勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2025年11月

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    手で曲がるフィルム状の太陽光発電ペロブスカイトは、耐用年数を30年へ引上げることが可能になった。軽量・柔軟で、ビルの壁面や窓にも設置可能で広範囲の利用が見込めるエネルギーの切り札が登場する。日本のように平地が限られた国に最適とされる。日本発技術で原料のヨウ素は、国内に豊富で世界2位の賦存量である。次世代エネルギーとして、一挙に世界最前線へ飛び出た形である。

     

    『日本経済新聞』(11月26日付)は、「『曲がる太陽電池』耐用30年 コニカミノルタ、保護膜供給 従来の3倍、車載へ前進」と題する記事を掲載した。

     

    コニカミノルタは25日、ペロブスカイト太陽電池の耐用年数で従来の3倍の30年程度を実現した検証結果を発表した。「有機EL照明」の技術を転用した保護膜を、新興のエネコートテクノロジーズ(京都府久御山町)に供給し検証した。エネコートはトヨタ自動車と車の屋根につける太陽電池を開発している。耐用年数が延びることで車載実現に前進する。

     

    (1)「ペロブスカイト型は軽くて薄く、ビルや車の屋根など曲面にも設置できる。コニカミノルタは太陽光が当たる電池表面を保護し、わずかな水分も通さない樹脂製の保護フィルムを開発する。京都大学発で2018年に創業したエネコートは27年からまず小型電池で量産を始め、コニカミノルタのフィルム採用を順次検討していく」

     

    ペロブスカイトは、水の浸入に強くなれば、屋外やビルの壁などに設置してもより長期にわたり風雨に耐えられる。これまで、10年が限度とされてきた耐用年数が、一挙に30年まで伸びれば、需要は急拡大するとみられる。耐用年数が長くなれば、ライフサイクルコストが下がり、普及が加速する。日本が、太陽光発電分野で世界トップに躍り出る可能性を示し、非常に重要な技術進歩である。

     

    (2)「コニカミノルタとエネコートは、コニカミノルタの保護フィルムを使って水分の透過試験を実施。その結果、屋外での耐用年数を理論上30年ほどまで長くできる可能性を確認したという。ペロブスカイト型はわずかな水分に触れても結晶が分解して性能が落ちる課題がある。これまで耐用年数は5~10年程度と、一般的な太陽光パネルの半分程度にとどまってきた。エネコートは今後、トヨタの電気自動車(EV)の屋根などにペロブスカイト型を搭載することを目指している。EVに搭載すれば常時発電することで航続距離を伸ばせる」

     

    ペロブスカイト型は、わずかな水分に触れても結晶が分解して性能低下という課題を抱えてきた。それが、コニカミノルタの保護膜によって耐用年数を30年まで延長できれば、障害は一挙に解決される。

     

    (3)「同日、オンライン記者会見に登壇したエネコートの加藤尚哉社長は「コスト面などの条件を満たせば、トヨタのEV向けの電池にコニカミノルタのフィルムを使う可能性もある」と話した。事務機が、主力のコニカミノルタが保護フィルムを開発できたのは、薄くて曲がる有機EL照明の事業を手掛けていたためだ。約10年前に参入し、自動車や電車の天井に張り付ける照明として普及を狙った。最終製品まで供給したが、事業として広がらなかった。大幸利充社長も「事業としては失敗だった」と認める。それでも有機EL照明に水を通さないための保護膜を開発・生産し、そのノウハウが社内に蓄積された。電気を光に変換する有機EL照明は、構造が光を電気に変える太陽電池と本質的に似ている。岸恵一執行役員は、「35年度に保護フィルム市場は500~800億円の見通しで、シェアナンバーワンになりたい」と意気込む」

     

    フィルム状のペロブスカイトは、広範囲な利用が可能である。EVの屋根やバンバーに設置される可能性も出てきた。中国はタンデム型(筒状)で高出力(800W超)を実現し、量産体制を整えているが、耐用年数は10〜20年程度が主流だ。日本の30年耐久素材は、長期的な導入コストの回収や建材一体型用途において圧倒的な優位性を持っている。特に都市部のビル壁面や車載用途では、軽量・柔軟・高耐久という日本の技術が強く求められる。中国が、タンデム型へ進出したのは、日本がフィルム状での特許をすべて取っているため、やむなくシフトしたもの。日本の先手必勝による。

     

    (4)「ペロブスカイト型は、桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が開発した日本発の技術だ。国内では積水化学工業パナソニックホールディングスリコーシャープなどのメーカーが、フィルム型や建材一体型などのメーカーとして参入している。調査会社の富士経済によれば、ペロブスカイト型の世界市場は40年に3兆9480億円と、24年(590億円)から急拡大する。10月には高市早苗首相が所信表明演説でも言及し、政府も国内生産を補助金などで後押しする」

     

    実用化フィルム型(印刷方式)の電力転換効率は、15~20%程度とされている。ただ、住宅や車載、衣類、農業用ハウスなど、「設置面積の自由度」が活かせる分野では、15〜20%の効率でも十分な価値を持つと指摘されている。衣類でも利用できるとなれば、スマホの充電は「自家発電」で補える。

    フォームの始まり

     

     

     

     

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    韓国政府が、中国人スパイによる軍事情報の収集活動に神経をとがらせている。韓国で中国人スパイと情報提供者が相次いで摘発されたためだ。「スパイ天国」となりつつある状況を憂慮し、韓国政府は現行刑法の「スパイ罪」の強化を検討する。李政権は、親中的姿勢をみせているが、中国による「裏切り行為」のスパイ活動に対して、断を下す時期に来た。日本も油断は禁物。こういうスパイ行為は、日本でも広範に行われているとみなければならない。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月26日付)は、「韓国にはびこる中国スパイ 李在明政権、摘発強化の法改正へ」と題する記事を掲載した。

     

    韓国メディアによると、ソウル中央地裁は10月16日、軍事機密保護法違反の罪に問われた中国人に対し、懲役5年と追徴金457万ウォン(約49万円)を言い渡した。

     

    (1)「起訴状などによると、被告は中国の情報機関の関係者と共謀し、2024年5月から25年3月にかけて5回にわたり韓国の軍人に接近し、軍事機密を収集しようとした。被告は軍人らに撮影機能を搭載した腕時計型の機器などを送り、撮影後に指定の場所に置くよう指示、後に回収する方式で機密情報を集めようとした。高性能レーダーを伴う米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)や在韓米軍に関する軍事情報とみられる。地裁は、「韓国の現役軍人を買収して軍事機密を探るという意思をもって数回入国し、韓国国民と接触した」として、「韓国の安全に対する重大な脅威であり、厳重な処罰が避けられない」と指摘した」

     

    中国人スパイが、韓国軍人にまで接近して諜報活動をしている。スパイは、韓国軍人に撮影機能を搭載した腕時計型機器を渡している。手が込んだスパイ活動である。

     

    (2)「10月末から開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の期間中にも機密情報の漏洩とみられる事案が発生。韓国警察は開催地の韓国南部・慶州で勤務していた地元警察官が中国当局に情報漏洩した疑いで捜査を始めた。警察官のスマートフォンなどを押収したといい、裏付けを進めている。韓国メディアなどによると、警察官はスパイ対策など担当していた。警察官が釜山の駐韓中国領事館の関係者と電話で頻繁に連絡を取り合っていたとみている」

     

    中国が、諜報活動を取り締る韓国の警察官まで買収した諜報活動をしていることは、民間人にも手を伸していることを窺わせる。大胆な手口である。

     

    (3)「24年6月には釜山で中国人留学生3人が韓国海軍作戦司令部の建物や停泊している米空母などをドローン(無人機)のカメラで撮影し、摘発された。23年3月から246月までの間に計9回にわたり軍基地を撮影し、中国のSNSに投稿した。相次ぐ中国のスパイとみられる諜報活動は、韓国軍や在韓米軍の安全保障環境に大きな影響を与える」

     

    中国人留学生までが、スパイまがいの行為に走っている。これは、広範囲で諜報活動が行われている証拠とみられる。

     

    (4)「11月6日、鄭成湖(チョン・ソンホ)法相は、与党「共に民主党」の金炳基(キム・ビョンギ)院内代表と会い、スパイ罪の適用対象の拡大に向けて、刑法改正案などの成立を要請した。韓国刑法98条はスパイに関する罪を規定。「敵国」のためにスパイ活動をしたり、スパイをほう助したり、軍事上の機密を漏洩した者に、死刑、無期または7年以上の懲役を科せる」

     

    スパイ罪の適用対象の拡大は、必要であろう。これまでの北朝鮮を対象から他国へも刑罰の範囲を広げるほかあるまい。

     

    (5)「スパイ罪の適用対象となる「敵国」は事実上、北朝鮮に限定している。このため、中国など第三国の外国人が摘発されても、スパイ罪を適用することは難しいと解釈されてきた。スパイ罪の適用対象の拡大をめぐっては24年末に刑法改正案が韓国国会に提出された。改正案は「外国およびこれに準ずる団体」のための行為もスパイ罪で処罰できるようにすることなどが柱。当時、国会論議の過程で、外国に対するスパイ罪の処罰規定を含む軍事機密保護法などとの整合性が指摘され、法案成立には慎重な審議を求める司法側の要求もあった。与党になった李在明(イ・ジェミョン)政権が今後、法改正に対してどのような判断をするかが焦点となる」

     

    李政権は、親中姿勢を取っているだけに「スパイ防止法」制定に躊躇しているだろう。ただ、駐韓米軍情報が対象になっている現在、いつまでも回避はできないであろう。

     

    (6)「防諜に絡む法整備は日本でも必要性を求める声がある。高市早苗政権は機密情報の保護を重要課題とみており、他国の諜報員を取り締まる手段として「スパイ防止法」の制定に意欲を示している」

     

    日本でも、これまで「スパイ防止法」制定の議論は出たが、戦前の暗い記憶が蘇って制定議論は沙汰止みになった。日中対立が先鋭化しつつある現在、十分な歯止め策を付けながら、中国の諜報活動をいかに抑止するか、問われる時期になっている。

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    日本政府は、中国がX(ツイッター)で相次いで日本批判を投稿し、国際的に宣伝する情報戦を展開している。外務省は、公式Xに「ファクトによる反論」を次々に投稿している。中国の主張を訂正しつつ、「日本攻撃の新たな材料に使われては火に油を注ぎかねないので、冷静に発信する」(外務省幹部)構えだ。

     

    『毎日新聞』(11月25日付)は、「中国のXでの日本批判に『ファクト』で反論 政府、情報戦に冷静対応」

     

    茂木敏充外相は25日の記者会見で「事実に反する主張や情報発信には客観的な事実に基づく認識が広がるよう、引き続き我が国の立場、考え方、正しい事実関係の説明・発信を続けたい」と述べた。外務省は同日までにX3件の中国の主張に反論した。

     

    (1)「まず21日の投稿では、中国外務省が交流サイト(SNS)で「今年に入ってから日本で中国人が襲われる事件が多発している」と日本への渡航自粛を注意喚起したのに対し、「指摘は当たらない」と否定。過去3年に国内で中国国籍の人が被害者になった殺人、強盗、放火の認知件数を紹介した。2023年は48件、24年は45件、25年は10月までで28件で、多発はしていなかった」

     

    中国人は、日本における外国人刑法犯検挙人員で2番目に多い国だ。それだけ日本社会へ迷惑を掛けているのだ。

     

    日本での外国人刑法犯検挙人員(2024年)

    順位  国籍   検挙件数   検挙人員数   主な犯罪

    1位 ベトナム  3130   836     窃盗・詐欺

    2位 中国    1039   571     詐欺・傷害

    3位 ブラジル   229   122     暴行・窃盗

    4位 フィリピン  203   148     薬物・暴行

    (出所)警察庁 犯罪統計資料

     

    中国人は、詐欺や文書偽造など知能犯の傾向が高く、組織的な犯罪が含まれる。中国外務省による「日本で中国人が襲われる事件が多発している」などという嘘情報と反対に、日本人が迷惑を受けているのだ。

     

    (2)「在日本中国大使館が21日にXで国連憲章の「旧敵国条項」に関して投稿すると、日本外務省は23日の投稿で、日本語と英語で反論。1995年の国連総会で、中国も賛成して同条項が死文化したとの内容の決議が採択されたとしたうえで「死文化した規定がいまだ有効であるかのような発信は国連での判断と相いれない」と指摘した。旧敵国条項は、日独などを想定した第二次世界大戦の「敵国」に対し、国連安全保障理事会の許可なく軍事攻撃を認める内容だ」

     

    在日本中国大使館は、死文化した規定の「旧敵国条項」が、未だに存在していると装って、日本を威嚇した。いつでも無通告で、日本へ銃弾を撃ち込めるという最も悪質な嘘情報を、国家の名において行ったのだ。国家が「嘘情報」を流すとは、中国もよほど追い込まれているのだろう。

     

    (3)「中国の傅聡国連大使は21日、首相の台湾有事に関する答弁について「初めて台湾問題への武力介入の野心を示し、中国に軍事的威嚇を行った」と主張する書簡をグテレス国連事務総長に送った。在日本中国大使館もXで紹介したが、日本は日中間の対立が国際機関の場に持ち込まれ、書簡が全加盟国に配布されることを問題視。山崎和之国連大使が24日(日本時間25日)、同様に全加盟国に配布されるグテレス氏への書簡の形で「中国の主張は事実に反し、根拠に欠ける。日本は専守防衛の姿勢だ」などと反論し、Xでも書簡を公開した」

     

    中国の日本への嫌がらせは、国連を舞台にするまでにエスカレートしている。日本が中国へ「軍事的威嚇を行った」としている。ならば、死文化した規定の「旧敵国条項」を使って、いつでも無通告で、日本へ銃弾を撃ち込めるとする中国の「軍事的威嚇」は不問なのか。こういう矛盾に満ちたことを際限なく行っている中国は、そのたびに自国の顔に自分で泥を塗っていることに気付かぬほど興奮しているのだ。

     

    (4)「中国の投稿は、赤地の背景に白字など目立つ色を多用する。日本も、通常の白地に黒字の投稿だけでなく、青地に白抜きの文字と図表を使い、図で印象を残す「インフォグラフィック」の手法を使った。日中関係の悪化を受け、外務省の船越健裕事務次官は25日、外務省で中国の呉江浩駐日大使と会談した。両国間の懸案や今後の対応について話し合ったとみられる」

     

    中国の手の込んだ対日謀略戦は、いつまで続くのだ。やればやるほど、自国の信用が地に墜ちてゆくのだ。在日中国人は、顔を赤らめて恥じ入っているに違いない。少しは、同胞の気持ちも汲んで静かになるべきだろう。

     

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    国策半導体企業ラピダスは、「海のものとも山のものともつかぬ」と酷評されてきたが、着実な技術開発によって次々と障害を乗り越えている。未だ、2ナノ量産化が始まる前から、27年度着工予定で第二工場建設計画に取り組んでいる。1.4ナノとさらに進んだ技術へ進む。日本の経済安全保障の切り札として、世界最新技術に磨きを掛けている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月25日付)は、「ラピダス、世界最先端1.4ナノ半導体新工場 29年稼働でTSMCを追う」と題する記事を掲載した。

     

    最先端半導体の国産化を目指すラピダスは2027年度に北海道千歳市で2棟目の工場に着工する。世界最先端となる回路線幅1.4ナノ(ナノは10億分の1)メートルの半導体の生産を29年にも始める。

     

    (1)「先行する台湾積体電路製造(TSMC)を追う。総投資額は数兆円で、政府による数千億円の出資を研究開発に活用する。日本の半導体産業の復権を懸けた動きとなる。ラピダスは千歳市内の第1工場で27年度後半に最先端2ナノ半導体の量産を目指している。先端半導体の量産技術の成熟を待たずに矢継ぎ早に第2工場を建設する。このほど量産用ラインの設計を始めた。新工場では1.4ナノのほか1ナノ品の生産も検討する」

     

    2ナノ半導体の量産化が始まる前に、第二工場建設計画を立てた理由は、ラピダスが確固たる技術基盤を築き挙げつつあることを伝える有力メッセージになるからだ。顧客・投資家へは「1.4ナノ開発に着手」という発表は、技術的自信と中長期戦略の明確化を意味し、顧客企業や政府、投資家に対する信頼構築にもつながる。

     

    ラピダスの小池社長は、2025年9月の「ホットチップス」国際会議で、AI向けファウンドリモデルの再構築を提案して注目された。ラピダスが、「ポストGPU時代」にまで視野を広げた設計思想を打ち出したことで、TSMCを追随する半導体受託生産企業ではなく、世界の半導体技術の潮流を牽引する旗手として名乗り出たものだ。これは、大きな注目を浴びた。

     

    (2)「投資資金は、政府支援を軸にメガバンクからの融資や民間企業の出資でまかなう。融資は政府保証を活用する。第2工場への総投資額は2兆円を超える可能性が高い。26年度から1.4ナノ品の研究開発を本格化する。2ナノ品で技術供与を受けている米IBMとの協業を継続する。ラピダスは7月に2ナノの半導体素子の動作を確認したが、量産のめどは立っていない。1.4ナノ以降の量産目標を示すことで長期の顧客獲得につなげたい考えだ」

     

    実は量産化のメドは立っているが公表しないだけだ。同業を刺戟するのであえて伏せている。それは、ラピダスが半導体の前工程と後工程をすべて全自動化していることだ。しかも、「単枚処理」といって一枚ずつ処理するので不良品はすぐに検出されて処理される。こうして全自動化と単枚処理によって歩留まり率が極めて高水準を実現している。これらがすべて、AI処理されるという世界最新工程を実現した。ラピダスは、こうした事実を公表せず、政府など限られた部署しか知らせず、第二工場建設計画に当たり大きな力になったのであろう。

     

    (3)「回路線幅は半導体の性能を示す指標で、細ければ細いほど高性能・省電力を実現できる。1.4ナノは人工知能(AI)データセンターやロボット、自動運転車、スマートフォンなどハイテク製品の頭脳として使われる見通しだ。各国・地域の大手は半導体の微細化を競う。受託生産で世界最大手のTSMCは年内に2ナノ、28年に1.4ナノを量産する計画だ。韓国サムスン電子は27年に1.4ナノを量産するとしている。ラピダスは29年の生産開始後、早期の量産をめざし競合に追随する。ただ、サムスンや米インテルは先端品の歩留まり(良品率)の向上に苦労しているとされ、ラピダスにとっても困難が予想される」

     

    ラピダスが、1.4ナノへ挑戦できる技術基盤は米国IBMやベルギーIMECなど国際的な研究機関と緊密な提携関係を結んでおり、ラピダスの確かな「製造技術」とタックを組んでいる。こういう背景はTSMCやサムスンにもみられない、ラピダスだけの恩恵である。歩留まり率について、「ラピダスにとっても困難が予想される」としているが、解決済みである。だから、第二工場建設が可能なのだ。

     

    (4)「高市早苗政権は、経済安全保障上の重要性が高いとして先端半導体を優遇する方針だ。11月4日には高市政権の成長戦略の方向性を示す日本成長戦略本部が始動し、AI・半導体を含む17項目を戦略分野として位置づけた。赤沢亮正経産相はラピダスへの1000億円の政府出資を発表した21日の記者会見で「政府が進める危機管理投資の要であり、国益のために必ず成功させなければならない国家的プロジェクトだ」と述べた」

     

    ラピダスは、政府が進める危機管理投資の要である。政府が、ここまで力を入れる背景には、ラピダスが確実に技術水準を引上げている証拠が上がっているからであろう。

     

    (6)「日本は2000年代前半に半導体の微細化競争から脱落した。現在、国内企業が量産できる演算用半導体は40ナノの汎用品止まりだ。40ナノから2ナノ、1.4ナノと技術世代が大幅に飛躍するなかで、量産技術を確立し歩留まりを高めることは容易ではない。ラピダスは顧客が設計したチップの生産を受託するビジネスモデルを取る。現状の顧客候補は一部のスタートアップにとどまる。米国のテック大手とも交渉を進めるが、TSMCなど競合からシェアを獲得できるかは不透明だ」

     

    2000年代前半の風潮は、産業政策は悪という認識であった。政府が、資金を貸付ければ救済できた半導体企業も何社もあった。そういう半導体企業が、倒産したり海外企業へ買収されるなど見殺しにされたのだ。自然淘汰が、経済の原則というシンプルな理由で、それまでの産業政策が「全否定」された。ラピダスへ政府資金を出資することには、今でも多くの異論が聞かれる。それは、産業政策否定派の論理である。だが、半導体が経済安全保障の切り札になった現在、そういう議論は説得力を失っている。ラピダスについて、財務省の主張が失速し、経済産業省の主張に軍配が上がった背景はこれだ。

     

     

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    中国経済は、本格的な「冬の季節」を迎えそうだ。中国の長期金利が日本を初めて下回ったからだ。日本の金利が、高市政権の財政拡大方針を受けて上昇する一方、中国は歴史的低水準での推移が続いている。中国は、デフレ圧力に直面し、中央銀行による追加利下げへの期待も金利の低位安定を生む。「日中逆転」は、中国がかつての日本を後追いするシナリオを示唆しており、世界経済のリスクとなりうる。習氏は、日本を「威嚇」している時間的な余裕がなくなってきた。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月25日付)は、「中国長期金利、初めて日本下回る 忍び寄る粘着デフレが世界リスクに」と題する記事を掲載した。

     

    英LSEGによると、日本の10年物国債の利回りは前週後半に一時1.84%台まで上昇(債券価格は下落)した。中国の10年物国債利回りは1.83%台にとどまり、日本の利回りが上回った。10年物国債の利回りは長期金利の指標と位置づけられる。データで遡れる2000年9月以降で、日中の金利が逆転するのは初めてとなる。30年債や20年債の利回りは既に日本が中国を上回っていた。逆転現象が長期金利にも及んだ形だ。

     

    (1)「相次ぐ金利逆転は、アジアの二大経済大国が異なる方向に進んでいることを示している。日本の消費者物価指数(CPI)の伸び率は、3%前後と足元で欧米を上回る水準での推移が続く。一方、中国は0%近傍に落ち込む。今年は10月までの10ヶ月のうち6ヶ月でCPIが前年同月を下回った。日本が長年苦しんだデフレに中国が直面する。一般にインフレでは債券は売られ、デフレだと買われやすい。長期金利は、その国の成長率やインフレ率、財政の健全性の度合いなどの見通しをもとに決まる」

     

    長期国債利回りは、一国経済の未来像を描いている。インフレ(利回り上昇=利上げ期待)か、デフレ(利回り低下=成長率低下予想)か。おおよその見当が付くものだ。その意味では、重要な「パイロット役」である。中国の10年物国債利回り低下は、良い兆候ではない。日本の場合は、財政拡大リスクを示唆し利上げ期待を織り込む。国債格付け引下の引き金になり危険性も内包する。

     

    (2)「中国は、不動産バブル崩壊や「ゼロコロナ政策」の後遺症から抜け出せないでいる。7月、銀行の新規融資額が借り手からの返済額を下回った。逆転は20年ぶりだ。企業や家計が債務返済を優先して投資や消費を抑える「バランスシート不況」といえる。日本も90年代後半から2000年代にかけてバランスシート不況に苦しみ、その調整には時間を要した」

     

    中国は、不動産バブル崩壊後遺症が経済を蝕んでいることを示している。「バランスシート不況」とは、貸借対照表で負債が増えて資産が減ることによる「防衛的経済現象」を意味する。いったん、この領域へ踏み込むと、長期の経済調整がつづく。金融面では「流動性の罠」と呼ばれる。金利を下げても貸出が増えない状況で、現在の中国経済はこの状態である。

     

    (3)「中国人民銀行(中銀)は、5月に追加金融緩和に踏み切り、商業銀行に供給する7日物の短期金利を1.%から1.%に引き下げた。金融緩和的な環境が続くとの見方から長期金利にも低下圧力がかかる。25年は1.5〜1.%程度の値動きが中心だ。英キャピタル・エコノミクスは26年末までに0.%の追加利下げを実施すると予想する。中国の長期金利は00年9月時点では2.%前後だった。高い経済成長率を背景に、07年7月には5%を超える場面もあった。北京五輪を翌年に控えた07年の実質国内総生産(GDP)の増加率は14%に達した」

     

    中国の長期金利は、00年9月時点で2.%前後だった。それが現在、1.83%である。約1ポイントの低下である。

     

    (4)「10年には上海万博を開き、名目GDPも日本を抜き世界第2位となった。中国経済の実質成長率が10%を超えたのは10年が最後となる。その後は成長率目標を順次引き下げ、12〜14年の7.%前後から今では5%前後まで目標値が下がった。国際通貨基金(IMF)は25年のGDP増加率を4.%、26年を4.%と見込む。今後の金利動向を占ううえで、日本は高市政権の財政政策と日銀の金融政策がカギとなる。中国は内需を喚起することで、物価下落が止まらない「デフレスパイラル」を回避できるかどうかが最大の焦点だ」

     

    IMFは、25年のGDP増加率を4.%、26年を4.%と見込み急減速である。この調子でGDP増加率が低下する予測だ。10年物国債利回りも、低下するのは当然。さらに下落しよう。

     

    (5)「中国共産党は、10月下旬に閉幕した第20期中央委員会第4回全体会議(4中全会)で、26年からの経済政策の指針となる第15次5カ年計画の草案をまとめた。個人消費を拡大し内需主導による経済成長をめざすと掲げたが、今のところ「内需の不振を解決する妙案はない」(みずほリサーチ&テクノロジーズの月岡直樹主任エコノミスト)との評価が目立つ。中国の卸売物価指数(PPI)は10月に前年同月比2.%も下落した。37カ月連続の低下となり、消費の減退を背景に企業間の価格を巡る競争が激しさを増している。値引きを待って商品を買う人も多い。企業や消費者の行動が変わらない限り、デフレスパイラル入りが近づく」

     

    PPIは、37ヶ月(3年1ヶ月)低下し続けている。政府は、結果的にこの事態を放置している。設備投資に補助金の付くことが、過剰生産を止められない根本理由である。

     

     

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