勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2025年06月

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    米国は、同盟国日本へ高関税を課しているが、間違った政策である。この高関税が、米国製造業を強化するどころか弱体化させる。日本からの信頼を失い、自国製造業強化に役立たない政策にいつ気づくのか。日本国内からも、批判が強まっている。日本が発注した武器供給が遅れているのだ。この状況は、現在の高関税政策によってさらに、遅延する恐れを否定できないほど。日米供給網が、必要な時代になっている。

     

    『ブルームバーグ』(6月25日付)は、「自民政調会長、防衛力強化は金額だけでない-米はGDP比5%に要求」と題する記事を掲載した。

     

    自民党の小野寺五典政調会長は米国による防衛費の対国内総生産(GDP)比5%への引き上げ要求に対し、現時点では慎重な姿勢だ。日本は予算を増やしているが、米国からの装備品納入の遅れが続いており、まずは生産体制の充実が先決と指摘する。

     

    (1)「ブルームバーグとの24日のインタビューで語った。小野寺氏は、日本の防衛に必要な装備品が米国の造船能力の低下や製鉄技術の劣化が原因で、発注しても納品が間に合っていない例も多いと指摘。「結局、お金をいくら積んでも物がなければ、買えなければ戦えない」と述べ、供給能力の向上が不可欠と強調した。その上で、日本の技術も生かし、造船や製鉄、ミサイルなどの生産で協力を模索すべきだとした」

     

    米国は、造船能力の低下や製鉄技術の劣化が原因で、日本の防衛に必要な装備品納品が間に合わない状況だ。この状態で、高関税を掛けるという矛盾に陥っている。

     

    (2)「トランプ米政権は、同盟国に対して防衛費のGDP比を5%相当に引き上げるよう要求している。石破茂首相は23日の記者会見で「GDP比でいくらありきということではない」と述べるなど、必要な装備を自国の判断で積み上げる方針を示してきた。小野寺氏は「金額ありき」の議論を否定した上で、米国の製造業の衰退による装備品調達の滞りを問題視した形だ。安倍晋三政権で防衛相を務めた小野寺氏は、米国の姿勢について自身が防衛費を見直し、同盟国にも要請をしていくということであると指摘。さらなる防衛力の強化について「日本としてもしっかり議論していく必要がある」と述べ、将来的な検討は否定しなかった」

     

    米国は、各国へ防衛費の増強を要求している。武器供給では、米国へ依存するほかないが、米製造業の衰退によって装備品供給に滞りが起っている。こういう矛盾を抱える米国は、日本虐めをしないで協力を求める立場である。

     

    (3)「北大西洋条約機構(NATO)諸国は、米政権の要求に呼応する形で、GDPの5%相当を国防費として拠出する目標で足並みをそろえつつある。内訳は中核的な防衛に3.5%、残る1.5%はインフラやサイバー防衛などの関連分野に充てられる。ヘグセス国防長官は5月末、日本を含めたアジアの同盟国に対しても、対GDP比5%に向け引き上げるよう、シンガポールでの演説で要求した」

     

    NATOは、防衛費を対GDP比5%達成で足並みを揃える。日本もその方向であるが、日本の意思によって金額は決めるべき性格の問題である。これが、日本の基本的立場である。

     

    (4)「日本は、22年12月に閣議決定した「国家安全保障戦略」で27年度には海上保安庁などの予算も合わせた予算水準が当時のGDPの「2%に達するよう、所要の措置を講ずる」としている。23年度からの5年間で43兆円程度の「防衛力整備計画」も決めた。小野寺氏は、防衛費目標に関しては、同計画の見直しが行われる場合に必要があれば議論を進めるとした」

     

    日本にとって「5%」は、生やさしい目標でない。在日米軍基地の金額評価も計算に入れるべきであろう。

     

    (5)「2022年に防衛費増額を決定して以来、日本は「有償援助(FMS)」を通じた米国からの装備品購入を増加させている一方、製品が自衛隊に届かない問題が発生している。23年度時点で、約113億円相当が未納入だった。24年度に予定していたF-35B戦闘機6機の配備も、納入の遅れで25年度にずれ込んだ

     

    日本への装備品供給で、米国は23年度時点において約113億円相当が未納入である。24年度引渡し予定のF-35B戦闘機6機も25年度へずれ込んでいる。

     

    (6)「小野寺氏は、実際に米国のミサイル生産現場を視察した際、「このペースであれば、同盟国としても装備の充実に時間がかかる」という感想を抱いたという。既に民間航空機の生産では日本企業が大きな役割を担い、さまざまなミサイルのライセンス生産も行っており、「日本で作った方がより質の良いものを早いスピードで生産できる」と指摘。供給不足を補う面でも日本の生産力を活用する意義を強調した」

     

    日本で武器製造を行えば、米国よりもはるかに高い生産性を実現するという。日米が、共同生産する時期になっている。

     

    (7)「米国の生産能力に課題のある分野として、製鉄、造船、ミサイル生産を挙げた。製鉄に関しては「日本製鉄が、USスチールを後押ししてアメリカのもの作りを復活させなければいけない」との見解を示した。造船については日米双方が具体的に必要な船の数や種類、維持管理の計画を明確に示すことで、民間企業も設備投資や人材の投入ができると述べた」

     

    米国は、製鉄、造船、ミサイルの生産でハンディキャップを抱えている。日本が協力すれば、武器供給はスムースに進むはずだ。

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    イスラエル・イラン両国の12日間に及ぶ交戦は、トランプ氏の投稿(23日)によれば、「完全かつ全面的停戦」の合意成立が実現する。この合意が維持されれば、中東地域全体への拡大が懸念されていた紛争が終結する。同氏にとっては、政権2期目における最も劇的な外交政策の成功となる。トランプ氏は、「この停戦は無期限のもので、永遠に続くだろう」と指摘。戦争は完全に終結したと考えており、イスラエルとイランが「再び互いに攻撃し合うことは決してない」との見方を示した。

     

    『ブルームバーグ』(6月24日付)は、「イスラエル、イランとの停戦に合意-トランプ氏が発効を発表」と題する記事を掲載した。

     

    イランのウラン備蓄の現状や、停戦がイランの核開発計画の協議につながるのかどうかなど、引き続き多くの疑問が残っている。イランは核兵器取得を目指していることを否定する一方、ウラン濃縮の権利を放棄することを拒否。これは米国が強く求めてきた条件でもある。

     

    (1)「イランが、イスラエルと米国による攻撃で被害を受けた核施設の修復を試みた場合、停戦が維持される保証はない。イスラエルは、イランに核兵器を取得させないことを戦争の目的と公言しており、トランプ氏も米国の関与を正当化する理由として同様のリスクを挙げている。事情に詳しい外交官1人は、トランプ氏がカタールの首長と会談し、米国がイスラエルにイランとの停戦を受け入れさせたことを伝え、イランにも同様に応じるよう説得するため、協力を要請したことを明らかにした。その後、イランもこれに同意したと、非公開の会話であることを理由に外交官は匿名で語った」

     

    カタールが、事実上の停戦へのお膳立てを手伝った。

     

    (2)「バンス副大統領は、トランプ氏による停戦合意発表後、FOXニュースに対し、米国は週末に行ったイラン核施設爆撃で目標を達成したと発言。さらに、イランが保有していた高濃縮ウランの備蓄は今回の攻撃で「埋没した」と話した。国際原子力機関(IAEA)は、備蓄の所在は不明だとしている」

     

    高濃縮ウランの備蓄は、イランが攻撃を受ける前に持ち出したことが分っている。IAEAは、備蓄の所在が不明としている。要するに、高濃縮ウランの備蓄は今回の攻撃で「埋没」せず、イラン側の手に残されている。今後は、この扱いが最大の問題になろう。

     

    (3)「米情報機関で中東地域担当の副責任者を務めたジョナサン・パニコフ氏は、カタールにある米空軍基地へのイランのミサイル発射に関し、「演出された、意図的な」行動のように見えると指摘。その上で「イランは実際はそうでなくとも、国民に対して米国に大打撃を与えたと主張できる。そして、トランプ氏には報復しないことを選ぶ余地が生まれた」と述べた。トランプ氏は、週末にバンカーバスター爆撃による空爆を命じた後には、イランの「体制転換」に言及し、イランが報復に出れば「はるかに大きな」武力で応じると警告していた」

     

    イランが、カタールにある米空軍基地へミサイルを発射したことは、イランが米国へ対抗するのでなく、国民向けの「ジェスチャー」としている。これによって、トランプ氏へ報復しない道を選ぶ可能性を示したという。外面的には米国へ対抗するが、実際は受入れるシグナルというのだ。イランは、米国の「強さ」を身に滲みて理解したとしている。トランプ氏が、イランの「体制転換」に言及しているので震え上がったというのだ。一方、イランが今後、IAEAへ強くあたるという見方も出ている。

     

    『ブルームバーグ』(6月24日付)は、「米国のイラン空爆、原子炉への攻撃を意図的に回避-衛星写真が示唆」と題する記事を掲載した。

     

    米空軍がイランの核開発計画に破壊的な攻撃を加えたにもかかわらず、重要な研究施設の原子炉を攻撃しないよう注意を払っていたことが衛星画像で示唆された。米国はイスファハンへの攻撃に加え、ナタンズおよびフォルドゥの地下ウラン濃縮施設の破壊も試みたが、IAEAによると、米国とイスラエルの攻撃による環境への影響は局所的なものにとどまっているという。

     

    (4)「国際原子力機関(IAEA)が発表した最新の被害報告書には、イスファハン核技術・研究センターで稼働中の3基の研究用原子炉が含まれていない。これらのうちⅠ機は、1991年に中国が製造した「小型中性子源原子炉(MNSR)」で、900グラムの核兵器級ウランを燃料として使用している。衛星画像の公開が進む中、ウィーンの高官4人によると、イスファハンの原子炉施設は意図的に攻撃を避けられたように見えるという。これらの関係者は機密情報を扱う立場にあるため、匿名を条件に語った」

     

    イスファハン核技術・研究センターで稼働中の3基の研究用原子炉は被害を受けていない。米軍の配慮の結果だ。稼働中の原子炉破壊という最悪事態を回避した。

     

    (5)「週明け23日には、IAEA理事会がウィーンで緊急会合を開き、イランの核計画に対する攻撃について協議した。たとえ、イスファハンのように出力の低い原子炉であっても、稼働中の原子炉を攻撃することは深刻な前例を作る恐れがあると、関係者は指摘している。またIAEAの査察官らは、イランに対し、高濃縮ウランの現在の保管場所について報告するよう要求。これに対し、イラン側は、今回の攻撃が核拡散防止を目指す国際的な外交努力に重大な損害を与えたと警告した」

     

    IAEAは、イランに対し高濃縮ウランの保管場所について報告するよう要求している。

     

    (6)「IAEAのイラン代表を務めるレザ・ナジャフィ氏は、米国の攻撃により「国際的な不拡散体制に根本的かつ回復不能な打撃を与え、現在の核不拡散防止条約(NPT)枠組みが無効であることを決定的に示した」と述べた」

     

    イランは、高濃縮ウランの保管場所をIAEAへ報告しない恐れが出てきた。この問題をめぐって「一悶着」起るだろう。最悪事態になる恐れも強い。

     

     

     

     

     

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    中国の自動車産業は何年も前から、地方政府を後ろ盾とする不透明な中古車市場を通じて販売台数を水増ししてきた。新車を登録後、すぐに「中古車」に分類して海外に輸出する手法だ。これによって、1台の自動車が国内と輸出で二重計算されるという「水増し統計」に化けている。信頼ゼロの行為である。

     

    『ロイター』(6月24日付)は、「中国、走行距離ゼロの『中古車』輸出で販売水増し 地方政府が支援」と題する記事を掲載した。

     

    走行距離ゼロの「ゼロマイル」車は、ロシア、中央アジア、中東などに中古車として輸出される。これにより中国メーカーは成長を示すとともに、国内で売却が困難な自動車を売りさばくことができる。ロイターによる政府文書の分析と、自動車ディーラーおよび自動車商社への取材で明らかになった。

     

    (1)「この慣行が全国的な注目を集めるようになったのは、中国自動車大手、長城汽車のトップが5月に批判の声を上げてからだ。中国共産党機関紙の人民日報は6月10日、国内でのゼロマイル中古車の販売を非難。偽の中古車が自動車の価格下落を招いているとして、秩序回復のための「厳しい規制措置」を求めた」

     

    正論を吐き続ける『人民日報』には、青天霹靂の事態である。中国の信頼は、この程度のものなのだ。その原因は始皇帝以来、商工業を弾圧した結果、商業モラルが育たなかった報いである。改めて、歴史の恐ろしさが身にしみたであろう。

     

    (2)「ロイターが、国営メディアの報道と政府文書を分析した結果、一部地方政府が偽の中古車の輸出、販売を積極的に奨励している実態が明らかになった。地方政府は、中央政府が設定した高い経済成長目標を達成するにはこの手法が不可欠と見なしている。ロイターは、広東省や四川省など主要な輸出拠点を含む20の地方政府が公開文書に、ゼロマイル中古車の輸出支援を明記していることを確認した。支援方法には、ゼロマイル中古車を対象とする輸出用ライセンスの追加発行、税還付申請の優先処理、輸出インフラへの投資、輸出促進イベントへの資金提供などが含まれる」

     

    中国の計画経済の矛盾が、こういう「嘘の二重統計」を生む背景である。20の地方政府が、公開文書に「ゼロマイル中古車」(新古車)輸出支援を明記していることを確認されている。これでは、逃げも隠れもできない事態だ。

     

    (3)「ゼロマイル車輸出の仕組みはこうだ。組み立てラインから新車が生産されると、輸出業者は自動車メーカーから直接、またはディーラー経由で車を買い取り、中国国内のナンバープレートを登録した直後に輸出用の中古車に分類する。自動車メーカーは、この車を販売済みとして扱い、売り上げを計上する。中国の中央計画経済でない限り、こうした地方政府の支援は意味を成さないだろう。しかし、中国の地方官僚は、販売や雇用の急拡大を示せれば昇進や新たな資金確保につながり得る一方、中央政府が課す経済目標を達成できなければ降格になる恐れがある」

     

    新古車輸出のカラクリはこうだ。1)新車で国内販売統計に載る。同時に、2)中古車輸出で輸出統計に載る。1台の自動車が、国内と輸出で二重計算されるのだ。

     

    (4)「ゼロマイル中古車の輸出企業は、一台の車について買い取りと販売の両方を行うため、取引額は2倍になる。従って自動車業界幹部2人によると、地方政府は総生産(GDP)統計を人為的に膨らませるために、こうした企業を誘致している」

     

    地方政府は、GDP統計を人為的に膨らませるために、こうした「ゼロマイル中古車」(新古車)を扱う企業を誘致しているほど。中国の末端では、こういう大掛かりな不正が堂々と行われている。

     

    (5)「深センの計画委員会は2024年2月、年間40万台の自動車輸出目標を達成するため、ゼロマイル中古車の輸出を拡大すると約束した。広州は今年初め、交通渋滞と大気汚染を抑えるために通常は制限している車両登録について、追加枠を付与する仕組みを設けてゼロマイル・ガソリン車の輸出を支援すると発表した」

     

    深センや広州といった大きな地方政府が、ゼロマイル・ガソリン車の輸出を支援すると発表すほどだ。経済実態の悪化を示している。

     

    (6)「ロイターは、12の地方政府が成長戦略の一環として、ゼロマイル中古車の輸出を推進していることを確認した。ゼロマイル中古車の輸出慣行は、中国が中古車の輸出を許可した2019年以降に始まった。中国自動車流通協会(CADA)のコンサルタント、ワン・メン氏によると、現在ゼロマイル中古車の輸出に関わっている業者は数千社に上る。また2024年に中国から輸出された中古の乗用車および商用車43万6000台のうち、推計90%がゼロマイル車だという」

     

    2024年に、中国から輸出された中古の乗用車および商用車43万6000台のうち、推計90%がゼロマイル車だ。つまり、39万台が24年、新車の国内販売統計に含まれている計算だ。「嘘の上塗り」である。

     

    (7)「中国乗用車協会によると、中国は23年に日本を抜いて世界最大の新車輸出国となり、24年の輸出台数は641万台だった。前記ワン氏の推計では、その約6%は実際にはゼロマイル中古車だった。「中古」のラベルで販売される中国製新車の急増は、中国が自動車に補助金を出して海外でダンピング(不当廉売)を行っているとの懸念をさらにあおっている」

     

    中国乗用車協会は、24年の輸出台数641万台だった。ワン氏の推計では、その約6%は実際にはゼロマイル中古車だった。海外でダンピングされている自動車は、「新中古車」を先兵にしている。

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    中国には、日本のやることすべてを真似したがる習性がある。日本と米国が創業したADB(アジア投資銀行)へ対抗して、中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)を創業した。AIIBは、中国が経営の拒否権を握るという「ワンマン体制」であることを嫌気され、肝心の人材が集まらないのだ。金融業は、「人が資産」である。その人が集まらないのでは、融資もままならないという不名誉な状態だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月24日付)は、「中国主導のアジア投資銀、融資額想定の6割 次期総裁に鄒加怡氏」と題する記事を掲載した

     

    中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の年次総会が24日、北京で始まった。開業9年半で投融資額は想定の6割にとどまる。他の国際開発金融機関との協調融資だけでなく、単独案件を増やすのが課題となっている。

     

    (1)「中国財政省は24日の年次総会で、中国が総裁候補として擁立していた鄒加怡・元財政次官が次期総裁に選出されたと発表した。任期は5年。新総裁は2026年1月に就任し、現総裁の金立群氏は退任する。AIIBの加盟国・地域は創設時の57からおよそ10年で倍近くの110に増えた。日本と米国が主導するアジア開発銀行(ADB)の69を上回るものの、投融資額の規模は伸び悩んでいる」

     

    中国は、見栄を張ってADBよりも多くの出資国を募ったが、貸出には慎重である。出資国を増やした意味がないのだ。中国が、貸倒れ損を被らないように融資の選別をしているからだ。

     

    (2)「発足当初に投融資額を「年100〜150億ドル」と想定した。25年6月時点で950億ドル程度となる計画だが、実際は600億ドル(約9兆円、承認ベース)と想定の6割にとどまる。23年単年は116億ドルだったが、年間200億ドル規模のADBと比べても差がある。AIIBは23日、年間の融資額に関して30年に現在の倍にあたる170億ドルを目標とすると発表した。より多くの民間資本を取り入れるなどして達成をめざす」

     

    投融資額が増えないのは、貸出にあたる人材が不足しているからだ。AIIBは、ADBの融資案件へ相乗りするケースも多い。ADBが、完璧な信用調査をしているので、AIIBは安心して貸出できるという「受け身」である。金融機関本来の機能を見失っている振舞だ。

     

    (3)「AIIBは、設立当初から新型コロナウイルスの感染拡大前まで、世界銀行やADBなど他の国際金融機関との協調融資で実績を伸ばしてきた。案件数でみると19年は半数程度が他の機関との協調によるものだった。コロナ禍になるとAIIBもコロナ関連融資の専用枠を設けた。22年には投融資全体のうち中国向けが1割を占めるなど、最大の出資国である中国向けへの投融資も目立つようになった」

     

    AIIBは、22年には投融資全体のうち中国向けが1割を占めている。何のことはない。よそから借りるより金利が安いという「身勝手さ」である。

     

    (4)「さらなる単独案件の獲得に不可欠なのが、海外拠点の拡大だ。米ブルームバーグ通信によるとAIIBは香港とシンガポールに新たな拠点の設置を検討している。いずれも国際金融都市として知られる。現場に近い拠点があれば案件の開拓や融資後のモニタリングがしやすくなる。23年に事務所を設置したアラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビに続く海外拠点となる可能性がある。伊藤忠総研の玉井芳野主任研究員は「人材確保の強化や民間資本の呼び込みなどを実現しようとしている」と分析する」

     

    カナダ出資のAIIB広報部長が、「AIIBは、中国の独裁」と批判して辞めるなど内部事情を暴露している。こうなると、ますます有為な人材は集まらなくなろう。

     

    (5)「投融資の拡大には、長く課題となっている人員不足の解消も欠かせない。AIIBの職員数は23年時点で530人ほどでADBの7分の1にとどまる。専門人材の不足は案件の発掘や審査、投融資実行の遅れにつながる。AIIBは16年1月に開業した。中国が最大の3割を出資し、重要な案件で拒否権を握る。欧米や日本では中国の広域経済圏構想「一帯一路」を資金面で支える機関とみられてきた。設立当初から総裁を務めてきた金立群氏の指導の下で運営の透明性確保や審査体制の強化などに努めてきた。米S&Pから最上位の「トリプルA」を取得するなど運営は手堅い」

     

    貸出に慎重な金融機関であれば、格付けは最上位の「トリプルA」で当然だ。リスクを取るような貸出をしないのだろう。AIIB設立の目的は何であったのか。単なるお飾り金融機関では意味がないのだ。 

     

     

    テイカカズラ
       

    トランプ米大統領は24日、イスラエルとイランとの間の「停戦が発効した」と自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。違反しないよう警告した。イランが、報復攻撃でホルムズ海峡封鎖などの行動に出るのではと懸念されていたが杞憂に終った。イランが、頼みの杖としていたロシアのプーチン大統領は、「冷たい対応」をしたことで万策尽きたのであろう。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月24日付)は、「トランプ氏『12日間の戦争の公式な終結』へ」と題する記事を掲載した

     

    トランプ米大統領は23日、イランとイスラエルが停戦に合意したと述べた。双方は現在行っている最終的な軍事作戦の終了後に停戦期間入りする。イランは合意の数時間前には、中東地域で最大の米軍基地に複数のミサイルを発射していた。

     

    (1)「トランプ氏はソーシャルメディアへの投稿で、イスラエルとイランが「完全かつ全面的な停戦」に合意したと述べた。停戦は24日を通して段階的に実施される。イランとイスラエル両政府は23日夜の時点で、停戦に関するトランプ氏の声明にコメントしていない。また事情に詳しい関係者らによれば、今回の合意はカタール政府による仲介もあった」

     

    イスラエルとイランでは、停戦が24日を通して段階的に実施される見通しとなった。米国が両国に働きかけた結果だ。イランを急襲した米国が、行司役に変わったもの。

     

    (2)「イランのアッバス・アラグチ外相はXへの投稿で、イスラエルが現地時間24日午前4時(日本時間午前9時30分)までに爆撃を停止すれば、イランも攻撃を停止すると述べた。同氏はその後、この期限ぎりぎりまでイラン軍は戦い抜いたと語った。戦闘が停止したかどうかは今のところ明らかでない。アラグチ氏はこれに先立ち、停戦はまだ合意に達していないと述べていた」

     

    イランは国民の手前、最後まで戦い停戦に応じる姿勢をみせたいのだろう。

     

    (3)「トランプ氏の発表は、イランがカタールの米軍基地にミサイル攻撃した数時間後に行われた。イランによる攻撃は事前に通告され、死傷者は出ていない。トランプ氏も23日には、イランがカタールの米軍基地を攻撃する計画について事前通告を受けていたと述べた。トランプ氏は、イラン側の停戦は米東部時間23日深夜ごろから始まると説明。またイスラエル側についてはその12時間後から停戦が開始されるとした。これらが実現すれば、「12日間の戦争の公式な終結」になるとも述べている」

     

    イランは、米国への抗議の印として事前通告のうえで攻撃するという、なんとも不思議な戦い方だ。メンツ維持である。

     

    (4)「一方で双方の戦闘は一晩中続き、イランの国営メディアは首都テヘランで爆発音とともに防空システムが作動したと報道。イスラエル軍もイランから発射されたドローンを迎撃したと発表している。カタールにあるアルウデイド米空軍基地に向けて発射された14発のミサイルのうち、13発は米軍がカタールの支援を受けて撃墜し、残りの1発は軌道を外れた。攻撃による死傷者はなく、被害もわずかだったとトランプ氏は明らかにしている」

     

    イランは、カタールにある米軍基地を狙ってミサイル攻撃したものの、米軍がカタールの支援を受けてほとんど撃墜した。

     

    (5)「同氏はまた、イラン政府が週末の核施設への攻撃に対して慎重な対応を取ったことで、紛争を沈静化する機会が生まれたとも説明。イラン側は基地への攻撃を予告し、米国からのさらなる報復を避ける形で対応したとみられる。トランプ氏は週末、イラン政府に報復を控えるよう呼びかけ、イスラエルが10日前に開始した戦争の終結に向けて交渉するよう促していた。同氏は、「事前通告をしてくれたイランに感謝したい。それにより死傷者を出さずに済んだ」とトゥルース・ソーシャルに投稿。「イランは今後、地域の平和と調和に向かうことができるかもしれない」とした」

     

    イランは、完全に戦意喪失である。これ以上の戦いが、イラン政体の転覆につながるというリスクを計算したのであろう。

     

    (6)「アラブ諸国の当局者らによると、イランは仲介者らに対し、予告された対応は出口戦略とみなすべきで、真剣な交渉に戻る用意があると伝えていた。米国も同じ経路を通じて、今のところ報復する意思はないと示唆したという。

     

    イランは、周辺国への仲介国に対して米国やイスラエルへの反撃が、「出口戦略」と説明している。内部の「ガス抜き」だ。イランは、反撃能力喪失の状態である。

     

    (7)「イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は、米国がイランの核施設を爆撃し、イランがカタールの米軍基地にミサイルを発射して以降で初めてとなる公の発言で、攻撃を受けた場合は対応すると言及。「われわれは誰も傷つけていないし、誰からの危害も受け入れず、誰にも屈服しない。これがイランの論理だ」とXに投稿した」

     

    ハメネイ師が、苦しい弁明をしている。かつての荒々しい「反撃意欲」は、完全に消え失せている。自身の命が、狙われていることへの恐怖感によって停戦を受入れたのであろう。

     

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