勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2025年11月

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    中国の王外相は、欧州へ「日本非難」を呼掛けている。高市首相の台湾発言への反発である。フランス外相に続いて英国外相にも日本へ圧力を掛けるように求めた。欧州は、日本と同じ価値観で結ばれている。日本と強固な関係の仏英へ、中国が日本非難への同調を求めても効果はないのだ。虚しいことに時間を費やしているものである。

     

    欧州は、26年に「脱中国」の動きが強まると予測している。ドイツのシンクタンク、メルカトル中国研究センターは専門家766人を調査した。その結果、中国と欧州の関係について、8割以上が欧州における中国への依存度が楽観視できないほど低下すると回答した。全体の4分の1の専門家は、「北京にとって欧州各国との関係強化が重要」と回答したのだ。王外相は、こういう欧州の本音も知らずに、日本非難を繰り返しているのだ。

     

    『レコードチャイナ』(11月30日付)は、「2026年の中国は技術革新と米国との関係悪化が顕著、シンクタンクが予測独メディア」と題する記事を掲載した。

     

    独メディア『ドイチェ・ヴェレ(中国語版)』(11月28日付)は、独シンクタンク『メルカトル中国研究センター』が専門家766人を取材し、26年は中国が人工知能(AI)や半導体、バイオテクノロジー、環境技術などの面でイノベーションを起こす一方、米国との関係が悪化する可能性が高いとの予測を報じた。

     

    (1)「記事によると、メルカトル中国研究センターが取材した766人の専門家のうち、8割近くが26年に中国のAI分野でのイノベーションが起きるだろうと回答。半数以上が半導体、バイオテクノロジー、環境技術でも同様の発展があると回答した。また、6割以上の専門家が科学技術や軍事、貿易などの分野で米中両国の関係が悪化すると回答した」

     

    26年の中国は、AI分野でのイノベーションが起こるだろうと予測している。これをめぐって、米中関係が悪化するという見立てのようだ。米国技術の「盗用」といったお馴染みの問題が、ぶり返させるのか。トランプ大統領の「ディール」の範囲を超えるとでもいうのであろう。

     

    (2)「中国と欧州の関係については、8割以上が欧州における中国への依存度が楽観視できないほど低下すると回答した。全体の4分の1の専門家は、「北京にとって欧州各国との関係強化が重要」と回答した。ロシアとウクライナについては、半数以上が「中国がロシアへのサポートを変えることはないだろう」と回答した。3分の1の専門家が軍事用に転用可能な物資の輸出を増やすと回答した」

     

    欧州は、もともと米国の「親戚」である。米中対立では、米国を支援しなければならない関係だ。それに、欧州経済は中国のダンピング攻勢で大きな損害を被っている。欧州が、米中を秤に掛ければ、米国を応援するはずだ。「血は水より濃し」という諺通りである。中国は余りにも身勝手な振舞だ。自己過信に陥っている。ロシアを支援する中国が、欧州で受入れられるはずがないのだ。こうした分りきったことを認識しないでいる。

     

    (3)「中国の社会経済については、大多数の専門家が「若年失業率や福利厚生の欠陥の問題にあまり改善はないだろう」と予想した。3分の1の専門家は、出生率の低下が深刻化するも、26年に大規模な社会経済の混乱が起こることはないだろうと予想した。今回の調査は10~11月の4週間にわたって実行された。766人の専門家のうち、国籍が分かっているのは699人で、ドイツ人が44%、米国人が7%、中国人が4%だった。専門家の出身母体の内訳は、4分の1が学会、12%がシンクタンク勤務、1%が政府やEUのような公共機構の職員だった」

     

    中国経済は、一段と行き詰まりの様相を呈してきた。26年は、社会的騒乱は起こらないとしているが、そういう傾向を強めている。中国の国内事情は、決して安泰でないのだ。

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    韓国社会は、歯車が狂ってしまい元に戻らない異常状態にある。孤独死の半数以上が、50~60代の男性である。一方で、30代の「休んでいる」人口が33万人を超え、過去最多となった。経済活動の中核を担う30代で、求職活動すら諦めた人が増えているのだ。こういう異常な事態を迎えている根本要因は、儒教社会の「見栄」と終身雇用制と年功賃金制によって硬直化した労働市場にある。

     

    見栄は、会社で後輩に出世競争で敗れるとすぐに退職することだ。だが、労働市場は流動化していないので、転職者を受入れる職場がないのだ。30代で求職活動を放棄している人たちも労働市場の硬直化によって就職ができず、諦めている人たちである。韓国は、労働制度が既得権益で守られており、多くの犠牲者が山のように出ている。だが、こういう事態を解決しようという動きもないのだ。絶望状態である。

     

    『東亜日報』(11月29日付)は、「昨年の孤独死の半数以上が50〜60代の男性」と題する社説を掲載した。


    家族や周囲とのつながりを失い、ひとりで最期を迎えた後、しばらくして発見される「孤独死」の死者数が、昨年3924人と前年度比7.2%増加したことがわかった。死者100人中1.09人が孤独死で生涯を終えたことになる。性別では、孤独死の82%が男性で圧倒的だ。特に50〜60代の男性が孤独死の半数を超えるほど、脆弱な状態にあることが明らかになった。


    (1)「孤独死は、政府が関連統計を取り始めた2020年以降、着実に増加している。専門家は、1人暮らし世帯の増加と、断絶した居住環境を主な原因として指摘する。50〜60代の男性の中には、早期退職、事業失敗、離婚や死別で意図せず1人暮らしになることが少なくない。自ら1人暮らしを選択した人は外部活動や交流に積極的だが、失職や死別による非自発的1人暮らしは、周囲の関心と支援が必要であるにもかかわらず、なかなか心を開けない傾向がある。特に、住宅費の負担からワンルームや考試院(簡易宿泊施設)のように隣人とのつながりが希薄な環境に住むケースが多く、孤独死の懸念が高まっている」

     

    50〜60代の男性は、日本では現役世代である。この働き盛りの層が、孤独死するとは一体どういうことなのか。韓国は、この問題の奥に控えている硬直的労働市場の存在を直視しなければならない。この社説でも、全く素通りしていることに驚くのだ。終身雇用制と儒教社会の年令秩序が、こうした悲劇の根本にあることに気付くべきである。

     

    考えてみれば、子供の時から「良い学校」へ入るために塾通いし、企業へ就職できても出世で遅れれば退職する。どう見ても勘定に合わない「人生双六」である。後輩に抜かれても良いじゃないか。気張って退職すれば転職先がない。どう見ても損な選択だ。見栄が、人生を破滅に追いやる。こんなバカバカしいことで、最後は自らの命が重大危機に晒される。韓国社会は、もっと他人に惑わされない「自我の確立」に目覚めるべきだ。

     

    (2)「50〜60代男性の孤独死の特徴のひとつは、病死が圧倒的に多い点である。20代以下の孤独死では自死の割合が57%だが、50〜60代の男性は8.3〜13.5%にすぎず、大半が病気による死亡だ。この年齢層は身体機能の低下に、高血圧、糖尿病、がんなど慢性疾患のリスクが高まる時期で、定期検診と管理が重要である。しかし経済的困難に加え、世話をしてくれる人がいないため病気を悪化させ、緊急事態が起きても助けてくれる人が周囲にいないことで、ゴールデンタイムを逃してしまう」

     

    50〜60代男性の孤独死の特徴のひとつは、病死が圧倒的に多いという。アルコールで不満を解消させる「憤死」だ。もったいない人生の使い方である。

     

    (3)「中高年世代は、社会活動の活発な若者層や政府が支援する高齢者層とは異なり、政策対象でも福祉対象でもない「取り残された世代」だ。特にこの年代の韓国男性は、会社が生活のほとんどを占めた世代であり、「名刺のない生活」が訪れると人間関係が断絶し、挫折しやすい。しかし、心理的な困難を訴えたり助けを求めたりすることが不得意である。経済的・社会的孤立から抜け出し、安定した老年期へ移行できるよう、自ら助け合うとともに政府もきめ細かい政策で支援すべきだ。酒とたばこではなく、人との絆が、寂しい死を防ぐ」

     

    韓国は、既得権益社会である。一度、手にした特権は絶対に手放さない社会である。この我欲の強い社会が、どうしたならば自由な価値観に身を委ねる社会になるのか。百年河清を待つこととしたら、政治の役割は何かだ。左右の争いの前に、韓国の現状が異常事態に陥っていることに気づくべきであろう。

     

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    米国しか持ち得なかった「超大国の武器」を、中国も着々と手にしつつあるようだ。中国軍3隻目の最新空母「福建」が今月5日、南シナ海に面する海南省三亜市の軍港で就役した。当日は、習近平国家主席が満艦飾に彩られた福建に乗船して設備を視察し、自ら兵員をねぎらった。習氏の念願が叶ったのだ。国内経済は混乱の極みでも、習氏は「大きなオモチャ」を手にすることになった。

     

    『毎日新聞』(11月29日付)は、「中国が手にする超大国の武器 『G2』に透けるあの漫画キャラ」と題する記事を掲載した。

     

    その最大の特徴は「電磁式カタパルト」にある。リニアモーターの力で艦載機を加速して発艦させる装置で、従来は米軍の最新原子力空母でしか実用化されていなかった。福建を視察した習氏は、実際にカタパルトの作動ボタンを押し、満足そうにうなずいた。その映像を伝えた中国メディアは、「習氏自ら電磁式カタパルトの採用を決めた」と報じ、最高指導者の業績であることを強調した。

     

    (1)「国内世論は、「中国はついに空母3隻時代に入った」「米国の海上覇権は終わろうとしている」と高揚している。強大な空母戦力は、超大国の象徴とも言える。中国が空母建造に血道を上げるのも、軍事力の増強にとどまらない政治的な意味合いがあるからこそだ。 「米国に追いつき、追い越せ」という意識は、軍事だけでなく、中国の外交、経済、科学技術などあらゆる国家戦略をけん引している」

     

    即席栽培の中国式発展法は、すでに不動産バブル崩壊で息切れしている。不動産不況は、ますます深刻化しており、地価が暴落している。地価に依存する地方政府の財源は、すでに極限状態に達している。人の住まない「無人住宅」が将来、家賃を取れると仮定した証券化が、地方政府の手で始まっている。いずれ馬脚を現して、「第二のバブル崩壊」となろう。空母3隻を喜んでいられる悠長な中国経済ではなくなっているのだ。「火の車中国」へ落込んでいる。

     

    (2)「その背景にある独自の論理について、最近、分かりやすい解説を聞く機会があった。 中国人民大重陽金融研究院の王文院長は北京市での講演で「1840年のアヘン戦争以降、中国は西側列強に侵略され、痛烈な歴史的教訓を得た。それは『後れを取れば、虐げられる』ということだ。私たちは小学1年生のころから、教師にそのことを教え込まれる」と述べ、大国間の科学技術競争を勝ち抜く重要性を力説した。こうした西側諸国への激しい対抗意識が、習氏の政治スローガン「中華民族の偉大な復興」の根底にはある。その結果、挑戦者の出現を警戒する米国との間で、いや応なく緊張が高まることになった」

     

    まさに、「臥薪嘗胆」(がしんしょうたん)である。これは美談であるが、時と場合による。合理的経済計算をすれば、今の中国は空母を3席にするか、少子高齢社会に備えた福祉制度が重要かという選択である。中国が、戦争を仕掛けない限り、先進国は自ら中国を攻める動機がないのだ。先進国には、もはや領土拡張意欲はない。それよりも、科学技術こそ、富を生むことに気付いている。中国とは、発想の次元が異なっている。そう言っては悪いが、西側諸国よりも、100年以上の遅れがある。

     

    (3)「両国の技術覇権争いは激しさを増すばかりであり、最近は人工知能(AI)開発に欠かせない高性能半導体が主戦場と化す。米国は輸出規制や制裁措置を駆使し、中国に圧力をかけている。ところが、ここに来て両国の攻守が逆転する転換点が訪れた。中国が、掌握するレアアースの輸出規制である。特に習指導部が10月9日に発表した規制強化は重大な意味を持つ。中国国内だけでなく、外国であっても、特定の中国原産のレアアース、さらに中国が保有する関連技術を使用していれば輸出規制の対象としているためだ」

     

    レアアース問題は、日本の南鳥島の深海レアアースの商業化が、28年1月から始まる。日本政府は、極力この情報が拡散しないように抑え込んでいるが、「資源カルテル」は長続きしないのが経済の常識である。中国は、これに感づいているから日本へレアアース輸出で大ナタを振るわずに様子みをしている。日本が、半導体素材輸出を規制するからだ。レアアースも、「天下の宝刀」ではないのだ。

     

    (4)「中国のレアアース輸出規制にしろ、米国の関税引き上げにしろ、その影響は米中両国にとどまらない。自らの権益のために、その他大勢の国々を振り回すのは大国の横暴と言うほかない。さらに気になるのは、韓国での米中首脳会談の前後、トランプ米大統領が「G2」という言葉を口にしたことだ。G2とは米中が世界を主導する2極体制を意味する。00年代に米国で提唱された概念であり、そこには超大国の米国と、台頭する中国が、大国としての責任を分かち合うことへの期待感があった。だが、それから時代の風景は変わってしまった。トランプ政権は「法の支配」をないがしろにし、習指導部は他国を威圧する振る舞いをやめない。両者は互いの傲慢な部分をまねし合っているようにさえ見える」

     

    米中経済は、ともに「傷んで」いる。比較観で言えば、中国の方がはるかに重態だ。米国は市場経済であるから、「自然治癒力」が働く余地がある。中国は、権威主義経済であるから、習氏の考えが変らない限り変ることはない。どちらが、先行きに希望が持てるか。結論は改めて指摘するまでもないであろう。

     

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    中国で、入居者のいない「鬼城(ゴーストマンション)」の将来家賃を証券化し資金調達する手法が、湖北省や湖南省から全国へ拡大中である。「無から有」を生むという手品であり、「第二のバブル」と化す危険性が高まっている。地方政府の財源不足が深刻になっている証拠で、「毒を食らわば皿まで」という危険覚悟の振舞だ。中国経済の先行きは長くない。

     

    『ニューズウイーク 日本語版』(11月28日付)は、「ヘドロをカネに変える中国地方政府の錬金術『三資改革』とは?」と題する記事を掲載した。

     

    中国の地方政府の主な収入源はこれまで土地使用権の売却だった。現在は、不動産不況で収入が急減し、土地に依存した資金調達は事実上成り立たなくなった。そんななか、地方政府の財政難を解決するための代替手段として称揚されているのが新政策「三資改革」だ。

     

    (1)「三資改革とは、ダム、鉱業権、ゴミ処理権、下水処理権、さらにはヘドロまで......こうした「公共の資源」が次々と資産としてラッピングし直され、取引対象となっている。地方政府はこの手法によって、将来数十年分の資源収入を前倒しで現金化し、差し迫った財政危機を乗り切っている」

     

    三資改革の具体化では、公有資源を可能な限り資産化・証券化・レバレッジ化する新政策が行われている。入居者のいない「鬼城(ゴーストマンション)」の将来の家賃の証券化などの手法で資金調達する。最近、湖北省や湖南省から全国へ拡大中である。これは、極めて危険である。現在、誰も住んでいないゴーストマンションに人が住むという保証がないのだ。それにもかかわらず、あたかも家賃収入があるごとく装って証券化するとは「詐欺」である。この詐欺行為が、全国へ広がっているというから新たな「詐欺バブル」を引き起そうとしている。中国経済は、ここまで追い込まれている。もはや、将来展望ゼロの極限状況へ向っている。

     

    将来家賃の証券化とはなにか。 本来、証券化とは「将来得られる収益(例:家賃)」を担保にして、今すぐ資金を調達する仕組みである。 今回のケースでは、入居者がいない=家賃収入が未確定な物件の将来家賃を前提にした証券化で、資金を引き出そうとするもの。詐欺行為に当たる。いずれ、破綻は確実だ。

     

    (2)「事例を一つ紹介しよう。黒竜江省チチハル市依安県では、管轄するダムに堆積したヘドロを専門家に調査させた。その結果、「ヘドロには窒素・リン・カリウムなどが豊富に含まれ、有機肥料の原料として極めて価値が高い」という結論が示された。その後、政府は「公開入札」という形式を取りつつ、向こう20年のダムのヘドロ処理権を8億3900万元(約185億円)で政府が設立した新会社に取得させた」

     

    ダムのヘドロを売るのは、販売対象があるから合法行為である。

     

    (3)「新会社は、政府信用を利用して銀行から難なく融資を受けた。新会社は、事業と資金を獲得し、地方政府は目先の財政危機をしのぐ現金を手にし、銀行も融資実績を上げることができた。一見すると「一石三鳥」に見える。しかし、同じ手法が日本で行われれば、公金の不正管理や背任、詐欺などの罪に該当しかねない。ところが中国では、このような手法が「ヘドロを金に変える」と称賛され、「三資改革」の成功例として大きく取り上げられている」

     

    ヘドロの売却は、正当な商行為である。だが、住居者のいない住宅の家賃の証券化は詐欺行為である。中国の地方政府は、落ちぶれたものである。

     

    (4)「これは典型的な「殺鶏取卵(鶏を殺して卵を取る、目先の利益を求め将来の利益を失う)」な行為である。中国の地方政府にこんなことができるのは、中央政府が地方政府に対して「財源を創出せよ」と相変わらず圧力をかけているからだ。政治権力が中央に集中している一方で、地方政府は経済成長の責任を負わされている。中国の法律は将来の収益評価に関する厳格な監査基準にも欠けている。未来を食いつぶす繁栄の裏側には、将来の貧困が潜む。最も気の毒なのは、未来に生きる若い普通の中国人である」

     

    中国の法律は、将来の収益評価に関する厳格な監査基準にも欠けているという。むやみに高速鉄道の建設を強行していのも、厳格な監査基準がないからだ。中国の企業格付けは、極めて「甘い」とされる。収益評価に関する厳格な監査基準がないからだ。中国社会全体の抱える債務時限爆弾は、こういう不明瞭な未来評価基準が災いしている。

     

    中国経済は「社会主義市場経済」として、市場メカニズムと国家主導の計画的資源配分が併存している。このため、価格形成や資産評価が市場の需給やリスクに基づかず、行政的判断に左右される傾向がある。リスクの高い経済である。

     

     

     

    あじさいのたまご
       

    中国の3番目の空母「福建」は、2022年に「遼寧」「山東」に続き進水以降、試験運航を経て11月5日に就役した。中国当局は、「福建」が以前の「遼寧」「山東」が使用したスキージャンプ式離艦方式ではなく、米フォード級と似た電磁式の航空機射出装置を中国艦艇に初めて搭載したとし、大々的に広報した。だが、米独の専門家が相次いで批判。ドイツ専門家は、設計に致命的欠陥があると指摘した。

     

    『レコードチャイナ』(11月29日付)は、「中国の新空母の致命的な欠陥とは?―独メディア」と題する記事を掲載した。

     

    独『ドイチェ・ヴェレ』(11月25日付)は、中国で就航した新たな空母「福建」の設計に致命的な欠陥があるとする、ドイツ紙の報道を紹介した。写真は中国軍の3隻目となる空母「福建」。

     

    (1)「記事が紹介したのは、ドイツ紙『ディ・ヴェルト』による報道。同紙は中国海軍にとって3隻目の空母となる「福建」が今月初め就役し、海南省の海軍基地で行われたセレモニーに習近平国家主席が出席したことからも、中国がこの空母をいかに重要視しているかがうかがえると伝えた。「福建」が全長315メートル、排水量8万トンで、米国を除く世界最大の空母だと説明。米国の最新空母と同様に電磁カタパルトシステム(EMALS)を採用しており、より重く航続距離の長い艦載機を発艦させることができ、中国にとっては南シナ海の「第二列島線」へ相当数の戦闘機を展開可能になる一方、日本やフィリピン、台湾、ベトナムにとっては懸念材料であると解説した」

     

    「福建」は、米国の最新空母と同様に電磁カタパルトシステム(EMALS)を採用した。この技術は本来、中国にないもので他国技術を導入したはずだ。要するに、借り物技術だけに問題を起しているのであろう。かつて、中国専門家は「他国から窃取するほかない」と技術の壁を漏らしていた。

     

    (2)「同紙はその上で、「福建」が抱える「設計士の経験不足による致命的な欠陥」として、巨大な艦体を持つにもかかわらず複数の艦載機を同時に離着陸させることができないと指摘。艦体から斜めにずれた飛行甲板(アングルドデッキ)の設計により、艦載機が離着陸する際に3本ある電磁カタパルトのうち2本を横切ってしまうほか、1本のカタパルトの噴射偏向板が作動すると、着陸した機体が整備エリアへ移動できずに複雑な旋回が必要となり、後続の機体の離着艦を妨げると説明した。このため、「福建」の艦載機による離着陸量は、米国が保有する同等の空母の約半数にとどまると同紙は指摘している」

     

    「福建」の艦載機による離着陸量は、設計上のミスで米国が保有する同等の空母の約半数にとどまるという。

     

    (3)「記事は、「福建」が持つ「致命的な欠陥」と近代的空母の運用経験不足から、中国海軍は短期的には米海軍に対抗する戦力とはなり得ないと予測する一方で、衛星画像からは中国4隻目の空母が米国の最新鋭空母に匹敵する排水量11万トン超の原子力空母となることが示唆されており、中国の戦力が米国に匹敵するのは時間の問題だとも伝えた。その上で、「福建」は総じて中国が遠洋で軍事力を誇示できる新時代の始まりを告げるものであり、中国の学習能力と海洋強国への決意を示す警告信号でもあると結論づけている」

     

    空母の離着陸技術は、極めて高度なものとされている。米国でも当初は多くの犠牲者を出した。それだけに、「福建」の「致命的な欠陥」と近代的空母の運用経験不足によって、戦力は米国よりもはるかに劣る、というのは当然であろう。

     

    『中央日報』(11月18日付)は、「空母『福建』酷評に…中国メディア『米専門家らの概念不足』」と題する記事を掲載した。

     

    中国メディアが自国の最新鋭空母「福建」に対する西側の酷評に反論した。「福建」は米国の最新鋭空母「フォード」に匹敵する性能と主張しながらだ。

     

    (4)「中国の3番目の空母「福建」は、11月5日に就役した。しかし、「福建」の電磁式射出装置に対する西側の評価は厳しかった。米海軍空母で勤務したカール・シュスター予備役大佐はCNNに出演し、「『福建』着艦区域が船体中心線から6度にすぎず、米海軍空母の9度と比較すると角度が小さい」とし「このため着艦用滑走路と船首側に配置された2つの射出装置の間に確保される空間が制限される」と主張した。したが甲板の余裕空間が減り、同時に離着艦能力が落ちるしかないという論理だ。「福建」の実質的な作戦能力がフォード級より一段階低いニミッツ級空母の約60%水準というのがシュスター大佐の結論だった」


    着艦区域は、空母の「まっすぐな中心線」から少し斜めに配置されている。なぜ斜めかというと、もし着艦に失敗しても、飛行機が空母の前方にある他の設備にぶつからないようにするためだ。「福建」は、この斜めの角度が6度しかない点が問題とされている。米国の空母では9度くらいあるのが一般的である。この差が何を意味するかといえば、次のような問題が起こる。

     

    角度が小さい(6度)と、滑走路が船の中心に近くなる。その結果、滑走路の周りにある「飛行機を発射する装置(カタパルト)」との間のスペースが狭くなる。これによって、同時に複数の飛行機を離着艦させる効率が落ちるというのだ。「福建」の実質的な作戦能力が、フォード級より一段階低いニミッツ級空母の約60%水準とされている。これは、「福建」の戦闘能力が大きく落ちることを意味する。一大事だ。 

     

     

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