日米両政府は、人工知能(AI)や次世代通信規格6Gなど7分野の科学技術協力に合意する。信頼性の高いAIインフラや通信網を新興国に普及させるため、研究開発や国際規格づくりに取り組むことになった。先端分野の国際的な影響力を強める中国に対抗する。
今回の日米協力に関する合意は、2025年7月に日本が表明した5500億ドル(約80兆円)の対米投資枠と密接に連動している。この投資枠は、日米間の関税交渉の一環として設定されたもので、AIや量子技術、次世代通信、医薬品、重要鉱物などの戦略分野が対象だ。日本政府は、JBIC(国際協力銀行)やNEXI(日本貿易保険)を通じて、米国内のプロジェクトに対して融資や保証を行う仕組みを整えている。
『日本経済新聞 電子版』(10月24日付)は、「日米がAIや6Gなど先端7分野で協力合意へ 中国に対抗、新興国輸出」と題する記事を掲載した。
高市早苗首相は28日、都内でトランプ米大統領と日米首脳会談に臨む。トランプ氏の来日にあわせて、関係閣僚間で「技術繁栄ディールに関する日米間の協力覚書」を交わす。両国で「イノベーションの新たな黄金時代」を構築すると明記する。
(1)「協力分野として①AI②研究情報の保秘③次世代通信規格「ビヨンド5G、6G」④医薬品・バイオサプライチェーン(供給網)⑤量子⑥核融合⑦宇宙――を挙げる。2月の日米首脳会談で合意した重要技術に関する協力を具体策に落とし込む。柱の一つはAIだ。覚書に「日米のAIインフラ、ハードウエア、モデル、ソフトウエア、アプリケーションの輸出を促進する」と記す。データセンターやスーパーコンピューターなどAI開発に必要な基盤設備を含む」
1)AI分野では、日本企業が質の高いデータを活用した国産AIの開発に力を入れており、信頼性・安全性の面で中国製AIとの差別化が可能である。
2)6G(ビヨンド5G)では、日本がNTTの「IOWN」の国際規格策定を主導する。世界通信インフラの次世代化において先導役を担う構えだ。
3)量子・核融合・宇宙分野では、30年代の発電実証を目指す核融合技術や、量子通信・量子計算の応用研究など、日本の基礎技術力が活かされる。
4)医薬品・バイオ供給網では、産官学連携によるサプライチェーンの強化を進め、日本の製薬技術と品質管理が信頼の柱となる。
これらの分野は、日本が主導的役割を果たすことで、国際的な技術規範や市場展開に影響力を持つという意味合いが込められている。
(2)「背景には、科学技術分野での中国の台頭への危機感がある。中国政府が、研究開発に巨額の予算を投じて技術力を高める一方、中国が開発したAIには個人情報保護や生成内容の正確さなどに懸念が指摘される。日米両政府には、新興国が中国のAIを採用して依存を深めていくことへの警戒がある。安全性・信頼性の高いAIの普及に向けて技術開発や国際規格づくりの主導をめざす。日本政府は2025年中にAIの研究開発や活用を推進するための基本計画を策定する。質の高いデータを使った国産AIの開発や、グローバルサウスなど海外市場への展開を支援すると明記する方向だ」
日米両政府には、新興国が中国のAIを採用して中国への依存度を深めることへの警戒がある。日本技術が、新興国の中国傾斜を防ごうという狙いだ。
(3)「ボストン・コンサルティング・グループが、24年に売上高5億ドル以上の日本企業の幹部82人を対象にAI開発への投資額を調査したところ、2500万ドル超との回答が半数ほどを占めた。日米の協働によって一段の投資活性化や国際競争力の向上を促す。日米両政府は覚書に基づいて「ビヨンド5G、6G」の研究開発や国際規格の策定も主導する。日本が30年代の発電実証を目標とする核融合や量子、宇宙分野でも人材育成や共同研究を進める。産官学で連携して医薬品のサプライチェーン確保にも取り組む」
日米両政府は、覚書に基づいて「ビヨンド5G、6G」の研究開発や国際規格の策定も主導する。5G普及段階では、中国ファーウェイの5Gがバックドドアを忍ばせていることが発覚した。米国は、先進国へファーウェイの5G採用中止を呼掛けるという事態にまで発展した。NTT開発のIWONは、次世代6Gの基幹技術として、米国が国際規格化を目指して協力している。
米国は、NTTと連携することで、6Gの国際標準化を日米主導で進める意図がある。これは、将来の通信インフラの「設計思想」そのものに影響を与える重要な戦略だ。6Gは軍事・医療・金融などの基幹インフラに直結するため、安全保障上の重要技術と位置づけられている。米国は、NTTのIOWN構想(光・電波・音波を活用した超高速通信)に注目し、共同研究や実証実験を通じて技術的優位性を確保しようとしている。




