高市首相の台湾問題発言に対して、中国が抗議をエスカレートさせている。中国人の訪日旅行や日本留学にブレーキを掛ける動きに出てきた。これら一連の動きの裏には、習近平国家主席が指示している。中国外務省は14日、孫偉東外務次官が前日夜に金杉憲治駐中国日本大使と「指示に従って会い」と明らかにしたことで習指示を示唆した。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月18日付)は、「中国が日本にけんかを売る理由」と題する記事を掲載した。
中国の「戦狼」は新たな標的を見つけた。ロイター通信の報道によれば、彼らは下品な言葉を使って日本の高市早苗新首相を攻撃している。危機がエスカレートする中で、中国当局は中国人の観光客やビジネス関係者に対し、日本への渡航自粛を呼びかけた。また、日本に留学した場合に直面するとされるリスクについて注意喚起したほか、日本が領有権を主張する海域をパトロールするために沿岸警備艇を立て続けに派遣した。
(1)「高市氏の「罪」は、国会での質問に対して正直かつ率直な答弁をしたことだ。これは重大な質問だ。2015年に成立した安全保障関連法では、「存立危機事態」は日本の集団的自衛権の行使につながり得る。高市氏の答弁は明快だった。その内容は、中国が武力で台湾を支配下に置こうとした場合は、安保関連法が想定する存立危機事態に当たり、そうした状況下では自衛隊が米国などの同盟国を支援することがあり得るというものだ。過去の日本の首相でこれほど明確に発言した者はいないが、日本の基本的な立場に実質的な変化はなかった。中国による台湾への攻撃は日本にとって大きな脅威となり得る」
高市首相は、率直に中国による台湾への攻撃が日本にとって大きな脅威となり得ることを表明した。これは,事実である。
(2)「中国の反応は、ある程度避けられないものだった。領有権を主張している国は、その主張が消えないようにするために、常に強く表明しておかなくてはならない。中国の見解では、台湾は中国の一つの省であり、中国が台湾をどう扱おうと、他国に干渉する権利はない。日本が中国本土と台湾の紛争に介入する可能性を示唆するなら、中国は抗議せざるを得ない。さもなければ自らの主張に関して疑念があると認めることになる。同様に、米国が台湾に武器を売却するたびに、中国は自国の主張が真剣なものであり、いつかはそれを実現させる意向だということを示すために、異議を申し立てざるを得ない」
中国の見解では、台湾が中国の一つの省である。中国が、台湾をどう扱おうと、他国に干渉する権利はないとしている。これは、自国本位であり武力使用は他国へ損害を与えるだけに許されない問題だ。平和裏に行われるならば、他国は介入不可能である。
(3)「そうした反応が避けられなかったとしても、危機が避けられないというわけではなかった。中国は形式的な抗議をして、数週間で平常に戻ることもできただろう。中国政府は小さな騒動を大きな対立に変えることを決めた。それはなぜか。中国政府の動機をアウトサイダーが読み解くのは難しい可能性があるが、二つのことが起きているように思える」
習近平氏は二つの理由から、高市発言をテコにして大騒動に持ち込む決意をしている。
(4)「第一に、中国共産党には威圧という長い伝統がある。相手が国内の敵対勢力であろうと、扱いにくい外国政府であろうと、中国政府はまず直感的に相手を威圧したり、脅したりすることが多く、可能な場合には、相手に何かを強要する。これがうまくいった場合は、それでよい。うまくいかなかった場合は、いつでも、より対立的でないアプローチに変えられる」
中国は、相手構わずに気にくわない国へは、直感的に相手を威圧する行動に出る。現状は、この第一回戦が始まった。
(5)「第二に中国政府は、高市氏が自らの立場を完全に確立する前に同氏の力を損なうことを望んでいる。同氏は、タカ派だった安倍晋三元首相の政治手法の後継者だ。高市氏はまた、ややハト派の公明党から連立維持を拒否された後、タカ派のより小規模な日本維新の会を連立に引き入れることができた。中国は、高市氏に歯止めをかけなければ、日本の防衛力強化に向けたより多くの施策が打ち出されるのではないかと懸念している。共同通信は、高市政権が非核三原則の見直しを検討していると報じた。世界の歴史の中でも最速のペースで核武装強化を進めている中国は、近隣諸国が核兵器を持たない弱い国であってほしいと考えている」
第二回戦は、日本国内に「反高市ムード」の高まることを狙っている。これは、日本国内世論へ手を突っ込む行為である。高市首相を支持する人も、そうでない人も中国の言動に賛成することは危険である。こういう言葉を使いたくないが、「利敵行為」という醜い結果になろう。
(6)「中国は、高市氏の発言への同国の憤りが、日本国内の反高市勢力の活性化につながることを期待している。中国と関係を持つ企業が雇用の中心になっている地域の議員や、観光が主な収入源になっている地域の議員もいる。高市氏は、自らの手本となる人物としてマーガレット・サッチャー氏(元英首相)の名を挙げている。高市氏が元祖「鉄の女」サッチャー氏と同様に、タフで機知に富んだ鉄の女であることを期待したい」
高市首相は、欧米との連携を強めるべきである。台湾の武力侵攻は、自由と民主主義に関わる重大問題である。





