勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2025年06月

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    米国トランプ大統領の朝令暮改が、「TACO」(Trump Always Chickens Out(トランプはいつもビビって退く)」という造語まで生んでいる。相互関税で、金融市場で不評を呼ぶとすぐに取下げるからだ。

     

    「柔軟」と言えば聞こえは良いが、逆に言えば「定見のなさ」が目立つのだ。こういう事情から、「トランプのTACO現象」という揶揄が飛び交っている。こともあろうに、ホワイトハウスの記者会見でこの言葉について感想を求められたトランプ氏は、いたってご機嫌な斜めであった。「二度と聞きたくない言葉だ」と吐き捨てた。

     

    『ブルームバーグ』(6月5日付)は、「トランプ流ディールの極意不発-ロシア・中国・イラン指導者なびかず」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領はかねて、世界の強権的指導者とディール(取引)をまとめる自身の手腕を豪語してきた。こうした指導者への敬意を明言してやまないトランプ氏だが、これまでのところ目立った効果に乏しいのが現実だ。

     

    (1)「トランプ氏は、過去48時間だけでロシアと中国、イランの指導者に袖にされた。いずれも昨年の米大統領選でトランプ氏が早急に合意をまとめると公約していた国々だ。ウクライナでの戦争終結や中国の習近平国家主席との貿易合意、イランとの核合意に向けた取り組みはどれも成果を上げていない。トランプ氏は4日未明の自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、「習主席のことは好きで、これからもそうだが、交渉するには彼は極めてタフな相手だ」とラブコールを送った」

     

    従来のトランプ大統領は、「予測不可能性」が強みとされてきた。最近は、得意とするディールが朝令暮改となっている。待っていれば、変わるだろうという予測を生むに至った。こうなると、外交交渉の「ディール力」はガタ落ちである。中国・ロシア・イランが、トランプ氏の警告を聞き流すようになっている。

     

    2)「その数時間後にロシアのプーチン大統領とウクライナ問題で電話会談したトランプ氏は「直ちに和平につながるようなものではなかった」と認めた。一連の世界的課題を解決する唯一の方法はトランプ氏自身の直接的な関与だと、同氏やその側近は繰り返し述べてきた。だが、トランプ氏のSNSの内容はこうした主張とは相いれないものだ。ロシアや中国の指導者が予想ほど簡単には譲歩しないという現実にトランプ氏は直面している」

     

    トランプ氏は、戦争が嫌いな「平和主義者」と称している。ならば、米国の経済力を背景に不退転の決意でロシアへ臨めば良いのだが、いささか優柔不断な取組み方だ。ロシアとウクライナの間に入って、「ウロウロ」しているだけだ。トランプ氏に足下を見透かされているのだ。

     

    3)「トランプ氏はこれまで、ニューヨークの不動産業界という熾烈(しれつ)な競争の世界で鍛え上げられた抜け目なさと強硬さを武器に、前任者にはできなかった方法で習氏やプーチン氏のような指導者たちに立ち向かうことができると米国の有権者や世界に約束していた。アラブ首長国連邦(UAE)など米国の一部の同盟国は、大規模な投資の約束によって忠誠を保っている。一方でトランプ氏は、エルサルバドルやパナマなどの国には、圧力をかけたり歓心を買ったりすることで影響力を確保している」

     

    トラプ氏の交渉術は、相手国へ「吹っかけすぎ」て、現実味がないのだ。これは、外交戦略でチーム力を使わず、独断専行している結果である。衆知を集めた外交戦略でなければ駄目なのだ。

     

    4)「ワシントンの保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)上級研究員のコリ・シェイク氏は、大統領が強硬な態度に出られるのは、米国との関係悪化を望まない友好国であり、一方で米国の敵対国はそのリスクをいとわず、「むしろ喜んで受け入れる傾向にある」と話した。トランプ氏は対ロシア制裁強化の可能性を事実上排除しており、4日のSNS投稿では、週末にウクライナによるロシアの空軍基地へのドローン攻撃があったことを受け、プーチン氏が報復する権利を持つという主張を認めるかのような姿勢も見せた」

     

    不動産業で磨いた「ディール力」は、海千山千の外交戦術には使えないのだ。トランプ氏の場合、「戦争は嫌いだ」と明言している。こうなると、相手国はトラン発言を割引いて聞いているに違いない。

     

    5)「米国はまた、イランの核兵器取得を阻止しようとしているが、最高指導者ハメネイ師は4日、米国が提示した核合意案を批判し、同国にウラン濃縮の停止を求める米政府当局者を「傲慢(ごうまん)だ」と非難した。そしてトランプ氏は、中国に対する交渉の切り札の多くを失っている。中国は自動車用バッテリーや携帯電話に必要不可欠なレアアース(希土類)の輸出規制を強化。一方で中国は、貿易関係強化の機会があるとみて欧州に関心をシフトさせている」

     

    平和的手法で相手国を動かすには、トランプ氏の「単騎出陣」による限界が明白だ。同盟国と協力することでしか成果を上げられまい。トランプ・ディールの失敗が、ちらつき始めたのである。

     

    6)「貿易戦争が、中国に壊滅的な結果をもたらすというトランプ氏の確信とは裏腹に、習主席の指導部は形勢を逆転させている。レアアースの輸出規制を通じて米国の主要産業を締め付ける一方で、米国の関税引き上げや技術規制の強化、アジア太平洋の同盟国・地域を対中包囲網に組み込もうとするトランプ政権の動きに耐えようとしている。シンクタンク、欧州外交評議会(ECFR)米国プログラムのディレクター、ジェレミー・シャピロ氏はトランプ氏について、必ずしも権威主義的で強権的な指導者を好んでいるわけではないと分析する。ただ、トランプ氏はこうした指導者たちとの方が「うまく意思疎通ができ、敬意を抱いている。このため、彼らに対して脅しをかけることや、不平等な取引を強いることには一層慎重になる」とシャピロ氏は解説した」

     

    トランプ氏は、同盟国へも相互関税をかけたことで中国に足下を見透かされている。同盟国を巻き込んで対中戦略でなければ効果は上がらない。同盟国や友好国の相互関税はすぐに取り止めなければ、対中交渉も失敗するリスクをかかえる。日本へ圧力をかけるとは、逆立ちしている。本来ならば、日本を優遇して協力を求めるべきが筋なのだ。

     

     

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    約束したことを遵守する。社会一般の通念だ。中国には、そういう契約履行の重要性に対する認識が欠如している。米中が今、紛争再燃の気配を漂わせているのは、中国が5月の米中会談で約束したレアアース輸出実施を渋っていることが発端だ。「契約遵守」は、市場経済の鉄則である。中国は、儒教社会の国だけに市場経済ルールである「契約概念」そのものの認識が欠如している。重大な欠陥である。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月5日付)は、「中国、『信頼の欠如』に直面」と題する記事を掲載した。

     

    「中国には信頼と信ぴょう性が欠如している」シンガポールで開かれたアジア安全保障会議(通称シャングリラ会合)で、フィリピンのギルベルト・テオドロ国防相がこう率直に指摘した。これはこの地域の緊張、そして貿易協議が停滞している米中間の緊張の大きな要因だとされることの核心を突いている。

     

    (1)「テオドロ氏が言及したのは、中国との貿易相手国にとって共通する摩擦の原因だ。中国には約束を履行しない実績がある。5月にジュネーブで米中が合意した協定書のインクが乾かないうちに、中国は合意の一部として譲歩した重要な点の履行を遅らせ始めた。これはトランプ政権による報復措置につながった。ただし関税以外の形で」

     

    フィリピンは、前政権時代に中国が約束した経済支援をほとんど実施しなかった。現政権は、こうしたことから中国への疑念を深め、今や「反中」の有力メンバー国となった。

     

    (2)「WSJの取材によると、事態は次のように展開した。ジュネーブでの協議で習近平国家主席の首席貿易交渉官である何立峰副首相は、チップや自動車などの製品に必要なレアアース(希土類)輸出を再び認めるという米国側の要求に同意した。何氏による土壇場の譲歩によって、最終的な合意が成立した。しかし中国にとって、輸出規制を解除することは、再び規制を導入しないことを意味しなかった。ジュネーブでの協議後、数日間だけ規制を緩和した後、中国は輸出の承認プロセスを極端に遅らせた」

     

    ジュネーブの米中会談で、中国はレアアース輸出再開で合意した。輸出の再開は、数日間で再び事実上、極端に遅らせている。

     

    (3)「事情に詳しい関係者によると、これは中国の優良企業の一つ、華為技術(ファーウェイ)が製造する特定の人工知能(AI)チップの使用に対する米国の警告に、中国が不満を持ったためだ。ファーウェイに関する警告は新しい政策ではないという説明をトランプ政権当局者が何氏のチームに行ったが、説得することはできなかった。その後、トランプ政権はジェットエンジンと一部のチップソフトウエアの中国向け販売を停止した。両大国間の緊張は高まっている。米国の言いなりにはならないとする中国の貿易交渉担当者らは、レアアース規制の再導入などの対抗措置を取る権利があると考えている。米国側にすると、約束は約束であり、破られるべきものではなかった」

     

    中国が、約束履行を渋り始めたのは、米国が別件でファーウェイへ与えた警告を不満とした拒否反応である。中国は、あえて別件を利用した「悪乗り」である。

     

    (4)「両国が合意違反を巡って非難の応酬が続く中、深まる不信感は長期的な貿易合意をさらに困難にする可能性が高い。第1次トランプ政権下の貿易戦争中、中国が暫定合意から後退した経緯は、米国でまだ記憶に新しい。2019年5月3日、中国の交渉チームは米国側にマイクロソフトのワード形式の暫定合意案をメールで送付したが、米国の核心的な懸念である知的財産権に関する部分の約3分の1が赤字で削除されていた。中国にとって、この変更は継続中の交渉の一環に過ぎなかった。米国側は、変更の範囲が戦術的な動きを超えていると見なした。中国は約束を破ったのだ。

     

    中国には、約束反故の前歴がある。第1次トランプ政権下の貿易戦争中、中国が約束した対米輸入増の一件を不履行のままにしている。米国が、19年に暫定合意案を中国へメールで送付したが、約3分の1が赤字で削除されていた。中国では、約束した案すら守らない例があることが普通のことなのだ。日本も、こういう「煮え湯」を何度も飲まされている。

     

    (5)「激怒したトランプ氏は対中関税をさらに引き上げた。この貿易戦争は2020年初めまで続き、両国は「第1段階」合意に署名した。この合意で中国には米国の商品・サービスの大幅な追加購入が求められた。しかし、ピーターソン国際経済研究所の推計によると、最終的に中国が購入した米国製品は約束した額の58%にとどまり、貿易戦争前の輸入水準にも達しなかった。言い換えれば、中国は約束した追加的な米国からの輸入を全く行わなかったと同研究所は指摘した」

     

    中国は2020年初め、最終的に米国へ合意した約束も58%しか実行しなかった。中国とは、こういう国である。中国にとっての約束は、「破るためにある」といった感じなのだ。

     

    (6)「中国が約束を守っていれば、どのような違いがあったのか疑問に思う人もいるだろう。長年、中国のやり方はまず合意を結び、その後で履行について考えるというものだった。「まずは合意しよう」と朱鎔基元首相は、中国の世界貿易機関(WTO)加盟を巡る米国との交渉を取材する記者らに語ったことがある。当時、世界は中国に寛容で、中国が合意内容の履行方法を見いだすまで待つ忍耐力があった。もはやそうではない。フィリピンの国防相の発言は、中国が無視できない、より根本的な問題を浮き彫りにしている」

     

    中国は、「まずは合意しよう」と言って相手を引き込む。だが、履行するとは限らない。WTOの中国加盟は、この適例である。米国は、中国の言葉を信じてWTO加盟を認めたが案の定、WTO精神を守らずルール破りを実行した。ダンピング輸出がこれだ。補助金を設備投資の段階から行い、「ダンピング」をクリアした。人民元が、IMF(国際通貨基金)のSDR(特別引出権通貨)へ昇格する際に約束した、資本自由化撤廃による「自由変動相場制」移行も不履行のままだ。「上に政策あれば、下に対策あり」で潜り抜けるのが、中国のお家芸である。秦の始皇帝以来の伝統である。

     

     

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    不公平な二等国民扱い

    責任回避が生んだ歪み

    疲弊する金融機関経営

    政策転換できない理由

     

    中国国家主席の習近平氏は、26年から始まる15次「5カ年計画」策定で悩んでいる様子だ。現在の中国経済が、不動産バブル崩壊後遺症の真っ只中にあることや、米中対立激化による関税戦争がもたらす重圧によるものである。国内には、トウ小平の「改革開放路線」支持派も健在である。こういう複雑化する情勢のなかで、製造業を重視する路線継続がもたらすリスクは拡大している。

     

    中国は、GDP世界2位をことさら強調しているが、国内に多くの難問を抱えている。農民戸籍者が、総人口の52%も占めており、都市戸籍者と教育・福祉・年金などで差別される「二等国民」扱いである。21世紀の中国が、この状態を正常化しなければ、一歩も前進できない状況にある。習氏の長期戦略では、この問題解決の方向性が全くみられないのだ。ここが、最大のウイークポイントになっている。

     

    中国は、大真面目で米国覇権へ対抗する構えをみせている。世界秩序の「改編」を狙っているが、客観的に言えばその実現条件はないのだ。先ず、世界共通の価値観を持たないことが、決定的な弱点である。さらに、他国へダンピング輸出して生き延びようとする経済構造は、内需を犠牲にしている明らかな証拠だ。国内経済を不安定状態にし、輸出で稼ぐ経済システムに永続性がない。

     

    世界経済に占める中国の名目GDPは、2021年の18.59%がピークであった。24年は16.95%へと低下している。中国の不動産バブル崩壊後遺症が、デフレ経済へ追い込んでいる結果だ。今後、さらに低下していくはずである。中国が、対抗する米国の名目GDPは、23年に27.19%である。米中経済の動向を比較すれば、問題含みの米国が中国を引離す勢いをみせている。

     

    中国が、米国覇権へと競争を挑むのであれば、現在の「息の切れかけている」状態は不吉そのものであろう。習氏は、この原因がどこにあるか一度、立ち止まった自らの足下を見つめ直す時期にきている。

     

    不公平な二等国民扱い

    習氏は2035年に、「基本的に社会主義現代化を達成する」という目標を掲げた。これには、経済、政治、文化、社会、生態文明などの各分野での大幅な進展を目指すとしている。現状はどうか。前記の諸項目に照らし合せると、前進よりも後退が目立っている。「二等国民」問題解決について、地方政府まかせであり「国政レベル」の認識となっていないのだ。

     

    中国内政において最大の「ガン」は、二等国民問題である。差別された二等国民は、出生率が低く年金も差別されている。これから迎える本格的な「少子高齢化社会」で、これら二等国民の高齢者が生きて行くには、国家の全面的支援なしには不可能である。こうした点でも膨大な財政需要が迫っている。これを解決するには、内需を高める政策に転換するほかない。習氏に、その認識が明確でないのだ。依然として、製造業への補助金強化に夢中である。内需充実こそ、中国が少子高齢社会を生き抜く唯一の条件である。

     

    習氏は、中期計画「第15次5カ年計画(2026〜30年)」の策定に当たって、特に重視すべき基本姿勢として、次のような重要指示を与えた。それは、前国家主席・胡錦濤氏が、共産党トップとして最後となった2012年11月に行った活動報告演説と重なるものである。習氏は、胡錦濤氏の「科学的な政策決定、民主的な政策決定、法律にのっとった政策決定を堅持せよ」を踏襲したのである。

     

    習氏が、あえて胡錦濤演説を引用したのは、党内に広がる「習近平批判」への配慮である。習氏は、これまでトウ小平の改革開放路線を否定して毛沢東路線へ復帰した。その挙げ句に米国との対立を深め、経済は混乱している。党内から批判が出て当然である。党長老は、トウ小平路線に従って経済・外交の路線を歩んできた人たちだ。習氏の時代になって、ことごとく「脱トウ小平」路線へ転換した。その成果が上がればともかく、混乱を増すばかりだ。こうして、習氏は一歩下がり内需重視路線を指示したかのごとき印象を与える。

     

    だが、相変わらずの製造業補助金重視路線も見え隠れしている。政府当局者らは、習近平国家主席の看板政策「中国製造2025」の新たなバージョンとなる計画の策定を進めている。今後10年間の計画では、半導体製造装置などのテクノロジーが優先分野となる方向だ。欧米諸国からの批判を避けるため、中国製造2025と似た名称の使用は控える可能性もあるという。『ブルームバーグ』(5月26日付)が報じた。

     

    習氏は最近、全国放送された洛陽軸承集団での演説で、「われわれは正しい道を歩んできた」とし、「引き続き製造業部門を強化し、自力更生を堅持し、中核技術の習得に努めなければならない」と語った。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月29日付)が伝えた。これら二つの報道からみると、習氏が経済政策の重点を製造業補助金強化に置いていることが分る。

     

    責任回避が生んだ歪み

    習氏は、政策面で「硬軟」取り混ぜた状態にあることを窺わせている。ただ、「メンツ」重視の中国社会の歴史から言えば、習氏が製造業へ補助金を振り向け、EV(電気自動車)などで華々しい輸出実績を上げることは、いかに「愛国的」現象であるかが分る。習氏にとっては、二等国民の存在など忘れさせてくれる「清涼剤」に違いない。(つづく)

     

     

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    李在明(イ・ジェミョン)大統領は4日、日韓関係について「国家間の関係は政策の一貫性が特に重要だ」とし、実用的な接近の必要性を強調した。李大統領は、「前政権の徴用問題解決案をそのまま進めるのか」と問われると、このように明らかにした。李大統領は「国家間の信頼の問題がある」とし「国家政策を個人の信念のように一方的に貫徹させるのは難しく、それが現実だという点を考慮しなければいけない」と述べた

     

    「実用的」とは、本音を封印して外交的利益を求めるという意味である。この思惑が外れたとき、李氏は本来の「反日」へ戻る可能性があろう。李氏が歩んできた人生は、過激発言で危機を乗り越えてきた「成功体験」に裏打ちされているからだ。

     

    過去の韓国大統領は、支持率が低下すると必ず「反日発言」によって支持率を挽回させてきた経緯がある。李氏も経済政策が行き詰まれば、その可能性が大きい現状だけに、早ければ年内にでも「反日」へ戻る危険性がある。

     

    『毎日新聞 電子版』(6月4日付)は、「『スカッ』とする過激発言で、進歩派傍流から主流へ 李在明氏」と題する記事を掲載した。

     

    李在明(イジェミョン)氏(61)が韓国の新大統領に当選した。強いリーダーシップを評価する声がある一方で、「ポピュリスト」との批判は絶えず、多くの刑事事件でも在宅起訴されている。毀誉褒貶(きよほうへん)が激しい新大統領は、どんな人生を送ってきたのか。幼少期を知る人や政界関係者の証言、自叙伝などに基づき、その人物像を追った。

     

    (1)「韓国政界でよく耳にする李氏への評価は、「進歩勢力のアウトサイダー」だ。最大の理由は、民主化運動の経験が無いことだ。進歩勢力の源流は、民主化指導者の金大中(キムデジュン)氏。1987年の民主化後、98~2003年に大統領を務めた。李氏を長く見てきた韓国の政界関係者は、「民主化運動の経験がほとんど無く、(進歩派勢力の強い)湖南出身でもない。おまけにSKY(ソウル大・高麗(コリョ)大・延世(ヨンセ)大)出身でもない。進歩政党における究極のアウトサイダーだ」である」

     

    李氏は、過激な言動でのし上がってきた政治家だ。庶民の声を代表するというポピュリスト・スタイルを武器にしている。これは、国内では通用しても外交戦略では無理であろう。孤立するだけだ。

     

    (2)「そこで李氏は10年に城南(ソンナム)市長に就任すると、市民へのアピールを重視し、時に過激な発言で物議を醸すようになる。「市長の権限が大きすぎて、絶えず誘惑にさらされている。市長室に(金が入った)封筒を持ってくる人がいるから、監視カメラを設置した」。李氏は11年、聯合ニュースの取材にこう答えた。陳情者が賄賂を渡そうとするからカメラで自らを監視する仕組みを導入したと、清廉ぶりをアピールした形だ。19~24歳の若者に年間100万ウォン(約10万円)を地域商品券で支給する「青年手当」も導入。「既得権打破」を掲げ、「財閥解体」まで唱えた」

     

    経済政策と言えば、「地域通貨」と現金バラマキである。韓国の経済政策で地域通貨を採用すると言い出す始末だ。大統領になったので、現金バラマキを始めるであろう。財政赤字が増えるだけで効果はない。年末には、経済政策のボロが深刻なものになろう。

     

    (3)「他の政治家に先駆けて重視していたのが、交流サイト(SNS)の駆使だ。オンラインのコミュニティーを通じてファンクラブを作り、李氏とふれ合う集会などを頻繁に開催した。市長2期目には「李在明と指先革命軍」との名で知られるようになった。「指先革命」とは、指で操作するスマートフォンを通じ政治改革を断行するという意味だ。こうしたファン層は、後に「ケッタル」(「改革娘」の意味)と呼ばれる熱狂的な李氏のファンの原形と言える。ただ、ソウル一極集中の傾向が極めて強い韓国では、地方都市の首長が大きなニュースとして取り上げられる機会は少ない。李氏も、パフォーマンスだけで中央政界に名を売ることはできなかった」

     

    ポピュリストでのし上がってきただけに、人気を高める術に長けている。その好適手段が「反日」だ。日本側の言動を捉えて、自己の人気を高める手段へ変えるに違ない。これは、幼少期からの「天性」そのものだ。責任転嫁して生き残り策を探すのだ。

     

    (4)「そんな李氏が一躍、全国区の政治家にのし上がった契機が、保守系の朴槿恵(パククネ)大統領(当時)の弾劾政局だった。16年10月、朴氏の親友が国政に介入した疑惑が強まった。だが当時野党だった共に民主党内でも当初は、弾劾への慎重論が大勢を占めた。大統領が職務停止となって政局が混乱することへの懸念などがあったからだ。この状況で誰よりも早く大きな声を上げたのが李氏だった。「朴大統領を弾劾して拘束せよ」と主張し、弾劾を求める「ろうそく集会」でも先頭に立って運動の流れを主導した。一気に知名度がアップし、李氏の発言を聞くとスカッとするという意味で「サイダー」の異名も獲得。朴氏の弾劾・罷免後の大統領選では、共に民主党の公認候補を決める予備選に立候補した」

     

    ライバルを罵倒する手法は、磨きがかかっている。韓国政界でのし上がったのもこれを使ってきた。「反日」など、手軽なものであろう。

     

    (5)「予備選では文氏が大勝した。李氏は、2位の有力政治家に得票率で僅差の3位と大健闘し、その名を存分に中央政界にアピールした。急上昇した知名度を生かして18年の京畿道(キョンギド)知事選で当選を果たし、次期大統領選に向けて階段を上った。一方で、有名になったことで過去の極端な発言が取り上げられるようになり、インターネット上には「李在明語録」まで登場した。16年にはネット番組でこう語っている。「権力は残忍に行使しなければならない。過ちを悔いて反省する人は許すが、不正をする集団や人間とは和解しない」。党内の非主流派から大統領候補へとのし上がる過程で、攻撃的な政治スタイルを身につけた李氏。それは求心力を高める一方で、ポピュリストとの批判を招くもろ刃の剣となった」

     

    李氏は念願の大統領になった以上、今度は自己の免罪を求めて動き出す。司法を完全に手中に収めるのだ。文在寅・元大統領も行わなかったことを露骨に始める。これは、国内分裂をさらに推し進めるきっかけになる。李氏も、最後は弾劾という不名誉な事態が懸念されるのだ。韓国は、混迷が続くであろう。

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    企業家のイーロン・マスク氏が、米大統領執務室で盛大な送別を受けてからわずか5日後、米予算案を痛烈に非難した。トランプ政権が、1兆ドルを削減しようとする自身の取り組みが法案に反映されかったことも批判しているもの。

     

    マスク氏は、「MAGA(米国を再び偉大に)」運動に加わる候補者への支援を停止する考えを示した。6月3日には、来年の中間選挙で現職共和党議員の落選を促すような発言をしている。こうして、米予算案の成立阻止へ向けて、大きな揺さぶりをかけている。これまで、トランプ氏の片腕になってきたマスク氏が、手のひらを返す姿勢に転じた。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(6月4日付)は、「マスク氏、トランプ大統領の税制法案を痛烈批判」と題する記事を掲載した。

     

    イーロン・マスク氏が、トランプ米大統領が推進する税制法案を「おぞましく、忌まわしいもの」と痛烈に批判した。この発言は、大統領と支援者である億万長者との関係を決定的に損なうおそれがある。

     

    (1)「5月末に唐突にトランプ政権を離れたマスク氏は4日、X(旧ツイッター)への投稿で、この法案を「巨大で、理不尽で、利権まみれの議会歳出法案」とこき下ろした。同氏はさらにこう続けた。「この法案に賛成票を投じた者たちは恥を知れ。自分たちが間違ったことをしたのは分かっているはずだ。分かっているだろう」。マスク氏による強硬な介入は、トランプ氏の「一つの大きく美しい法案(BBB)」が山場を迎える中でのことだった。法案は5月に僅差で米下院を通過したが、成立には上院での承認が必要だ」

     

    米予算案は、米下院で成立しており、上院の審議に委ねられている。マスク氏は、共和党議員へ揺さぶりをかけている。

     

    (2)「トランプ氏は、74日を法案可決の期限に定めている。法案は大幅な減税や社会支出の削減、連邦債務の増加を含み、第2次政権の実績を左右し、米経済の行方に重大な影響を及ぼすものだ。この法案に懸念を示す共和党上院議員に対し、トランプ氏は強い圧力をかけている。マスク氏がXに投稿する数時間前、トランプ氏は共和党のランド・ポール上院議員に矛先を向けた。同議員は財政保守派の代表格で、連邦政府の債務上限を5兆ドル(約720兆円)引き上げるという法案の条項に異議を唱えている。「ランド・ポールはBBBをほとんど理解していない。特に、これから起こる素晴らしい成長について」とトランプ氏は4日朝、自身のSNSトゥルース・ソーシャルに投稿した。「BBBは大きな勝利なのだ!!!」と自画自賛」

     

    トランプ氏は、7月4日を法案可決期限としている。何としても可決させなければならない立場だ。

     

    (3)「上院では、ウィスコンシン州のロン・ジョンソン氏、ユタ州のマイク・リー氏、フロリダ州のリック・スコット氏ら、他の財政保守派の議員も、法案には一層の歳出削減が必要だと主張している。さらに、メーン州のスーザン・コリンズ氏、アラスカ州のリサ・マーカウスキー氏、ミズーリ州のジョシュ・ホーリー氏ら別の共和党上院議員グループは、法案に盛り込まれたメディケイド(低所得者や障害者向けの公的医療保険)の削減案を批判している。上院(定数100)では共和党が53議席を占めており、法案を通すには造反を3人以下に抑える必要がある」

     

    上院共和党から3人の造反者が出れば、否決される。すでに6人の共和党議員が法案へ疑念を出している。きわどいところだ。

     

    (4)「ホワイトハウスのレビット報道官は、マスク氏の発言に関する質問に対し、「大統領はすでに、イーロン・マスク氏がこの法案についてどう考えているかを把握している。それによって大統領の意見が変わることはない」と答えた。「これは『一つの大きく美しい法案』であり、大統領は今の立場を変えるつもりはない」と述べた。だが、今回のマスク氏の介入で、大統領に批判的な共和党議員らが勢いづく可能性がある。ポール氏はXで「我々はもっと良くすることができるし、そうしなければならない」と述べ、マスク氏に同調した。リー氏も「上院はこの法案をより良いものにしなければならない」と応じた」

     

    共和党議員には、マスク氏の意見に賛同する者も出ている。予断を許さない状況だ。

     

    (5)「トランプ政権は3日、マスク氏が率いた歳出削減タスクフォース「政府効率化省(DOGE)」の支持者らの不満を和らげようと、同タスクフォースが特定した一部の削減項目を法制化する案を議会に提示した。対象には、多様性プログラムに関連する契約や、公共ラジオNPRおよび公共放送PBSへの10億ドル超の支出が含まれている。世界一の富豪であるマスク氏は、昨年の大統領選で2億5000万ドル超を献金してトランプ氏を支援した。トランプ大統領本人への批判は控えているが、同氏の政策課題の一部とは距離を置くようになっている」

     

    マスク氏は、昨年の大統領選で2億5000万ドル超を献金した。マスク氏は、トランプ氏へ距離を置くようになっている。

     

    (6)マスク氏は、「MAGA(米国を再び偉大に)」運動に加わる候補者への支援を停止する考えも示しており、3日には来年の中間選挙で現職共和党議員の落選を促すような発言をした。マスク氏は、ホワイトハウスへの関与が自身の事業に「反発」を招いたと述べている。特にテスラでは欧州での販売が落ち込んでいる。マスク氏は、1日に放送された米CBSニュースのインタビューで、トランプ氏を公然と批判したくはない一方で、「この政権がやっていることすべてに責任を負いたくもない」と語り、「板挟みの状況にある」と明かした。3日のXへの投稿で、マスク氏はトランプ氏の法案についてこう書いた。「申し訳ないが、もう我慢できない」と強調」

     

    マスク氏は、予算案阻止へ向けて行動を始めている。献金停止や落選運動を行うという過激ぶりだ。

     

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