勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2025年10月

    a0960_005041_m
       

    中国国家統計局が、31日発表した10月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.0だった。前月より0.8ポイントも低く、7カ月連続で好調・不調の境目である50を下回った。柱となる新規受注は前月より0.9ポイント下がって48.8にとどまり、4ヶ月連続で50を下回った。生産は2.2ポイント低下して49.7となり6ヶ月ぶりに50を下回った。新規受注と生産がともに不振で、事態の深刻さを表わしている。

     

    『ブルームバーグ』(10月31日付)は、「中国の製造業活動、10月に一段の落ち込み-9年強ぶりの長期低迷」と題する記事を掲載した。

     

    中国の製造業活動は10月に一段と落ち込み、9年強ぶりの長期低迷に突入した。年末に向けて景気減速が深まる動きとなる。

     

    (1)「国家統計局の31日の発表によると、10月の製造業購買担当者指数(PMI)は49となり、9月の49.8から低下した。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想中央値は49.6だった。7ヶ月連続で活動拡大・縮小の境目を下回った。一方、建設業やサービス業など非製造業PMIは50.1に小幅上昇した。9月には活動拡大・縮小の分かれ目である50まで低下していた。」

     

    10月の製造業PMIは、事前予想の中央値49.6を大きく割込んだ。実勢悪を示している。

     

    (2)「10月の国慶節(建国記念日)休暇が前年より長かったことが季節要因として影響した可能性がある。国家統計局の統計官、霍慧氏は今回の発表に伴う発表文で製造業活動の減速について、8日間の大型連休や「世界的な環境の複雑化」が一因だと説明。「製造業企業の生産と市場需要の双方が減少した」とも指摘した」

     

    国家統計局は、「言い訳」材料に、8日間の大型連休を上げている。PMIは、景気の勢いを示すもの。大型連休とは無関係である。            

     

    (3)「米国と中国の貿易摩擦は9月以降悪化。その後、トランプ大統領と習近平国家主席が韓国釜山で30日に行った首脳会談で、緊張緩和に向け合意に至った。関税措置緩和と貿易戦争の沈静化は、中国経済に一息つく材料となりそうだ。中国の経済成長率は7~9月(第3四半期)に1年ぶりの低水準に減速したものの、通年ではおおむね5%前後の今年の目標達成が視野に入っている。ただ、アナリストの多くは、10~12月(第4四半期)の成長率が、ゼロコロナ政策によるロックダウン(都市封鎖)で生産が混乱した2022年以来の低水準にとどまると予想している」

     

    この10~12月期GDPは、2022年以来の低水準が見込まれる。PMIの悪化からも、おおよその見当はつく。

     

    (4)「生産活動の減速を示すサインとして、製造業PMIの構成項目である生産指数が、4月以来初めて活動縮小を示す水準に落ち込んだ。国外のリスクに加え、国内需要の低迷も中国の製造業見通しを下押ししている。中国人民銀行(中央銀行)が、第3四半期に実施した調査によると、家計の消費意欲は低下し、雇用に対しても一段と悲観的な見方が強まった。輸出は、今年に入り予想外に堅調に推移しているものの、その持続可能性には引き続き疑問が残る。関税発動を見越した駆け込み輸出が活動を押し上げていた点が挙げられる。米中首脳が一段と長期的な貿易休戦に合意した今、関税引き上げを見越して在庫を積み増す必要性が薄れれば、海外需要が冷え込み始める可能性もある」

     

    新規受注は、前月より0.9ポイント下がって48.8にとどまり、4ヶ月連続で50を下回った。生産は、2.2ポイント低下して49.7となり6ヶ月ぶりに50を下回った。このように、新規受注と生産が揃って悪化していることは、中国経済が要注意段階へ向っていることを示している。米中首脳会談によって、米中対立はこれから1年、鎮まりそうである。これは、関税引き上げを見越した在庫積み増しの必要性を薄めるので、海外需要が冷え込み始める可能性も出てきた。中国経済にとって、明るい話ではない。

    あじさいのたまご
       

    韓国の李大統領は29日、米国トランプ大統領との首脳会談で、韓国内での原子力潜水艦建艦希望を提示した。「燃料供給を許可していただければ、韓国の技術で通常兵器を搭載した潜水艦を複数隻建造する」と述べたのだ。これに対し、トランプ氏は「米国内での建艦を許可する」とする一方で、韓国国内での建艦を認めず、韓国には「トンビに油揚げ」という結果になった。米国は、自国内で原潜を建艦できることで大きな「需要」が舞い込んだ形となった。

     

    この問題には、「核拡散防止条約」が大きく関わっている。原潜といえども、韓国内での建艦が不可能であることを認識していなかった韓国側のミスである。仮に、日本が原潜保有を決定しても、日本国内での原潜建艦は不可能である。

     

    『ロイター』(10月30日付)は、「トランプ氏、韓国の原子力潜水艦建造を承認 米フィラデルフィアで」と題する記事を掲載した。

     

    訪韓中のトランプ米大統領は30日、韓国による原子力潜水艦の建造を承認したと発表した。韓国企業が投資を拡大している米東部ペンシルベニア州フィラデルフィアの造船所で建造されるという。李氏は会談で、北朝鮮や中国の船舶をより長時間追跡できるよう、韓国が原子力潜水艦用の燃料を持つことを認めるようトランプ氏に求めていた。両国間の協定により、韓国は米国の同意なしに使用済み核燃料の再処理を行うことを禁じられている。

     

    (1)「トランプ氏は、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、「私は彼らに原子力潜水艦の建造を承認した。彼らが現在保有する旧式の、はるかに機動性に欠けるディーゼルエンジン搭載潜水艦ではなく(原潜だ)」と述べた。韓国産業通商資源省は、フィラデルフィアでの潜水艦建造に関する詳細な議論には関与していないと述べた」

     

    韓国は、核拡散防止条約の存在を認識していなかったのだろう。韓国国内で、原潜建艦が可能とみていたのだ。

     

    (2)「韓国には高度な造船産業があるが、トランプ氏は現在ごく少数の国しか保有していない原潜の推進技術をどこから採用するかについては明言しなかった。米国はオーストラリアと英国とともに、米国からの技術移転を伴う原潜をオーストラリアが取得するプロジェクトに取り組んでいる。米国が、原潜技術を共有したのはこれまで1950年代の英国との例にとどまる」

     

    豪州は、英国の原潜技術で原潜を保有する計画である。核拡散防止条約によって、豪州も英国での原潜建艦となる。

     

    (3)「ワシントンに本部を置く軍備管理協会のダリル・キンボール事務局長は、韓国がこのような潜水艦を取得するという問題は「あらゆる種類の疑問を提起する」と指摘。「AUKUS(米英豪3カ国による安全保障枠組み)の取引と同様に、(韓国は)おそらく燃料を含め、潜水艦に適した核推進サービスを米国から求めているのだろう」と述べた」

     

    米国は、核拡散防止条約によって、韓国国内での原潜建艦を認めない代わりに、米国内で建艦する。これが、国際的取り決めに対応した現実的対応である。

     

    (4)「このような潜水艦は通常、高濃縮ウランの使用を伴い、核拡散防止条約(NPT)の履行において重要な役割を担っている国際原子力機関(IAEA)による「非常に複雑な保障措置の新体制を必要とする」とし、「使用済み核燃料から兵器用プルトニウムを抽出する技術や、核兵器製造にも使用できるウラン濃縮能力を韓国が獲得することは、技術的にも軍事的にも不必要だ」と指摘。「米国が、世界的な核兵器の拡散を防ごうとするのであれば、トランプ政権は敵対国がこれらのデュアルユース技術にアクセスすることを拒否するのと同様に、同盟国からのこのような誘いかけに強く抵抗すべきだ」と述べた」

     

    国際原子力機関(IAEA)は、韓国がウラン濃縮能力を獲得することは、技術的にも軍事的にも不必要だとしている。米国が、イラン核実験施設を急襲したのは、ウラン濃縮能力獲得を阻止するためだった。米国が、「イランは駄目でも韓国はOK」というダブルスタンダードは不可能である。韓国の核拡散防止条約についての無自覚が、米国に「トンビに油揚げ」という事態を生んだ背景である。

    a0960_008527_m
       


    米連邦準備理事会(FRB)は29日、政策金利を0.25%引き下げた。利下げは2会合連続。米連邦政府の一部閉鎖で主要な経済統計が軒並み停止するなか、雇用の勢いが失速するリスク回避への対応を優先した形だ。一方、日銀は利上げに慎重姿勢である。植田日銀総裁は、10月30日の記者会見で、利上げ判断にあたり「来年の春季労使交渉(春闘)の初動のモメンタム(勢い)について情報を集めたい」と述べた。米国の関税政策の影響で輸出企業の収益が下押しされるなか、高水準の賃上げが途切れないか確認する意向を示した。

     

    こうした日米金融当局の動きに対して、前日銀総裁の黒田東彦氏は年末までに日銀利上げの公算大とみている。2%の物価目標はすでに達成され、経済は名目1.%程度の成長となっていることを理由にあげている。日米金利差の縮小によって、円相場は円高方向と読む。1ドル==120~130円前後に向けて上昇する公算が大きいとの見解を示した。

     

    『ブルームバーグ』(10月30日付)は、「黒田前日銀総裁、1ドル=120~130円前後に向けた円高進行見込む」と題する記事を掲載した。

     

    黒田氏は、「現在の円・ドル相場は1ドル=153円程度だが、これは弱過ぎる」と述べた上で、「いずれ円・ドル相場は1ドル=120~130円程度に回復するだろう」と語った。シンガポールで開かれたバークレイズ・アジア・フォーラムの合間にブルームバーグテレビジョンのインタビューに応じた。

     

    (1)「日本時間30日午後2時ごろの時点で、ドル・円は152円80銭前後で取引された。黒田氏はまた、米国の利下げと日銀の逆方向の動きによって、日米の金利差が縮小し、円相場が2年余り前の水準に戻ることにとなるとの見方を示した。黒田氏との英語でのインタビューは、日銀の金融政策発表の30分ほど前に行われた。日銀は30日まで開いた金融政策決定会合で、広く予想されていた通り政策金利を0.%程度に据え置くことを決めた。政策維持は6会合連続。

     

    米国財務長官も、日銀へ利上げを迫っている。FRBが利下げに踏み切っている以上、日米金利差縮小によりドル=円相場を反転させたいという希望を持っている。日本が、理由もなく利上げせずに見送っていると、米国の高関税相殺目的で円安による対米輸出増をねらっているのではないか。こういう、痛くもない腹を探られる危険性が出てきた。慎重な金融政策は大事だが、「臆病な」利上げ回避はかえって問題を起こす局面になっている。

     

    (2)「黒田氏は、「2%の物価目標はすでに達成され、経済は(名目)1.%程度の成長となっている。失業率はわずか2.%程度だ」と指摘し、植田和男総裁率いる日銀が利上げを継続する環境が整っているとの認識を示唆した。このほか、日銀が9月までの5会合連続で政策維持を決めたことに関しては、トランプ米大統領による関税措置が日本経済に与える影響を見極めたい考えを反映したものだとの見方を示し、その影響は当初の想定よりも小さかったと黒田氏は述べた。黒田氏はさらに、年末までに日銀利上げが実施される公算が大きいとの見方を示した」

     

    これまでの円安は、植田日銀総裁の「不用意発言」が災いしている。学者特有の「慎重発言」は重要だが、日銀総裁の重みを忘れてはならない。日銀総裁の発言では、内外の為替投機家が待ち構えている。それによって、円安が起こり国民生活に災難を及ぼしているからだ。高市首相の積極財政論による経済混乱を考えると、日銀総裁の責任は一層高まる。

     

     

    a0960_008527_m
       


    中国の与えた「レアアース・ショック」戦術が、西側諸国のレアアース産業の復活を促している。中国は、「眠れる巨人を目覚めさせた」といわれるほど、皮肉にも西側諸国のレアアース自立への動きを促進させる役割を果している。幸いなことに、日本の南鳥島海底6000メートールに堆積するレアアース泥が、中国陸上レアアース鉱山の平均品位の20倍以上の高品位と分って日本はもちろん、米国もこの「余慶」に預かれると安堵している。米国は、日本と長期購入契約を結びたいというほどの熱の入れ方だ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月29日付)は、「米国で最も熱い投資先:レアアース企業」と題する記事を掲載した。

     

    中国が4月にレアアース(希土類)の輸出制限に乗り出し、自動車工場の生産停止やレアアース価格急騰を引き起こして以来、レアアース企業に民間部門と政府からの資金が流入している。今やこうした企業は、技術専門家を雇い、工場を拡張し、戦略的買収を行う資金を手に入れ、ハイテク製造に必要な材料の中国以外からの供給体制の構築を急いでいる。

     

    (1)「金属専門の投資会社オリオン・リソース・パートナーズは23日、米国とその同盟国向けの重要鉱物確保を目指すとして、米政府資金などを活用した18億ドルの投資コンソーシアム設立を発表した。トランプ氏とオーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は20日、重要鉱物とレアアースのプロジェクトに共同出資する合意書に署名した。この発表に関連し、米輸出入銀行は7件の豪鉱物プロジェクトに総額22億ドルを融資する意向を表明し、ホワイトハウスは西オーストラリア州の先進的ガリウム精製施設に国防総省が投資すると発表した。ガリウムは半導体製造に必要な鉱物だ」

     

    不思議なことに、南鳥島のレアアースについては一部専門家を除いて話題になることもない。日本政府が、中国を刺戟しないように情報を抑えている結果である。底流では、大きなうねりが起こっているが、「南鳥島情報」はだれも注目していない。日米政府の一部でしか共有されていないのだ。

     

    南鳥島周辺には、世界最大級の「中・重希土類」を含むレアアース泥が存在している。中国が、独占してきた資源構造を根本から覆すので、日本政府は試験採掘を進めつつも、技術流出や外国勢力の干渉を警戒して情報を慎重に扱っている。これが、「南鳥島はどこ?」という事態となっている。「情報統制」するほど、中味が濃いのだ。

     

    (2)「米銀大手JPモルガン・チェースは今月、レアアース企業など国家安全保障上重要な企業に100億ドルを投資すると発表した。これは同行が始めた戦略的産業に特化する1兆5000億ドルのイニシアチブの一環となる。同行は27日、最初の投資先として、中国が供給の大部分を握る重要な防衛用途の鉱物アンチモンを生産するアイダホ州の鉱山会社、パーペチュア・リソーシズに7500万ドルを投資すると明らかにした」

     

    JPモルガン・チェースは、レアアース企業など国家安全保障上重要な企業に100億ドルを投資すると発表した。米金融界が、競ってレアアース企業など国家安全保障上重要な企業に投資している。

     

    (3)「個人投資家や機関投資家も、独自に数十億ドルの資金をつぎ込んでいる。米国最大のレアアース企業、MPマテリアルズの株価は今年約4倍に上昇し、時価総額は約120億ドルに達した。豪レアアース大手、ライナス・レアアースは8月に投資家から約5億ドルを調達した。ライナスの株価は今年3倍に上昇した。西側の重要鉱物企業は長年、資金調達に苦労してきた。世界中に安価な鉱物を大量供給してきた中国の政府系鉱物企業に比べ、弱い立場にあったためだ」

     

    MPマテリアルズは、南鳥島のレアアースと技術的に深く結びついている。米国政府が、MPマテリアルズへ出資するなど強い絆を築いたので、南鳥島のレアアース情報にも接している。

     

    (4)「中国が、今年導入した制限措置(10月に突然レアアース輸出規制を強化したことなど)は、この状況を根本的に変えた。中国のレアアース支配は、貿易紛争における理論上の方策ではなく、米国を傷つけたい時にいつでも使える強力な武器になることが明らかとなった。これを受け、米国はこの産業を長期的に構築するための手段を講じることにした。一例を挙げると、中国の過剰生産が引き起こす価格暴落から守るため、米政府はMPマテリアルズにレアアースの最低価格を適用することで合意した」

     

    中国の過剰生産が引き起こす価格暴落から守るため、米政府は、MPマテリアルズにレアアースの最低価格を適用することで合意している。この面で、日本政府にも協調を呼びかけている。

     

    (5)「レアアース処理技術を手がけるカナダ企業ユーコア・レアメタルズは、米ルイジアナ州に初の商業規模の工場を建設するため、国防総省から1800万ドルの資金拠出を受けた。同工場ではレアアースを多くの産業で使用される酸化物に変換する。ユーコアの株価は年初来で700%超上昇した。「マンハッタン計画のようなものだと考えている。これを成し遂げるには迅速な動きが必要だ」。ユニコアのパット・ライアン最高経営責任者(CEO)はこう述べた。同氏は来年の工場稼働を見込んでいる」

     

    レアアース開発は、米国が戦時中に原爆開発に取組んだ「マンハッタン計画」のような扱いになっているという。米国が、南鳥島のレアアース開発に関心を持つ裏には、こういう事情が潜んでいる。日米政府が、南鳥島のレアアースについて沈黙を貫いている理由はここにある。

     

     

     

    a0960_008532_m
       

    中国は、EV(電気自動車)産業への政府助成を打ち切る姿勢を鮮明に打ち出した。今月決まった「第15次五カ年計画(2026-30年)」で、EVは過去10年余りで初めて戦略的な新興産業のリストから除外されたからだ。中国指導部が、EVについて成熟産業になり、もはや従来と同じ規模の資金支援を必要とせず、発展を市場の力に委ねられると考えている証拠だと、アナリストらはみている。現実は、財政悪化でEVへ補助金を支給する余裕がなくなったとも言える。シェア0.1%の弱小EV企業93社を支える余力がないのだろう。

     

    『ロイター』(10月30日付)は、「中国のEV産業、市場競争で一段と強く 政府支援打ち切り」と題する記事を掲載した。

     

    EVは、習近平国家主席さえ苦言を呈する中国に広がる過当競争の象徴とみなされている。ただ、アナリストらは、戦略的新興産業のリストから外れたからといって、EVに対する政府の好意が失われたわけではないと指摘する。むしろ、中国が世界的な貿易摩擦や安全保障上の緊張を踏まえて「自立自強」のために他の技術分野に資源を投入する戦略的な決断の表れだという。

     

    (1)「EVとプラグインハイブリッド車、燃料電池車が該当する「新エネルギー車(NEV)」は過去3回の五カ年計画で戦略的新興産業に分類され、各メーカーのEV生産促進や消費者の需要喚起に向けて数十億ドル規模の補助金が投入されてきた。それによって中国は現在、EVのサプライチェーン(供給網)を掌握するとともに、BYD(比亜迪)という世界をリードするメーカーも誕生。中国のNEV市場は世界最大で、昨年7月の時点で国内自動車販売の50%余りをNEVが占めた。成長ペースは政策担当者が当初設定した目標に10年早く到達したほどだ。しかし急成長と政府助成により、中国では各メーカーが総需要を超える車を生産してしまった。実需に基づくよりも、政府の政策に影響される生産目標の達成に向かっていったからだと、ロイターはこれまでに報じている」

     

    新エネルギー車が、国内自動車販売の50%余りを占めている。これで、補助金を打ち切っても大丈夫という見方だ。この裏では、非効率な赤字企業が死屍累々である。無駄な補助金を使ったものである。

     

    (2)「ジェイトー・ダイナミクスの分析では、中国で事業展開している自動車メーカー169社のうち、市場シェア0.1%未満の企業は93社に上る。中国の対外経済貿易大学WTO研究院のトュー・シンカン教授は、「国家的見地に立つと(NEVに)過剰な関心を払う必要はなくなっている。さもないと過剰生産設備を助長しかねない」と言う。同教授は、NEVが五カ年計画の戦略的新興産業から外れたとはいえ、関係省庁は今後、将来の業界の道筋を定めるためにより個別的な計画を発表すると予想している」

     

    自動車メーカー169社のうち、市場シェア0.1%未満の企業は93社に上る。これら企業は、補助金打ち切りですべて倒産だ。従業員も解雇される。これまでの設備投資も無駄になる。これが、計画経済の実態だ。

     

    (3)「ある中国の政策アドバイザーは、EVが戦略的新興産業に分類されなくなっても、重要性は変らないと強調。輸出だけを見ても自動車セクター全体の収益源になっているし、産業チェーンの強化や中国の国際的な指導力を高めることにも役立っているとの見方を示した。「政府の方針転換を受け、EV業界は市場での競争を通じて自らの未来が決まる現実に向き合わなければならない。今年前半、中国の上場自動車メーカー17社のうち、黒字は11社だった。中国乗用車協会(CPCA)の崔東樹事務局長は、今回の五カ年計画からは、政策担当者がEV業界の支援をやめるために従来の全般的アプローチではなく、より的を絞った施策を打ち出そうとの意向がうかがえると説明」

     

    補助金頼りの経営が、いかに無駄をつくるか。中国の自動車政策が証明した。計画経済は無駄を生む「マシーン」である。

     

    (4)「EVメーカーには、より技術革新的な製品の生産を重視し、低品質車の生産抑制を図るよう圧力がかかるだろうとみている。カウンターポイントのアナリスト、シャオチェン・ワン氏は、各メーカーは中国市場で地歩を得る上で、十分に傑出した中核的な強みを構築する必要が出てくると指摘する。「例えばBYDやリープモーター(零跑汽車)といったブランドはサプライチェーンを統合する能力の強化を通じてコスト面の優位性を高め、より費用対効果の大きい製品を投入してきた。一方、小米科技(シャオミ)や、華為技術(ファーウェイ)(HWT.UL)主導で設立された技術連携組織HIMAに参加している各社は、そのブランド力と情報技術面の優位性で消費者を引きつけている」という」

     

    EVメーカーは、補助金打ち切りでより技術革新的な製品の生産を重視し、低品質車の生産抑制を図るよう圧力がかかるだろうという。市場機能が生かされていれば、こういう無駄は起こりようがない。中国経済の「壮大な無駄」が、補助金政策で生み出されている。

     

    このページのトップヘ