勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2025年06月

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    7月20日の参院選は、自公が政権を維持できるかどうかの天王山だ。争点の一つは、昨年から2倍にも跳ね上がった米価対策である。これまで、価格安定を目的に続けてきた実質的「減反政策」が破綻した。生産者に歓迎され、消費者が喜ぶ米価の実現には、輸出に向けるコメの「余裕ある生産対策」につきる。この「二方よし」の政策が今、問われている。

     

    7月1日付の農水省局長人事が発表された。小泉農相は、新米価政策実現に向けた「改革人事」を行う。コメの価格高騰対策とその後の農政改革を見据えた人事とされる。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月30日付)は、「農水人事に小泉色 コメ局長に改革派『素人』、10年越しの宿題意識」と題する記事を掲載した。

     

    農林水産省の幹部人事が、71日付で発令される。小泉進次郎農相はコメの価格高騰対策とその後の農政改革を見据え、農産局長にあえてコメ政策の専門家ではない山口靖総括審議官をあてた。10年ほど前に自民党農林部会長として農協改革に取り組んだ小泉氏の意向が色濃く映る。

     

    (1)「小泉氏は5月、農相に緊急登板して「コメの分野の改革をしっかりと進めることが農政全体の改革につながる」と意気込んできた。今回の幹部人事は党農林部会長を務めた2015〜17年以来、10年越しの改革を意識したものとなる。農産局長はコメ政策を直接担う。従来の政策に引きずられない柔軟な発想の持ち主として、コメ政策の経験は乏しい山口氏に白羽の矢を立てた」

     

    農水省官僚は、自民党農水族という「舅」を抱えている。JAと密接な関係をもつだけに、絶えず政治的圧力に屈してきた。だが、米価高騰という異常事態で、さすがの農水族やJAも肩身の狭い思いだ。この「好機」を捉えなければ、日本農業に再生の機会はない。今回の農水省人事には、そういう思いが込められている。

     

    (2)「1992年入省の山口氏は省内の重要政策を仕切る総括審議官や政策課長を務め、2027年度から水田政策を根本的に見直すと掲げた基本計画も4月にとりまとめた。小泉氏の部会長時代はJAグループの農林中央金庫の業務を監督する経営局金融調整課長だった。江藤拓前農相下では一般競争入札で政府備蓄米を放出しても価格高騰が抑えられなかった。農相経験者の石破茂首相は農水省の対応に不満を漏らしていたという。小泉氏は、備蓄米放出を小売りに直接渡す随意契約に切り替え、作況指数の廃止や流通の全事業者調査など前例のない施策を打ち出した。省内の政策変化を象徴する人事が、山口氏といえる」

     

    小泉農相の下で、これまでの農水行政は「抜本改革」へ踏み切っている。備蓄米放出の随意契約、作況指数の廃止、流通の全事業者調査などあらゆる面でメスが入った。これは、農水官僚が長年、抱いてきた疑問を小泉氏が掬い上げて実現させたのだろう。農水省官僚は苦しんできたにもかかわらず、政治が対応しなかったのだ。

     

    (3)「今後の農政改革では農協改革が本丸となる。JAグループと向き合う経営局長には小林大樹新事業・食品産業部長が就く。小泉氏の部会長当時は経営局協同組織課長。農協改革で当時タッグを組んだ小林氏を経営局長にするのは小泉氏の肝煎りといえる。農政改革は、コメの需要と供給を均衡させて価格を安定させる生産調整を改め、コメの増産にカジを切れるかが焦点になる」

     

    JAは、既得権益確保という消極的立場から、農政改革を推進する積極派へ衣替えしない限り生き延びられない状況だ。抵抗族から改革派へ鞍替えすることだ。

     

    (4)「増産には輸出の販路拡大が不可欠だ。輸出・国際局長には省内きっての改革派とされる杉中淳経営局長を起用した。杉中氏は、農産物の輸出促進で実績を挙げ、総括審議官時代の24年に「農政の憲法」と呼ばれる食料・農業・農村基本法の初の抜本的改正を取り仕切った。小泉氏は、17日に経団連の筒井義信会長と海外市場の開拓などでの協力で合意した。既存の取り組みにとらわれない輸出拡大策を杉中氏に託す」

     

    日本のおいしいコメを輸出するには、コストの切り下げが不可欠。それには、農地の集約化という古くて新しい問題が横たわる。コメ輸出政策の確立こそ、生産者と消費者がウイン・ウインの関係を結べるポイントになる。価格安定が実現するからだ。

     

    (5)「価格高騰対策の省内チームのトップを担う渡辺毅次官は留任し、2年目に入る。小泉氏は6月上旬の日本経済新聞の取材で「農水省の中に(部会長)当時の私を支えてくれたメンバーもいる」と語り、当時政策課長だった渡辺氏の名前を挙げた。信任が厚い。小泉氏はすでに内示した課長級人事にもこだわった。政策課長にはJAグループに精通する旧知の日向彰経営局総務課長をあてた。コメ政策を担う農産局企画課長には国際派の国枝玄輸出・国際局国際地域課長を選んだ」

     

    次官は続投である。改革の旗頭を務める。課長人事も、「改革」がキーワードになった。

     

    (6)「小泉氏は、党農林部会長だった16年、「負けて勝つ。改革への抵抗勢力がどういう抵抗手法を使うかはよくわかった」と述べた。全国農業協同組合連合会(JA全農)の組織刷新などの改革をまとめたものの、改革期限を明示しないなど道半ばの前進だったことを踏まえた発言だった。10年越しの課題に取り組む意思を人事で示している」

     

    小泉氏は、コメ対策に成功し農政改革を軌道に乗せられれば、政治家としての「前途」が大きく開ける。小泉氏にとって、是が非でも成功させなければならない理由だ。

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    日本は、相次ぐ新型電池の発祥元である。リチウムイオン電池は、ノーベル賞受賞の栄誉に輝いた。第二弾が、軽くて曲がる電池ペロブスカイトだ。ノーベル賞候補に挙がっているほど。主原料のヨウ素は、日本が世界シェアの約3割を占め第2位である。国内で賄えるという恵まれた条件で、中国の追随を「絶対」許さないという鉄壁の守りである。

     

    政府は、25年度中に省エネ法の省令改正や告示を25年度内に行う方針だ。具体的には、26年度から化石燃料の利用が多い工場や店舗をもつ1万2000事業者が、屋根置き太陽光パネルの導入を義務づける。いよいよ、ペロブスカイト「独走態勢」が始まる。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月29日付)は、「太陽光、工場や店舗に設置目標義務 26年度から1.2万事業者対象」と題する記事を掲載した。

     

    経済産業省は2026年度から、化石燃料の利用が多い工場や店舗をもつ1万2000事業者に屋根置き太陽光パネルの導入目標の策定を義務づける。薄くて軽いペロブスカイト太陽電池の導入を広げて、脱炭素に向けて太陽光の比率を大幅に高めるエネルギー基本計画の目標達成に近づける。

     

    (1)「省エネ法の省令や告示を25年度内にも改正する。メガソーラー(大規模太陽光発電)は適地が減っていることから、建物の利活用を急ぐ。新たな義務は原油換算で年1500キロリットル以上のエネルギーを使う事業者や施設に課す。工場や小売店、倉庫などが該当する。自治体の庁舎も含む」

     

    日本は、空き地よりも屋根の面積が大きいという。ペロブスカイトは、軽量ゆえに簡単に屋根のうえに設置可能だ。

     

    (2)「義務は、2段階でかける。企業や自治体の設置目標の策定は26年度からで、約1万2000事業者を対象とする。少なくとも5年に1回程度の更新が必要になり、変更時はその都度報告を求める。27年度からは毎年、約1万4000カ所に及ぶ施設ごとに設置可能な面積と実績の報告を求める。予定の出力数なども把握する。違反や虚偽の報告には50万円以下の罰金を科す」

     

    企業や自治体は、ペロブスカイトの設置が義務化される。違反には罰則を伴うという厳しさだ。政府の熱意のほどが伝わる「大事業」になる。無論、個人住宅も設置可能になろう。

     

    (3)「工場などの屋根には、薄くて軽いペロブスカイトが向くとみている。積水化学工業などの日本企業が技術的に優位で、主要な原材料を国内で調達できるのも経済安全保障上の利点といえる。導入の拡大へ25年度に設けた補助金の活用も促す。政府は2月に閣議決定した新たなエネルギー基本計画で、電源に占める太陽光の割合を40年度に23〜29%とする目標を掲げた。足元の9.%から大幅に上積みする必要がある」

     

    電源に占める太陽光の割合は、40年度に23〜29%とする目標だ。現在の10%弱からは最大3倍へ引上げられる。これで、原油輸入量も確実に減る。

     

    (4)「日本エネルギー経済研究所は、国内の工場や倉庫、商業施設の屋根に設置可能性のある太陽光発電量は23年度時点で16テラ〜48テラワット時と推定する。原子力発電所2〜6基分の規模で、日本の総発電量の2〜5%に相当する。尾羽秀晃主任研究員は、「国内では空き地よりも屋根のほうが設置可能な面積が広い。屋根の利活用は重要だ」と説く。屋根置きの太陽光パネルの普及は、公共施設や住宅で先行している。企業部門は取り組みが遅れていた。経産省は目標づくりや報告の義務化でてこ入れを図る」

     

    国内の工場や倉庫、商業施設の屋根に設置すれば、原子力発電所2〜6基分の規模になるという。安全でクリーンな電力である。屋根の利活用によって、自前の電力が増える。

     

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    衝撃のトランプ決断

    習近平構想は再検討

    過剰生産で企業自滅

    浮上する政権交代論

     

    イスラエルとイランの「12日間戦争」は、米国のイラン核開発区への急襲によって、ひとまず停戦が実現した。これによって、両国の紛争が終結する訳でない。イランの濃縮ウラン(濃縮度60%)400キロの行方が不明であるからだ。イランが、事前に安全な場所へ移動させたと説明している。米国は、これを拒否し「虚報」と断じているほど、情報が交錯している。

     

    イランが説明するように、濃縮ウランが安全な場所で保管されていれば、「核爆弾」完成(濃縮度90%)は時間の問題。こういう事態となれば、両国の紛争再発は不可避である。これからイスラエルの厳しい「詮索活動」が始まるであろう。

     

    中東では、イスラエルとイランの抗争が今後も続く構図になった。アジアでは、中国と台湾がすでに75年の長きにわたり対立している。最近は、中国が一段と強硬姿勢をとり、台湾包囲の演習を二度も行うほどエスカレートしている。米国は、国内法による「台湾関係法」(1979年)を基礎にして台湾防衛姿勢をみせつつも、内外へ決定的な言質を与えない「曖昧戦術」を取ってきた。

     

    米国は、最終的にイラン急襲でイスラエル擁護の姿勢を取り、紛争解決へ向けて一石を投じた。この伝で言えば、中国が台湾侵攻の場合、米国の介入を招くことは決定的とみるほかない。

     

    米国が、イスラエルを守って台湾を突き放すことになれば、米国の同盟国や友好国の抱く米国への信頼感は大きく崩れる。同時に、米国の安全保障にとっても重大危機を招くはずだ。米国が、イランの核武装を阻止するのは、米国の安全保障を危機に陥れるとする論理であった。この安保論理は、そのまま台湾侵攻阻止にも通じるものである。その意味で、米国がイランを急襲した安保論は、そのまま台湾防衛論となるだろう。

     

    衝撃のトランプ決断

    習近平中国国家主席は、イスラエルとイランの紛争で、米国が介入するか注目していたはずだ。米国が、イランの地底深くに設置したウラン濃縮施設へ「バンカーバスター」を14発もぶち込んだことで、ある種の恐怖感を持ったであろう。中国には、こういう弾薬を開発していないからだ。中国は、米国の並々ならぬ決意を見せつけられて、台湾侵攻が容易ならざる戦争になることを自覚させられただろう。同様の恐怖感は、北朝鮮も抱いている。米国批判を抑えていることに見て取れるのだ。

     

    習近平氏は、毛沢東を「神」とも崇め奉っている。毛沢東の「持久戦」に従って米国と対峙していれば、いずれ米国が自滅するという論理を後生大事にしている。今回の米国によるイラン急襲は、習氏へどのような影響を与えたか興味深い。

     

    中国自体は、不動産バブル崩壊と高齢化で国力が落ちても、米国はもっと速いペースで衰退すると想定している。この仮想によれば、米国のイラン急襲は「自滅」への一歩であり、中国が相対的に強くなるきっかけが得られたとほくそ笑んでいたであろう。米国は当然、中国包囲網へ力を入れる余裕がなくなると読んでいた。

     

    習氏は台湾統一を悲願とする上で、現在が極めて有利な状況を生んでいるとみているだろう。毛沢東の持久戦論が、これから生きる局面になると判断しても不思議はない。持久戦論とは、このように中国が我慢していれば、いずれ有利になるという「他力本願」の戦法である。それだけに仮定が少しでも狂えば、大きな見間違いを冒すのだ。バンカーバスターが、この妄想を打ち砕いた。

     

    台風のような天災では、持久戦で我慢していればいずれ危機は去る。だが、国家間の戦争のような国力が基盤になる場合、そういう安易な方法で勝利が得られるはずがない。むしろ、敗北をもたらすであろう。米国は、最終決戦相手が中国と想定している。その戦いに不利になるようなイスラエルへの「肩入れ」を最も警戒している。習近平氏の「計算違い」はここから始まる。

     

    米国バンス副大統領によれば、トランプ氏による今回のイラン急襲決断の背景には「トランプ・ドクトリン」が存在するという。バンス氏の説明では、次のような道筋だ。『ロイター』(6月26日付)が報じた。

    1)まずは米国の明確な利益を明示して外交で問題を解決しようとする。

    2)それが失敗した場合は、「圧倒的な軍事力」で解決する。

    3)紛争が長期化する前に、そこから抜け出す。

     

    外交専門家には、トランプ氏に「ドクトリン」という高尚なものは存在せず、「直感外交」に過ぎないと批判している。ドクトリンか直感かの判定は、今後の実績でしか判定するほかない。いずれにしても、世界最大の軍事力を擁する米国が、瞬間的でもその持てる軍事力の一部を使うことで、イランが「12日間戦争」を集結させたことは事実だ。

     

    上記の「トランプ・ドクトリン」によれば現在、2)の段階が終ったことになる。今後、紛争が再発しても米国は本格介入しないとしている。それ以降は、イスラエルが国益を賭けた自衛戦争という立場だ。

     

    習近平構想は再検討

    習近平氏にとって、台湾侵攻が自らの権力を終身化する目的とされている。中国の憲法は、国家主席の任期が1期5年、2期10年を限度とするとの規定であった。習氏は、この規定を撤廃して無期限に改めた。習氏は、健康が許す限り終身国家主席が可能になったのだ。ただ、終身国家主席になるには、それなりの業績が不可欠である。習氏は、最終的に台湾侵攻による統一をその目標に据えている。習氏は今、手を替え品を替え台湾へ軍事的圧力を加えている。台湾統一が、習氏最大の政治目的になっているのだ。(つづく)

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    日本の海域には有望なレアアース資源が眠る。東京大学の加藤泰浩教授らの研究チームは2013年、日本最東端にある南鳥島(東京都)周辺の海底下から、レアアースを高濃度で含む「レアアース泥」を発見した。南鳥島の有望海域(2500平方キロメートル)のみでもレアアースの埋蔵量は1600万トン超と世界3位の規模とみられる。今後、探索を続ければ、さらに埋蔵量が増える見通しだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月28日付)は、「南鳥島に眠るレアアース、世界3位の量 中国輸出規制の資源も豊富」と題する記事を掲載した。

     

    電気自動車(EV)などに欠かせないレアアース(希土類)の確保は国内産業の懸案だ。生産の7割を握る中国が米国との対抗で輸出を規制し、国内メーカーの生産停止にまで波及した。日本の海底資源「レアアース泥」は規制対象である「中・重希土類」も豊富に含む。資源の安全保障を確保する観点からも、開発の重要度が高まる。

     

    (1)「25年に入って日本政府はレアアース泥の開発に注力する方針を打ち出した。4月には深海6000メートルからレアアース泥を引き揚げる「揚泥管」の接続試験を開始すると表明した。政府は28年度以降を目標にレアアースの生産体制を整える。特筆すべきは中国の輸出規制で希少性が強く意識される中・重希土類を多く含む点だ。レアアースは軽希土類と中・重希土類に大別され、中・重希土類は中国産が大半だ。中国政府が4月に発表した輸出規制の対象であるジスプロシウムなど7種類は中・重希土類にあたる。東大の加藤教授によれば、レアアース泥の含有量の5割程度が中・重希土類だという」

     

    南鳥島海底の「レアアース泥」は、中・重希土類を多く含んでいる。中国内陸部のレアアースの品位よりも20倍(東大調べ)という高品位が見込まれる。東大は、さらに海底調査を続けている。

     

    (2)「商業化に向けては採算性が課題となる。21年に東京大学レアアース泥・マンガンノジュール開発推進コンソーシアムで試算した経済性評価によると、1日あたり3500トンのレアアース泥を引き揚げることができれば「過去20年ほどのいずれの価格帯でも採算が取れる」(東大の加藤教授)という。レアアース泥の開発に向けて進行中の内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)では、27年1月以降に1日あたりで350トンに相当する揚泥を目指している。今後は揚泥量を伸ばせるかが焦点だ」

     

    22年に、水深2470メートルで海底堆積物の揚泥に世界で初めて成功した。技術的メドはついており、27年1月からの揚泥作業に期待がかかっている。

     

    (3)「泥などを引き揚げたあとも、陸から離れた海域から運ぶ費用がかかる。実際にレアアースとして使うには、純度を上げる精錬技術も必要だ。だが地上でとれる資源と違い、海底の泥から精錬する技術は未完成。産業に応用するまでの技術的な課題は多い。環境負荷への配慮として、生態系に対する影響の調査といった取り組みも求められる」

     

    海底の泥から精錬する技術は未完成、としているが。22年の海底堆積物の揚泥成功によって、すでに製錬技術の開発は進んでいるはずだ。この記事は、表面的な内容で突っ込み不足が明白である。

     

    (4)「米中対立の激化で、レアアースの調達は不透明感が高まる。中・重希土類は取引価格も急上昇した。英調査会社のアーガス・メディアによれば、中国外の価格指標となる欧州価格で、ジスプロシウムとテルビウムは5月初時点の価格が1カ月前から約3倍に急騰。データが遡れる2015年5月以降での最高値となった。6月上旬時点でも最高値圏での推移が続く」

     

    レアアースは、戦略物資であるゆえに供給不足に陥ると、すぐに価格が跳ね上がる。こういう環境下では、技術開発のスピードも上がるはず。単なる悲観論は有害ですらある。

     

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    北朝鮮は、米軍がイラン核施設へ精密な攻撃を行ったことで慎重な姿勢をみせている。トランプ大統領の矛先が、いつ北朝鮮へ向うか分らないという「不透明性」に怯えた形だ。トランプ関税の圏外にある北朝鮮は、バンカーバスターの牙がいつ向けられないとも限らないという危機感が強い。ここは、頭を低くして嵐を避けようという感じが窺える。

     

    『ハンギョレ新聞』(6月27日付)は、「北朝鮮、イランと距離置き米国批判自制」と題する記事を掲載した。

     

    北朝鮮は、最近イスラエルと衝突したイランと距離を置き、米国に対する非難を自制している。このような分析が示された。

     

    (1)「米国のシンクタンク「スティムソンセンター」傘下の情報分析サイト「38ノース」は24日(現地時間)、イスラエルによるイラン攻撃と米国によるイランの核施設に対する攻撃を相次いで批判する北朝鮮外務省の報道官談話を分析した結果を発表した。まず38ノースは、最近相次いで2本の外務省談話が発表されたこと自体は、北朝鮮がイランとイスラエルの対立を深刻にとらえていることを意味すると判断している」

     

    38ノースとは、米国シンクタンクのスティムソン・センターが運営する情報分析サイトである。北朝鮮の核関連施設やミサイル関連施設の画像分析を専門的に扱っている。それだけに、情報の信憑性が高いことで定評を得ている。-

     

    北朝鮮が、中東問題について談話を発表することは珍しいとされる。最近、相次いで2本の外務省談話が発表されたこと自体、北朝鮮の危機感を表しているという。

     

    (2)「1997年まで遡っても、北朝鮮がイラン問題に関して相次いで談話を発表したことはなかったという。北朝鮮は2015年以降、中東の対立について外務省談話をほとんど出していない。イランとイスラエルとの衝突に関しても、2023年10月のハマスによるイスラエル攻撃以降は公式に論評しておらず、2024年のイスラエルによるイラン攻撃に関しても言及していないほどだ」

     

    北朝鮮は、イスラエルによるイラン攻撃に関しても言及していない。それが、バンカーバスターの投下で、にわかに危機感を覚えたのであろう。「次は、我が身か」という切迫感である。

     

    (3)「38ノースは、北朝鮮がイランを全面的に支持する発言をおこなっていないことも指摘している。北朝鮮のイランに関する声明が少ないため11の比較は難しいが、過去の声明ではイランを「全面的に支持する」と表現していたことと比べると、はっきりとした違いがあるということだ。北朝鮮外務省の報道官が昨年12月のシリア危機の際に「シリアの政権と人民に対する全面的な支持と連帯を表明する」と述べていることとも対照的だ」

     

    北朝鮮は今回、イランを全面的に支持する発言を行っていない点が注目される。イスラエルは、イランの核施設攻撃であることが明白である以上、「やぶ蛇」を恐れたのであろう。

     

    (4)「米国のトランプ大統領に対する非難は弱まっている。今月23日、北朝鮮外務省の報道官は、前日の米国によるイラン核施設への攻撃について「主権国家の領土完整(領土を完全に治めること)と安全利益を乱暴に蹂躙した米国の対イラン攻撃行為を強く糾弾する」と述べている。これは北朝鮮が、19日にイランを先制攻撃したイスラエルについて「極悪な侵略行為であり、どうあっても容認できない反人倫犯罪」、「中東の平和のがん的存在であり、世界平和と安全を破壊する主犯」と辛辣(しんらつ)に糾弾したこととは大きな温度差があるというのだ。このことは、トランプ大統領に対する直接的な批判を自制しているこのかん北朝鮮の基調に通じる、と38ノースは判断する」

     

    米国への批判もトーンを落としている。過去の米国批判と様子が異なる。

     

    (5)「中東問題に関して、ロシアと歩調を合わせようとしている様子もうかがわれる。38ノースは、13日にイスラエルがイランを先制攻撃してから6日もたった19日になってようやく北朝鮮外務省の談話が発表されたことに注目すべきだと指摘する。その間の17日には、ロシア国家安保会議のショイグ書記が北朝鮮を訪れ、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に会っているという。朝鮮中央通信は「複雑な国際および地域情勢をはじめとする相互の関心事となる諸問題に対する両国指導部の見解と意見が幅広く交換され、完全に見解が一致した」と報道している。これを根拠として38ノースは、ショイグ書記が米国と中東についてのプーチン大統領の基本的な考え方を金正恩委員長に説明した可能性があると推測している」

     

    北朝鮮は、ロシアの対イラン姿勢を聞くまで、談話を発表しなかった。ロシアの鼻息を窺って、北朝鮮の姿勢を決めるという慎重さをみせている。

     

     

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