中国経済は、「進むも地獄、退くも地獄」という進退に窮した局面へ向っている。過剰投資=過剰生産=価格下落の連鎖を断ち切るには、過剰投資を抑えることがポイント。投資は、GDPを押上げる即効性があるだけに、地方政府がブレーキを踏めずにきた。それが、習氏の発言で投資抑制へ動き始めた。26年以降のGDP成長率は急激な左肩下がり必至となった。
『フィナンシャル・タイムズ』(11月26日付)は、「中国の固定資産投資減、『反内巻』政策影響か 過当競争抑制が響く」と題する記事を掲載した
中国の統計上に表れる投資が急減し、産業の過当競争を抑制しようとする習近平国家主席の政策が、世界2位の中国経済に影響を与えている可能性が出てきた。固定資産投資の落ち込みは予想外で、減少を記録したのは過去数十年間であまり例がない。
(1)「中国共産党の理論誌「求是」は11月、産業発展の優先的取り組みに関する習氏の様々なコメントを掲載したが、その中に習氏の「バブル経済への突入を阻止しなければならない」との発言があった。固定資産投資に関するデータの質にはかねて疑問が呈され、10月の統計は技術的な変更の影響が大きかったかもしれないとのアナリストの見方があるものの、劇的な落ち込みは中国の成長を著しく左右する可能性がある。オランダ金融大手ノING中華圏担当チーフエコノミスト、リン・ソン氏は「多くの中国企業に話を聞くと、投資面でかなりの慎重さがある」と語り、「中国政府が今年半ばに反内巻政策に言及し始めて以来、公共部門でも慎重姿勢が強まっている可能性がある」と指摘した」
習氏の「バブル経済への突入を阻止しなければならない」との発言で、設備投資へのブレーキがかかってきた。公共部門のインフラ投資でも慎重姿勢が強まっている。
(2)「中国政府が、11月に発表した1〜10月の固定資産投資は前年同期比1.7%減少した。1〜9月は0.5%減だった。2020年の新型コロナウイルス禍初期を除くと、固定資産投資の落ち込みは過去数十年間でこの2回だけにとどまっている。中国は固定資産投資の変化率を単月で公表していないものの、データの急激な下げ幅から10月は前年同月比11%減だったことが推定される。英調査会社アブソリュート・ストラテジー・リサーチのエコノミスト、アダム・ウルフ氏は「私にとっては本当に謎だ」と話した。これほど「広範な減速」が起きるには、反内巻政策以外の要因があるはずだという」
10月の固定資産投資は、前年同月比11%減と推定される。急激な落ち込みである。ここまで、急落するとは謎とされている。
(3)「米金融大手ゴールドマン・サックスのアナリストらは、固定資産投資の減少幅の約60%が「過去に過剰申告されていたデータの統計的補正」によるものだと推測している。ゴールドマンは11月下旬に発表したリポートで、セメント生産や鉄鋼需要などのコモディティー(商品)指標に基づき、過去の過剰申告が今回の減少の余地を生んだとの見方を示した。「直近の固定資産投資の落ち込みは、投資意欲の減退を実際より誇張して示している可能性がある」という。それでもゴールドマンのアナリストらは、減少幅の約40%が政府の反内巻政策、不動産市場の減速、インフラ関連の財政支出の鈍化で説明できると指摘した」
10月の固定資産投資の急減は、約60%が「過去に過剰申告されていたデータの統計的補正」。つまり、過去のGDPが「水増し」されていたという意味だ。約40%が、政府の反内巻政策、不動産市場の減速、インフラ関連の財政支出の鈍化で説明できるという。これが、正味の減少だ。
(4)「投資の減少により、代わりの成長源を探すよう地方政府に求めるプレッシャーは一段と強まる見通しだ。中国の不動産不況が5年目に入ったにもかかわらず、10月に不動産価格の下落が加速したという状況ではなおさらだ。他の産業分野もつまずいている。中国の対米輸出は何カ月も減少が続いてきたが、10月は全体のドル建て輸出額まで減少に転じた。英調査会社キャピタル・エコノミクスによると「米国以外の市場への出荷の広範な減少」が原因だった。キャピタル・エコノミクスの黄梓純氏は、輸出が「成長の重要なけん引役」にとどまる公算が大きいものの、近年に比べると寄与度は小さくなるだろうと話した」
中国の不動産不況が5年目に入ったにもかかわらず、10月に不動産価格の下落が加速している。住宅過剰在庫の「防波堤」が、持ちこたえられずに決壊したようなものであろう。とすれば、住宅不況はこれからが本番になる。
(5)「こうした中で、習氏の反内巻政策は新規投資に一段と下押し圧力がかかることを暗示する。過当競争の取り締まりが現在行われているのは、世界市場で支配的な中国のバッテリー生産を支えるリン酸鉄リチウムイオン(LFP)業界だ。中国化学物理電源産業協会の湯雁・副秘書長によると設備稼働率がわずか50%で、業界全体での赤字が36カ月続いている。国営メディアによると湯氏は11月、「ようやく獲得した世界のサプライチェーンでの中国の優位性を無秩序な競争で損ない続けている」と述べた」
電池業界の稼働率はわずか50%で、業界全体での赤字が36カ月続いている。「新種の神器」(EV・電池・太陽光パネル)は、すべて赤字か、赤字に近い状況だ。「新質生産力」は、「赤字生産力」と化している。





