勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2025年10月

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    韓国の次世代電池である全固体電池開発は、日本よりも3年程度遅れている。韓国自動車研究院は27日に発表した報告書で、EV(電気自動車)に全固体電池が採用されるのは30年以降と発表した。まず、家電で採用した後にEVで登載する予定だ。日本では、トヨタ自動車がすでに全固体電池登載EV発売に向けて「スタンバイ」である。EV人気が衰えていることから、発売のタイミングを見計らっている。今のところ27年以降の見込みである。日産自動車は、28年度以降の発売を予定している。こうして、韓国は、トヨタや日産に比べてかなり出遅れる。中国も同様の遅れである。

     

    『東亜日報』(10月28日付)は、「『夢のバッテリー』搭載のEV、2030年以降量産へ」と題する記事を掲載した。

     

    電気自動車(EV)市場の「ゲームチェンジャー」とされる「全固体電池(固体電解質を用いたリチウムイオン電池)」を搭載したEVが、2030年前後から量産されるとの見通しが示された。

     

    (1)「韓国自動車研究院は27日に発表した報告書「全固体リチウムイオン電池の可能性」で、全固体電池の開発が2027~2028年に商用化可能な水準に達し、まず小型家電に適用されるとの見方を示した。その後、2030年以降にはEVにも搭載されると見込まれる。自動車メーカーによる新技術の検証に2~3年を要する事情を考慮した結果だ」

     

    韓国の全固体電池開発は、27~28年に家電用電池から実用化し、EV登載は30年以降になる。家電用電池で様子をみようというもの。リチウムイオン電池で発火事故が多発しただけに、慎重を期しているのだ。

     

    (2)「全固体電池とは、従来のリチウムイオン電池の構成要素のうち、液体電解質を固体電解質に置き換えた電池である。正極・負極に加え、通路の役割を担う電解質まで、文字通りすべてが固体という構造だ。可燃性が低く、火災リスクが少ないのが利点である。可燃性の液体電解質を含むリチウムイオン電池は、外部からの衝撃を受けた際に大規模な火災につながる恐れがあるという欠点が指摘されてきた。全固体電池はまた、エネルギー密度が高く、より多くの電力を蓄えることができる。充電速度も速い」

     

    全固体電池は、エネルギー密度が高いので、航続距離が1000キロ程度と伸びる。充電速度も速く、充電時間が大幅に短縮される。

     

    (3)「すでに中国をはじめとする主要電池先進国を中心に、全固体電池の開発が活発に進んでいる。同報告書は「中国は官民投資が連動し、実証段階に達したと評価される」と述べた。実際、中国のEVメーカー・比亜迪(BYD)は2027年に全固体電池を搭載した試作モデルを発表し、2030年から量産を始めると明らかにしている。一方で、十分な電池寿命の確保が課題として残る。同報告書は「EVに使用される電池は2000回以上の充放電が可能でなければならないが、現段階の試作品は1000回未満にとどまり、耐久性が不足している」と指摘した」


    BYDも、日本から比べれば大きく出遅れている。日本勢が、全固体電池開発に対して他国よりも早く着手したのは、リチウムイオン電池時代が短いと踏んでいたからだ。

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    日本の対米投資5500億ドル問題は28日、日米首脳によって正式に署名された。韓国の対米投資3500億ドル問題は、未だに決着せず米韓で「論争中」だ。米国は、韓国に対して日本同様に投資案件ごとにSPV(特別目的事業体)を設定しようと提案した。韓国はこれを拒否して、進出企業ごとの個別採算を主張。米国との間で意見調整が進まずにいる。根本原因は、米国の対韓信頼感が揺れている点にある。韓国の政治的不安定さが、米国の信頼感を得られない結果となっている。

     

    『中央日報』(10月28日付)は、「李大統領「対米投資の方式・規模・日程、すべての部分で意見を戦わせている」と題する記事を掲載した。

     

    米国と韓国による3500億ドル(約54兆円)規模の投資約束をめぐり、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は「両国が主要な懸案のすべてで意見の隔たりを埋められていない」と明らかにした。


    (1)「李大統領は27日(現地時間)、米経済メディア『ブルームバーグ』とのインタビューで、「投資の方式、投資規模、日程、損失分担および配当金の分配など、すべての部分においてまだ議論を戦わせているところ」と述べた。李大統領は「米国が自国の利益を最大化しようとするのは当然だが、それが韓国に破滅的な結果をもたらす水準であってはならない」という立場を示した。その上で「議論は続いており、見解の違いが一部残ってはいるが、遅延がすなわち失敗を意味するわけではない」と含みを持たせた」

     

    韓国は、議論好きである。少しでも意見が一致しなければ妥協しない社会である。この点で、日本と全く異なる。日本は、大局的な視点から対米直接5500億ドル投資を決めたが、韓国は個別案件ごとに条件を詰める方式だ。

     

    (2)「ブルームバーグは、「この投資約束は、7月に骨子がまとめられた両国の貿易協定の核心軸であり、交渉の遅れによって韓国自動車業界が競合国に比べ不利な位置に置かれている」とし、「大統領が時間を求めている間、韓国の自動車メーカーは米国の25%の関税を負担している。一方、日本は9月ワシントンとMOUを締結し、15%の関税優遇を受けている」と説明した。これに対して李大統領は、日本との比較を退け、「韓国もまた、EU(欧州連合)がトランプ政権と交渉した方式から学ぶべき点がある」と応じたという」

     

    韓国は一時、日本方式を提案したが3500億ドル一括で米国へ払えという条件で頓挫した。これは、米韓交渉過程で感情的になった結果とみられる。日本へは、そういう要求はなかったからだ。「売り言葉に買い言葉」という応酬がもたらした非生産的結果だ。

     

    (3)「李大統領は、「韓国は米国の同盟国であり友人である以上、すべての当事者が受け入れられる合理的な結果を導き出せると信じている。そうしなければならない」と強調した。また今回のインタビューで李大統領は、米国ジョージア州で建設中の現代自動車・LGエナジーソリューションのバッテリー工場が最近米国移民当局の取り締まりを受けたことに関連し、「韓国内世論が投資にさらに慎重になった」とも明らかにした。李大統領は「両国がビザ制度の改正に向けて協議しており、近いうちに解決策が出ることを期待している」とし「労働者の安全と合理的待遇が保障されなければ、米国内での工場建設が深刻に遅延する可能性が高い」と警告した」

     

    韓国は、ビザ問題で韓国社員が不法拘束されたことを根に思っている。あれは、韓国政府が、事前準備すべきことを怠っていた結果だ。

     

    (4)「安保分野については最近、韓米両国が進めている同盟の現代化交渉について「目に見える進展があった」とし「単に北朝鮮抑止の水準を超えて進化すべき」と語った。また、国防費をGDPの2.3%から3.5%へ拡大する計画については、「防衛費の増額は自主国防の方針によるものであり、米国の要求ではない」とし、「韓国は外部要因に関係なく、北朝鮮抑止力を強化する準備ができていなければならない」と強調した」

     

    韓国は、国防費を対GDP費で3.5%へ拡大する予定である。日本よりも負担率がはるかに高い。それでも、自衛隊が朝鮮半島へ上陸すると「妄想」に取り憑かれている。


    (5)「6年ぶりに開かれるトランプ・習近平会談については、韓国の立場を「二つの臼石の間に挟まれた国」とたとえた。李大統領は「世界秩序はますます複雑で危険な局面に向かっている」としながらも、「しかしこのような二者会談を通じて、互いを理解し共存し、相互利益的な解決策を見いだすことができると信じている。そうした結果を導くのがアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議議長国である韓国の役割だ」と述べた」


    韓国は、中国の存在に頭を痛めている。米韓相互防衛条約があるにもかかわらず、中国を恐れているのが不思議である。日本を軍事的に恐れるのと同じなのだろう。

     

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    ドイツと中国の間で、外交的対立が生じている。中国は、半導体やレアアース(希土類)の欧州向け輸出を絞り、ロシアのウクライナ侵略を間接支援する。これをドイツのワーデフール外相が批判し、中国が発言の撤回を要求。侮辱と受け止めたドイツ政府は、対抗措置として26日に出発する予定だった外相の訪中を延期した。単なるボタンの掛け違いではない。中国からの経済自立を図る欧州の苦悩に満ちた序章の幕開けである。中国の振る舞いは、ドイツとして「見て見ぬふりできぬ」という強い決意を示したものでもある。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月28日付)は、「中国に屈さぬドイツ、外相訪中棚上げ 苦悩の経済自立」と題する記事を掲載した。

     

    ワーデフール氏の発言は、Nikkei LIVE「ドイツ外相に問うトランプ時代のアジア秩序」と題して10月14日にベルリンで公開収録し、20日に配信された。壇上にのぼったワーデフール氏は、外交・安全保障の政策通として知られる政治家である。訪中で何を議題にするのか。「ロシアを後押しする中国を見て見ぬふりはできない」。攻撃的な口調でこそなかったが、固い決意がのぞいた。

     

    (1)「発言は、「口が滑った」のではない。国際秩序と法の支配は守られるべきだという信念からきている。これまでも中国の覇権主義を公然とけん制してきた。北ドイツの出身者らしい率直さも相まって、ときにドイツメディアの番記者も驚くほどの厳しい表現を並べる。中国は、よほど腹に据えかねたようだ。訪中直前になって、過去の発言を軌道修正するようドイツ政府に求めた。侮辱と受け止めたドイツは突っぱね、対抗策として訪中の棚上げを決めた。出発の2日前だ」

     

    中国の傲慢さが、よく表れている。発言取消しに等しい要求を独政府へしたからだ。ドイツが、侮辱と受け止めたのは当然であろう。

     

    (2)「訪中が凍結された背景には、中国が閣僚会合での議題を制限しようとしたこともある。ドイツは、王毅共産党政治局員兼外相との会談に加え、半導体の輸出制限について王文濤商務相、ロシア情勢を巡って別の中国高官との会談を要望した。中国は外相による「友好親善会談」は承諾したものの、貿易障壁やウクライナ侵略を議題にすることを拒んだ。ドイツ外相に同行する予定だった経済団体の関係者は通商摩擦を巡る事務レベル会合を試みたが、これも「不調に終わった」と独メディアのテーブル・ブリーフィングスは報じる。不都合なことに触れたくない中国は、争点をずらしてもドイツが折れると見くびっていた節がある。多くのドイツ企業が中国市場を頼るからだ」

     

    ドイツが、外相の訪中を棚上げした裏には、中国が閣僚会合での議題を制限しようとしたこともあるという。中国が上から目線で臨んだことが裏目に出たのだ。

     

    (3)「外相の訪中は夏前に決まり、今年秋から来年にかけてクリングバイル副首相兼財務相、メルツ首相らが北京入りする予定だった。中国側はドイツが実利外交に徹して対立を避け、独中蜜月に戻ると踏んでいた。ところが中国の予想を裏切り、ワーデフール氏は強気だった。当然だろう。単なる対話のために訪中すれば、「高圧外交」でドイツは屈すると踏んでいた中国のシナリオに従うことになってしまう。取材に応じた保守系与党のキリスト教民主同盟(CDU)の重鎮は「訪中延期は正しい決断」と口をそろえた」

     

    ドイツでは、外相の訪中の他に今年秋から来年にかけて、クリングバイル副首相兼財務相、やメルツ首相らが北京入りする予定であった。中国は、これをドイツの「中国詣で」と誤解して高姿勢になった。ドイツが、怒るのは当然であろう。

     

    (4)「(ドイツには)中国に屈しなければ、欧州の「経済自立」を探る欧州連合(EU)の後押しを得られるとの計算もあった。盟主ドイツは、「中国に弱みを握られている状況」より、強権体制に毅然と対峙する国家であってほしい。特にロシアの脅威にさらされるバルト3国やポーランドはそう考える。中国ビジネスに頼る企業からは「政治家は景気のことを考え、中国とうまくやってほしい」との声が漏れる。そうした声に耳を傾けすぎた結果、中国の影響力が欧州で膨らんだと悔いる政策当局者も増えている。いま何もしなければ中国への依存度を減らすデリスキング(リスク軽減)を掲げながら、成果をあげられなかった過去の政権の延長線上になりかねない」

     

    ドイツは、欧州の「盟主」である。中国に対して毅然として対応して欲しいと願うのはEUの願いでもある。欧州は、中国への依存度を引下げねば、ウクライナを侵略するロシアを支援する中国を認めることになる。こういう強い姿勢が、中国へ向けられている。

     

    (5)「中国と適切な距離を保ちながら戦略分野での自立を志す欧州と、経済を「人質」にとりながら欧州をコントロールしたい中国がせめぎ合う。目先の利益に群がる企業を人質にとり、政治に圧力をかける――。これは、冷戦期の東側陣営の軍事同盟ワルシャワ条約機構が使っていた手口でもある。国家プロジェクトを意識的に西側企業に割り振って手なずけ、そこから西側陣営をコントロールしようとした。経済力を増した中国がその戦略を駆使する。欧州企業が抜き差しならないところまで深入りしていることに欧州政治が危機感を持ち、ようやく是正に動く。対中政策の再精査である」

     

    中国の経済を使った巧妙な外交姿勢は、欧州の弱体化へつながる。こういう危機感が、EUのTPP(環太平洋経済連携協定)接近に表れている。中国の「傲慢外交」は、ドイツの強い抵抗に遭遇した形だ。

     

     

     

     

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    北朝鮮がロシアと軍事的に緊密化すると共に、韓国サイドから頻りと日韓安全保障論が提示されている。韓国は、米国と安全保障条約を結んでいる。その上に、日韓相互安全保障条約が必要かという根本的な疑問がわくのだ。米軍は、世界最強の軍隊である。韓国は、その米軍に守られていることで安心すべきであろう。ただ、最近の米韓関係はギクシャクしている。韓国が、インド太平洋戦略へ協力するとい前政権の方針を撤回した結果、起こっている問題だ。となれば、韓国がインド太平洋戦略へ協力する姿勢を明確にすべきである。「困った時の日本頼み」は、日本として甚だ迷惑である。

     

    『日本経済新聞』(10月28日付)は、「日韓は相互安全保障を構築せよ 」と題する寄稿を掲載した。筆者は、テンプル大学日本校教授(政治学)ジェームズ・ブラウン氏である。

     

    日韓国交正常化60周年を迎えたが、両国関係が冷え込む可能性はまだ高い。しかし、昨今の状況を鑑みると日韓同盟は必要不可欠だろう。中国は武力も含めて台湾を掌握する決意を隠さず、北朝鮮も自己主張を強め、日本と韓国の安全保障が悪化していることは間違いないからだ。日韓は、これまで以上に米国との同盟関係を必要としているが、米国もトランプ政権になり、多くは期待できない。

     

    (1)「日本と韓国の指導者たちは、危険な状況を認識しいくつかの改革を行ってきた。特に日本の場合、その変化は大きい。敵の基地を攻撃するのに十分な射程を持つミサイルの整備、防衛費を国内総生産の2%まで引き上げるという公約、英国やオーストラリアを含む同様の考えを持つ国々との安全保障関係の深化などである。だが、中国と北朝鮮を確実に抑止するために必要なレベルには程遠い。このままでは中国が軍事力と経済力を駆使して日韓を自国の意向に従わせたり、中国と北朝鮮が米国の安全保障はすでに死文化していると判断し、地域秩序を強引に作り変えたりする可能性もあるだろう」

     

    この議論の根本的な主張は、米国が日本と韓国の双方で安全保障条約を結んでいる点を無視している点だ。米国という世界最強の軍備を持つ国と、安全保障条約を結んでいることに安心できないという議論は、余りにも突飛な想定である。要は、米国から安全保障条約を破棄されないように努力することが不可欠である。韓国は、そういう努力をしているだろうか。中国と「二股外交」を行ないながら、今度は日本と相互安全保障条約を結ぼうというのは、身勝手な議論と言うほかない。

     

    韓国は、インド太平洋戦略へ協力すべきである。韓国の二股外交論から言えば、中国を刺戟したくないからインド太平洋戦略から抜けだし、その穴を日本との安全保障条約で補おうというのは、余りにも自国本位の主張であろう。

     

    (2)「深刻な状況のため、日韓ともに核兵器の保有について議論している。核兵器の保有が避けられなくなる時が来るかもしれないが、核兵器保有を急ぐ国は先制攻撃を受けやすい。日韓が核兵器を保有することは、国際的な軍備管理体制を破壊し、核拡散の連鎖を引き起こす可能性もある。より良い選択肢があるのに、大量破壊兵器に手を伸ばすのは誤りだ。日韓間の相互安全保障の構築ほど、地域の安全保障に有利な影響を与える一歩はない。日韓の安全保障はすでに絡み合っている。同盟で結ばれた両国の軍事力は、中国、北朝鮮にとって手ごわい相手となるだろう。武器生産を含め、協力の機会は無限にある」

     

    韓国は、相互安全保障に拘っている。だが、集団安全保障によって地域の安全保障を守る。これが、地域の連帯意識を育てて行く上でも極めて重要だ。韓国が、日本と相互安全保障を求めるのは、台湾有事にかかわりたくないという、中国寄り姿勢を示している。韓国が、中国との関係を絶たずに安全保障を強化するには、日本を引き込むことがベストという結論であろう。日本は、核武装しないことが「国是」になっている。そうなると、米国の傘の下に入るほかない。日本の核武装は、アジアへ大きな不安を呼ぶだろう。太平洋戦争の苦い思い出が蘇るからだ。

     

    (3)「日本が、韓国を植民地支配したことによる元徴用工、元慰安婦などの歴史的問題に関する懸念もある。だが、韓国の進歩主義者と日本のナショナリストの双方が見せる歴史への執着は、どちらの国にも今は許されない平時のぜいたくだ。冷戦後の比較的安定した時代は終わり、もう戻ってこない。根本的な新しい考え方が必要だ」

     

    集団安全保障が、日韓双方にとってベターな選択だ。韓国は、インド太平洋戦略へ戻り、台湾有事にはそれなりの役割を果す決意を示すべきであろう。中国への「二股外交」を行なうために、日韓相互安全保障で日本を引き込もことは許されない話だ。

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    中国は、中国製レアアースが0.1%含有の工業製品でも、中国が管轄権を持つという一方的な発表して世界を驚かせた。同時に、底知れない中国の「陰謀」に改めて気付かされた。だが、米国の100%関税に仰天し、実施を1年延期することで米中が折り合った模様。米財務長官が発表した。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月27日付)は、「中国レアアース規制『1年延期』と米財務長官 米の100%関税も見送り」と題する記事を掲載した

     

    米中両政府は、25〜26日にマレーシアの首都クアラルンプールで開いた5度目の貿易協議を終えた。出席したベッセント米財務長官は米メディアに、中国側がレアアース(希土類)の輸出規制を1年間延期するかわりに、米国は100%の対中関税発動を見送る方向だと述べた。

     

    (1)「ベッセント氏は、米ABCニュースのインタビューで明らかにした。中国側がレアアース輸出規制を「1年間延期し、検討し直すことになると思う」と話した。規制は12月1日に発効する予定だった。トランプ米大統領は、11月1日に100%の対中追加関税を発動すると脅していたが、ベッセント氏は協議の結果「関税は回避された」と明言した。中国は、9日にレアアースの新たな輸出規制案を公表した。中国産レアアースをわずかでも含めば、海外製品でも輸出時に中国政府の許可を求める内容だ」

     

    中国は、「資源独占」がいかに脆いかという認識がゼロである。新たな有望鉱床が発見されれば、既存鉱山はその地位を脅かされることを知らないのだ。驚くほど「無知」という印象を与える。日本の南鳥島深海5000メートルに、中国陸上鉱山の品位20倍のレアアース泥が存在し、28年から商業生産に入る予定だ。中国の「レアアース天下」は期限付きである。

     

    (2)「ベッセント氏によると、11月10日に停止期限が満了する予定だった米国が中国にかける相互関税の「上乗せ税率」についても、期限を再延期することで一致したという。トランプ氏と中国の習近平国家主席は、10月末に韓国で首脳会談を開く予定だ。ベッセント氏は閣僚級協議の終了後、記者団に「首脳が話し合うための枠組みづくりは非常にうまくいった」と話し、首脳会談へ道筋をつけたことを強調していた。中国商務省の李成鋼・国際貿易交渉代表も協議後、記者団に「(米国とは)暫定的な合意に至った」と明言した。李氏は合意の内容を話さなかったが、今後は米中それぞれが国内での手続きに移ると説明した」

     

    中国は、米国の追加100%関税で「ビックリ仰天」して、レアアース規制実施を1年間延期するほかなかった。100%関税は、中国の輸出産業の息の根を止められるに等しい重圧だ。中国が、レアアース問題を持ち出せば、必ずこういうリアクションが想定されたはずである。「大山鳴動して鼠一匹」という結果に終った。

     

    (3)「米国側が、中国企業に対する事実上の禁輸措置拡大や、中国船からの入港料徴収を延期するかどうかはまだ明らかになっていない。李氏は協議について「米国の表明する立場は強硬で、中国の利益擁護は断固としたものだった」と語った。マレーシアでの閣僚級協議には米国からベッセント氏と米通商代表部(USTR)のグリア代表、中国は何立峰(ハァ・リーファン)副首相らが出席した。中国が事実上輸入を停止している大豆について、米国は再開を求めていた。ベッセント氏はインタビューで、米中首脳会談後に合意内容が公表されれば「米国の大豆農家はとても満足するだろう」と自信を見せた」

     

    トランプ1期政権時に、中国が米国へ約束した農産物輸入は、かなり実行されずに終った。中国は2020〜2021年の2年間で、米国製品を2017年比で2000億ドル以上追加輸入すると約束した。実際の輸入額は、目標の約60%程度にとどまりまった。特にエネルギー・製造業製品の輸入が大幅に未達であった。今度は、米国が強腰で交渉に臨んだことは当然であろう。

     

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