勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2025年05月

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    習近平・中国国家主席は、「中華再興」が唯一の国家目標になっている。製造業中心で経済成長を進めるというもの。この裏では、国民生活は置去りにされ、雇用不安と賃下げリスクにおびえている。中国人民銀行が先頃、預金金利を引下げて貸出刺激策に出たが、国民は貯蓄増強で「生活防衛」に回っている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月28日付)は、「中国は経済政策を変えるのか? 全てを握るのは習主席」と題する記事を掲載した。

     

    10年以上にわたり、中国が製造業主導の成長モデルから消費重視のモデルに移行するのかが注目されてきた。中国がモノを作り続け、それを世界が買い続けることには無理があり、変化への期待が高まっている。この疑問に答えられる立場にいるのは、中国の全てを取り仕切る習近平国家主席をおいて他にいない。しかし、その答えは決して安心できるものではない。

     

    (1)「先週、中国中部の洛陽市にある国有の機械工場を視察した際、習氏は製造業重視の政策を改めて確認した。習氏は歴史に触れながら、「かつてはマッチや石鹸、鉄を輸入に頼っていたが、今では世界最大かつ最も多くの産業分野における製造業国となった」と中国の変貌を誇った。習氏は全国放送された洛陽軸承集団での演説で「われわれは正しい道を歩んできた」とし、「引き続き製造業部門を強化し、自力更生を堅持し、中核技術の習得に努めなければならない」と語った」

     

    習氏は、従来路線を強調してみせたが、中期計画「第15次5カ年計画(2026〜30年)」の策定に当たって、微妙な発言もしている。前国家主席である胡錦濤氏が、2012年11月の共産党大会での活動報告演説で「科学的な政策決定、民主的な政策決定、法律にのっとった政策決定を堅持せよ」と言い残した。習氏が最近、これを同じ言葉を使ったことにより、胡錦濤路線への復帰を臭わせている。混乱する中国経済をみながら、心は千々に乱れているのかも知れない。

     

    (2)「米国やその他の地域との貿易摩擦が高まる中、中国政府は消費重視にシフトしているとされるが、それはない。習氏は優先順位がどこにあるのか、そしてこれからもどこにあり続けるのかを明確にした。中国の産業・技術面での変貌は否定しようがない。中国は再生可能エネルギーからロボット工学、人工知能まで、将来性のある多くの分野で突き進んでいる。西側に追いつくだけでなく、場合によっては追い越している」

     

    習氏は、先端技術さへ揃えられれば「国家安泰」と思い込んでいる。14億人の国民が、雇用不安と賃下げリスクに直面していることなど眼中にない典型的な「王様」スタイルだ。

     

    (3)「製造業は、現在の中国が直面する全体的な経済低迷の解決策ではない。むしろ多くの根本的な問題はそこにある。はびこる過剰生産、価格を押し下げる激しい競争、生き残りに苦しむ赤字工場。中国は今やデフレサイクルに完全に陥っている。習氏の製造業への強い執着は、北米、欧州、アジアの多くの国が電気自動車、太陽光パネル、鉄鋼をはじめ、ありとあらゆる中国製品に対して貿易障壁を設けている理由でもある。これは米トランプ政権による中国孤立化の取り組みとはほとんど関係がない。押し寄せる中国製品が、これらの国々に自国の産業と雇用への不安を抱かせているのだ」

     

    中国の過剰生産が、世界貿易秩序を破壊している。各国が、関税の壁を高くして自国市場を守らざるを得ない状況になっている。

     

    (4)「ベッセント米財務長官は一貫して、中国に対し製造業と輸出への過度な依存から国内消費を重視するモデルへの移行を促してきた。(90日間の貿易休戦の一環として行われる米中交渉で、ベッセント氏がこれを優先課題とするかどうかは不明だ)。西側の企業経営者たちも、中国が工場重視から自国の消費者の財布を豊かにすることに重点を移すことを望んでいる。多国籍企業にとってこれはゲームチェンジャーとなり得る。より大きく、より収益性の高い中国市場を開拓する機会となるからだ」

     

    中国は、過剰生産=過剰輸出によって自らも苦しむ結果に陥っている。この矛盾を解消しようとしないのだ。

     

    (5)「中国内外のエコノミストらは長年、中国を米国のような消費主導型経済にすることで、長期的な成長がより持続可能になると主張してきた。しかし、中国経済の運営を決定するのは習氏であり、最近の発言は、そうした呼びかけが今後も聞き入れられないことを示している。習氏が製造業に対する姿勢を変えない主な理由は、欧米流の消費主導型成長に対する根深い哲学的な異議にある。習氏はそうした成長を無駄なものと見なし、人々の財布にお金を入れるための景気刺激策に対して極めて慎重だ」

     

    習氏は、欧米流の消費主導型成長を忌避している。こうした成長が、無駄なものとみえるのだ。中国が、一心不乱になってつくっているEV(電気自動車)は、耐久消費財であることを忘れたような思考パターンである。電池や太陽光パネルも、すべて生活を豊かにする手段だ。人間の経済行動の最終目的は、消費につながっている。これを忘れているのだ。

     

    (6)「トランプ大統領が、目指す米国の製造業復活も、習氏は見逃していない。それは同氏に製造業の重要性を再確認させている。「トランプ氏が米国経済を中国のようにしたいと考えているなら、習氏にとって、それは何かを物語っている」と、ある中国当局者は最近語った。とはいえ、中国と他国、とりわけ米国との貿易摩擦が続けば、中国の製造業は必然的に打撃を受け、経済にさらなる打撃を与える可能性がある。何かが変わらざるを得ないかもしれない。問題は、中国は変化を余儀なくされるのかということだ」

     

    米国の目指す製造業復活は、個人消費とのバランスを取ろうとするためだ。中国は、米国と逆に個人消費復活で製造業とのバランスルを取らなければ、経済成長できない段階へ達している。こういう経済のバランス論が、習氏には理解不能である。

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    韓国国内で広く使われている中国製の太陽電池インバーターから、正体不明の通信装置が発見された。現在、米エネルギー当局が調査を進めている。インバーターは、太陽電池で生じた出た直流(DC)の電力を交流(AC)に変換し、家庭や電力網に送る装置だ。中国メーカーが、太陽電池インバーターへ通信装置を仕掛けたとみられる。中国からの遠隔操作によって、インバーターが操作される危険性を秘めているだけに、慎重な調査を行っているもの。

     

    『朝鮮日報』(5月27日付)は、「『遠隔で大停電誘発も』 中国製太陽電池から見つかった謎の通信装置の正体」と題する記事を掲載した。

     

    ハッカーは、インバーター経由で電力網に入り込んだり、送電システムを切ったりすれば、大停電などの大混乱が起きる可能性があります。国家エネルギー安全保障には大きな弱点となります。インバーターは、太陽電池だけでなく、風力発電機、電気自動車(EV)用の二次電池などにも使われている。米当局は、中国製二次電池からも説明書にはない通信装置を発見したということです。

     

    『朝鮮日報』(5月27日付)は、「『遠隔で大停電誘発も』 中国製太陽電池から見つかった謎の通信装置の正体」と題する記事を掲載した。

     

    ロイター通信は5月15日、匿名の米エネルギー当局者2人の話として、中国製太陽電池インバーターから悪質な通信装置が発見されたと報じました。米国のセキュリティー専門家が昨年下半期から9ヶ月にわたり、電力網に組み込まれている中国製太陽電池のインバーター多数を分解して点検した結果、一部製品から商品説明書に記載されていない通信装置が発見されたというのです。

     

    (1)「インバーターには、メーカーが遠隔でソフトウエアを更新し、メンテナンスを行うための通信装置が組み込まています。中国製インバーターを使う米国のインフラ事業者は、中国企業がそうした手法でインバーターにアクセスすることを防ぐために、ファイアウォールを設置します。悪質な通信装置は、ファイアウォールを迂回してインバーターにアクセスできるようにするものだそうです。ロイターは、「問題の通信装置は潜在的に電力網の不安定やエネルギーインフラ破壊、大停電など致命的な結果を招きかねない危険要素だ」と伝えました」

     

    中国は、チャンスをみて世界覇権を狙うという魂胆であろう。世界覇権獲得が、中国の「国是」になっていることを片時も忘れてはならない。

     

    (2)「米エネルギー省は、ロイターの取材に対し、発見された未登録の通信装置の機能と意図については確認中としています。中国は太陽電池だけでなく、太陽電池インバーターの分野でも世界シェア80%以上を占めています。韓国で流通しているインバーターも、大企業のブランドが付いていますが、実際は95%が中国製とされます」

     

    中国は、太陽電池インバーターの分野で世界シェアの80%以上を占めている。中国が,この絶好のチャンスを見逃すはずがない。

     

    (3)「欧米では、中国製インバーターに対する規制が必要だとする声が高まっています。セキュリティーリスクを理由に、中国企業の5G移動通信設備の使用を取りやめたように、中国製の太陽電池インバーターも規制すべきとの議論です。米国家安全保障局(NSA)局長を務めたマーク・ロジャース氏は、「中国は、中国製インバーターが広く普及し、西側国家が安全保障問題への対応で使えるオプションが制限される状況を期待するだろう」と述べました」

     

    中国企業の5G通信網には、「バックドア」が秘かに付けられていたことが暴露され、西側諸国は一斉に設置を取り止めたケースがある。今回の中国製インバーターに付けられていた正体不明の通信装置は、5G通信網に次ぐ疑惑である。

     

    (4)「米下院国土安全保障委員会に所属するオーガスト・フルーガー議員も、「中国は通信ハッキング、太陽電池・バッテリーに内蔵されたインバーターへの遠隔アクセスなど手段や方法を問わず、我々の敏感なインフラを攻撃する」と指摘しました。米電力業界は対策に乗り出しました。ロイターによると、業界大手のフロリダ電力(FPL)は、中国製インバーターの購入を最小限に抑えているということです。中国は反発しています」

     

    中国製インバーターへの遠隔アクセス疑惑は、「小事は大事を生む」喩えの通り、徹底的に調査しておくべきだ。

     

    (5)「欧州の状況は、もっと深刻だといいます。昨年末現在、欧州全体の太陽光による発電容量は338ギガワットだが、うち200ギガワットが中国製インバーターを通じて電力網と接続されているということです。ドイツの住宅用太陽光発電装置メーカー、 1KOMMA5(ワンコマファイブ)のフィリップ・シュレーダー代表は,「10年前までは中国製インバーターがなくても、欧州の電力網に大きな問題はなかったが、今はその数があまりにも多い」とし、「中国製インバーターの独占問題を巡り、中国と西側が長期的で深刻な対立を起こす可能性が高まっている」と述べました」

     

    欧州全体の太陽光発電容量は、338ギガワットである。うち、200ギガワットが中国製インバーターを組み込んでいる。大急ぎで取り替えなければならない。油断も隙もない事態を迎えた。

     

     

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    江藤農相時代の政府備蓄米放出は、店頭に並ぶことはなかったが、そのカラクリが今や明らかになった。JA(全農)を頂点にする5次問屋までが存在し、最後に店頭に並ぶという複雑な経路を構成していることが理由である。ディスカウント店「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は5月28日、小泉進次郎農相にコメ流通の問題点に関する意見書を提出し暴露された。

     

    江戸時代に形成された複雑な流通網が、現代に至るまで維持されたことは、コメが半ば「官製品」という性格を帯びていた結果であろう。今回の「コメ騒動」をきっかけにして、この複雑はコメ流通網を徹底的に大掃除する必要があろう。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月29日付)は、「ドンキ、コメ流通『利益目的だけの参入防げ』 小泉農相宛て意見書全文」と題する記事を掲載した。

     

    流通が自由化されたが、米は、生鮮食品でありながら、加工して製品化した状態でしか買えない。まず、米の集荷役であるJAから一次問屋に米が卸される。流通の自由化というものの、集荷役のJAと取引している一次問屋は、実質的に特約店のように決定しているため、新規参入が難しい。


    (1)「二次問屋、三次問屋については、参入障壁が著しく低い。実際、ブローカーなど、利益目的だけの業者が横行し、当然、利益のみの目的のため、今回のような需給のバランスが崩れたときには、流通に協力するのではなく、利益を優先させるため、供給を抑える原因の一つになっていると考えられる。また、「銘柄米」と銘打っている米の中には、等級の異なる米が混ぜて売られていることも多い。最終顧客である消費者には、その中身がわからず、銘柄の情報のみで購入の決定を行わざるをえない。このため、同じ銘柄米であっても、値段が極端に異なることがあり、一層不透明な米流通になっている」

     

    先ず問題は、JAだけが集荷業者と独占指定されていることが、二次問屋以下、五次問屋まで発生させる理由だ。卸業者と称するから、通常は1社とみがちであるが、何と「金魚の糞」のように五次問屋までぶら下がっている。この中間マージンが、合計で30%も中抜きされている。本来は、生産者と消費者へ回るべき利益である。コメが、半ば「官製品」ある以上、集荷業者と卸業者1社か2社として、後は小売店というルート簡略化を図ることだ。農水省はこの際、ここまで手をつけるべきだろう。

     

    (2)「参入障壁が高い一次問屋の構造集荷役のJAと取引している一次問屋は、実質的に特約店のように決定しているため、新規参入が難しい。また、五次問屋なども存在する多重構造によって、中間コストに加え、マージンがそれぞれに発生することが、最終的な小売りの仕入原価に反映されることになる。インフレ下と供給が不十分な状況下では、各問屋のコストと、限られた流通量で収益を確保するためのマージンの両方が仕入原価に上乗せされるのに加えて、市場競争が生まれない卸構造が、結果として仕入価格、および販売価格が高騰する要因となっている」

     

    一次問屋は、JAの特約店的存在で新規参入を拒んでいる。ここから解放すべきである。一次問屋が、自らの系列を都合良くつくっているのだ。複雑な流通網を簡略化させて、中間マージンを圧縮することだ。市場競争が生まれない卸構造が、仕入価格および販売価格が高騰する要因となっている。

     

    (3)「多重構造を解消し、集荷役であるJAなどと卸売価格の取引が直接できるようにすること、また小売りから、店頭までの流通を担う二次問屋、及び三次問屋へ依頼をかけるような取引形態にすることで、中間コストとマージン分の仕入原価、販売価格の低下に繋げることができるとともに、米自体の価格(JAなどからの卸価格)と中間コストが分離して可視化できるため、適切な競争原理と小売り、問屋の努力義務が付帯され、過度な仕入原価、販売価格への転嫁が抑制できると考える」

     

    コメという単純商品が、保管に特別の設備が必要であるにもかかわらず、五次問屋まで存在することは不可思議である。業者の思惑が暗躍して、無駄なマージンをかすめ取られているはずだ。米価が跳ね上がった背景は、これですべて説明がつく。この際、流通網の大掃除が必要である。

     

    (4)「参入障壁が低い二次問屋以降と生産者直接取引:需給バランスが崩れた現況下では、ブローカーや投機目的など、著しく高い利益目的だけのプレイヤーが横行するため、過度な流通量の減少や、価格上昇を引き起こす要因となっている。また、これらのプレイヤーは、管理面においても不十分な場合があり、品質が担保されないという問題も懸念される」

     

    二次問屋以降は、不要である。ブローカーや投機目的などで暗躍する余地を与えないためにもこの際、整理の対象にすることだ。 

     

    (5)「銘柄米と銘打っている米は、その銘柄と品質に統一の基準、ルールが設けられておらず、等級の異なる米が混ぜられて売られていることも多い。一方で、最終顧客である消費者は、銘柄米の表記ルールについて認識をしていないこともあり、銘柄情報のみを購入決定の選択肢としていることも多い。このため、中身の品質ではなく、表記される銘柄のみでの売価設定が行われることにより、品質と売価がアンマッチな状態が発生する。特に供給が不足する場合は、必要以上に過度な売価上昇を引き起こす要因の一つとなっている」

     

    銘柄米と言われても、流通過程で他のコメと混ぜられているという。この際、消費者は価格を監視するだけでなく、混ぜ物防止にも立ち上がらなければならない。江戸時代からの悪弊を絶たなければ駄目だ。



     

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    政権発足以来、トランプ米国大統領は世界を相手に「関税戦争」を挑んだが、司法はこれを違法として退けた。米国際貿易裁判所は5月28日、トランプ大統領が「解放の日」と位置付けて4月2日に発表した貿易相手国に対する関税を差し止めた。一律10%関税、中国などに対する高率関税、中国およびカナダ、メキシコに対する合成麻薬フェンタニルに関連した関税が含まれる。

     

    この判断は、2件の訴訟で下された。1件は超党派のリバティ・ジャスティス・センターが関税対象国から製品を輸入している米国の中小企業5社を代表して起こした訴訟。もう1件は米国内13州が訴えていた。関税を巡り、少なくとも5件の訴訟が係争中となっている。

     

    米国際貿易裁判所は、対米貿易黒字を抱える国々からの輸入品に全面的に課税することは大統領の権限を逸脱しているとの判断を示した。米国憲法は、議会に他国との通商を規制する独占的な権限を与えており、米経済を守る大統領の緊急権限によってこれが覆されることはないとの判断を下した。トランプ政権はこれを受け、直ちに控訴した。

     

    『ブルームバーグ』(5月29日付)は、「トランプ氏の関税措置に米国際貿易裁判所が違法の判断-政権は控訴へ」と題する記事を掲載した。

     

    米国際貿易裁判所は28日、トランプ大統領の世界的な関税措置を巡り、その多くの部分について違法だとして阻止する判断を下した。トランプ氏の主要経済政策にとり大きな打撃となりそうだ。トランプ政権は、判断を不服として連邦の裁判所に控訴する方針。最終的には連邦最高裁判所の判断に委ねられることも考えられる。この訴訟は世界貿易に数兆ドル規模の影響を及ぼすことになりそうだ。

     

    (1)「国際貿易裁判所の3人の判事から成るパネルは、トランプ氏が関税措置を正当化するために国際緊急経済権限法(IEEPA)を適用したのは不適切だとする民主党主導の州や中小企業グループの主張を支持した。トランプ氏は、大統領権限の限界を試すかのような勢いで一連の大統領令を発令。これに対し数多くの訴訟が提起されているが、今回の国際貿易裁判所の判断は政権にとってこれまでで最大級の痛手の一つと言えそうだ」

     

    国際貿易裁判所は、トランプ氏が関税措置を正当化するために国際緊急経済権限法(IEEPA)を適用したのは不適切と判断した。

     

    (2)「この判断により、トランプ氏の関税措置の大部分が停止される。対象には貿易相手国・地域に対する一律関税、中国などに対する高率関税、中国およびカナダ、メキシコに対する合成麻薬フェンタニルに関連した関税が含まれる。一方で、通商拡大法232条や通商法301条など異なる権限に基づいて鉄鋼・アルミニウム、自動車に賦課された関税には影響が及ばない」

     

    トランプ氏の関税措置の大部分が停止される。ただ、鉄鋼・アルミニウム、自動車に賦課された関税には影響が及ばない。

     

    (3)「トランプ氏が、大統領令で広範な関税措置を正当化するために根拠とした国際緊急経済権限法は、特定の緊急事態下でさまざまな金銭取引に関する権限を大統領に付与する。トランプ氏は、米国が抱える「大幅で持続的な」貿易赤字が国家安全保障および経済に対する「異例かつ並外れた脅威」に当たるとして、同法を用いて関税を導入することが許されると主張していた。ホワイトハウスのデサイ報道官は声明で「国家の緊急事態への適切な対処を判断するのは選挙で選ばれたわけでない判事の仕事ではない」と指摘した」

     

    トランプ氏は、国際緊急経済権限法に基づいて一連の関税引上げを行った。これが、違法という判断である。

     

    (4)「ニューヨーク市マンハッタンにある国際貿易裁判所は、連邦裁判所制度の一部。関税を含む貿易に関する専門的な紛争を扱うために連邦議会が設立した。裁判所判断への控訴は、地裁判決の場合と同じ手続きで行われる。トランプ政権が異議を申し立てた場合、連邦高裁を経て連邦最高裁へと進むルートをたどる。他の連邦裁判所と同様、判事は大統領が任命する」

     

    トランプ政権は控訴するので、連邦高裁を経て連邦最高裁へと進むことになる。

     

    (5)「この判断を受けて、米株価指数先物が上昇し、ドルも買われた。S&P500種株価指数先物は一時1.3%高、ナスダック100指数先物は1.6%高となった。29日の東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=146円台に下落。一方、ニューヨーク市場の原油先物相場は1%高となった。トランプ氏が4月2日に広範な関税措置を発表して以降、世界の市場は大幅変動に見舞われてきた。中国をはじめとする貿易相手国・地域に対する二転三転する方針に振り回され、数兆ドル規模の時価総額が吹き飛んだり、回復したりする展開となっている」

     

    金融市場は裁判所の判断を歓迎。ドルが買われ、米国株先物やアジア株が値上がりした。今回の裁判所判断は、関税に関する最終決定ではないものの、当面の懸念を払拭するものだ。トランプ大統領には上訴や、より限定的な特定分野を対象とした関税を課す余地があるため、政策上の不確実性は依然として残る。 

     

     

     

     

    あじさいのたまご
       

    米国は、ロシアがウクライナ侵攻で停戦しないことで非難の度を高めている。米上院で、共和党は原油や天然ガスの輸入国へ「二次制裁」として500%関税案を上程した。ロシアの軍事資金の源である原油や天然ガスの輸入を止める目的である。さらに金融面での「二次制裁」も盛り込んだ。強烈なインパクを与えている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月28日付)は、「ロシア産エネルギー購入国に関税500%案 米議会、中国照準の劇薬」と題する記事を掲載した。

     

    米連邦議会上院の超党派議員はロシアに追加制裁を科す法案を提出した。トランプ米大統領が目指すウクライナとの停戦に協力しなければ、ロシアから石油やガスなどを購入した第三国に500%の関税を課せるようにするのが柱になる。

     

    (1)「ロシア産原油の最大輸入国で、軍事・経済面からロシアの継戦能力を支えてきた中国に照準を合わせる。日本を含む同盟国のエネルギー調達に影響する可能性もある。世界経済の打撃になりかねず、与党・共和党にも慎重論がある。共和指導部はトランプ氏の意向を踏まえ、採決するか判断する」

     

    米上院共和党は、ロシアから石油やガスなどを購入した第三国へ500%の関税を課す法案を上程した。トランプ氏の意向を踏まえて採決の構えである。

     

    (2)「日本は、日本企業が参画するロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」から液化天然ガス(LNG)を輸入している。日本は、エネルギー安全保障の観点からサハリン2の権益を維持しており、法案が成立すればエネルギーの安定供給に影響しかねない。共和党のリンゼー・グラム、民主党のリチャード・ブルメンタール両上院議員が主導して21日提出した「ロシア制裁法案」には上院(定数100)の8割超が賛同した。ルビオ米国務長官によると、下院も過半数を上回る超党派の議員が支持する見込みだ」

     

    日本は、「サハリン2」から液化天然ガス(LNG)を輸入している。採決されれば影響が出る。「ロシア制裁法案」は、上院(定数100)の8割超が賛同している。下院も過半数を上回る超党派の議員が支持する見込みだ。

     

    (3)「上下両院で多数派を握る共和が採決に踏み切れば可決する公算が大きい。米連邦議会の規則では、上下両院の3分の2以上が賛成に回って可決すればトランプ氏が拒んでも法案を施行できる。法案に、ロシアがウクライナとの和平合意の交渉を拒否したり、合意に違反をしたりすれば「ロシアに制裁を科すのが目的だ」と記した。ウクライナへの新たな侵略を始めた場合も対象になる。目玉はロシアと取引する第三国の金融機関や企業を制裁する「2次制裁」になる。ロシアが生産した石油や天然ガス、ウラン、石油製品・関連製品を購入する国が対象になると明記した」

     

    目玉は、第三国の金融機関や企業が制裁される「2次制裁」になっていることだ。ロシアが、生産した石油や天然ガス、ウラン、石油製品・関連製品を購入する国が対象になると明記している。500%の関税と金融制裁まで課される。凄い内容だ。

     

    (4)「ロシアからのすべての輸入品の関税率も500%に引き上げる。トランプ氏は42日相互関税を発表した際、対象国・地域一覧からロシアを外した。制裁終了は、米大統領によってロシアが侵略行為をやめ、ウクライナとの和平協定を締結したと証明できれば可能になる。米国の国家安全保障の利益に沿っていると大統領が認めれば、180日以内に限って制裁を免除できる」

     

    ロシアが、ウクライナと平和協定を結ぶまで、500%関税と2次制裁を続ける。

     

    (5)「トランプ氏は27日、自身のSNSに「ウラジーミル・プーチン(ロシア大統領)が気づいていないのは、私がいなければすでに本当にひどいことがたくさんロシアに起こっていたことだ。彼は火遊びをしている」と投稿した。25日にはプーチン氏について「完全に狂っている」と書き込んだ。同日に記者団から対ロ制裁を検討しているかと問われ「もちろんだ。彼は多くの人を殺している」と表明。米国が仲介する停戦交渉のさなかに大規模攻撃をしかけるロシアへの批判のトーンを強める」

     

    トランプ氏は、プーチン批判のボルテージを上げている。これまでの融和的姿勢から一転して、厳しくなっている。

     

    (6)「米ニュースサイトのアクシオスによると、グラム氏らは「(ロシアが原油輸出の制裁回避に使う)『影の船団』から安価な石油を買うことで、プーチン氏の戦争を支えている中国に責任を問う」と主張した。「中国の支援がなければ完全に停止するだろう」と訴えた。フィンランドのシンクタンク、エネルギー・クリーンエア研究センターによると、2022年12月から25年4月のロシアの原油輸出先は中国が47%、インドが38%、トルコが6%だった。米国の政府や議会は中国やインドが割安でエネルギーを調達し、ロシアの戦費を支えているとにらむ」

     

    ロシアの原油輸出先は、中国が47%、インドが38%、トルコが6%である。中国が、最大の受益国である。

     

    (7)「共和党のランド・ポール上院議員は、「世界全体に禁輸措置を課すものだ。私が目にした中で最も荒唐無稽な提案だ」と話す。ロシアだけでなく、米国や同盟・有志国の経済の下押し材料になるリスクが大きい。制裁でエネルギー価格の高騰を招いて米国内の物価に跳ね返れば、次の政治決戦となる26年11月の米中間選挙で共和にとって逆風になる。トランプ氏は24年11月の大統領選でバイデン前政権下での米国内の歴史的なインフレを追い風にした経緯があり、難しい決断を迫られる」

     

    ロシア制裁論への反対論もある。ロシアだけでなく、米国や同盟・有志国の経済の下押し材料になるリスクが大きいとしている。それでも、ロシアの侵略を止める秘策がないのが悩みだ。

     

     

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