ロシアは、戦争負担と西側の経済制裁によって、縮小に向っている貯留層からの石油採取がさらに困難になっている。一部の予測では、2020年代末には産油量が少なくとも約1割減少する見通しで、ロシア経済とその基盤となるオイルマネーが危機に直面している。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月1日付)は、「図解:ロシア産石油の緩やかな『終焉』」と題する記事を掲載した。
(1)「ウクライナで戦争を始めて以降、ロシア政府は新たな油田に向けた探鉱よりも既存油田の継続に軸足を置くことで、石油の生産・輸出を比較的安定した状態に保ってきた。だが長期的な見通しは厳しい。ロシアの歳入のうちエネルギー分野の利益が最大3分の1を占めており、石油生産が減速すればこの割合は低下する見込みが高い。開戦前でさえ、ロシアの主に西シベリアとボルガ・ウラル地域にある旧ソ連時代の油田の多くは底を突きかけており、石油会社はより回収が困難な北極圏やシベリアの油田での原油採取に頼らざるを得なくなっていた」
ロシアは、歳入のうちエネルギー分野の利益が最大3分の1を占めている。この頼みの綱である原油生産に赤信号がともった。現在、旧ソ連時代の油田の多くは底を突きかけており、石油会社はより回収が困難な北極圏やシベリアの油田へ依存するほかない。
(2)「状況を改善するため、ロシアの石油メジャーは、米テキサス州やノースダコタ州で開発されたフラッキング(水圧破砕法)技術を利用してシベリアのシェール層を開発する予定だったが、戦争がその計画に立ちはだかった。経済制裁によって必要な抽出技術へのアクセスが禁止された。アナリストは石油産業が既に何年分も後退したとみている。ロシア専門家、マシュー・セイガーズ氏は、「地下からの石油採取はいっそう困難かつ高コストになっている。だが資源基盤の悪化を考えると、現状維持だけのために毎年走るスピードを上げなければならない」と、S&Pグローバル・コモディティー・インサイトでこう述べた。「基本的にこれはロシア産石油との長い、緩やかなお別れだ」と指摘」
米国技術のフラッキングを利用して、シベリアのシェール層の開発予定もウクライナ侵攻で不可能になった。地下からの石油採取は、いっそう困難かつ高コストになっている。
(3)「ロシアのエネルギー省によると、同国の石油埋蔵量のうち回収困難とされるものの割合は、現在の59%から2030年には80%に上昇する。エネルギー次官を務めるパベル・ソロキン氏は、「つまり、石油を地中から取り出すための資本コストも運営コストも増えるということだ」と、昨年の会議で指摘した。コンサルティング会社ライスタッド・エナジーの上流調査担当バイスプレジデント、ダリア・メルニク氏は、「ロシアの巨大な在来型油田(訳注:非在来型はシェールオイルなど)の黄金時代は過ぎ去った」と指摘」
ロシアは、石油埋蔵量のうち回収困難とされるものの割合が、現在の59%から2030年には80%に上昇する。原油回収の資本コストや運営コストが増える。
(4)「ロシアの最も石油埋蔵量が豊富な貯留層は西シベリアとボルガ・ウラル地域に集中しており、以前から同国の原油生産の大半を占めている。だがこうした地域でも石油は急速に枯渇している。ロシアは北極圏の広大な油層に期待をかけるが、極限の気候と難しい地質構造のため、採掘には費用も時間もかかる。また経済制裁がシベリア油田の新規開発を妨げている。石油埋蔵量が縮小する中、コスト上昇と設備不足により、実用的な代替油田を探せる場所も少なくなっている」
ロシアが、原油生産で最も依存する西シベリアとボルガ・ウラル地域は急速に枯渇している。石油埋蔵量が縮小する中、コスト上昇と設備不足により、実用的な代替油田を探せる場所も少なくなっている。
(5)「採掘場所を開発し、原油の抽出と輸送を行うには、多岐にわたる高度に専門化された設備が必要になるが、経済制裁のためロシアではその多くが不足している。ロシアには、岩盤や油井からのデータを分析し、石油がどこにどれだけ存在するかや、抽出方法を見極めるための最新ソフトウエアがない。たとえロシアの石油会社がそうしたコンピュータープログラムを持っていたとしても、2022年以降はアップデートを禁止されており、使用不能になっているものが多いとアナリストらは指摘する」
ロシアには、岩盤や油井からのデータを分析し、石油がどこにどれだけ存在するか、抽出方法を見極めるための最新ソフトウエアがないのだ。ウクライナ侵攻でソフトの使用が禁止されている。
(6)「ロシアの原油埋蔵量が減るのに伴い、1バレル当たりの採掘コストは上昇する。貯留層に残ったものが重質化し、地下からのくみ上げが難しくなるからだ。だがそれは地質学上の問題に過ぎない。ウクライナとの戦争が各種コストを悪化させている。西側の経済制裁で、大抵は第三国を経由する設備の調達コストが上昇。一方、労働力不足のため、例えば石油労働者の賃金が押し上げられ、またフラッキングで作られた坑井から石油やガスが流出し続けるよう、シェール層の亀裂を維持するために注入する砂などの固体材料も価格が上昇している。「全ての費用が以前より高くなっている」と前出のセイガーズ氏は述べた。「国内のこうした圧力が影響し、ロシアが産油量を増やすことはたとえ短期的にでも非常に困難だ」と指摘」
ロシアの原油埋蔵量が減るのに伴い、1バレル当たりの採掘コストは上昇する一方だ。労働力不足のため、石油労働者の賃金が押し上げられている。ロシアが、産油量を増やすことは短期的にでも非常に困難な状況に向っている。




