勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2025年11月

    あじさいのたまご
       


    中国政府は、先端半導体不足が深刻化していることを受け、国内最大の半導体受託製造会社、中芯国際集成電路製造(SMIC)に対し、華為技術(ファーウェイ)のニーズ充足を優先させようとしている。ファーウェイは、ハイテク複合企業に成長しただけに、中国政府は後押しに躍起となっている。

     

    ファーウェイは、形態「Ascend」シリーズなどのAI半導体を自社で設計している。このシリーズは、AIトレーニングや推論処理に特化したデータセンター向けのAIアクセラレータだ。自然言語処理、画像認識、予測分析などの用途に使われている。中国政府が、生産に介入する背景だ。

     

    製造はSMICなど外部へ委託している。2026年には「Ascend 910C」を約60万個、シリーズ全体では最大160万個の生産を目指しているとされる。米国の制裁下で、エヌビディア製品の入手困難を受けて、国内向けに自社設計チップを供給する体制を強化している。中国政府が、この計画を支援している。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月12日付)は、「先端AI半導体不足の深刻化を受け、中国政府が介入し、テック企業は次善策に頼っている」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国のテック企業は、限られた国内生産能力の確保に奔走しており、場合によっては、誰もが欲しがるエヌビディア製の高性能半導体を研究所がひそかに入手している。話題のAIスタートアップ、ディープシークは今年、半導体不足のため、最新モデルのリリースを延期せざるを得なかった、と同社の事業に詳しい関係者が明かした。また別の関係者によれば、ファーウェイなどの企業は、AIモデルの訓練に役立つ巨大で電力消費量の多いシステムに数千個の半導体を束ねるなど、次善策を講じている」

     

    AIモデルの訓練で、数千個の半導体を巨大で電力消費量の多いシステムに束ねて使っているという。「人海戦術」である。一方では、誰もが欲しがるエヌビディア製の高性能半導体を研究所がひそかに入手している。

     

    (2)「中国企業と中国政府が、最近の米国の輸出規制に直面して講じている措置の規模は、AI覇権争いにおける利害関係の大きさを示している。米政府高官の間では、中国への半導体・製造装置の輸出制限を継続するか、それとも販売拡大を認めるかで意見が分かれている。彼らの目標はファーウェイ製半導体のさらなる高度化と世界的な需要拡大を防ぐことだ。ホワイトハウスの決定は、国内(エヌビディアなどの企業)と国外の両方に影響を及ぼす。トランプ大統領は先ごろ、中国の習近平国家主席との会談で、新しいエヌビディア製半導体の対中輸出の可能性について議論しないことを選択した。これは、より優れた技術を提供することで中国軍を強化するなどの安全保障上のリスクについて、高官から警告を受けたためだ」

     

    中国は、米国の発明したAIで米国を追い抜くという、普通では考えられない夢を描いている。世界覇権という幻想が、中国を夢中にさせているのだ。国内の製造業は、混乱しているのにも関わらず、「一点突破主義」である。

     

    (3)「エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、中国は半導体の生産を急速に拡大しており、世界のAI開発者の半数が中国に拠点を置いていると主張している。また、エヌビディアがファーウェイと競争し、同社の半導体が世界中に拡散するのを阻止するために、自社の先端AI半導体「ブラックウェル」の中国向け輸出は認められるべきだとしている。同氏は先ごろ「中国はAI分野で米国に数ナノ秒遅れているだけだ」と述べた。エヌビディアやホワイトハウスのAI担当責任者デービッド・サックス氏などは、多くの専門家が中国の進歩の速さを過小評価しており、国家主導の投資は最終的に成果を上げるだろうと話す」

     

    エヌビディアのフアン最高経営責任者は、自分のビジネス第一が露骨に表れている。国益という視点はなさそうだ。

     

    (4)「多くの専門家によれば、中国の半導体生産を定量化するのは困難だが、最も楽観的な予測でさえ同国の需要を満たせておらず、完全な自給自足を実現することの難しさを示している。シンクタンクのインスティテュート・フォー・プログレスの著名な技術フェローで、バイデン政権下で輸出規制に携わったサイフ・カーン氏は「数字を5倍にしても、国内市場の需要を満たすには程遠いかもしれない」と述べた。中国当局者は自国の半導体製造能力について、米国ほど先進的ではないことを認めながらも、急速に発展しており、工業生産を加速させることができる政治体制によって支えられていると言う」

     

    中国半導体は、成熟品でも自給率が20%程度である。それにもかかわらず、先端半導体を目指している。ここに、矛盾の原点がある。先端半導体を製造する技術基盤が整っていないのだ。無理に無理を重ねている。

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    日米は「良縁」で結ばれる

    日鉄の合併が新時代を生む

    日米は戦略的統合の段階へ

    米国市場が日本の「内庭」

     

    米国の相互関税が生んだ、日本の対米直接投資5500億ドル(約85兆円)は、29年末までに実行する。対象業種は、半導体、医薬品、鉄鋼、造船、重要鉱物、航空、エネルギー、自動車、AI・量子技術など9業種だ。日本資本が,米国製造業の「中核分野」へ大手を振って参入する、過去にない偉業が始まる。日本の技術と資本が、米国を圧倒するという意味だ。出足は、好調である。

     

    日米共同ファクトシートでは、10月末までに約3900億ドル(約71.5%)が事業候補として盛り込まれた模様だ。25年末までに、5500億ドルに達することは確実な情勢である。引き続いて、「二次募集」も検討されているほどの盛況ぶりである。米国では、日本企業「ウエルカム」という状況になっている。

     

    大変な人気を集めている理由は何か。米国政府が、可能な限り、日本企業を外国企業よりも優先的に選定する方針を明らかにしている影響もある。州政府が、地元雇用創出と技術導入を両立させるため、日本企業との連携を歓迎しているのだ。この裏には、先に決定した日本製鉄とUSスチール合併が反響を呼んでいる。トランプ大統領は、この合併が米国経済活性化へ大きく資すること認識したのだ。雨降って地固まる、という状況である。

     

    日本製鉄が、USスチール買収時にトランプ米政権に約束した巨額投資が動き出し始めている。これが、米国の日本企業への信頼を高めるテコになった。日鉄は、米国でデータセンターなどに使われる高級鋼の量産へ着手する。USスチールが、生産設備を新設する。

     

    USスチールは、盛り上がっている人工知能(AI)ブームの取り込みに焦点を合わせている。巨大テクノロジー企業の投資需要を狙い、時流製品の需要獲得にいち早く動いているのだ。28年までに、合計110億ドル(約1兆7000億円)を投資する計画である。製鉄所の新設なども含めれば、最終的には140億ドル(約2兆2000億円)以上の大型投資となる見通しである。こういう動きを逐一知っているトランプ政権は、日本企業へさらに大きく肩入れする動機になっている。

     

    日米は「良縁」で結ばれる

    米国はまた、経済のアキレス腱であるレアアースで、日本の南鳥島で深海のレアアース資源によって救われる。こうした度重なる日本との縁によって、米国は緊急事態を乗り切れる見通しが強くなってきた。対米5500億ドル投資の枠が、年内に満杯になる見通しが立ち、26年には「二次募集」が取り沙汰されているのは、トランプ政権の「宣伝文句」が効果を現している。

     

    例えばトランプ氏は、「利益の9割は米国が取る。日本は1割」というフレーズが米国世論を引きつけている。各州が競って、日本企業の誘致に名乗り出ている背景だ。この宣伝通りとしたら、日本企業は米国に搾取されるだけである。「現代の企業奴隷」に成り下がる。これは、米国の宣伝上手の結果であって、日本企業は国際会計基準通りの利益を保証されている。ならば、米国はなぜ利益の9割が米国という、突飛なことを言い始めたのか。そのカラクリは次のようなものだ。

     

    米国政府は、日本企業の投資によって得られる利益(付加価値)のうち、90%は米国が享受すると説明している。これは、米国の労働者が受け取る賃金・税務署へ納められる税金・地域社会が受ける利益のようなものを意味している。この結果、日本側の利益は10%程度にとどまるという「概念図」である。日本側の利益10%程度が、「純利益」と理解すれば「なるほど」と納得できるのだ。米国が、「社会的利益」を強調する一方で、日本は「企業収益」を冷静に見ているという構図である。

     

    日本企業が、競って米国進出を目指している背景は何か。

     

    1) 手元資金が豊富でありリスクが取りやすい。

    最新の法人企業統計(2025年4〜6月期)によると、製造業の現預金残高は約84兆2000億円に達している。前年同期比で約2.1%増だ。製造業全体として、これだけの資金余力がある以上、投資を見送る企業があるとすれば、それこそ「なぜ」という質問対象になるほどだ。

     

    2)日本国内市場の成長余力に比べ、米国市場の持つ魅力は世界最高である。

    米国は、世界最大の消費市場かつ技術インフラが整った環境であり、特にAI・半導体・エネルギー分野では成長余地が大きい。日本企業にとっては、国内の停滞を補う「成長の出口」として魅力的存在である。

     

    日本企業は、米国での現地生産を進めることで、「Made in USA」ブランドを獲得し、米国政府の補助金や優遇制度を活用できる。これは、仮に利益の一部が米国へ帰属するとしてもその代わりに、安定した事業基盤を構築できる魅力は何物にも代えがたい戦略だ。トランプ政権は、関税引き上げや規制強化をちらつかせることで、海外企業に圧力をかけている。日本企業は、投資を通じて「友好国」としての立場を確保し、リスクを回避する意図もあろう。

     

    こういう見通しの裏に、これまで30年間続いた「自由貿易」は、歴史的にみれば例外的な時期であったという認識が強まっている。自由貿易の行き過ぎが、中国のような「異端国家」を生んだとする痛烈な反省の弁も聞かれる。同じ価値観の国家が、同士国家として安定した経済圏を形成するのがベターな選択である。こういう認識が、自由主義国家の間に強まっているのだ。その原型は、米国が脱退したTPP(環太平洋経済連携協定)にある。米国も、いずれはTPPの価値に気付くであろう。(つづく)

     

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    https://www.mag2.com/m/0001684526



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    足元で再び円安傾向が強まっている。日本の政策当局者の懸念が高まる領域に入りつつあり、市場参加者も神経を尖らせて動向を注視している。12日の円相場は対ドルで154円台後半と、2月以来の円安水準に下落。米国の政府機関再開への期待や株高がドルを支えている。円安の進行について片山さつき財務相は国会で、「足元は一方的な急激な動きが見られる」と指摘。「マイナス面が目立ってきていることは否定できない」と市場をけん制した。

     

    高市早苗首相は、円安による物価高への対応に政府がより積極的であることを有権者に示す必要がある。ただ、利上げに消極的な高市氏の姿勢が円安を助長している。この流れが続けば、為替介入で円を支えるか、日銀に追加利上げを促すかの難しい選択を迫られる可能性がある。『ブルームバーグ』(11月12日付)はこう報じている。高市氏の景気観が問われている。

     

    『ロイター』(11月12日付)は、「消費者物価3%上昇は食品高が要因、デフレ脱却宣言に至らない=高市首相」と題する記事を掲載した。

     

    高市早苗首相は12日の参院予算委員会で、消費者物価が足元で3%程度上昇しているのはコメなど食品価格の上昇によるもので、「デフレ脱却宣言までには至らない」との認識を示した。

     

    (1)「政府がかじ取りを間違えばデフレに戻ってしまう可能性があり、それにより消費や企業収益、賃金、設備投資が下押しされる悪循環に陥ることになるとの懸念を表明した。阿達雅志委員(自民)への答弁。日銀の政策運営については「コストプッシュではなくて賃金上昇を伴った2%の物価安定目標が持続的、安定的に実現される」よう適切な金融政策運営を大いに期待している、と改めて語った」

     

    高市氏は、アベノミクスの延長線で日本経済をみている。日本経済のデフレ観の虜になっていることは間違いない。現在の物価高をコストプッシュ型とみていないのだ。現状の物価高は、明らかに円安による輸入物価の上昇が招いたものである。この輸入物価の値上がりを抑えるには、利上げによる内外金利差の縮小という「王道」を選ぶほかないはずだ。

     

    高市氏は、利上げをすれば「消費や企業収益、賃金、設備投資が下押しされる悪循環に陥る」としている。この見方は正しいだろうか。利上げが、消費を抑えるという理屈は、住宅ローンの利上げを指しているとみられる。だが、利上げが円高に転じて輸入物価の値上がりを抑えるので、利益は全国民に及ぶのだ。住宅ローンの利上げ負担は、物価低下によって相殺されるであろう。

     

    企業収益、賃金、設備投資が下押しされるという見方は、余りにも短見である。利上げで企業収益が落込むことはない。日本の企業は、今年4~6月期で現預金を82兆円も持っている。この状態で、利上げの影響はほぼゼロであろう。賃金への影響は、人手不足という根本的な要因によって上げざるを得ない状況に置かれている。賃上げ余力は、手厚い内部留保をみれば明らかだ。設備投資は、今後の期待成長率に左右されるものだ。日本経済が、技術革新でどのように変貌するか。企業は、目先の金利ではなく将来の市場動向を睨んでいるのだ。

     

    アベノミクス時代の日本経済悲観論を脱する時期だ。その役割は十分に果した。だから、企業は80兆円余の現預金を持つほどに体力を付けているのだ。いつまでも、「温室経済」に置いてはいけない理由である。

     

    『ブルームバーグ』(11月12日付)は、「片山財務相、『円安のマイナス面目立つ』-足元は一方的な急激な動き」と題する記事を掲載した。

     

    片山さつき財務相は12日、外国為替市場で進んでいる円安は急激だとし、経済への影響は「マイナス面が目立ってきていることは否定できない」と市場をけん制した。参院予算委員会で答弁した。

     

    (2)「片山財務相は、為替動向について「一方的な急激な動きが見られる」と指摘。「投機的な動向を含め、為替市場における過度な変動や無秩序な動きについて、高い緊張感を持って見極めている」との見解を改めて示した。片山財務相はこれまでも閣議後会見などで円安をけん制する場面があったが、「マイナス面が目立っている」との表現は初めて。警戒感の度合いを一段上げたと言えそうだ。円相場は対ドルで2月以来の水準となる154円79銭まで下落後、片山財務相の発言を受けて一時154円50銭台に戻した」

     

    市場の流れは、完全に思惑で動いている。円安になる理由がないものの、高市政権が「円安無頓着」とみられている結果だ。高市氏の利上げを嫌う「体質」が、際限ない円安を生み投機筋の餌食にされている背景であろう。日本が、「舐められている」のだ。奮起せよ。

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    上場企業で希望退職を募集する動きが広がっている。人手不足が叫ばれるなか、「黒字リストラ」に踏み切る企業も少なくない。特に目立つのが電機業界だ。背景には変わる産業構造への危機感がある。

     

    『毎日新聞 電子版』(11月11日付)は、「黒字でも人員削減 なぜ電機メーカーで希望退職募集が相次ぐのか」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「三菱電機は9月、早期希望退職を募集すると発表した。「ネクストステージ支援制度特別措置」と名付け、対象は53歳以上で勤続3年以上の正社員と定年後の再雇用者。人数は定めていないが、従業員約4万2000人のうち約1万人が条件に該当する。業績は堅調だ。データセンター向けの設備需要などが高まり、10月31日に2026年3月期の業績予想を上方修正した。連結最終(当期)利益は前期比14.2%増の3700億円と過去最高を見込む。そのうえで今期中に売上高で8000億円規模に相当する事業の撤退可能性を見極める。同時に戦略分野と位置づけるデジタル関連事業への投資を加速させ、事業の「選択と集中」を進めるという」

     

    三菱電機は、従業員約4万2000人のうち約1万人が早期希望退職の対象となる。対象は、53歳以上で勤続3年以上の正社員と定年後の再雇用者である。この人たちの転職先はあるだろうか。その方が気になる。

     

    (2)「目標達成に向けてネックになっていたのが、従業員の高年齢化だ。「ポストがつまっていて、課長、部長になる年齢がどんどん遅くなっている」。漆間啓社長はこう断じる。社内で優秀な中堅・若手の役職登用が遅れ、人材の新陳代謝が鈍っているというのだ。 日本では長らく終身雇用が当たり前だった。「人を切る」ことには今なお否定的な見方もある。経営が傾いているわけでもないなら、なおさらだろう。実際、三菱電機も今回のように部門や人数を限定せず希望退職を募るのは初めてだという」

     

    抜擢人事と言っても実際は難しい。後輩が、上司になるのはなかなか受入れられないもの。昨日まで「くん」と呼んでいた後輩へ、明日から「さん」へ変るからだ。そうなると、一気に希望退職という手段になるのだろう。

     

    (3)「阿部恵成最高人事責任者(CHRO)は「当然ながら葛藤はあった。優秀な人材の流出を懸念する意見もあり、役員間で何度も議論を重ねた」と明かす。それでも実施に踏み切ったのは、「事業環境の劇的な変化に対応するには次世代のパッション(情熱)や柔軟性が欠かせないからだ」と阿部さんは強調する。対象の約1万人が、すべて会社を去れば事業は成り立たなくなる。そのため申し出の状況は注視しながら、「業績が好調なこのタイミングで退職金の加算金を十分に用意し、長年貢献してくれた社員にしっかり報いる。一人一人がキャリア形成を自律的に考えるきっかけにもしたい」と語った」

     

    社員「一人一人がキャリア形成を自律的に考えるきっかけにもしたい」としている。「学び直し」で絶えず新しいスキルを身につける。そういう社員像が、これからは必要になるのだろう。

     

    (4)「中長期的な競争力強化やさらなる業績改善に向け、黒字下で人員構造改革に動く企業は少なくない。東京商工リサーチの調査によると、25年1月から9月までに希望退職募集が判明した上場企業は34社で、うち6割強に当たる22社は直近の通期最終損益(単体)が黒字だった。東京商工リサーチの本間浩介さんは、「賃上げ機運の高まりで人件費負担が増していることや、トランプ関税の影響に備える予防的な側面も理由として考えられる」と指摘する」

     

    最近の賃上げ機運の高まりで、企業の人件費負担が増している。中高年社員が多いと,それだけ負担が重くなるというソロバンが弾かれている。

     

    (5)「オリンパスも7日、国内外で約2000人を削減すると発表した。9月末時点のグローバル従業員の約7%に相当する。シンプルな事業体制にすることで、年間約240億円のコスト削減を見込むという。26年3月期の連結業績は、減益となるものの940億円の最終黒字を予想している。24年にはリコーが国内で1000人程度の希望退職を募集すると発表した。ペーパーレス化で事務機器市場が縮小しており、オフィス向けのデジタルトランスフォーメーション(DX)支援などに投資を集中させる狙いがある」

     

    オリンパスは、人員削減でシンプルな事業体制にするとしている。AI(人工知能)の活用がいよいよ、定型業務を置き換える時代に入ったのだろう。

     

    (6)「電機業界に詳しい早稲田大の長内厚教授は、「この20年間で事業構造は大きく変化し、各社ともデジタル人材の不足が課題だ。世代間の従業員数のひずみを正し、能力の入れ替えを進めることが業界全体に求められている」とみる。現に大手電機各社では希望退職の募集のほか、経験者採用を拡大する動きも広がっている。富士通は25年度から「新卒一括採用」をやめ、必要な人材を通年採用する方針に改めた。長内教授は「人手不足のなか、即戦力となるデジタル人材も限られる」として、中高年層のリスキリング(学び直し)など、既存人材の活用がより重要になると指摘する」

     

    即戦力となるデジタル人材が求められている。社員構成を変える必要が出てくるのであろう。こうした時代的な要請が、今後は一段と強まる。

     

     

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    中国習近平国家主席は、26年から始まる15次五カ年計画の経済成長率について、4%台へ鈍化することを容認したようだ。すでに、5%ギリギリの成長率へ低下している以上、当然の結論であろう。中国最大の広東省は、今年19月成長率が4.%へ低下しており、中国の将来を暗示している。

     

    『ブルームバーグ』(11月11日付)は、「中国指導部、年4%への成長鈍化容認を示唆-今年の政府目標は5%前後」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の指導部が、経済成長の減速を受け入れる姿勢を強めている。習近平国家主席が広東省の成長が比較的低調であっても容認できるとの認識を示した。中国は今年、実質GDP(国内総生産)成長率で約5%の政府目標を達成する見込みだが、物価下落の影響で名目成長率はこれを下回っている」

     

    名目成長率は、7~9月期で3.7%である。4~6月期が3.9%であり、いずれも実質成長率を下回る「名実逆転」現象が起っている。本格的なデフレへ突入しているのだ。この状態で、「5%成長」などと言えば、笑われるところまで追詰められている。

     

    (2)「習氏に対し中国の省として最大の経済規模を誇る広東省の当局者が、同省の1~9月成長率が4.%にとどまり、全国平均の5.%を下回った一方で、前年同期よりは改善したと報告した際、習氏はこれを問題視しなかったという。国営の新華社通信によると、習氏は「広東省の経済規模は全国で依然として圧倒的な首位だ。この規模で現在の成長率を維持していること自体が引き続き大きな伸びを示している」と述べた」

     

    広東省は、製造業がメインである。労働集約型産業から技術集約型産業への転換が求められている。アパレル・玩具・雑貨などの低付加価値産業から、電子機器・新素材・バイオ・新エネルギー車などの高付加価値産業への移行である。

     

    広東省の産業再編は極めて困難な局面にある。現在の「輸出依存型・労働集約型モデルの限界」が明らかになっているからだ。米中対立で輸出が困難になっている。これを電子機器・新素材・バイオ・新エネルギー車などの「新たな成長軸」へ転換させるには環境が余りにも厳しすぎる。

    (3)「中国はデフレ圧力の長期化に直面。習氏のコメントは、内需と消費の拡大に重点を移し、成長率4%前後のペースを容認する最近の兆候をさらに裏付けている。習氏は先週、海南省と広東省を訪問した際にこうした発言を行った。李強首相は先週、GDPが5年後に170兆元(約3680兆円)を超えるとの見通しを明らかにした。これは、物価変動を考慮しないベースで2030年まで年平均約4%の成長率を意味する。また、中国共産党が発行した公式文書では、1人当たりのGDPを20~35年までの15年間で倍増させる目標を達成するには、今後10年にわたり年平均4.17%の成長を維持する必要があると説明している」

     

    李強首相は先週、2030年まで年平均約4%の名目成長率目標を掲げた。これは、「過大」である。今年の名目成長率が、4%を大きく割り込んでいる状況で実現は難しいであろう。2019年に、国務院(政府)と世界銀行が共同で行った2030代の平均潜在成長率は、なんと1.7%である。これは、全く改革が行われないケースを想定しているが、現状ほぼこの状態である。人口減という大きな壁が中国経済を襲うのだ。改革開放路線から遠く離れている以上、最悪事態を覚悟すべきだろう。

     

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