勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2025年06月

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    米国債は、5月の月間ベースの相場が今年初のマイナスとなる。関税を巡る不確実性の再燃や、米国政府による債務拡大への懸念が背景だ。こうした状況を受けて、JPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)は、債券市場の混乱が「いずれ起こる」と警告した。不気味な予告である。この事態が起れば、短期間の終息は困難であろう。「ドルスマイル論」に従えば、円相場急騰局面へ向う条件が揃う。

     

    『ブルームバーグ』(5月30日付)は、「JPモルガンのダイモンCEO、債券市場の混乱は『いずれ起こる』」と題する記事を掲載した。

     

    JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、債券市場の混乱は「いずれ起こる」と警告した。米政府と連邦準備制度理事会(FRB)が支出と量的緩和を「過度にやり過ぎだ」結果だとの考えを示した。

     

    (1)「ダイモン氏は30日、レーガン・ナショナル・エコノミック・フォーラムで講演し、「6カ月後に危機となるのか、あるいは6年後なのかは分からない。債務の軌道と、マーケットメーカーが市場を機能させる能力の双方を変えていけることを私は望んでいる」と発言。「残念ながら、われわれが目を覚ますには危機が必要かもしれない」と述べた」

     

    ダイモン氏は、米国金融界を代表する論客だ。米国の放漫財政が、市場の反逆(債券自警団)によって国債相場の急落をもたらすだろうという予告である。米国は、市場機能が発達しているので、米国の財政赤字へ「掣肘」を加えて、赤字削減へ向かわせるであろう、と警告している。

     

    (2)「米国債は、月間ベースのリターン(注:価格変動)が、今年初のマイナスとなりそうだ。関税を巡る不確実性の再燃や政府債務拡大への懸念が背景にある。ダイモン氏はここ数年、世界的な財政赤字の拡大に繰り返し懸念を表明しており、この日はいわゆる債券自警団が戻ってきたのかとの質問に対し、「その通りだ」と答えた。同氏は先月にも、米国債市場で「混乱」が生じ、それがFRBの介入を促すことになると予想していた」

     

    5月の米国債相場は、今年初めての値下がり(利回り上昇)になった。ブルームバーグの米国債指数は5月に1.2%余りのマイナスだ。全ての債券発行年限が圧力を受けている。30年債利回りは3カ月連続で上昇し、2023年以来最長の上昇局面となった。2年債と10年債の利回りも今年初めて月間で上昇した。トランプ米政権の予測困難な政策が、投資家の信頼感を揺るがし、米国債市場への向かい風が強まっている。トランプ氏が大型税制・歳出法案を推進しており、米財政赤字への懸念が再燃した形だ。

     

    ダイモン氏はここ数年、世界的な財政赤字の拡大に繰り返し懸念を表明しており、この日はいわゆる債券自警団が戻ってきたという認識を明らかにした。

     

    (3)「(ダイモン氏は)米銀のいわゆる補完的レバレッジ比率(SLR)やその他規制には、「深刻な欠陥」があると指摘し、それらが是正されれば、銀行はより積極的に仲介機能を果たせるようになるだろうとしていた。「私はこれを規制当局に言いたい」とダイモン氏は30日に発言。 「これは起こるだろう。そしてあなた方はパニックになるだろう。私はパニックにはならない。われわれは大丈夫だ。むしろもっともうかるかもしれない。そうなるとJPモルガンにとって良いことだから、われわれは危機が好きなんだと言う友人も出てくるだろう。実際にはそうではない」と語った」

     

    ダイモン氏は、補完的レバレッジ比率(SLR)などに「深刻な欠陥」があるとしている。SLRとは何か。銀行の安定性を測るための規制基準の一つだ。銀行が持つ総資産(融資や投資など)に対して、どれだけの自己資本を保有しているかを示す尺度である。この比率は、銀行のリスクを正確に評価するため、より広い範囲の資産を考慮に入れるよう設計されている。

     

    リスクの低い資産だけでなく、(貸借対照表には計上されない)オフバランスシート取引も含まれる。具体的には、スワップ、オプション、金融先物、先物外国為替などが含まれる。このため、伝統的な資本比率では見落とされがちなリスクが把握できるようになっている。SLR導入目的は、銀行の過剰なリスク負担を防ぎ、金融システム全体の安定性を保つことにある。この基準により、大手銀行は健全な財務体制を維持することが求められている。

     

    ダイモン氏は、SLR対策で万全であるが、米国金融界では必ずしもそうなっていないと指摘している。「債券自警団」が登場するような事態になれば、SLRで不備な金融機関は淘汰される、としている。財政赤字問題とからんで、その時期が必ず来るとみている。こうした局面になれば、円相場の急騰条件が揃うであろう。

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    人民元は「未熟通貨」

    中国に二次制裁の恐れ

    習近平が国を滅ぼすか

    米国に「債券自警団」

     

    世界の二大経済大国が、そろって財政赤字に苦しんでいる。公的債務残高の対GDP比は、米国がすでに100%を超えている。中国も、26年には100%超えへ陥る。米中が、財政苦境へ落込んでいる理由は、歳入を上回る歳出を行う「放漫財政」の結果だ。問題は、雪だるまのように増える債務残高による金利負担増である。米国は、2024年に国債費が国防費を上回る事態になった。中国も、いずれそのような事態へ突入する。米中は、財政面で「同病相憐れむ」仲間だ。

     

    米国トランプ政権は、財政赤字の原因が貿易赤字にあると判断している。そこで、相互関税という悪名高き手法で荒療治を始めた。だが、米国際貿易裁判所は5月28日、トランプ大統領の世界的な関税措置を巡り、その多くの部分について違法との判断を下した。トランプ氏にとり大きな打撃である。すぐに控訴した。

     

    米国の財政赤字は、過剰な財政支出の「尻」が、貿易赤字を招いている原因である。財政赤字を減らすことが、米国の公的債務残高を減らす道である。こういう「内省的」方法をとらずに、関税を引上げるという安易な方法を選んだ。それが今、米国際貿易裁判所から「ノー」を突きつけられた。

     

    中国は、習近平氏が国家主席に就任(2012年)した翌年から、公的債務残高比率がウナギ登りになっている。不動産バブルという一時的好景気でも、賄いきれない財政支出を行っていたのだ。多分、公表しない形での国防費増額を行ったのであろう。中国は現在、不動産バブル崩壊という後遺症に直面している。経済活動は、間違いなく縮小過程へ突入した。デフレ経済下にあるので、名目成長率を押下げるのだ。IMFの最新予測(25年4月)によれば、中国の公的債務残高比率は2030年に116%へ達する。

     

    人民元は「未熟通貨」

    米中両国は、財政面から大きな制約条件を課されている。ただ、米国は基軸通貨国である。単純に言えば、ドル紙幣を発行すれば膨大な輸入決済も可能な國である。中国は、米国と同じことができないのだ。中国人民元は、未だに資本自由化も行わない「片肺通貨」である。先進国がすべて自由変動相場制へ移行しているなかで、中国だけは管理変動相場制である。国家が為替市場を管理しなければ、資金流出危機を招くという中途半端な通貨なのだ。胸を張って、米国ドルへ対抗できる実力がない通貨である。

     

    このように、米ドルと人民元の位置づけは、「太陽と惑星」の関係にある。惑星は、太陽の周りを動く存在である。中国財政は、公的債務比率が増える結果、大きな負担になる。ここで、中国政府は批判の矛先を変えさせる戦略に出てきた。中国の国有企業保有財産を計算すれば、中国は「健全財政」と言い出したのだ。先ず、その言い分を聞いてみよう。

     

    中国国務院(内閣)は24年12月、全人代に提出した報告書で、23年末までに公的部門の正味資産は184兆元(約25兆ドル)であり、GDPの136%に達したと明らかにした。中国人民銀(中央銀行)もまた、22年末時点で中国の総額公的資産が、GDPの166%になったと「相槌」を打っている。中国政府と中国人民銀行は、それぞれ保有資産の評価について、GDPの119~136%に達するとしている。

     

    中国は、ここで大きな判断ミスを犯している。国有資産を売却すれば、社会主義国家の基盤を失うことだ。国有企業は、中国社会主義国家を支える柱である。資本主義経済国家では、原則として国有企業が存在しない。中国が、資本主義経済と異なるシステムにも関わらず、それと混同する議論を展開した「強弁」は、自己矛盾そのものだ。中国は、ここまで追い込まれているという窮状をさらけ出した。

     

    中国には、公的債務残高比率を引下げる具体的な手段があるのか。最大のテコは、名目経済成長率を押上げることだ。だが、現実の経済は不動産バブル後遺症に直面している。大手不動産開発企業の過剰債務は、全く整理縮小できない状況にある。これによって、不動産相場に底入れ感が出ず「軟弱地合」が続く。肝心の住宅購入層である20代後半~30代前半は、就職難で結婚どころでない。さらに悪いことに、非婚化ムードが高まっている。新規住宅在庫はすでに5年分を抱えている。このように、デフレ打開策は皆無なのだ。

     

    中国経済が、長期停滞局面入りしていることは議論するまでもない。名目経済成長率は、実質経済成長率を下回る「名実逆転状態」が続くに違いない。不動産バブル崩壊後遺症に加えて、米中冷戦の経済的影響も長く続く情勢になった。

     

    中国に二次制裁の恐れ

    中国は、ロシアのウクライナ侵攻を支援している。これがどれだけ、西側諸国との関係を悪化させたか。西側諸国は、中ロに対する経済安全保障意識を高めている。中国は、自ら好んでこの危機を招いたのだ。米中関係は、すでに「冷戦状態」である。事実上の「デカップリン」(分断)が始まっている。習近平氏は、プーチン・ロシア大統領との関係強化で、自身の立場強化をねらう「目先の利益」を追求し、習・プーチン「枢軸」を形成した。これが、さらに中国経済を危機に追い込んでいる。(つづく)


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    ヘグセス米国防長官が5月31日、中国が台湾を「征服」しようとすれば「壊滅的な結果」を招くと警告した。第2次トランプ米政権の発足後初めて、対アジアの安全保障政策を明らかにした。インド太平洋地域が、「最優先のシアター(戦域)だ」と述べ、中国を抑止するためにアジアに軍事資源を注力する方針を表明した。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月1日付)は、「中国が台湾侵攻なら『壊滅的な結果』 米国防長官が警告」と題する記事を掲載した。

     

    ピート・ヘグセス米国防長官は5月31日、中国が台湾を「征服」しようとすれば「壊滅的な結果」を招くと警告した。アジア同盟国に対する米国のコミットメントへの懸念を和らげる狙いがあったとみられる。さらに、中国からの台湾への脅威は「差し迫っている可能性がある」と強い言葉で表現した。

     

    (1)「ヘグセス氏は、米国の目標は同盟国との抑止を通じて「戦争を防ぐこと」だと述べた。「しかし、抑止に失敗し、最高司令官から要請があれば、国防総省が最も得意とすることを実行する準備がある。それは断固として戦い、勝利することだ」。また、アジアはトランプ政権の優先地域だとした。米国は長年、欧州と中東におけるコミットメントを調整し、アジアに軸足を置くことに苦心してきた。ドナルド・トランプ米大統領は選挙戦で、ウクライナ紛争を終結させると約束していたが、まだ実現には至っていない」

     

    米国の世界戦略は、アジア中心へ移っている。台湾問題は、その中核である。米国にとっては、中国との「戦い」が焦点になる。

     

    (2)「ヘグセス氏はこの日、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議(通称シャングリラ会合)で、アジア・欧米諸国の防衛当局トップらを前に演説した。「明確にしておくが、共産主義中国が武力で台湾を征服しようとすれば、インド太平洋地域と世界に壊滅的な結果をもたらす。それを隠すつもりはない。中国がもたらす脅威は現実のものであり、差し迫っている可能性がある」と同氏は述べたが、具体的にどのような結果になるかは語らなかった。同時に「共産主義中国が(トランプ大統領)の任期中に台湾に侵攻することはない」とも述べた」

     

    トランプ政権は、中国を「共産主義中国」と呼んでいる。専制国家という認識である。民主主義国家と異なる価値観の国家という認識を前面に出している。これが、トランプ政権の対中認識の基本である。専制国家中国が、「何を始めるか分からない」という強い警戒観が根底にある。ただ、トランプ大統領任期中の2028年までは、台湾侵攻を自重するだろうと発言した。これまで米国防省は、「2027年までに台湾侵攻が起る」としてきたが、これを一部分、訂正した形だ。

     

    (3)「ヘグセス氏は、中国が台湾に侵攻した場合の米国の対応については詳しく語らなかった。中国は台湾を自国の一部と主張しており、台湾統一のために武力行使する可能性を排除していない。米シンクタンク「ジャーマン・マーシャル財団」のインド太平洋プログラムのマネジングディレクター、ボニー・グレーザー氏は、「台湾への中国の圧力と南シナ海問題の当事国に関するヘグセス氏の発言は、シャングリラ会合での米国防長官の演説としては最も厳しいものだった」と指摘する。「主なメッセージは、トランプ氏は力による平和を望んでおり、米国はこの地域での関与を強化することで、トランプ氏の任期中に中国が武力行使に踏み切ることはないと考えている」と指摘」

     

    米軍は、台湾侵攻作戦に備えた布陣である。日本とフィリピンが両翼になって、台湾を防衛する。

     

    (4)「シャングリラ会合の中国代表団トップを務めた胡鋼鋒少将は、同会合での「中国に対する根拠のない非難」に反論したが、それが具体的にどの発言を指しているのかは明らかにしなかった。中国外務省はその後、ヘグセス氏に対してより直接的な反論を行い、同氏が「中国を中傷・攻撃し、『中国脅威論』を誇張した」と述べた。中国外務省報道官は声明で、「実際には、米国こそが世界の真の覇権国家であり、アジア太平洋地域の平和と安定を損なう最大の要因だ」とし、米国は「アジアの緊張を高める」ことをやめるべきだとした」

     

    中国外務省は、根拠なき「中国脅威論」として否定した。だが、中国海軍による台湾包囲演習は、いつ「開戦」へ火蓋を切るか分らない危険性を秘めている。演習と見せかけた開戦だ。ロシアによるウクライナ「演習」と同じスタイルの踏襲である。

     

    (5)「ヘグセス氏の厳しい発言にもかかわらず、トランプ政権がアジア諸国全体に厳しい関税を提案し、一部の軍事装備を域外へ移動させていることを考えると、この演説が、不安を抱える同盟国を安心させるのに十分だったかどうかは定かでない。シンガポールのナンヤン工科大学のディラン・ロー助教は「中国を安全保障上の脅威として描くメッセージを巡っては、アジア太平洋地域で賛否両論が沸き上がるだろう」と述べた。「この地域の国々は米国の継続的なプレゼンスを確認したいと考えているが、脅威に関する米国の認識を受け入れる、あるいは同意することに慎重な国もある」と述べた」

     

    米国は、対中防衛で協力を求めるべきアジア諸国へ、間違ったシグナルも送っている。相互関税である。中国の付け入る機会をわざわざつくっているのだ。

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    トランプ米大統領は5月30日、中国の習近平国家主席と会談する見通しだと述べた。トランプ氏はこれより先、中国が米国との関税に関する「合意に違反した」と非難し、米中間の緊張が再び高まっている。米中は5月11~12日にスイス・ジュネーブで貿易協議を行い、相互の関税率を一定期間引き下げることで合意した。違反の詳細について、トランプ氏は明示していない。

     

    『ブルームバーグ』(5月30日付)は、「米中関係『リセット』に暗雲、勢いづくトランプ政権内の対中強硬派」と題する記事を掲載した。

     

    米中貿易戦争の「一時停戦」を受けて、トランプ米大統領が「完全なリセット」を宣言してから2週間後、世界の2大経済大国の間で再び緊張が高まっている。

     

    (1)「トランプ政権は28日、中国人留学生のビザ取り消しの手続きを開始すると発表。半導体設計ソフトウエアに対中輸出を制限する新たな措置の導入に踏み切ったほか、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)によると、一部の航空エンジン部品についても対中輸出を禁止した。これに先立ち、華為技術(ファーウェイ)が開発した先端人工知能(AI)半導体「Ascend(アセンド)」の使用について、「世界のどこでも」米国の輸出管理規則に違反するとの指針も発表。中国政府の強い反発を招いている」

     

    中国人留学生のビザ取り消しは、中国共産党や人民解放軍の所属が詮索されている。米国でのスパイ活動を警戒している。

     

    半導体設計ソフトウエアに対中輸出を制限は、米商務省産業安全保障局(BIS)が5月23日、電子設計自動化(EDA)ソフトを提供する主要企業の少なくとも一部に対し、中国顧客への販売を停止するよう求める書簡を送付したことに現れている。制限措置の具体的な範囲は明らかになっていないが、中国市場での事業展開が実質的に不可能になる可能性がある。

     

    米政権は、中国が国内半導体産業を育成しようとする動きを抑え込むための措置を強化してきた。当初は、最先端の電子部品を製造する装置の供給遮断から始まったが、その後、規制の対象範囲を段階的に拡大している。米政府は、最先端半導体が中国に渡るのを防ぐ措置にも動いている。エヌビディアは、同社の半導体が人工知能(AI)モデル学習で業界標準と位置付けられていることもあり、輸出管理強化で主要な対象となっている。

     

    米国は、一部の航空エンジン部品についても対中輸出を禁止した。これにより、中国の民間航空機製造は重大な影響を被る。製造ストップだ。

     

    (2)「米民間調査機関のコンファレンスボードの中国センター上級顧問、アルフレド・モントゥファルヘル氏は、「ジュネーブでの米中通商交渉は、双方が公式に対話しているという点において前向きだった」と指摘。「しかし、協議は米中間の競争を生む核心的な問題には踏み込んでいない。最も大きな争点は技術を巡る覇権争いだ」と述べた」

     

    ジュネーブでの米中通商交渉は、関税率の引下げだけが焦点であった。最も大きな争点は技術を巡る問題だ。中国ファーウェイは、AIチップセットの「Ascend」シリーズに取り組んでいる。その設計は、長年主流となっている回路線幅7ナノメートル(nm)とほぼ同じアーキテクチャーに基づいている。米政権が、半導体設計ソフトウエアに対中輸出を制限へ動いている理由だ。

     

    (3)「米中交渉団は、関税を90日間にわたり大幅に引き下げることで折り合ったが、依然として貿易不均衡の是正に向けた合意を取りまとめる必要がある。合成麻薬フェンタニルの密輸における中国の関与や、レアアース(希土類)、半導体輸出規制といった問題でも、両国の溝は埋まっていない。トランプ氏は2期目就任後、習近平国家主席との電話会談が近いと重ねて示唆しながら、いまだ直接対話は実現しておらず、包括的な米中合意がなお遠いことを示している」

     

    中国が、レアアース輸出規制をちらつかせている点に、米国は激怒している。トランプ氏は、習氏とのトップ会談でこれら懸案解決を迫っている。

     

    (4)「中国留学生に対する取り締まり強化は、 ルビオ米国務長官によって発表された。ルビオ氏は就任前に2度、中国政府から制裁対象に指定さるなど対中強硬派と目されている。米中が一時的な関税の相互引き下げで合意したことを受けて、トランプ政権内の対中強硬派が影響力を失いつつあるとの見方も出ていたが、今回のルビオ氏の発表はこれを打ち消す格好となった。中国外務省は定例会見で中国人留学生のビザ取り消し措置を「差別的」だと非難。毛寧報道官は「世界における米国の評判をさらに損なうだけだ」と述べた。ただ、今回の反応は比較的抑制的であり、具体的な報復措置への言及もなかったことから、米中関係を再び冷え込ませたくないとの中国当局の意向がうかがえる」

     

    ルビオ米国務長官は、中国留学生に対する取り締まり強化を発表した。スパイ活動をする目的の留学生取り締まり目的だ。

     

    (5)「それでも、中国人留学生への締め付けを強化するという決定は、米中関係に根深く存在する不信感を改めて浮き彫りにする。中国を国家安全保障に対する重大な脅威とみなすことは、超党派で認識が一致している。一方、中国側も対米不信を背景に、米国を含む外国人を対象とするスパイあぶり出しに乗り出している。もっとも、米国内で外国人留学生に対して敵対的な環境を醸成すれば、優秀な人材を中国本土に引き戻す動きにつながりかねない。習主席がハイテク製造業を経済成長の中核に据える中で、中国にとっては高度人材が米国から帰国すれば、イノベーション強化を掲げる国家戦略と一致する」

     

    米国は、中国への警戒を強めているが、中国も同様のスパイ活動防止で「先輩格」である。中国が、真っ向から米国を非難できない弱みを抱えている。

     

     

     

     

     

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    中国国家統計局が5月31日、5月の製造業購買担当者景気指数(PMI)を発表し49.5だった。4月から0.5ポイント上昇したものの好調・不調の境目の50を下回っている。米国が5月から、小口輸入に対する非課税措置(デミニミスルール:800ドル以下無税)を撤廃した影響が強く出てきた。非課税措置で商品を供給する中国の中小零細企業は、越境EC(通販)によって潤ったが、それも不可能になった。この影響が今後、中小零細企業を圧迫することになろう。輸出依存の製造業に、大きな障害となる。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月31日付)は、「中国景況感、晴れ遠く 米国と対立再燃警戒で5月も50割れ」と題する記事を掲載した。

     

    製造業購買担当者景気指数(PMI)は製造業3200社を対象に調べる。新規受注や生産、従業員数など項目ごとに調査する。50を上回れば前月より拡大、下回れば縮小を示す。4月は米中が100%を超える関税を課し合った影響で先行き不安が強まり49.0に落ち込んだ。米中は、5月10〜11日にスイスで開いた閣僚級協議の合意に基づき、14日に関税を115%引き下げた。一部の追加関税は90日間停止し、双方は協議を続ける。

     

    (1)「5月のPMIの内訳をみると生産は0.9ポイント高い50.7だった。完成品在庫を示す指数は0.8ポイント低下して46.5だった。関税が下がったうちに米国への輸出を急ぐ企業が増えている。米向け物流の需要は高まっている。浙江省寧波・舟山港の米西海岸向け輸出コンテナ価格指数は30日時点で9日比2.4倍に上昇した。米東海岸向けも2.1倍に上がった。需要が急増してコンテナ価格が上がり、コンテナ確保に苦慮する企業も出ている」

     

    米中関税は、暫定措置で115%ずつ引き下げられたが、中国には依然として30%の高関税が課されたままだ。それでも、関税引下げで輸出コンテナ需要が急増しており、コンテナ確保が困難になるほどだ。この賑わいがいつまで続くか暗雲が漂い始めている。

     

    トランプ米大統領が5月30日、中国の習近平国家主席と会談する見通しだと述べた。トランプ氏はこれより先、中国が米国との関税に関する「合意に違反した」と非難し、米中間の緊張が再び高まっている。仮に、米国が再び関税率を引上げれば、事態は悪化する。

     

    (2)「輸出企業は、米国などからの大型受注に慎重な姿勢を崩していない。5月のPMIのうち海外からの新規受注を示す指標は47.5で引き続き50を下回った。同指数は3〜6ヶ月先の輸出を占うとされ、輸出の先行きには不透明感が残る。企業は、米中による90日間の協議がまとまらず、関税を再び上げるなど貿易摩擦が再燃するのを警戒する。関税政策により米国を中心に景気が減速するとの見方もある」

     

    海外からの新規受注を示す指標は、47.5で引き続き50を下回った。同指数は3〜6ヶ月先の輸出を占うので、輸出環境が好転しているわけでない。中国経済は、輸出依存型だけに、厳しい状況が続く見通しである。

     

    (3)「企業の景況感の悪化は雇用にも響く。PMIのうち雇用を示す指数は、5月が48.1で50を下回る状況が続く。新規受注が振るわず企業は新たな雇用の拡大に慎重になっていて、景気回復の重荷となっている」

     

    雇用指数も50を下回ったままだ。米国が5月から、小口輸入に対する非課税措置(デミニミスルール)を撤廃した影響が強く残っている。この状況は、今後とも改善しない暗い見通しだ。建設業とサービス業を含む5月の非製造業PMIは、4月の50.4から50.3へわずかに低下した。

     

    西村友作中国対外経済貿易大学国際経済研究院教授は、これからの輸出について次のように見通しを語っている。『日本経済新聞 電子版』(5月31日付)が報じた。

     

    米中協議で、115%の追加関税を引き下げる合意をしたが、大企業と比較すると中小零細企業の方が厳しい状況が続いている。その背景は、米国の小口輸入に対する非課税措置(デミニミスルール)の撤廃だと思われる。このルールを使って米国へ大量輸出をしてきたのがTemuやSHEINである。主に商品を供給してきたのは、中小零細企業だ。中小零細企業の経営状況は悪化し、比較的低賃金のブルーワーカー層で、もし失業者が増えると、社会の不安定化するリスクが高まる恐れはある。

     

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