中国政府は、先端半導体不足が深刻化していることを受け、国内最大の半導体受託製造会社、中芯国際集成電路製造(SMIC)に対し、華為技術(ファーウェイ)のニーズ充足を優先させようとしている。ファーウェイは、ハイテク複合企業に成長しただけに、中国政府は後押しに躍起となっている。
ファーウェイは、形態「Ascend」シリーズなどのAI半導体を自社で設計している。このシリーズは、AIトレーニングや推論処理に特化したデータセンター向けのAIアクセラレータだ。自然言語処理、画像認識、予測分析などの用途に使われている。中国政府が、生産に介入する背景だ。
製造はSMICなど外部へ委託している。2026年には「Ascend 910C」を約60万個、シリーズ全体では最大160万個の生産を目指しているとされる。米国の制裁下で、エヌビディア製品の入手困難を受けて、国内向けに自社設計チップを供給する体制を強化している。中国政府が、この計画を支援している。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月12日付)は、「先端AI半導体不足の深刻化を受け、中国政府が介入し、テック企業は次善策に頼っている」と題する記事を掲載した。
(1)「中国のテック企業は、限られた国内生産能力の確保に奔走しており、場合によっては、誰もが欲しがるエヌビディア製の高性能半導体を研究所がひそかに入手している。話題のAIスタートアップ、ディープシークは今年、半導体不足のため、最新モデルのリリースを延期せざるを得なかった、と同社の事業に詳しい関係者が明かした。また別の関係者によれば、ファーウェイなどの企業は、AIモデルの訓練に役立つ巨大で電力消費量の多いシステムに数千個の半導体を束ねるなど、次善策を講じている」
AIモデルの訓練で、数千個の半導体を巨大で電力消費量の多いシステムに束ねて使っているという。「人海戦術」である。一方では、誰もが欲しがるエヌビディア製の高性能半導体を研究所がひそかに入手している。
(2)「中国企業と中国政府が、最近の米国の輸出規制に直面して講じている措置の規模は、AI覇権争いにおける利害関係の大きさを示している。米政府高官の間では、中国への半導体・製造装置の輸出制限を継続するか、それとも販売拡大を認めるかで意見が分かれている。彼らの目標はファーウェイ製半導体のさらなる高度化と世界的な需要拡大を防ぐことだ。ホワイトハウスの決定は、国内(エヌビディアなどの企業)と国外の両方に影響を及ぼす。トランプ大統領は先ごろ、中国の習近平国家主席との会談で、新しいエヌビディア製半導体の対中輸出の可能性について議論しないことを選択した。これは、より優れた技術を提供することで中国軍を強化するなどの安全保障上のリスクについて、高官から警告を受けたためだ」
中国は、米国の発明したAIで米国を追い抜くという、普通では考えられない夢を描いている。世界覇権という幻想が、中国を夢中にさせているのだ。国内の製造業は、混乱しているのにも関わらず、「一点突破主義」である。
(3)「エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、中国は半導体の生産を急速に拡大しており、世界のAI開発者の半数が中国に拠点を置いていると主張している。また、エヌビディアがファーウェイと競争し、同社の半導体が世界中に拡散するのを阻止するために、自社の先端AI半導体「ブラックウェル」の中国向け輸出は認められるべきだとしている。同氏は先ごろ「中国はAI分野で米国に数ナノ秒遅れているだけだ」と述べた。エヌビディアやホワイトハウスのAI担当責任者デービッド・サックス氏などは、多くの専門家が中国の進歩の速さを過小評価しており、国家主導の投資は最終的に成果を上げるだろうと話す」
エヌビディアのフアン最高経営責任者は、自分のビジネス第一が露骨に表れている。国益という視点はなさそうだ。
(4)「多くの専門家によれば、中国の半導体生産を定量化するのは困難だが、最も楽観的な予測でさえ同国の需要を満たせておらず、完全な自給自足を実現することの難しさを示している。シンクタンクのインスティテュート・フォー・プログレスの著名な技術フェローで、バイデン政権下で輸出規制に携わったサイフ・カーン氏は「数字を5倍にしても、国内市場の需要を満たすには程遠いかもしれない」と述べた。中国当局者は自国の半導体製造能力について、米国ほど先進的ではないことを認めながらも、急速に発展しており、工業生産を加速させることができる政治体制によって支えられていると言う」
中国半導体は、成熟品でも自給率が20%程度である。それにもかかわらず、先端半導体を目指している。ここに、矛盾の原点がある。先端半導体を製造する技術基盤が整っていないのだ。無理に無理を重ねている。




