を0.25%ポイント引き下げたものの、泥沼に陥る景気を蘇らせるには力不足だという評価が出ている。


    (1)「昨日、韓銀は、1.5%だった成長率予測を、3ヵ月ぶりに半分の水準に下げた。第1四半期の成長率がマイナス0.2%に下がると、調整をこれ以上先送りできないと判断したのだ。韓銀は、対米関税交渉が円満に進み、関税率が大幅に引き下げられても成長率は1%を超えない0.9%に止まるものと予想した。来年の成長率予測も1.6%で0.2%下げたが、韓国の成長率が2年連続で2%に至らないのは、1954年に統計を取り始めて以来一度もなかったことだ」

     

    昨年と一昨年、韓国の産業用電力の販売量が2年連続で減少した。コロナ禍の時期を除いては、関連統計を取り始めた1999年以降初めてのことだ。中国製品とのグローバル競争激化、深刻な内需萎縮が重なり、韓国の製造業が深刻な低迷に陥っている。韓国経済は、想像以上に「内部崩壊」が進んでいる。政治的混乱は、その象徴である。隣国として、極めて憂慮すべき事態へ落込んでいる。

     

    (2)「韓銀の金融通貨委員会がこれに対応して、基準金利を2.75%から2.5%に下げたが、状況を反転させるのは難しい状況だ。外食物価の上昇や政治不安で、消費心理は依然として冷え込んでおり、収益性が悪化した企業は投資余力が足りない。だからといって、金利をさらに急激に引き下げると、不安になったソウルなどの住宅価格を引き上げ、家計負債のみさらに増やす副作用は避けられない」

     

    金利を下げるとすぐに、不動産投機に走るというおよそ合理的行動に反することを始めている。家計債務残高は、すでに対GDP比で100%を超えている。韓国は、過度な家計負債が消費を制約し、2008年のリーマンショック後に大沈滞を体験した米国と似た道を歩んでいると指摘されている。


    (3)「通貨政策が壁にぶつかった時は、財政を供給して問題を解決しなければならない。今月初め、嶺南(ヨンナム)地域の山火事対応などの用途で、13兆8000億ウォンの第1次補正予算を編成したが、景気刺激には限界がある。ただ6・3大統領選挙で勝利すれば、最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)大統領候補は20兆ウォン以上、与党「国民の力」の金文洙(キム・ムンス)候補は30兆ウォンの「2次補正予算」の編成を約束している。20兆~30兆ウォンの補正予算は成長率を最大0.2~0.5%ポイント引き上げる可能性がある」

     

    6月3日が、大統領選である。現状では、左派勢力の李在明氏が当選すると予測されている。財政支出の大盤振る舞いを始めるのは確実だ。こうして、改革を後回しにした安易な方法がとられるであろう。

     

    (4)「それだけに、最も効果の大きい部門に予算を集中する必要がある。限界に達した自営業者に対し数百万ウォンずつ予算を配分するのは、民生支援の効果はあるが、成長率向上にはあまり役に立たない。資金難で止まったインフラや建設部門に対する支援がさらに大きな効果を期待できる。人工知能(AI)や蓄電池を支援し、成長潜在力を高めることも先送りできない。今年、韓国経済が0%台の成長の沼から脱出できるかどうかは、来週発足する新政府の判断と実行力にかかっている」

     

    自営業者救済は、新たな自営業者を出さない対策だ。一時的感情で会社を辞め、自営業に走り債務を増やすという繰返しである。労働市場流動化を進めるには、年功序列賃金制を廃止することが先決だが、労組の反対で進まず混沌とした事態へ陥っている。問題解決の糸口さえ見つからない社会である。

     

     

     

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    日鉄のUSスチール合併問題は、大詰めを迎えている。土壇場で、両者の合併で米国政府が「金庫株」を持つとの構想が飛び出した。米国政府が、1%程度の株式を保有して、重大決定(企業縮小や解雇)で拒否権を持つとされている。ただ、米国では民間企業や外国からの投資に対して、伝統的に政府が関与を控えてきたため、極めて異例の措置とみられる。一説では、日鉄の提案ともされている。となれば、「実害」はないのだろう。

     

    『ブルームバーグ』(5月30日付)は、「日本製鉄のUSスチール買収計画、『黄金株』構想浮上-QuickTake」と題する記事を掲載した。

     

    米政府が日本製鉄によるUSスチール買収を承認する条件として、いわゆる「黄金株」、またはそれに類する権限を得る可能性がある。事情に詳しい関係者がブルームバーグ・ニュースに明らかにした。

     

    (1)「この140億ドル(約2兆円)規模の買収計画を巡り、米政府が実質的にUSスチールの一部決定に対する拒否権を持ち得るという。詳細は今も調整中である。USスチールの本社があるペンシルベニア州選出のデービッド・マコーミック上院議員は、政府の関与を「黄金株」と表現している。ただし、政府が実際に株式を保有する形となるか、それともより弱い介入権限にとどまるかは現時点で不透明だ」

     

    日鉄は140億ドルの買収のほかに、同額の設備投資を行い、新規製鉄所建設案を含めている。米鉄鋼業界にない破格の投資となる。トランプ政権が、これを高く評価するのは当然だ。米国が、この大規模投資をさせて、さらに「金庫株」要求するとは過剰である。日鉄が、ダメ押しで提案したのが真相であろう。

     

    (2)「黄金株は、世界の一部地域では一般的だが、米国では民間企業や外国からの投資に対して伝統的に関与を控えてきたため、極めて異例だ。黄金株とは特殊な種類の株式で、通常は政府機関や少数株主に与えられ、企業の合併や大規模な資産売却、所有構造の変更などの重要事項において他の株主より強い議決権を持つ。政府が経営難の企業を救済する際に取得することもあれば、経済・公共政策・国家安全保障上の戦略的重要性を持つ企業に対して保有するケースもある」

     

    米国で、金庫株が実施されている例は珍しい。米国側が提案したとは思えない理由だ。

     

    (3)「国営企業が民営化された後も一定の監視権限を保持し、外資や敵対的買収から国家的な中核企業を守る手段とされる。米政府は日本製鉄と連携するUSスチールに対して、経営に関与する何らかの案を模索しているもようだが、伝統的な黄金株のような持ち株形式となるかは、両社からの確認が取れていない。マコーミック議員は、国家安全保障協定の一環として政府に黄金株が与えられる方向だと述べた」

     

    米国政府は、国家安全保障協定を結ぶことが明らかだ。日鉄を規制するのはこれだけで十分なはずである。黄金株が未定であるのは、こういう事情であろう。

     

    (4)「このような取り決めは通常、対米外国投資委員会(CFIUS)の勧告条件に対応するために定められるもので、「軽減合意」とも呼ばれる。今回、黄金株の権限がこうした取り決めに盛り込まれる可能性がある。CFIUSは外国企業による米企業買収案件を審査する。同議員はCNBCに対し、「米国のCEO(最高経営責任者)、米国人が過半数を占める取締役会、そして黄金株が導入されるだろう。これにより、米政府の承認を得なければ取締役の多くを任命できず、生産水準の引き下げなどもできないよう担保できる」と語った」

     

    合併後のUSスチールは、経営陣も米国主導となる。この場合、日鉄はどういう形で自社の経営方針を反映させるのか。むしろ、日本側の経営支配権の「担保」が気になるほどだ。

     

    (5)「米政府が上場企業の株式を保有することは極めてまれで、例外は、2008年の金融危機時に政府支援を受けたゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラー(現ステランティス・ノースアメリカ)だ。両社は支援と引き換えに政府に株式を提供し、政府はその株式を後に売却した。英国では政府が1980年代の民営化推進後、ロンドン証券取引所に上場する防衛企業BAEシステムズロールス・ロイス・ホールディングスなど一部企業に対し黄金株を保有してきた経緯がある。保有比率は小さいが、当局が長期的に業界に影響力を持つ手段とされる。権限行使の具体的な方法は公表されていないが、データへのアクセスといった可能性が指摘されている」

     

    米国政府が、上場企業への黄金株を保有するのは稀としている。英国では、防衛企業への例がある程度だ。

     

    (6)「黄金株の活用には以前から批判もある。特定の主体に過度な権限を集中させることで、企業買収を阻害し、資本の自由な流れを妨げると論じる識者もいる。欧州連合(EU)はそうした観点から黄金株に否定的で、2000年代前半にはEU司法裁判所が黄金株を巡る幾つかの取り決めを違法と判断した」

     

    EUは、黄金株を違法としている。

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    習近平中国国家主席の早期退陣説が、インターネット上などで囁かれている。習主席の威信が低下し、人民解放軍の習派が劣勢であることも、これまでの噂より真実味のある観測として広がっている。

     

    習氏は、26年から始まる15次「5カ年計画」策定で悩んでいる様子もみえる。製造業重視路線を強調する一方で、次のような重要指示を与えた。前国家主席・胡錦濤氏が、共産党トップとして最後の2012年11に行った活動報告演説と瓜二つであった点だ。習氏は、「科学的な政策決定、民主的な政策決定、法律にのっとった政策決定を堅持せよ」を踏襲した。これは、「反習近平派」への妥協とも読めるのである。

     

    『時事通信』(5月29日付)は、「『習主席早期退陣』で情報錯綜◇実際の焦点は4選可否か」と題する記事を掲載した。

     

    (1)共産党政権に批判的な在米中国人のウォッチャーらがこのところ、以下のような習主席退陣説を拡散している。

     

    1)習氏は改革・開放に事実上反対し、経済の極端な落ち込みなど重大な失政が続いたため、年内に開かれる見通しの次の党中央委員会総会(第20期4中総会)などで党総書記、中央軍事委主席、国家主席のすべて、もしくは一部を退任する。

     

    2)習氏が総書記を辞めた場合、後任の候補は丁薛祥筆頭副首相か、上海市党委の陳吉寧書記、胡春華前副首相。

     

    3)政局は既に有力長老たちが主導している。中国共産党政権で党のトップが失脚したケースはある。華国鋒主席、胡耀邦総書記、趙紫陽総書記の3人だ。ただ、この3人はいずれも、党内序列筆頭の地位にあったものの、最高権力者ではなかった。政治の実権を握っていたのは、鄧小平氏をはじめとする革命世代の有力長老グループだった。したがって、党主席でも総書記でも、長老たちの意に沿わなければ、引きずり降ろされた」

     

    中国ウォッチャーは、前記のような習近平氏の失脚説を流している。いずれも、真実味が薄い内容だ。

     

    (2)これに対し、習主席は落ち目だとはいえ、名実ともに政権の最高指導者であることに変わりはない。習氏を総書記に推したといわれる江沢民元国家主席は既に死去。胡錦濤前国家主席は存命ながら、健康状態が悪く、政治活動ができる状態ではないとみられる。習政権OBで最も影響力があった李克強前首相も病気で他界している。新たなスーパー長老の代表格として、温家宝元首相の名前が挙がっている。現役時代から改革派として知られ、胡錦濤前主席の盟友だったからだろう。しかし、中国共産党政権の首相が派閥をつくり、引退後も大きな政治力を発揮した例はない。共産党を中心とする社会主義体制では、政府を率いる首相の政治的実権はあまり大きくないからだ」

     

    現役時代から改革派として知られる温家宝元首相の名前が挙がっている。ただ、副首相が引退後も大きな政治力を発揮した例はない。

     

    (3)「総書記候補の名前は過去のこの種のうわさと変わっていない。習主席失脚が前提であれば、習主席が重用してきた丁副首相や陳書記を後任にするのは、やはり無理だろう。李強首相ら他の習派有力者も同様だ。胡春華前副首相は共産主義青年団(共青団)の先輩である胡錦濤前主席の直系で、かつて共青団派(団派)のエースだったが、2022年の第20回党大会で党指導部の政治局から外されているので、候補にはならない」

     

    胡春華前副首相は、2022年の第20回党大会で党指導部の政治局から外されている。国家主席候補にはならない。

     

    (4)「総書記は通常、党最高幹部の政治局常務委員(現在7人)から選ばれる。1989年の天安門事件で解任された趙紫陽総書記の後任は、長老グループの思惑から常務委員ではなかったが、政治局員(上海市党委書記)だった江沢民氏が抜てきされた。同事件直後の非常事態ですら政治局内で総書記を選んだのに、現状で24人もいる政治局の外で総書記候補を探す理由はないだろう」

     

    現在、24人もいる政治局員以外から国家主席が選ばれる可能性は小さい。

     

    (5)「その後、胡錦濤前主席の復活説まで出てきた。5月14日に政治局拡大会議が習主席の進退について議論し、胡前主席が改革・開放推進を訴える大演説をしたというのだ。政権トップ経験者を引っ張り出して、反習近平勢力に箔(はく)を付けようというわけだが、現実には、胡前主席が健康を回復したことを示す証拠は今のところ全くない」

     

    胡錦濤前主席は、健康上の理由で復帰は困難である。

     

    (6)「ネット上では、党中枢の事務を取り仕切る中央弁公庁による極左批判の通知とされる文書も出回っている。しかし、江沢民時代以降、イデオロギー上の左右を公式に論じることはなく、「極左」という言葉は重要文書で使われていない。また、習主席の側近中の側近である党中央書記局の蔡奇筆頭書記(幹事長に相当)が主任を兼ねる中央弁公庁が、事実上の習主席批判を意味する文書を出すとは思えない」

     

    ネット上では、中央弁公庁が習主席批判を意味する文書を出している形だが、あり得ないことだ。

     

    (7)「以上のように、これまでで最も盛り上がった習主席早期退陣説も、反共もしくは反習の人たちの希望的観測にすぎないようだ。ただ、軍などで習派要人が次々と失脚したり左遷されたりしており、習主席の権力基盤が盤石でなくなっているのは事実。特に中国政局で大きな影響力を持つ軍の政治的大混乱を招いたのは、江・胡時代にはなかった失態である。第21回党大会が慣例通り開かれるとすれば、あと2年半。同大会に向け、習主席4選の可否がこれから本格的に話し合われることになる。習主席が党内政局で早く反転攻勢に出なければ、続投はだんだん難しくなっていくだろう」

     

    習主席の権力基盤が揺れているのは事実である。特に、人民解放軍が政治的大混乱になっている点は、過去になかった失態である。こういうことから、習氏の国家主席4期目が焦点になっている感じだ。

     

     

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    ドイツは2024年に、34年ぶりに日本を抜いて世界最大の対外純資産国となった。だが、ドイツの対外投資は証券投資が主体。日本の対外投資は、直接投資で相手国へ根付いたもの。証券投資とは性格が異なるのだ。こうした結果、ドイツの世界1は長続きせず、日本が首位へ復帰するとみられている。

     

    『ロイター』(5月30日付)は、「ドイツ、日本に代わる対外債権国首位の座はつかの間か」と題する記事を掲載した。

     

    米国が、世界の貯蓄の大半を吸い上げる中で、世界貿易と投資の巨大な不均衡を安定させることは、市場にとって最大のテーマの1つとなってきた。貿易戦争が繰り広げられている今は、なおさらだ。日本の財務省が今週発表したデータは、世界を俯瞰(ふかん)する人々にとって注目すべき節目を示すものだった。ドイツが24年、日本に代わって世界最大の債権国の座に就いたことを浮き彫りにしたのだ。

     

    (1)「首位交代には、為替レートも影響しているとは言え、これは世界の貯蓄、投資、人口動態について多くを物語っている。債権国首位の座は、低成長と国内の投資機会の欠如が生み出したものであり、ドイツにとってありがたくはない。債権国トップ3のドイツ、日本、中国には重要な共通点がある。いずれも高齢化が進む大国であり、人口はピークを越えて今世紀末まで減少し続ける見通しだという点だ。それに伴い内需は圧迫され、過大な貯蓄プールが生み出されるだろう」

     

    債権国首位の座は、低成長と国内の投資機会の欠如が生み出したものだ。ドイツ、日本、中国には、重要な共通点がある。高齢化が進む大国であり、人口はピークを越えて今世紀末まで減少し続ける見通しだ。

     

    (2)「ドイツ銀行のチーフエコノミスト、ロビン・ウィンクラー氏が指摘する通り、ドイツと日本の投資は、性質を大きく異にする。ドイツと日本はいずれも、米国および諸外国に対する慢性的な貿易黒字国であり、内需が低迷する中で輸出に成長を頼ってきた。そして両国とも、その結果生じた貯蓄の大半を国外投資、特に成長の速い米国に投じてきた。この資金フローは、その過程で10年以上に及ぶ米国の資産ブームとドル高を生んだ。トランプ政権は、ドル高のせいで米製造業の競争力が打撃を被り、高給の職が奪われたと主張している。トランプ氏によれば、輸入関税、そしてドルの下落がこの不均衡の是正に役立つ見通しだ」

     

    ドイツと日本の対外投資は、性質を大きく異にする。ドイツは、証券投資である。日本が、直接投資である。ドイツは、相手国へ根付かない投資で、金融情勢の変化で変わり身が早いのだ。

     

    (3)「ウィンクラー氏によると、長年にわたる日本の貿易黒字の大半は企業買収や海外での工場建設、雇用創出といった直接投資に振り向けられてきた。これに対してドイツの貿易黒字は、主に株や債券などの証券投資に回っている。これは直接投資に比べてはるかに「粘着性」が弱く、容易に反転し得る。ドイツにとって、このことは諸刃の剣だ。ウィンクラー氏は「ドイツは、特定の国々に対する貿易黒字がその国々で直接雇用を創出していないとの批判にさらされやすい」と記し、目下の貿易交渉において問題にされかねないと指摘している」

     

    日本は、貿易黒字の大半を企業買収や海外での工場建設、雇用創出といった直接投資に振り向けている。相手国経済へ貢献している。ドイツは、証券の利回りや相場推移で居所を変えていく投資だ。

     

    (4)「ウィンクラー氏は、「直接投資の割合が低いことにより、ドイツの対外純資産は日本よりも流動的で代替可能性が高い」とし、「このことは、地政学的な分裂が進んでいる時期には有利に働く。必要となれば、対外資産を速やかに再配置したり、場合によっては引き揚げたりすることが容易だからだ」と説明した」

     

    ドイツは、地政学的変化に合せて簡単に撤収できる身軽さがある。このことが、ドイツの対外純資産残高に流動化をもたらす。

     

    (5)「欧州の資本ニーズは急速に高まっており、それに伴って投資家と貯蓄者にとって域内に投資するインセンティブも強くなった。これは、米国の金融市場に重大なリスクを生じさせる。そのリスクは、トランプ政権が後押ししているとみられるドル安だけではない。米国債の外国投資家の中で、最大グループは日本の投資家だが、欧州も2012年以来、海外の株式に7兆ドルを投資している。多くの争点を抱える米国と欧州の貿易交渉は、期限がわずか6週間後に迫っているが、その結果がもたらす影響は双方ともに非常に大きいだろう」

     

    欧州の資本市場が注目されている。米国金融市場が、トランプ関税で流動化している結果だ。ドイツは、この機会を捉えて、欧州市場への証券投資を増やす可能性もある。日本は、これまでの超低金利で海外へ流出していた資金が、国内へ還流している面もあろう。これが、日本の対外純資産残高で2位へ後退した面もあろう。

     

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    中国は、福島原発処理水の海洋放出に反対して、日本の海産物輸入を差し止めていたが再開することになった。中国が、米中対立を背景に孤立を避けるべく、日本へ「ニーハオ」である。いつものパターンだ。米中関係が順調であれば、対日関係はギクシャクする。今は逆パターンであり、日本へ接近してきたものだ。

     

    中国による日本海産物輸入禁止で、ホタテが最大の被害を受けた。その後、日本は自動殻剥き機を開発して米国へ輸出している。もはや、中国へ輸出しなくても済むほどになった。こういう事情もあり、中国を慌てさせているのであろう。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月30日付)は、「中国が日本に歩み取り、水産物の輸入再開 米中対立が背中押す」と題する記事を掲載した

     

    中国は全面停止していた日本産水産物の輸入再開に向けた手続きで日本と合意した。米中対立が続くなか、日本との懸案を進展させておく必要があるとの思惑がある。抗日戦争勝利80年の記念行事を93日に控え、夏場以降は対日融和姿勢を見せにくいことも後押しした。

     

    (1)「中国は2023年8月、東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出を受けて日本産水産物の輸入を全面的に止めた。24年9月に中国による安全検査などを条件とする段階的な輸入再開で日本と合意した。同年10月に海洋放出後の処理水のサンプルをとり、25年1月に放射性物質の濃度に異常はなかったと公表した。4月には福島第1原発周辺で採取した水産物についても安全性を確認した。今回、日中が放射線検査などで安全性を証明する仕組みづくりで合意したことにより輸入再開が視野に入った。中国政府は今回の決定について国内世論の反応などを見極めつつ、いつ再開するかを判断する」

     

    中国の福島原発処理水反対騒ぎは、常軌を逸したものだった。世界中を「反日包囲網」を敷こうとしたが失敗。あの騒ぎは、今振り返っても異常なものだった。非科学的な言動を繰り広げていたのだ。韓国左派もこれに呼応して騒ぎまくった。大統領候補者の李在明氏である。

     

    (2)「中国が日本に歩み寄ったのはこれだけではない。林芳正官房長官は29日の記者会見で中国が沖縄県・与那国島南方の日本の排他的経済水域(EEZ)に設置していたブイについて「存在しなくなったことを確認した」と述べた。中国側が撤去したとみられ、日本のEEZで確認された中国のブイは全てなくなった。これまで日本は中国にブイを取り除くよう繰り返し求め、日中の懸案になっていた。

     

    中国は、日本の排他的経済水域(EEZ)に設置していたブイも撤去した。一連の行動は、日本への嫌がらせである。こういう振舞を、恥ずかしいと思わないところが不思議である。外交感覚が違うのだろう。

     

    (3)「中国がここにきて日本との懸案で歩み寄りを見せたのはなぜか。一つが抗日戦勝80年の記念行事をおよそ3カ月後に控える国内事情だ。中国は、93日を抗日戦勝記念日と定める。例年、夏ごろから日中戦争や旧日本軍を題材にした報道や情報発信が増える。中国国民の対日感情が悪化すれば、水産物の輸入再開をはじめとする懸案を前進させにくくなる。日中関係筋は「水産物は25年前半をメドに道筋をつけるのが日中双方の共通認識だった」と明かす」

     

    中国は、太平洋戦争で日本に勝利したという「建前」だ。建前だから、いろいろと理由は付けられる。

     

    (4)「もう一つの理由が米中関係だ。米中両政府は12日に追加関税の引き下げで合意し、貿易摩擦が緩和したものの、新たな火種が生じた。米国務省が一部の中国人留学生のビザ(査証)を取り消すと発表した問題だ。対象は中国共産党とつながりがあったり重要分野で研究したりする学生で、習近平(シー・ジンピン)指導部には受け入れられない内容だ。中国では党が政府を指導し、党総書記が国家主席や人民解放軍トップを兼ねる体制をとる。習指導部は米中の貿易摩擦が激しくなった4月以降、東南アジア諸国連合(ASEAN)やロシアなど周辺国家との協力拡大に動いた。日本との関係改善に動くのも、米中対立の激化に備えた周辺外交の一環といえる」

     

    中国は今、掌を返したようにアジア各国へ接近している。この見え透いた振舞が、外交効果を低めている。「一時的」な融和策であることが、分っているからだ。

     

    (5)「もっとも、日中間には安全保障分野を中心に課題が山積する。中国は沖縄県尖閣諸島を自国の領土と訴え、周辺海域で日本領海への侵入を繰り返す。3日には中国海警局のヘリコプターが尖閣周辺の日本領空を侵犯した。中国でスパイ罪により公判中のアステラス製薬の現地法人幹部の日本人男性を巡り、日本政府が繰り返し早期解放を求めているが進展はない。日本政府関係者は「日中は安保などで利害がぶつかり、懸案が完全になくなることは起こりえない。米中関係が改善し、中国にとって日本の利用価値が下がればまた日中関係が悪化しかねない」と話す」

     

    米中関係は、中国経済が完全に「没落」するまで悪化するであろう。その時期はいつまでか。5年や10年先ではない。となると、中国の低姿勢外交は長期にわたり続く。

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