東京・日本橋は、日本の道路元標「原点」である。「東京から××キロ」の始まりは、この日本橋である。三井不動産は、同社の本社がある日本橋再開発に合わせて、この地域を半導体育成拠点にするという「大計画」を打ち出した。半導体が、日本の次代をリードする産業という認識をビジネス化するものだ。いよいよ、半導体が日本の骨格を担う産業になることを明確にするビジネス・プランである。
『日本経済新聞 電子版』(6月26日付)は、「三井不動産、東京・日本橋に半導体育成拠点 企業・人材のハブに」と題する記事を掲載した。
三井不動産は、今秋にも半導体に関わる企業や研究機関を集めた産業育成拠点を都内に設ける。数年で200〜300社規模の会員組織もつくり、勉強会などを通じて新規ビジネスの創出や人材育成を促す。場所を貸すだけの不動産業にとどまらず、産官学の連携を主導する「産業デベロッパー」事業を新たな成長の柱に据える。
(1)「足元では、国を挙げた半導体産業の再興策が進む。三井不は新たな拠点を全国に点在する企業や人材をつなぐハブにし、日本の競争力向上の後押しにもつなげる。産業育成拠点は東京・日本橋に設ける。企業などが入居するオフィス区画に加え、共有スペースやイベント会場などをそろえる。半導体に関わる勉強会や交流イベントを定期的に開く。2026年夏には江東区内に研究開発の機能を備えた賃貸オフィスも竣工する。都内には企業や研究機関に加え、業界に関心がある学生ら人材も集まる。こうした点から日本橋への拠点開設を決めた」
現在の日本橋界隈は、江戸時代創業の三越本店が大店舗を構える商業地域である。ここを時代の最先端を行く半導体育成拠点にする構想だ。2040年には、日本橋に架かる高速道路が地下化し、日本橋川の両端は散歩や船遊びができる空間へ変貌する。
こうした地域再生の魅力を生かし、半導体ハブにしようという狙いだ。完成後は、世界的な魅力を備えるゾーンへ生まれ変わる。企業や研究機関に加え、業界に関心がある学生ら人材も集まる「リクルートセンター」にもなるという。半導体業界にとっては、なんともありがたい援軍である。
(2)「同時に、半導体メーカーやサプライヤー、新興企業などで構成する一般社団法人を立ち上げる。ノーベル物理学賞を受賞した名古屋大の天野浩教授が理事長に就き、複数の専門家もアドバイザーに招く。三井不のオフィスに入居する関連企業などのパイプを生かして会員を募り、数年後に200〜300社規模にする計画だ。会員企業などがイベントに参加することで交流を深め、最終的に協業につなげる狙いがある」
三井不動産は、高付加価値産業の半導体の関連企業をすべて、日本橋地域へ集めて自社のテナントになってもらうという遠大な計画だ。日本橋再開発の前に「陣取りする」という戦略であろう。テナントになりたい企業は、早手回しに手を打つ必要がある。日本橋再開発は、都心では最後の「ウォーター・フロンティア」である。
(3)「三井不は、台湾積体電路製造(TSMC)やソニーグループなどの工場が立地する熊本県内に工場やオフィス、研究所などを集積した数十万平方メートル規模の「サイエンスパーク」の構築を検討している。仙台市内には東北大と組み、半導体関連などの企業や研究者を集める同様の拠点を整備することを表明している。今後はこうした地域とも連携し、全国に点在する産官学をまとめた拠点に育てる」
三井不動産は、すでに熊本や仙台で「サイエンスパーク」を発表している。半導体関連などの企業や研究者を集める拠点整備事業である。オフィス・ビルから一歩進めて、生産活動へつながるビジネスの展開である。
(4)「三井不は産官学の連携拠点づくりに力を入れており、既に生命科学、宇宙の分野で取り組みを進めている。2016年には国内外の製薬会社などが集う一般社団法人「ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)」を設立し、会員数は25年内に1000社を超える見通し。23年には宇宙航空研究開発機構(JAXA)と連携して日本橋に宇宙産業の拠点を開き、会員数は300社を超えた」
三井不動産は23年に、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と連携して日本橋に宇宙産業の拠点を開設している。ハイテク産業へ焦点を合わせているのだ。
(5)「半導体の拠点づくりもこうした戦略の一環で、事業領域を広げて業績拡大を目指す。日本の半導体産業は、1980年代後半には世界市場の5割以上を握る存在だったが、日米の貿易摩擦を経て競争力を失った。足元では政府がTSMCの工場誘致や最先端半導体の量産を目指すラピダスの設立を主導し、再興を目指している」
三井不動産は、ラピダスが生産を開始する前に、陣容を整えて半導体開発拠点をつくろうとしている。ラピダスが、日本の半導体ブームを一挙に拡大させるという読みであろう。




