勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2025年06月

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    米国の金融政策は、政治からの独立が保証されている。そうでなければ、政治の思惑で金融政策が左右されてインフレを呼び込むという危険性が認識されているからだ。トランプ米国大統領は再び、こういう実状を無視して利下げ要求を声高に騒ぎ立てている。要求に従わなければ、次期FRB(連邦準備制度理事会)議長候補者を早急に発表するという「嫌がらせ」を予告しているほど。なんとも、困った振舞をする大統領である。

     

    『ロイター』(6月27日付)は、「トランプ氏のパウエル氏攻撃は裏目か、後任者のリスクに」と題する記事を掲載した。

     

    パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、かつてインフレを「一過性」だと見なして看過し、その後、新型コロナ禍の影響によるスパイラル的な物価上昇に直面した経験がある。現在、FRBに利下げを求める政治圧力が強まっているが、パウエル氏は当時の二の舞を避けたいはずだ。

     

    (1)「トランプ米大統領は25日、FRBの次期議長候補は「3、4人」いると述べてパウエル氏への攻撃を再開した。貿易を巡る不透明感を高め、減税によって財政赤字を3兆ドル膨らませる上に、FRBとけんかするとは、投資家にとって三重のショックだ。これらがもたらす影響は、新型コロナ禍の余波以上に長引くかもしれない」

     

    トランプ氏は、「やんちゃ坊主」と同じ振舞をしている。慎重を期すべき金融政策に対して、泥靴で踏み込むような言動をとっている。これでは、国債安・ドル安・株安の事態を招きかねないのだ。「安全運転中につき、お静かに」という局面である。

     

    (2)「与党共和党議員らも今週トランプ氏の攻撃に加勢し、議会公聴会で証言したパウエル氏に利下げを迫った。パウエル氏は4.5%という現在の政策金利水準が景気抑制的であると認めているが、同時に利下げ圧力に抵抗すべき理由も十分にある。エコノミストは、高関税と財政拡張によってインフレ率が上昇するとの予想でほぼ一致している。共和党は、パウエル氏が政治的な姿勢で金融政策を運営していると非難する。だが消費者のインフレ期待が急上昇している現在、FRBの政治からの独立性は最も重要だ」

     

    共和党議員も、トランプ氏に歩調を合わせて「嬌声」を発し始めた。市場への悪い反応を危惧すべき事態を忘れているのだ。

     

    (3)「ただ、パウエル議長が自らの姿勢を貫くのは次第に難しくなっている。トランプ氏が任命したFRBのボウマン副議長とウォラー理事が利下げを支持するようになったからだ。2人は6月の連邦公開市場委員会(FOMC)で金利据え置きに賛成していた。金利先物は次の利下げが9月に実施されることを織り込んでおり、7月利下げの可能性は低そうだが、7月会合の投票結果はこれまでのような全会一致にならないかもしれない」

     

    7月のFOMCで意見が割れるようになると、パウエル議長もやりにくくなるだろう。ただ、対外的にみれば「意見の一致」が必要。市場への強いインパクトを与えるからだ。

     

    (4)「トランプ氏と共和党議員らは、来年11月の中間選挙前に景気が減速する初期兆候を見て圧力を強め続ける可能性がある。ただパウエル氏の使命は、過去の過ちを避けてFRBの正当性を維持し、来年5月の退任時に後継者へと安定した環境を引き継ぐことだ。皮肉なことに、トランプ氏は事態を静観した方が自らにとって望ましい結果を得られるかもしれない。ワシントンで次期FRB議長候補として名前が上がっているのはウォーシュ元理事、ウォラー理事、ベセント財務長官、国家経済会議(NEC)のハセット委員長で、いずれも程度の差はあれ、容易に承認を得られる無難な候補者だ」

     

    パウエル氏の任期は、来年5月まで。そのころになれば、高関税に伴うインフレ問題の方向性がハッキリする。インフレ抑制策は、「中途半端」が最も悪い結果を残すのだ。ここは、「胸突き八丁」で大事な局面である。トランプ氏には、しばらく「静粛にお願いします」であろう。

     

    (5)「次期議長が就任するころには、うまくいけば関税による最初の打撃は過ぎ去り、議長が自由に采配を振るうことのできる状況になっているかもしれない。だがトランプ氏は、パウエル議長の立場を弱めることで、後任の仕事をかえって難しくしている。FRBが政治に左右されているという印象が生まれてしまうからだ。トランプ氏がパウエル氏への攻撃を再開したことに反応し、ドルは下落した。投資家は既に、大統領による金融政策への影響行使を予見しているということだ。トランプ氏は、FRB議長の首をすげ替えたい一心のようだが、市場はトランプ氏にとって耳の痛いメッセージを発している」

     

     金融市場は、FRBを信頼している。政治が、その信頼感を損ねれば、「債券自警団」として市場へ襲いかかる「獰猛性」を秘めていることを忘れてはならない。FRBは、市場の調教師でもある。「餅は餅屋」である。政治が、口出しすればしっぺ返しを食うに決まっているのだ。

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    7月の参院選前に、米価高騰が選挙にどう響くか、与野党ともに目を凝らしている。下がりすぎると農家票は与党から逃げるし、下がらなければ野党が有利となりかねない事態だ。まさに、与野党は米価を巡って神経戦を展開している。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月27日付)は、「コメ価格、1カ月で5キロ565円下げ 民間調べで小泉農相就任後」と題する記事を掲載した。

     

    農林水産省は27日、16〜22日のコメの店頭販売価格に関する民間調査の結果を公表した。インテージリサーチ(東京都東久留米市)の分析では、5キログラム3835円となり、5月21日の小泉進次郎農相の就任から1カ月間で565円下がった。

     

    (1)「スーパーだけでなく、ドラッグストアやホームセンターなど計約6000店舗から収集したデータに基づく分析となる。小売りに直接渡す随意契約で、安価な政府備蓄米の放出が進み、銘柄米なども含めた店頭価格全体の抑制につながったとみられる。地域別にみると石破茂首相が掲げる5キロ3000円台を9地域中8地域で実現した。東海のみ4000円台だった。最も低い東北(3259円)と最も高い東海(4232円)の差は973円だった。1カ月前の5月19〜25日は全国平均で4400円だった」

     

    全国約6000店舗における米価5キロの平均価格が、5月21日の小泉進次郎農相の就任から1カ月間で565円下がった。これは、今後のさらなる引下げの「引き金」になる。中間問屋が先行きの値下がりを危惧して放出するからだ。次の1ヶ月では3000円台半ばの水準へ落ち着く可能性も排除できなくなった。これは、消費者を喜ばせるが、生産者には「苦いニュース」となると、与党は不利になる。難しい局面だ。

     

    (2)「全国1200店舗ほどのスーパーでの日経POS(販売時点情報管理)情報に基づくナウキャスト(東京・千代田)の分析では、16〜22日の平均販売価格は5キロ4045円だった。5月19〜25日から222円下がったものの4000円台のままだった」

     

    全国1200店舗ほどスーパーでは、平均販売価格は5キロで4045円。222円の値下がりになった。

     

    (3)「小泉氏は、27日の記者会見で「産地からの距離や人件費、販売経費などが地域ごとに異なり、価格高騰以前から地域差があった」と話した。親族や知人に渡す縁故米の習慣なども地域ごとの消費行動の変化に影響を与えうると説明した」

     

    コメの販売価格には地域差がある。最も低い東北(3259円)と、最も高い東海(4232円)の差は973円もある。東北はこめどころであり、東海は消費地という違いによる。東北で「仕入れ」て、東海で売れば1000円近い「差益」が見込める計算だ。今回の米騒動で、「お米経済学」は多くのことを明らかにしている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月27日付)は、「主食用の無関税輸入米、3万トン『完売』 前倒し入札1回目」と題する記事を掲載した。

     

    農林水産省は27日、関税ゼロで輸入するミニマムアクセス(MA)米のうち主食用について、2025年度の第1回入札の結果を公表した。コメ価格の高騰対策の一環として例年よりも3カ月前倒しして実施した。予定数量の3万トンはすべて落札された。

     

    (4)「小泉進次郎農相は同日、全量落札の結果について「安くお米を必要としている人が多い。(価格高騰の対策について)手を緩める状況には全くない」と受け止めを述べた。記者団の取材に答えた。初回分は米国やタイ、台湾など8カ国・地域の計3万トンを対象とした。事業者からは予定数量の2.7倍になる8万1853トンの応札があった。一般米枠の平均売り渡し価格は1キログラムあたり406円(税込み)だった」

     

    5キロの平均売り渡し価格は、なんと2030円である。庶民にとっては「夢のような価格」である。3万トンを対象とし輸入枠に2.7倍の応札があったのは当然のことだ。これが、コメの国際相場である。日本の消費者は現在、この2倍の高いコメを買わされている。庶民の怒りの声が聞こえそうだ。

     

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    イランは、濃縮ウラン400キロを米軍の急襲前に安全地帯へ移動させたと発表した。この問題を巡って評価が分かれている。仮に移動させたとすれば、イランの核開発問題は根本的解決に至らないという見方になる。米国トランプ大統領は、移動説を否定して「完全勝利宣言」をしている。

     

    トランプ米大統領は25日、記者団から米軍によるイラン核施設への空爆で同国の核開発計画がどの程度遅れるかと問われ「数十年だと思う」と主張した。「イランは二度とやらないと思う。地獄を経験し、もう限界だ」と強調した。北大西洋条約機構(NATO)首脳会議出席のため訪れているオランダ・ハーグでNATOのルッテ事務総長と会談した冒頭に語った。

     

    『ロイター』(6月27日付)は、「米国防長官、イランの濃縮ウラン移動情報認識せず トランプ氏『何ら移動なし』」と題する記事を掲載した。

     

    ヘグセス米国防長官は26日、イランが米軍の空爆前に濃縮ウランを移動させた可能性を示唆するいかなる情報も認識していないと言明した。ヘグセス長官は「私が確認した限りでは、(濃縮ウランが)本来あるべき場所になかった、もしくは移動されたといった情報は存在しない」と述べた。

     

    (1)「トランプ大統領も自身のソーシャルメディアへの投稿で、イランの「核施設外に持ち出されたものは何もない。時間がかかり、危険すぎる。非常に重くて移動は困難だ」と述べた。ただ、何ら証拠は示していない。ホワイトハウスのレビット報道官も、米軍が空爆で標的とした3施設いずれからも濃縮ウランが排除された兆候はないと述べた」

     

    トランプ氏は、濃縮ウランの持出しを否定している。状況証拠だけで語ったもので、何ら証拠は示されていない。

     

    (2)「複数の専門家はこれまでに、イランが兵器級に近い高濃縮ウランの備蓄を22日未明の攻撃前にフォルドゥから移動させ、イスラエルや米国、国連核査察官らが知らない場所に隠している可能性があると警告。マクサー・テクノロジーズの衛星画像で19日と20日にフォルドゥで「異常な活動」が見られ、施設の入口付近に長い車列ができていたと指摘する。イラン高官筋も、濃縮度60%のウランの大部分が米国の攻撃前に非公開の場所に移送されたとロイターに明かしている」

     

    人工衛星写真によれば、施設の入口付近に長い車列ができていたことが確認される。このトラックで運び出されたという推測はつくであろう。

     

    (3)「英紙『フィナンシャル・タイムズ』(FT)が26日報じたところによると、欧州連合(EU)首脳らはイランが米国の攻撃前にフォルドゥからウランを移動させ、高濃縮ウラン備蓄はほぼ無傷のままと確信しているもよう。米軍の攻撃時、高濃縮ウラン約400キロの備蓄はフォルドゥに集中していなかったと、欧州首脳らは考えているという。ヘグゼス長官はこうした主張を否定。さらに、米軍の空爆に関する米情報機関の初期的な分析として、イランの核開発計画の中核部分は破壊されず、計画を数カ月遅らせる程度にとどまった可能性が高いという報道について、メディアが米軍の攻撃の成功を軽視していると非難した」

     

    EU首脳は、米国の攻撃前にイランがフォルドゥからウランを移動させたと信じている。米情報機関の初期的な分析では、イランの核開発計画の中核部分が破壊されなかったとしており、情報が錯綜している。

     

    (4)「さらに、ヘグゼス長官は証拠を示さなかったものの、メディアに「反トランプ偏向」が見られると批判。「トランプ氏に成功してほしくないから反対を唱えるのは、あなた方のDNAや血に染み付いている」とし、「われわれの勇敢な男女が成し遂げたことの多くの側面が、報道陣の憎悪によって損なわれている」と述べた」

     

    ヘグゼス氏は、メディアの「反トランプ」が攻撃失敗説を流していると批判の矛先を向けている。情報は、「乱戦模様」になっている。いずれ真実は明らかになろう。

     

     

    テイカカズラ
       

    トランプ米大統領は、B2爆撃機によるイランの核施設への攻撃を命じたことで、軍事力行使に消極的な従来の姿勢を転換したのか。直接攻撃は、トランプ氏がこれまで避けてきただけに、「実力行使」によって外交成果をあげられるか、議論されているのだ。つまり、「トランプ・ドクトリン」による力による紛争解決策か、または「直感外交」か、という視点での議論である。

     

    『ロイター』(6月26日付)は、「イラン攻撃、決断の背後に『トランプ・ドクトリン』」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領はB2爆撃機によるイランの核施設への攻撃を命じたことで、軍事力行使に消極的な従来の姿勢を転換し、米を直接的に外国の戦争に巻き込み、「米国第一主義」の支持者の多くを憂慮させた。

     

    (1)「バンス副大統領によれば、トランプ氏の決断の背景にある考え方には名前がある。それは「トランプ・ドクトリン」だ。バンス氏による24日の説明では、まずは米国の明確な利益を明示して外交で問題を解決しようとし、失敗した場合には「圧倒的な軍事力で解決し、紛争が長期化する前にそこから抜け出す」というものだ」

     

    バンス米副大統領によれば、「トランプ・ドクトリン」の発動としている。米国の国益を守るためには、外交で成果が上がらなければ、圧倒的な軍事力で解決し、紛争が長期化する前にそこから抜け出す、というもの。しかし、最後まで当事者としてかかわらず、中途で「抜け出す」としている。こんなに都合良く、逃げられるだろうか。

     

    (2)「一部の専門家らはこの方針について、しばしば予測不可能で一貫性のない外交政策を説明する手段ではないかとみている。カーネギー国際平和財団の上級研究員で、中東アナリストのアーロン・デビッド・ミラー氏は「『トランプ・ドクトリン』と呼ばれるものに真剣に関わるのは難しい」とし、「トランプ氏にドクトリンがあるとは思えない。トランプ氏が持っているのは直感だけだと思う」と述べた」

     

    トランプ氏は、外交ドクトリンと無縁であり、「直感外交」という辛辣な評価だ。

     

    (3)「トランプ氏が、イスラエルとイランの対立に関与する決断を下したのは、イランの最高指導者ハメネイ師がウラン濃縮能力を放棄しないと発言した後だった。米によるイラン攻撃を経て、トランプ氏はイスラエルとイランの停戦を発表、それはおおむね維持されている。トランプ氏は25日、イランに核兵器を持たせないと改めて宣言した上で、来週にもイランとの協議を再開すると表明した。ホワイトハウスのケリー報道官はコメント要請に、「トランプ大統領とバンス副大統領は、米の外交政策について『力による平和』というビジョンを共有しており、完璧なチームと言える」とした」

     

    「力による平和」維持は、抑止力から一歩出た実力行使である。それが、相手国を牽制し続けられることで平和を維持するものだ。この前提には、圧倒的な軍事力保持が必要になる。イランは、米国の軍事力によって動きが取れないという結論になろう。

     

    (4)「トランプ氏は、イスラエルとイランの紛争に介入するという決断を説明する圧力に直面している。トランプ氏は、米主導のイラクとアフガニスタンでの「愚かな」戦争が米を泥沼に陥れたと主張、外国の問題との関わりを避けるよう努力すると訴えることで、有権者を取り込んだ。ところが、イランとの長期紛争に巻き込まれる見込みとなったことで、戦略家スティーブ・バノン氏や保守系司会者タッカー・カールソン氏ら著名なトランプ支持者を含む共和党の孤立主義派を怒らせている」

     

    MAGA(米国をもう一度偉大な国にする)運動では、他国のことに軍事的干渉をしないとしている。「内向き政策」である。これは、覇権国家米国としては許されない政策である。ドルを基軸通貨として使いながら、孤立主義をとることは大いなる矛盾である。ならば、基軸通貨の便益も返上すべきである。良いところ取りは認められないのだ。

     

    (5)「世論調査もまた、次に何が起こるか分からないという国民の深い懸念を反映している。23日に締め切られたロイター/イプソスの世論調査によると、約79%が「空爆に対抗してイランが米国の民間人を標的にするかもしれない」と心配していると答えた。ブルッキングス研究所の上級外交政策研究員であるメラニー・シソン氏は、バンス氏がどのようにして政権が戦争の引き金を引くことなく軍事行動を行うことができるのかを説明することでトランプ氏の右派を納得させようとしているように見えると指摘する」

     

    トランプ氏は、「戦争にならず火消しする」という極めて難しい役割を課されている。

     

    (6)「一方で、バンス氏の「トランプ・ドクトリン」に真実味を感じる人もいる。ワシントンのシンクタンク、民主主義防衛財団の創設者兼会長であるクリフォード・メイ氏は「バンス氏は、ここ数日間の中東紛争に対するトランプ氏のアプローチを正確に要約している」と述べ、「ほとんどの歴史家は『ドクトリン』という言葉は時期尚早だと考えるかもしれない。しかし、トランプ氏がこの成功した米軍の武力行使を土台にすれば、誇るべきとてつもないドクトリンになるだろう」などと語った」

     

    トランプ氏が、武力行使を土台にイスラエル・イラン紛争を解決できれば、それこそ「とてつもない」外交成果を上げられることになるとしている。

     

    (7)「それでも、ドクトリンが定着するかどうかは、現在の紛争がどのように終結するかにかかっているだろう。外交問題評議会の専門家であるレベッカ・リスナー氏は「これが見事な成功であったとも、戦略的に大失敗であったとも、判断するのはまだ尚早だ」とした上で「外交が今後どのように展開し、イランの核開発計画の制約、可視化、存続という点で、実際にどこに着地するのかを見極める必要がある」と述べた」

     

    トランプ外交の成否は、今後のイスラエル・イランの動きしだいである。イランが、神政体制維持を目的に当面、イスラエルへ攻撃しなければは紛争が収まるだろう。ただ、それが未来永劫に続く保証はない。イラン体制が変わらない限り、永続的な平和は来ないという厳しい現実を認識するほかない。

     

    ただ、イラン財政の基盤が原油にあることから、エネルギー転換によって、いずれイラン経済は没落する。イラン神政の維持は、困難になろう。その時期がいつかだ。それまでは、軍事紛争が続く危険地帯である。早期のエネルギー転換を待つほかない。

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    日本政府は、英国やドイツ、欧州連合(EU)などと科学技術の分野での協業を拡大している。協業は、核融合や量子技術、人工知能(AI)といった先端技術である。

     

    欧州が、これら技術の中でも注目しているのが量子技術とされる。日本が、米IBMと提携して共同開発しているだけに、欧州側は、日本側を通してIBMの技術水準を探る目的もありそうだ。欧州における独自の技術開発の加速を考えると、競争相手としての日本とIBMの能力を間接的に評価する試みは、悪い意味でなく戦略的な一環としてありうることだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月26日付)は、「日欧が先端技術で対中戦略、核融合・量子で協業拡大 経済安保に直結」と題する記事を掲載した。

     

    日本政府は、英国やドイツ、欧州連合(EU)などと科学技術の分野での協業を拡大する。核融合や量子技術、人工知能(AI)といった先端技術は経済安全保障上も重要だ。各国の開発競争が激化する。共通の価値観を有する日欧の同志国が連携し、この分野に注力する中国と競う形だ。

     

    (1)「科学技術政策を所管する城内実経済安全保障相は26日、訪問先のベルリンでドイツのベア研究・技術・宇宙相と会談する。科学技術に関する協力趣意書に署名する。先端技術の共同研究を見据えて、研究情報の流出を防ぐための「政策対話」の創設で合意する。城内氏は25日、ドイツに先立ちオーストリアを訪れ、外交や経済・エネルギー政策を担当する閣僚らとも面会し意見を交わした」

     

    日独は、先端技術の共同研究を見据えて、研究情報の流出を防ぐための「政策対話」の創設で合意する。日独が、手を携えるのは珍しいことだ。これまでのドイツは、中国市場一辺倒できたが、ようやくその危険性に気づいたもの。メルケル首相時代のドイツは、日本を「ライバル視」していたのだ。それが、ロシアのウクライナ侵攻以後、対日姿勢が変わり日本へ接近するスタンスに変わった。そして、全面的な技術提携へと大きく舵を切るところだ。

     

    (2)「日本は、量子分野が強いデンマーク、英国、EUと相次いで協力文書を結んだ。6月に国家戦略を改定した核融合分野は国際連携の強化を掲げ、改定後初の協力相手として英国を選んだ。EUとは4月にサプライチェーン(供給網)強化を話し合う初の経済安保相会談を実施した。城内氏は日本経済新聞の取材に「価値や原則を共有する欧州の同志国と経済安保に関する連携を深めていく」と狙いを説明する。「核融合や量子、宇宙などは経済安保上も重要な先端技術で、これらの分野の協力関係を強化し戦略的な外交を展開したい」と語る」

     

    日本と、欧州の距離が大きく縮まっている。欧州が、ロシアや中国を「危険視」することから、日欧関係が密接化している。さらに、米国のトランプ政権が「MAGA」運動を始めたことから、日欧は互いに「保険を掛け合う」形で、経済安全保障を強化しようとしている。この気運を利用して、TPP(環太平洋経済連携協定)とEUの「連携」という動きを期待する向きも出てきた。いずれは、そういう方向を目指すことになると、米国は孤立感に悩まされるだろう。これが刺戟になれば、米国のTPP復帰も期待できるかも知れない。

     

    (3)「先端技術の開発へ投資を強める中国への危機感が背景にある。英国のバランス科学・研究・イノベーション担当閣外相は中国を念頭に「非民主的な多くの国が技術を急速に進歩させ科学は地政学の問題になってきた」と懸念を示す。EUのフォンデアライエン欧州委員長は、供給網の中国依存を減らす「デリスキング(リスク軽減)」戦略を掲げた。新たに発足したドイツのメルツ政権は日本を価値観が共有できる「緊密なパートナー」とみる。日本はこういった動きを踏まえ同志国との先端技術に関する国際連携を進め、経済安保の強化をはかる。日本は、2026年度から5年間の科技政策の指針を示す「科学技術・イノベーション基本計画」の検討が進む。新計画も研究力を経済安保の基盤と位置づける見通しだ」

     

    中国は、単独で西側諸国と立ち向かわなければならないという「不利な」環境下にある。どんなに力んでも、西側諸国へ対抗するのは不可能である。そういう限界を、いつ悟るのか。

     

     

     

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