減益でも値下げ競争する。この不思議な現象が、中国自動車業界で起こっている。この裏には、地方政府による補助金が経営の支柱になっているからだ。減益や赤字でも、雇用を維持してくれれば、それで十分という切羽詰まった事情が存在する。中国式社会主義とは、こういう得体の知れない側面を持っている。
『日本経済新聞』(8月31日付)は、「中国車
利益急ブレーキ 1~6月 BYD以外、減益か赤字 EV価格競争激しく」と題する記事を掲載した。
中国の自動車大手の業績が悪化している。8月30日までに大手6社の2025年1~6月期決算が出そろい、5社が最終減益か赤字になった。唯一増益だった比亜迪(BYD)も増益率は前年同期を下回った。激しい価格競争で各社の採算が低下し、サプライチェーン(供給網)にも影響が広がっている。
(1)「BYDは、29日に公表した決算資料で「競争は激化の一途をたどっている」と、中国市場の厳しさに言及した。25年1~6月期は純利益が前年同期比14%増の155億元(約3200億円)で、4期連続で増益だった。ただ増益率は前年同期(24%)と比べ縮小。4~6月期に限ると純利益は前年同期比3割減った。主力の自動車事業の1~6月期の税引き前利益は前年同期比で微減だった。同利益を遡れる21年1~6月期以降で減益となるのは初めて。販売台数は214万台と3割増えたものの、車両単価の平均は14万2000元と0.5%減り、利益率が下がった」
自動車事業の1~6月期の税引き前利益は、前年同期比で微減だった。同利益が、計数的に遡れる21年1~6月期以降で、減益となるのは初めて。販売台数は3割増えて、車両単価は0.5%減である。値引きによる数量増だ。「骨折り損のくたびれもうけ」の典型例である。
(2)「BYD以外の業績はさらに厳しい。民営大手の吉利汽車の純利益は前年同期比14%減の92億元で、3年ぶりの減益となった。車両単価の平均額が9万5000元と1割減ったことが響いた。国有大手の広州汽車集団は10年に香港市場に上場して以来、初めて1~6月期の最終損益が赤字に転落した」
BYD以外の企業は、軒並み減益である。広州汽車は赤字に転落した。価格引下げが招いた事態である。
(3)「中国の自動車市場は、ここ数年で電気自動車(EV)へのシフトが急速に進むなか、積極的に対応したBYDや吉利など民営大手の業績が伸び、出遅れた上海汽車集団や広州汽車などの国有大手が不振に苦しむという構図だった。足元では、EVの販売を伸ばしても価格競争で利益の確保が難しくなり、国有か民営か問わず苦戦するようになっている。業界団体の中国汽車工業協会は、「無秩序な価格競争が業界の収益水準低下の要因となる」と警鐘を鳴らす。供給増が続くなか、価格競争が収まる気配はない」
中国自動車業界は、EVで販売が伸びても、過剰な価格競争によって利益を確保できにくいという最悪事態へ落込んでいる。
(4)「中国の自動車製造業の利益総額は、24年に4622億元(9兆2440億円)と23年比8%減った。今後はさらに減る可能性がある。しわ寄せは供給網に行く。特に打撃を受けるのが下請けの部品メーカーだ。自動車向けポンプ部品を手掛けるある中小企業の従業員は、「売れ残った部品は返品され、受け入れないと今後の受注が取れなくなる」と嘆く。自動車メーカーが、取引先から商品を仕入れてから代金を払うまでの期間の長期化も問題になっている。支払いが遅くなるほど、中小の部品メーカーなどは運転資金が回らなくなる」
中国の自動車業界は、「戦国時代」である。群雄割拠しているが、この影で中小企業が泣かされている。天下統一はできず、各社が傷つき倒れる。何とも矛盾した「切ない世界」である。真の「競争概念」を理解しない哀れな姿だ。中国の縮図でもある。
(5)「中国当局は中小企業を支援すべく大企業に是正を求めている。6月に施行した条例改正で、中小企業への支払いを納品から60日以内とすることを定めた。BYDなど自動車大手はこれに従い、部品メーカーなどへの支払期限を60日以内にすると表明した。BYDの6月末の仕入れ債務は2366億元と3月末に比べ6%減り、支払期限の短縮の影響が出ているとみられる。仕入れ債務が減れば営業キャッシュフローの減少につながる。BYDの25年1~6月期のフリーキャッシュフロー(純現金収支)は426億元の赤字で、前年同期に比べ赤字額が増えた」
部品メーカーなどへの支払期限は、一律60日以内にするという。日本の商慣習では90日である。中国は、こういう実現もできないことを決めて、当局の責任は果したとしている。そうではなく、漸減方式でやらねば実効は上がらないのだ。




