勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2025年08月

    a0960_008532_m
       

    減益でも値下げ競争する。この不思議な現象が、中国自動車業界で起こっている。この裏には、地方政府による補助金が経営の支柱になっているからだ。減益や赤字でも、雇用を維持してくれれば、それで十分という切羽詰まった事情が存在する。中国式社会主義とは、こういう得体の知れない側面を持っている。

     

    『日本経済新聞』(8月31日付)は、「中国車 利益急ブレーキ 16月 BYD以外、減益か赤字 EV価格競争激しく」と題する記事を掲載した。

     

    中国の自動車大手の業績が悪化している。8月30日までに大手6社の2025年16月期決算が出そろい、5社が最終減益か赤字になった。唯一増益だった比亜迪(BYD)も増益率は前年同期を下回った。激しい価格競争で各社の採算が低下し、サプライチェーン(供給網)にも影響が広がっている。

     

    (1)「BYDは、29日に公表した決算資料で「競争は激化の一途をたどっている」と、中国市場の厳しさに言及した。25年1~6月期は純利益が前年同期比14%増の155億元(約3200億円)で、4期連続で増益だった。ただ増益率は前年同期(24%)と比べ縮小。4~6月期に限ると純利益は前年同期比3割減った。主力の自動車事業の16月期の税引き前利益は前年同期比で微減だった。同利益を遡れる21年16月期以降で減益となるのは初めて。販売台数は214万台と3割増えたものの、車両単価の平均は14万2000元と0.%減り、利益率が下がった」

     

    自動車事業の16月期の税引き前利益は、前年同期比で微減だった。同利益が、計数的に遡れる21年16月期以降で、減益となるのは初めて。販売台数は3割増えて、車両単価は0.5%減である。値引きによる数量増だ。「骨折り損のくたびれもうけ」の典型例である。

     

    (2)「BYD以外の業績はさらに厳しい。民営大手の吉利汽車の純利益は前年同期比14%減の92億元で、3年ぶりの減益となった。車両単価の平均額が9万5000元と1割減ったことが響いた。国有大手の広州汽車集団は10年に香港市場に上場して以来、初めて16月期の最終損益が赤字に転落した」

     

    BYD以外の企業は、軒並み減益である。広州汽車は赤字に転落した。価格引下げが招いた事態である。

     

    (3)「中国の自動車市場は、ここ数年で電気自動車(EV)へのシフトが急速に進むなか、積極的に対応したBYDや吉利など民営大手の業績が伸び、出遅れた上海汽車集団や広州汽車などの国有大手が不振に苦しむという構図だった。足元では、EVの販売を伸ばしても価格競争で利益の確保が難しくなり、国有か民営か問わず苦戦するようになっている。業界団体の中国汽車工業協会は、「無秩序な価格競争が業界の収益水準低下の要因となる」と警鐘を鳴らす。供給増が続くなか、価格競争が収まる気配はない」

     

    中国自動車業界は、EVで販売が伸びても、過剰な価格競争によって利益を確保できにくいという最悪事態へ落込んでいる。

     

    (4)「中国の自動車製造業の利益総額は、24年に4622億元(9兆2440億円)と23年比8%減った。今後はさらに減る可能性がある。しわ寄せは供給網に行く。特に打撃を受けるのが下請けの部品メーカーだ。自動車向けポンプ部品を手掛けるある中小企業の従業員は、「売れ残った部品は返品され、受け入れないと今後の受注が取れなくなる」と嘆く。自動車メーカーが、取引先から商品を仕入れてから代金を払うまでの期間の長期化も問題になっている。支払いが遅くなるほど、中小の部品メーカーなどは運転資金が回らなくなる」

     

    中国の自動車業界は、「戦国時代」である。群雄割拠しているが、この影で中小企業が泣かされている。天下統一はできず、各社が傷つき倒れる。何とも矛盾した「切ない世界」である。真の「競争概念」を理解しない哀れな姿だ。中国の縮図でもある。

     

    (5)「中国当局は中小企業を支援すべく大企業に是正を求めている。6月に施行した条例改正で、中小企業への支払いを納品から60日以内とすることを定めた。BYDなど自動車大手はこれに従い、部品メーカーなどへの支払期限を60日以内にすると表明した。BYDの6月末の仕入れ債務は2366億元と3月末に比べ6%減り、支払期限の短縮の影響が出ているとみられる。仕入れ債務が減れば営業キャッシュフローの減少につながる。BYDの25年16月期のフリーキャッシュフロー(純現金収支)は426億元の赤字で、前年同期に比べ赤字額が増えた」

     

    部品メーカーなどへの支払期限は、一律60日以内にするという。日本の商慣習では90日である。中国は、こういう実現もできないことを決めて、当局の責任は果したとしている。そうではなく、漸減方式でやらねば実効は上がらないのだ。

    a0960_008527_m
       

    韓国の李大統領は、日米を訪問していかなる外交的収穫があったか。国際情勢が緊迫化してきた現在、これまでの米中「二股外交」が不可能になったこを実感したであろう。それは同時に、対日外交についても言える。軽々な「反日発言」は、日韓関係にヒビを入れるだけでなく、米韓同盟にも悪影響を及ぼす時代環境になったのだ。

     

    『中央日報』(8月30日付)は、「安保を越えて未来型包括的韓米同盟を準備する時」と題する記事を掲載社説を掲載した。

     

    韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が、3泊6日間の日米訪問を終えて帰国した。トランプ米大統領との韓米首脳会談は成功だったという評価が出ている。石破茂首相との会談では中断していたシャトル外交を復元するなど韓日の信頼回復の青写真を用意した。今回の訪問を通じて韓米日3カ国の未来志向的目標を共有した点も重要な成果だ。

     

    (1)「実用外交を前面に出した李在明政権が事実上、最初の外交試験をうまく通過したという評価を継続させるためには、今後の後続措置がより一層重要になる。成果は通商・安保分野で国益を最大化する結果につながってこそ完成する。ホワイトハウスで見せた場面が一過性のイベントでないという点を証明しなければいけない」

     

    「実用外交」という言葉は、軽薄なイメージである。利益になる外交という意味であろう。そうでなく、価値観を重視した外交こそ永続性が期待できる。商売人のようなイメージの外交では、尊敬を得られまい。

     

    (2)「何よりも、軍事・安保分野に限られた韓米同盟を、国格と時代の流れに合わせて現代化する必要がある。トランプ大統領が、「米国の造船業は廃れた」と述べたように、韓国が競争力を持つ造船産業は韓米協力の頼もしい分野だ。トランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の会談の仲裁を通じて北朝鮮問題をカードとして使用することも可能だ。原発建設も米国は源泉技術を保有し、韓国は施工能力を認められているだけに、両国がウィンウィンできる領域だ」

     

    このパラグラフで指摘している点は、いかにも「実用外交」という言葉に相応しいレベルの低い内容だ。なぜ、インド太平洋戦略に貢献できる韓国を目指す、と言えないのか。

     

    (3)「李大統領は、歴訪最後の日程でハンファオーシャンのフィラデルフィア・フィリー造船所を訪問した。ここで「72年の歴史の韓米同盟は安保同盟、経済同盟、技術同盟が一つになった『未来型包括的戦略同盟』の新たな章を開くことになるだろう」と強調した。米国は「裕福な国(韓国)をなぜ米国が守らなければいけないのか」という圧力と同時に、安保分野で韓国の役割増大を注文している。韓米同盟は、もう誰かが誰かを一方的に守った関係を越え、お互い助け合う戦略同盟に発展しなければいけない。李大統領が明らかにしたように軍事と安保を越えた包括的な戦略同盟を準備する時だ」

     

    米韓同盟は、「お互い助け合う戦略同盟に発展しなければいけない」という主張が、同盟の現代化という意味であろう。韓国は、朝鮮戦争で米国に助けて貰った。今度は、インド太平洋戦略で「ご恩返しする」。こういう発言をする時期であろう。それが、韓国の国格を高める道だ。

     

    (4)「韓国が、新しい韓米同盟の堂々たるパートナーになるためには、中堅国家を越えてグローバル主要国家の地位を確保する必要がある。そののためには、安保と経済の側面でアップグレードが急がれる。自強力を高めながら国格に合った同盟を構築する作業はこれ以上先延ばしできない課題だ。米戦略国際問題研究所(CSIS)のジョン・ハムレ所長は26日、中央日報と共同主催したフォーラムで「韓国は経済大国、文化強国であり、軍事力も世界3、4位規模だが、自国を小さな国と考える傾向がある。地域の強国を越えてグローバルリーダーにならなければいけない」と述べた。我々の強みを最大化し、不足した部分を補完し、韓米同盟を新たな段階へと発展させる努力がいつよりも求められる。その過程で重要なのは理念や陣営論理でなく国益という点を忘れてはならない」

     

    韓国の「国際化」とは、半島独特の偏狭思想から脱することだ。自国の利益ばかり考えず、朝鮮戦争で救援に駆けつけてくれた、国連軍参加国の度量の大きさに感謝する時期である。

    a0960_008527_m
       

    ファーウェイは8月29日、2025年1〜6月期の純利益が370億元(約7600億円)と前年同期比32%減だったと発表した。半期ベースでの減益は2期連続。研究開発費の増加が主因とされる。これは、会社発表をそのまま鵜呑みにはできないようだ。ファーウェイが、必要としている半導体は7ナノである。これは、委託先が量産化できず、コスト・アップに苦悩している結果とみられる。

     

    『日本経済新聞 電子版』(8月29日付)は、「ファーウェイ、16月は純利益32%減 半導体の開発投資増か」と題する記事を掲載した。

     

    半期ベースでの減益は2期連続。研究開発費の増加が主因で、米中のハイテク覇権争いに伴い半導体への支出を積み増しているとみられる。

     

    (1)「売上高は4%増の4270億元だった。増収は半期ベースで6期連続。中国国内は消費財の買い替えを促す政府補助金の効果もあり、主力のスマートフォンの販売が好調だった。米調査会社IDCによると同社は4〜6月期に1250万台を出荷し、およそ4年ぶりにメーカー別の国内出荷で首位となった。クラウドサービスや通信設備の提供といった企業向け事業も堅調だったもよう。運転支援システムや車内で様々な情報を表示する「スマートコックピット」を自動車メーカーに納入するなどの車関連事業も伸びたもようだ」

     

    増収は半期ベースで6期連続と好調である。政府補助金で買い換え需要が増えているからだ。クラウドサービスや通信設備の提供といった企業向け事業も堅調であった。

     

    (2)「研究開発費は9%増の969億元と半期ベースで過去最高だった。人工知能(AI)用の「アセンド」やスマホ用の「キリン」など独自の先端半導体へ投資を進めている。中国当局は7月、米エヌビディアが出荷を再開するはずだったAI用半導体「H20」にセキュリティー上の懸念があると指摘し、国内企業に使用を控えるよう求めていると報じられている。代替はファーウェイなどの国産品だ。中国新興AIのdeepseek(ディープシーク)もこのほど、国産半導体に対応したという最新版のAIモデルを発表した」

     

    研究開発費は、9%増の969億元と半期ベースで過去最高になった。これには、裏がありそうだ。半導体調達コストが上がっていることだ。研究開発費増と説明されているが、「7ナノ」半導体が量産化できず、そのコスト増を研究開発費で処理しているのでないかと、推測する。

     

    ファーウェイは、半導体製造をSMIC(中芯国際集成電路製造)など受託生産企業に委託している。特に「キリン9000s」などの先端チップは、SMICの7nmプロセス技術を使って製造されていると報じられている。

     

    この7nm製造では、EUV(極端紫外線)露光装置を使わず、DUV(深紫外線)による多重露光という苦肉の策による製造とみられている。米国が、EUV輸入を禁止しているからだ。そこで、DUVを繰返し使う(マルチパターニング技術)ことで製品化する過程を余儀なくされ、歩留まり率の悪化に悩んでいるはずだ。ファーウェイは、無理矢理に製造委託先へ依頼している結果、歩留まり悪化による追加コストを一部負担している可能性がある中国が技術自立を急ぐ中で、ファーウェイもSMICとの協力関係は戦略的に不可欠である。こうした事情から、コスト面でも支援していると見るのが自然であろう。

     

     

    a0070_000030_m
       


    防衛省は8月29日、反撃能力の柱となる長射程のスタンド・オフ・ミサイルの配備先を発表した。地上発射型を北海道と静岡、熊本、宮崎の3県の陸上自衛隊駐屯地に配備する。長射程ミサイルは、当初予定を前倒しして配備を進め、中国や北朝鮮を念頭に抑止力の強化を急ぐ。射程1000キロ・メートルを超える「12式地対艦誘導弾」能力向上型の地上発射型は、25年度に健軍駐屯地(熊本県)、27年度に富士駐屯地(静岡県)に配備する。スタンド・オフ・ミサイルとは、敵の対空ミサイルの射程外から発射が可能なミサイルである。

     

    『日本経済新聞』(8月30日付)は、「『反撃ミサイル』配備前倒し地上発射型はまず熊本に」と題する記事を掲載した。

     

    防衛省は敵のミサイル発射拠点を打撃する「反撃能力」の軸となるミサイルの運用を前倒しする。艦艇や戦闘機から発射するタイプは、2028年度以降の運用開始を27年度に早める。地上発射型は、年度内にまず熊本へ配備し始める。

     

    (1)「防衛省は、敵の攻撃圏外から撃ち込める長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」を導入する構想を持つ。中谷元防衛相は29日の記者会見で「日本への武力攻撃の可能性を低下させることが可能になる」と強調した。柱のひとつが陸上自衛隊が使う12式の射程を伸ばす計画だ。射程は現在の百数十キロから1000キロメートル級になる。地上発射型は開発をほぼ終え、艦艇や戦闘機に搭載するための試験も急ぐ。地上発射型は、まず陸自健軍駐屯地(熊本市)に置くと公表した。続いて27年度に陸自富士駐屯地(静岡県小山町)にも広げる」

     

    国防省は、日本への侵攻部隊を早期・遠方で阻止・排除可能にするために、スタンド・オフ防衛能力を強化する。水際作戦とは異なり、敵を遠方で阻止する狙いだ。

     

    (2)「27年度からは艦艇や戦闘機から発射するタイプを前倒しして運用し始める。護衛艦「てるづき」や航空自衛隊百里基地(茨城県小美玉市)に配備予定の戦闘機「F-2能力向上型」への搭載を想定する。離島防衛のために開発する「高速滑空弾」も、26年度から25年度に前倒しして富士駐屯地に配置する。26年度には上富良野駐屯地(北海道上富良野町)、えびの駐屯地(宮崎県えびの市)に専門の部隊を設ける。

     

    高速滑空弾はレーダーに映りづらく、複雑な軌道で飛行するため、従来のミサイル防衛では迎撃が困難とされている。目標物めがけた終末航程では急降下し、爆発力を最大化して突入・破壊する設計になっている。特にブロック2Bは、マッハ17の速度と3000kmの射程により、戦略的拠点への先制打撃が可能という。日本独自の設計・製造である。迎撃困難性と精密誘導性が、国際的に高く評価されている。米国・中国・ロシアの技術と並ぶ存在となった。

    テイカカズラ
       

    半導体受託製造の世界最大手TSMCから最先端技術に関する営業秘密が不正に取得された事件で、捜査当局である台湾高等検察署は8月27日、すでに摘発済みだった3人を起訴した。うち1人は、東京エレクトロン元社員(事件を受け懲戒解雇)、残る2人はTSMC元社員(同)で、いずれも国家安全法および営業秘密法に違反したとして懲役7~14年が求刑されている。事件の真相が明らかになってきた。

     

    『東洋経済オンライン』(8月28日付)は、「台湾TSMCの『国宝級』2ナノ技術流出で3人をスピード起訴――東京エレクトロンを襲う"3つのショック"、主犯の元社員に懲役14年を求刑」と題する記事を掲載した。

     

    台湾は、2022年に国家安全法を改正し、企業の営業秘密のうち国家安全保障に関わるものの海外流出を阻止する措置を新設している。具体的には第3条で「国家の核心的重要技術(国家核心関鍵技術)」についての規定を新設し、さらに別途、行政院(日本の内閣に相当)が対象となる技術をリストで指定している。このリストの中で半導体製造技術については、「14ナノメートル以下のプロセスノードの技術」と明示されている。

     

    (1)「今回の事件は、国家安全法の法改正以降で初めて、核心的重要技術の営業秘密の海外流出を摘発したケースだった。しかも不正取得されたのは、世界的にも最先端レベルの2ナノ技術。いわば、台湾の国家安全保障戦略においては「国宝級」とも称すべき最重要技術だ。このため捜査当局とTSMCは事件の解明と犯人の厳正な処罰に全精力を傾注しており、それが超スピード起訴に繋がった」

     

    台湾当局は、TSMCの最先端(2ナノ)技術が流出した事件だけにスピード対応している。「国宝級」技術だけに神経を尖らせている。当然であろう。

     

    (2)「まず1つ目は、東京エレクトロンの元社員で陳姓の人物が「主犯」であり、しかもその犯行経緯は業務と深く密接していたことが明らかになった点だ。起訴された3人の中でも、最も長い14年が求刑されている。他の2人はそれぞれ、7年と9年の求刑だった。この差は事件の詳細に基づく捜査当局の判断であり、捜査当局の発表文で明解に示されている。発表に基づくと、事件は以下のようなものだった。東京エレクトロン元社員はもともとTSMCの社員で、ファブ12(第12工場)の歩留まり改善を担う部門で働いていた。補足すると、ファブ12は3~5ナノの先端技術まで手がける重要工場の1つである」

     

    主犯は、元TSMC社員で東京エレクトロン営業部へ転職した人物である。この主犯は、TSMCで3~5ナノの先端技術を扱う部署に勤務していた。

     

    (3)「この元社員は、TSMCを辞めて東京エレクトロンに転職し、営業部門に配属された。そして東京エレクトロンの装置が、「TSMCの先端ラインのより多くの工程で採用されること」を狙って、複数の元同僚に対して複数回にわたりTSMCの営業秘密の提供を求めた。そして元同僚の助力で営業秘密を撮影・複製するという犯行を主導した。実は捜査当局が、この事件について東京エレクトロンという企業名に公式に言及するのは、これが初めてだ。今回の起訴対象はあくまで元社員個人であり東京エレクトロンは含まれていないが、犯行の背景に業務が関係していることから、企業名にも言及したとみられる」

     

    今回の起訴対象は、あくまで元社員個人である。東京エレクトロンは含まれていない。

     

    (4)「2つ目は、事件が東京エレクトロンのビジネス上の「泣き所」と直結していたことだ。捜査当局の発表によると、主犯の元社員はTSMCから窃取した情報を使って、東京エレクトロンの「エッチング装置」の性能を改善し、TSMCの2ナノ量産ラインで自社のエッチング装置がより多くの認証を獲得できるよう活用したという。東京エレクトロンは半導体製造装置で世界4位、国内最大手の有力メーカーである。特にコーター/デベロッパと呼ばれる塗布現像装置は世界シェア9割を誇り、TSMCもこの装置については東京エレクトロン以外に選択肢がない」

     

    主犯の元社員は、TSMCから窃取した情報を使って、東京エレクトロンの「エッチング装置」の性能を改善。TSMCの2ナノ量産ラインで、自社のエッチング装置がより多くの認証を獲得できるよう活用したという。この点では、皮肉にもTSMCへ貢献している形だ。

     

    (5)「一方、チップに回路形成する工程で使われるエッチング装置については、世界シェア2位ではあるもののアメリカのラムリサーチに水をあけられ続けている。半導体業界のあるコンサルタントは、次のように指摘する。「エッチング装置において、ラムリサーチとの技術力の差が埋められない。エッチング装置が厳しく業績の重しになっているというのが、業界における共通認識だ」。エッチング装置は、東京エレクトロンの新規装置売上高の3割以上を占めるため、ここの動向は業績を大きく左右する」

     

    東京エレクトロンは、チップに回路形成する工程で使われるエッチング装置で競業企業に水を開けられている。そこで、TSMCの盗用技術を知らずに利用し効率を上げた、とされる。

     

    (6)「今回の事件で主犯の人物は、エッチング装置の性能を改善することにTSMCの営業秘密を利用したという。これが個人の犯行に留まるのか否かは、今後の捜査と公判の結果を待つしかない。現時点で指摘できることは、元社員の犯行は東京エレクトロンの経営において利益をもたらすものであったという点だ」

     

    今後の裁判過程で、東京エレクトロンは盗用技術であることを全く知らずに採用したのかどうかが焦点になる。東京エレクトロンが起訴されていないことは、無関係としているのであろう。

    このページのトップヘ