米国債は、5月の月間ベースの相場が今年初のマイナスとなる。関税を巡る不確実性の再燃や、米国政府による債務拡大への懸念が背景だ。こうした状況を受けて、JPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)は、債券市場の混乱が「いずれ起こる」と警告した。不気味な予告である。この事態が起れば、短期間の終息は困難であろう。「ドルスマイル論」に従えば、円相場急騰局面へ向う条件が揃う。
『ブルームバーグ』(5月30日付)は、「JPモルガンのダイモンCEO、債券市場の混乱は『いずれ起こる』」と題する記事を掲載した。
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、債券市場の混乱は「いずれ起こる」と警告した。米政府と連邦準備制度理事会(FRB)が支出と量的緩和を「過度にやり過ぎだ」結果だとの考えを示した。
(1)「ダイモン氏は30日、レーガン・ナショナル・エコノミック・フォーラムで講演し、「6カ月後に危機となるのか、あるいは6年後なのかは分からない。債務の軌道と、マーケットメーカーが市場を機能させる能力の双方を変えていけることを私は望んでいる」と発言。「残念ながら、われわれが目を覚ますには危機が必要かもしれない」と述べた」
ダイモン氏は、米国金融界を代表する論客だ。米国の放漫財政が、市場の反逆(債券自警団)によって国債相場の急落をもたらすだろうという予告である。米国は、市場機能が発達しているので、米国の財政赤字へ「掣肘」を加えて、赤字削減へ向かわせるであろう、と警告している。
(2)「米国債は、月間ベースのリターン(注:価格変動)が、今年初のマイナスとなりそうだ。関税を巡る不確実性の再燃や政府債務拡大への懸念が背景にある。ダイモン氏はここ数年、世界的な財政赤字の拡大に繰り返し懸念を表明しており、この日はいわゆる債券自警団が戻ってきたのかとの質問に対し、「その通りだ」と答えた。同氏は先月にも、米国債市場で「混乱」が生じ、それがFRBの介入を促すことになると予想していた」
5月の米国債相場は、今年初めての値下がり(利回り上昇)になった。ブルームバーグの米国債指数は5月に1.2%余りのマイナスだ。全ての債券発行年限が圧力を受けている。30年債利回りは3カ月連続で上昇し、2023年以来最長の上昇局面となった。2年債と10年債の利回りも今年初めて月間で上昇した。トランプ米政権の予測困難な政策が、投資家の信頼感を揺るがし、米国債市場への向かい風が強まっている。トランプ氏が大型税制・歳出法案を推進しており、米財政赤字への懸念が再燃した形だ。
ダイモン氏はここ数年、世界的な財政赤字の拡大に繰り返し懸念を表明しており、この日はいわゆる債券自警団が戻ってきたという認識を明らかにした。
(3)「(ダイモン氏は)米銀のいわゆる補完的レバレッジ比率(SLR)やその他規制には、「深刻な欠陥」があると指摘し、それらが是正されれば、銀行はより積極的に仲介機能を果たせるようになるだろうとしていた。「私はこれを規制当局に言いたい」とダイモン氏は30日に発言。
「これは起こるだろう。そしてあなた方はパニックになるだろう。私はパニックにはならない。われわれは大丈夫だ。むしろもっともうかるかもしれない。そうなるとJPモルガンにとって良いことだから、われわれは危機が好きなんだと言う友人も出てくるだろう。実際にはそうではない」と語った」
ダイモン氏は、補完的レバレッジ比率(SLR)などに「深刻な欠陥」があるとしている。SLRとは何か。銀行の安定性を測るための規制基準の一つだ。銀行が持つ総資産(融資や投資など)に対して、どれだけの自己資本を保有しているかを示す尺度である。この比率は、銀行のリスクを正確に評価するため、より広い範囲の資産を考慮に入れるよう設計されている。
リスクの低い資産だけでなく、(貸借対照表には計上されない)オフバランスシート取引も含まれる。具体的には、スワップ、オプション、金融先物、先物外国為替などが含まれる。このため、伝統的な資本比率では見落とされがちなリスクが把握できるようになっている。SLR導入目的は、銀行の過剰なリスク負担を防ぎ、金融システム全体の安定性を保つことにある。この基準により、大手銀行は健全な財務体制を維持することが求められている。
ダイモン氏は、SLR対策で万全であるが、米国金融界では必ずしもそうなっていないと指摘している。「債券自警団」が登場するような事態になれば、SLRで不備な金融機関は淘汰される、としている。財政赤字問題とからんで、その時期が必ず来るとみている。こうした局面になれば、円相場の急騰条件が揃うであろう。




