中国経済は、内需不振で不毛な値引き合戦が広がっている。EV(電気自動車)から宅配までが値引きする消耗戦を繰り広げているのだ。工業情報化省は5月31日、国内の自動車業界で激化する価格競争に対して「必要な監督措置を講じる」と明らかにした。「値引き合戦には勝者は存在せず、未来もない」と警告し、業界の持続可能な発展を促進する姿勢を強調したほど。
中国では、こうしたドロ沼状態の競争を「内巻」と呼んでいる。内部での過度な競争や努力が続いて、結果的に誰もが消耗していく状態を指すもの。言い得て妙だ。まさに、この状態へ落込んで業者が大損している。
『日本経済新聞 電子版』(6月4日付)は、「中国株に『内巻』リスク EVや宅配で値引き、消耗戦警戒」と題する記事を掲載した。
中国本土や香港の株式市場で内需の先行きへの警戒が広がっている。値下げを発表した自動車大手の比亜迪(BYD)株は1割下がり、激しい消耗戦を繰り広げる出前アプリ株なども低空飛行が続く。国内消費は政府の補助金により押し上げられており、今後は反動減に見舞われる可能性がある。
(1)「『価格戦争』に火が付いた――。BYDが先月下旬に電気自動車(EV)など22モデルを値引きすると発表して以降、中国メディアではこのような言葉が飛び交っている。民営大手の浙江吉利控股集団もEVなどで値引きに踏み切り、即座にBYDに追随した。BYDの値下げを号砲に価格を軸にした競争が激しくなる可能性が高まっている」
不況下の値引き合戦は、日本経済も経験済みだ。コストカットだけを先行させる、不毛のビジネスが繰り広げられている。
(2)「価格の引き下げは利幅を圧迫するため、市場では収益悪化への警戒が強まっている。BYD株は値引きを発表して以降、深圳市場で12%、重複上場する香港でも14%下落。浙江吉利控股集団の子会社で、香港に上場する吉利汽車控股株もわずか1週間余りで13%値を下げた。この期間のパフォーマンスは上海総合指数(0.4%高)や香港ハンセン指数(0.4%安)を大きく下回る」
中国経済の「日本化」が、判で押したように進んでいる。不動産バブル崩壊後遺症が、今始まったのだ。この先20~30年も、ドロ沼に喘ぐ運命だ。
(3)「国は、耐久消費財を買い替える消費者に対して補助金を出し、需要を喚起してきた。例えば自動車では古い内燃機関車をEVなどの新エネルギー車に買い替える場合、消費者は2万元(およそ40万円)の補助を受け取れる。補助金効果も息切れ感がでてきた。24年9月以降、自動車販売金額は増加に転じていたが、25年1〜2月は前年同期比4%減少となった。4月も1%増にとどまった。大和総研の斎藤尚登経済調査部長は「金額の増え方が鈍いのは自動車各社が値引き合戦に陥っている証左」と指摘する」
日本も随分、補助金を出して消費を奨励したが、すべて「線香花火」に終った。中国は、こういう「無駄な政策」に気づかず続けている。かくして、財政赤字が雪だるま式に膨れ上がる構図ができあがるのだ。
(4)「業界団体の中国汽車工業協会は、BYDなどの値引きを受け「無秩序な価格競争は業界を悪循環に陥れる」と警告した。工業情報化省も「『内巻』の価格戦争には勝者もいないし、未来もない」とし、公平で秩序ある市場環境を断固として守ると強調した。内巻は中国語で内向きの過当競争を指すネガティブな言葉だ」
昨年7月、自動車業界は値引きしないとの宣言を発したが、独禁法違反嫌疑で撤回した。それ以降、堰を切ったような値引き合戦を繰り広げている。
(5)「経済統計を見る限り中国の消費は「堅調」だ。4月の小売売上高は前年比5.1%増となった。前月に比べてやや減速したものの、引き続きプラスの伸び率を維持している。もっとも市場は額面通り受け取っていない。家電など耐久消費財の買い替え促進策による押し上げ効果が大きいとみているからだ。みずほリサーチ&テクノロジーズの月岡直樹主任エコノミストは政府の補助金について「需要の先食いに過ぎず、消費低迷を打開するには力不足」と話す。先を読む市場ではむしろ補助金終了後の反動減を警戒する声が多い。自動車市場で勃発した値下げ競争を受けて、投資家は懸念を強めた形だ」
4月の小売売上高は、前年比5.1%増と順調にみえるが、補助金が裏で支えている。消費の先食いである。
(6)「内巻がキーワードになっているのは、自動車に限らない。例えば出前アプリの美団とネット通販大手の京東集団(JDドットコム)。美団の株価は24年10月に直近ピークをつけた後、下落基調が続く。25年に入ってからも下げ止まらず、24年末比で1割安。17%高のハンセン指数とは対照的だ」
出前まで値引き合戦だ。これこそ消費不況の象徴的な事例だ。
(7)「消費者の節約志向は強く、中国新興ネット通販で「Temu(テム)」の親会社PDDホールディングスは25年1〜3月期に純利益が5割も減った。政府補助金による消費喚起策があっても京東やアリババ集団との競争が激しく、減益に転じた。5月27日の決算発表前と比べると、株価は2割安と急落している」
安さが売り物のネット通販「Temu」も、この1〜3月期の純利益が5割も減った。輸出低下も響いている。
(8)「内巻をやめよ」。習近平(シー・ジンピン)国家主席は3月、全国人民代表大会(全人代)関連の会議でこう指示した。それでも、内巻が終わりを迎える気配はない。4月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.1%下がった。マイナスは3カ月連続だ」
習氏の補助金政策の必然的な結末が、「内巻競争」であろう。補助金が生産増強を煽っているからだ。習氏は、「天に唾する」行為を行った結果が、今現れている。




