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トランプ米大統領は5月30日の演説で、日本製鉄をUSスチールのパートナーとして歓迎する発言を繰り返した。国家安全保障を理由に経営への影響力を保持しつつ、巨額投資や雇用維持を成果としてアピールした。完全子会社化の可否について最終的な結論を出すとみられる。

 

『読売新聞』(5月31日付)は、「トランプ氏、日本製鉄『歓迎』の発言繰り返す日鉄幹部『明らかに進展』と演説を評価」と題する記事を掲載した。

 

トランプ米大統領は30日の演説で、日本製鉄をUSスチールのパートナーとして歓迎する発言を繰り返した。国家安全保障を理由に経営への影響力を保持しつつ、巨額投資や雇用維持を成果としてアピールできると考え、完全子会社化の可否について最終的な結論を出すとみられる。

 

(1)「トランプ氏は演説で、USスチールが本社を置くピッツバーグは「再び『鉄の街』として世界中に尊敬されるだろう」と胸を張った。これまで同様に「買収」といった言葉は使わず、「米国第一」を掲げてきた自身のイメージを損なわないように意識したとみられる。「米国の会社であり続ける」「引き続き米国によってコントロールされる」と、聴衆の同社従業員らに訴えかけるように語った」

 

トランプ氏は同じ演説の中で、米国に輸入される鉄鋼とアルミニウム製品への追加関税率を、6月4日から現在の2倍となる50%に引き上げることも表明した。トランプ政権は3月、これらの製品を対象に25%の追加関税を発動したが、トランプ氏は「税率が25%なら、(他国は)何とかその壁を乗り越えるだろうが、50%になると乗り越えられない」と指摘した。米国は鋼材需要の3割を輸入に頼っており、関税引き上げとUSスチールへの投資で自国産のシェア(占有率)を高める考えとみられる。

 

鉄鋼産業へこれだけの手厚い関税をかける上に、日鉄がUSスチール合併で今後、141億ドル(約2兆円)もの新規投資を行う。USスチールにとっては、天から降ったような幸運であろう。

 

(2)「トランプ氏は日鉄に対しても、融和的な姿勢を示した。先に演説を終えた日鉄の森高弘副会長を指し「これは彼が長年温めてきた事業だ。ありがとう、タカヒロ」と、ファーストネームで呼びかける一幕もあった。買収の詳細な枠組みには触れない一方で、USスチールの高炉が10年間フル稼働を維持し、従業員の解雇を行わないなど、具体的な経営方針には何度も言及した。これらの内容は、日鉄が米政府と結ぶ見通しの「国家安全保障協定」に盛り込むとみられる。これまでUSスチールの買収に否定的な姿勢を示してきただけに、USスチールの従業員や地元ペンシルベニア州の有権者への配慮があるようだ」

 

トランプ氏は日鉄の森高弘副会長を指し、「ありがとう、タカヒロ」とこれまでにない融和的姿勢をみせた。USスチールの高炉は、10年間フル稼働を維持し、従業員の解雇を行わないなどがトランプ氏から明らかにされた。

 

(3)「USスチールを完全子会社化する場合、141億ドル(約2兆円)が必要になるが、トランプ氏は高炉の改修などでさらに140億ドルの投資を日鉄が行うと明かした。演説を聞き終えた日鉄の幹部は、「買収後に実施する投資やボーナス支給の話もしており、今回の演説の発言は明らかに進展がみられた」と述べ、トランプ氏の姿勢を前向きに評価した」

 

日鉄は、合併に伴う費用と新規投資で約4兆円もの資金を投じる。だが、米国鉄鋼市場に対しUSスチールを足がかりとして「攻略」できるのは、肥沃な土壌を「一人占め」できるにも等しい幸運である。USスチールにも日鉄にも、「ハピー」な結果となろう。