勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2025年12月

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    中国は、半導体工場新設に対して無理な条件を付けている。国産設備を5割以上は設置せよというものだ。成熟半導体設備では可能であっても、先端半導体設備では、全く基礎研究も不十分な状態で不可能とみられている。中国共産党は、このように命令さえ出せば実現できるという甘い予測で補助金を出しているのだ。

     

    『ロイター』(12月30日付)は、「中国、半導体工場新設に『国産設備50%以上』要求=関係筋」と題する記事を掲載した。

     

    中国政府が半導体メーカーに対し、新たに生産能力を増設する際は国産設備を最低でも50%使用するよう求めていることが、関係者3人の話で分かった。この規則は文書化されていないが、工場の新設・拡張について国の承認を求める半導体メーカーは数カ月前から調達入札を通じて、最低でも半分は中国製の設備を使用することを証明するよう指示されているという。

     

    (1)「関係者によると、この基準を満たさない申請は通常却下される。ただし当局は、供給状況に応じて一定の柔軟性も認めている。国内で開発された設備が十分にそろっていない高度な半導体生産ラインでは、要件が緩和される場合がある。別の関係者は「当局は50%よりはるかに高い比率を望んでいる。最終的には工場で100%国産設備を使用することを目指している」と述べた」

     

    中国で国産化が進んでいる装置は、エッチングや洗浄などとされている。14nm〜28nmクラスでは、国産装置の導入が現実に進んでいると指摘されている。したがって、この領域なら「50%」達成は可能とみられる。しかし「先端プロセス(7nm以下)」では不可能とされる。理由は、先端ラインで不可欠な装置のEUV露光装置(ASML社の独占)は入手不可能である。EUV露光装置は、30年の歳月を掛けて開発されたASMLの「結晶」である。

     

    ただ最近、キャノンと大日本印刷が露光に代って「プリント型」を開発して、ラピダスへ納入した。ラピダスは、EUV装置とプリント型を併存させて理由するとみられている。かつては、ASMLと競ってきたキャノンが、簡易型で挑戦しており注目されている。

     

    (2)「関係者2人によれば、中国最大の半導体製造装置メーカー、北方華創科技集団(NAURA)は、中国の半導体受託製造最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)の7ナノ(ナノは10億分の1)メートル生産ラインでエッチング装置を試験中だという。NAURAは最近、14ナノのエッチング装置の導入に成功しており、国内サプライヤーの進歩の速さを示している。別の関係者は「政府が工場に最低でも50%の国産設備使用を求めたことで、NAURAのエッチング分野の成果が加速した」と指摘した」

     

    NAURAは最近、14ナノのエッチング装置の導入に成功したという。しかし、先端プロセス(7nm以下)は困難とみられている。ここが、中国半導体業界の泣き所となっている。

     

    (3)「高度なエッチング装置は、以前はラムリサーチや東京エレクトロンといった外国企業が中国向けに主に供給していた。しかし現在は、NAURAや中微半導体(AMEC)が一部を置き換えつつあるという。別の関係者は、「国内半導体設備市場は23社の大手メーカーが寡占する可能性が高い。その中でもNAURAは間違いなく有力な1社だ」と述べた」

     

    中国の装置自給率は、2024年で 13.6% に過ぎないと言われている。露光装置などの核心技術が、依然として外国依存であるからだ。50%は「政策目標」であり、技術的裏付けは弱いのだ。ましてや、「100%国産化」目標達成は、完全に無理筋とされている。

     

     

     

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    中国は、台湾を取り囲む形で大演習を行っている。台湾独立派と干渉国への「見せしめ」という触れ込みである。日本も標的にしているのだ。だが、国内では、日本資本の回転寿司のスシローや、アパレルのユニクロには、長蛇の列ができるほどの人気を集めている。市民の間では、政府の日本批判どこ吹く風である。

     

    『朝鮮日報』(12月30日付)は、「反日でも日本製品不買運動が見られない中国…スシロー、ユニクロに長蛇の列」と題する記事を掲載した。

     

    週末の20日深夜11時、中国・北京市朝陽区の繁華街「好運街」で営業しているのは日本料理店がほとんどだった。50店舗あまりのテナントのうち、中国地方料理の店は廃業したが、日本料理店は11店舗の前には地元客が長蛇の列を成して繁盛していた。好運街の近くには日本の街並みを模した「一番街」があり、その2階にあるバー「逃単」では「トウキョウラウンジ」と書かれたステージの上で中国人歌手のライブが続いた。バーを埋めた客約30人の大半が中国人だった。店の前の廊下ではタバコをくわえた男女が、日本の観光地の写真の前で記念写真に興じていた。

     

    (1)「11月、日本の高市早苗首相が台湾有事の際の軍事介入を示唆する発言を行って以降、日中対立が激化したが、中国国内では日本製品に対する不買運動はほとんど見られない。2012年に尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権紛争が起きた当時、北京の日本大使館前では数千人が反日デモを行い、日本製品不買運動が相次いだが、それとは明らかに異なる光景だ。中国当局は、日本関連の消費を中国の国内と国外に分けて規制することで日本に圧力をかけている。中国人の日本旅行と留学、日本歌手の中国公演にはストップをかけながら、中国国内での日本ブランド消費と文化共有には特に制裁を加えていない」

     

    中国市民が、日本商品を根強く支持していることから、中国政府は「禁令」を出せないのであろう。それが、不振に喘ぐ消費をさらに追い込むからだ。

     

    (2)「12月6日、日本の回転ずしチェーンであるスシローが上海に初出店すると、700組の来店客で最長14時間待ちという盛況となった。中国新聞網、今日頭条などのニュースサイトは、「中日の公式な関係は緊張しているが、日本の美食に対する上海の民衆の情熱に水を差すことはなかった」などと報じた。20日、フリーマーケットアプリ「閑魚」では北京市のスシローの予約番号が40元(約890円)で取り引きされていた」

     

    スシロー人気は、スシローでの予約番号が40元で取引されているという。大変な人気である。

     

    (3)「今月初め、朝陽区のショッピングモール「鳳凰薈」では、日系アパレル店であるユニクロのレジに来店客の列ができ、映画館では日本のアニメ映画「『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座(あかざ)再来」が上映されていた。同作品は、中国での封切り初日の前売り率がトップとなり、上映28日間の興行収入は6億7700万元に達した」

     

    ユニクロのレジには、来店客の列ができている。映画館は、日本のアニメ映画「『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座(あかざ)再来」が上映されている。

     

    (4)「一方、中国の航空会社と旅行会社は、日本路線の航空便と旅行商品を強制的にキャンセルし、中国の中産階級の日本渡航を事実上遮断している。ニュースメディアの澎湃新聞は  22日、26年1月の中国と日本を結ぶ航空便の40.4%に相当する2195便がキャンセルになり、23日から26年15日までの2週間には日中間の46路線で全便が欠航になったと伝えた。中国は、日本への観光需要を締め付け、日本経済に圧力を加えると同時に、海外消費を国内消費に振り向けることを狙っている。今年1~11月に日本を訪れた中国人観光客は877万人(日本政府観光局集計)で、コロナ以前の2019年(959万人)に迫り、現地消費額は平均1万3000元(約28万8000円)で、訪韓観光客(4700元)の3倍に達した」

     

    航空会社の日本予約は、強制キャンセルさせている。日本で買い物するよりも、中国で金を落とせという戦術だ。みみっちいことを始めているのだ。貧すれば,鈍するである。

     

    (5)「中国のこうした「ツートラック対応」は、日中対立の長期化を想定し、国際社会に主張の正当性を認めさせるための世論戦を繰り広げる戦略と分析されている。中国外務省は戦後の国際秩序の枠組みを掲げ、高市発言を問題視し、日本を「危険な存在」として位置づける外交戦に力を入れている。しかし、中国国内で13年前のような大規模反日デモや日本人が危害を加えられる事件が発生すれば、中国が世論戦で不利な立場に置かれる可能性がある。このため、日本への旅行を規制しながらも、国内での日本製品消費は締め付けていないのだ」

     

    中国は、こういう「戦狼外交」によって自らの評判を落としていることに気付かないのだ。唯我独尊、オレ様の極致である。

     


     

    あじさいのたまご
       

    中国軍がこの時期に台湾を包囲するような大規模演習に踏み切ったのはなぜなのか。中国軍関係者はその狙いを「台湾の封鎖と外部干渉の阻止」と強調。台湾問題を巡る米国や日本の「干渉」への強いいら立ちが浮き彫りになった。だが、トランプ米大統領は台湾を巡る情勢を懸念していないと述べ、台湾と中国の「統一」は不可避だとしている中国の習近平国家主席との関係をアピールした。米国は、馬耳東風という感じである。

     

    『毎日新聞 電子版』(12月29日付)は、「中国、軍粛清の影響打ち消しも意図か 大演習で日台威圧、米けん制」と題する記事を掲載した。

     

    中国国営中央テレビによると、中国国防大の孟祥青教授は、今回の演習は「台湾独立派への懲罰と米国へのけん制」の意味が込められていると指摘した。

     

    (1)「トランプ米政権は12月17日、台湾に対して過去最大規模となる総額約111億ドル(約1兆7000億円)相当の武器売却を承認したと発表したばかり。中国外務省は26日、米国の軍事関連企業20社と幹部ら10人を入国禁止などの制裁を科して強く反発していた。中国の習近平指導部にとって、悲願である台湾統一の最大の障害は米軍の存在だ。トランプ政権の動きに神経をとがらせており、中国紙「環球時報」は「(台湾が)どれだけ武器を購入しようと、中国軍の鉄壁の前では無駄だ」と主張する専門家の意見を伝えた」

     

    中国は、台湾統一目的でどれだけ国力を無駄にしているか分らない。これは、領土拡大であって戦前の「帝国主義」再現である。台湾を支配する目的で軍事大演習をしているが、機密情報は米軍へ筒抜けになっている。台湾周辺の演習は、行えば行うほど軍事情報が米軍へ蓄積されることを無視している。決して,賢明とは言えない振舞である。

     

    (2)「国民のナショナリズムに訴えて求心力を高めてきた習指導部としては、台湾問題で「弱腰」とみられるわけにはいかない政治的な事情がある。ただ、演習規模をみると、過去と比べて突出しているわけではない。習指導部が、本音では米国との軍事的緊張を望んでいない表れと言える。トランプ米大統領の2026年4月訪中という重要イベントを控え、中国は、米国との取引(ディール)に向け、現状の「休戦状態」(北京の外交筋)を維持することが基本路線だからだ。そこで、習指導部は大規模演習によって国内の「ガス抜き」を図りつつ、この時期の大規模演習であれば4ヶ月先のトランプ氏訪中への悪影響は避けられると計算した可能性がある」

     

    演習規模は、過去と比べて突出しているわけではないという。習氏が、本音では米国との軍事的緊張を望んでいない表れとみられる。

     

    (3)「さらに、習指導部は、日中関係においても、台湾有事を巡る高市早苗首相の国会答弁への攻撃を激化させているところだ。日本近海での大規模な軍事活動は、高市政権への威圧の意味もあると考えられる。中国軍は「日本が台湾情勢に武力介入すれば、悲惨な代償を払うことになる」と強い言葉で警告を発し、12月6日には沖縄本島南東の公海上空で中国軍機が自衛隊機へレーダー照射する事態が起きていた」

     

    中国は、清国時代と同じ振舞をしている。日本を威圧しているからだ。日本は,米軍を通じて中国の機密情報を手に入れるはず。これによって、対中防衛戦略をさらい練上げるのであろう。

     

    (4)「一方で、中国軍の内部事情に目を向けると、今回の演習は、軍幹部の大量粛清で空席になっていた東部戦区トップの司令官が新たに決まった直後に実施された。中国軍は大規模な汚職疑惑で揺れており、軍制服組トップにあたる中央軍事委員会副主席や東部戦区司令官らが摘発され、共産党の党籍剥奪などの厳しい処分を受けた。失脚した軍幹部には、台湾を管轄する東部戦区の関係者が少なくなく、その作戦能力や士気に打撃を与えているとの指摘もあった」

     

    空席の軍幹部を埋めて、ようやく「戦える体制」に戻ったところだ。その意味で、今回の演習は中国国内向けの「ガス抜き」でもあろう。

     

    (5)「そうした中、22日に東部戦区の新たな司令官に、空軍出身の楊志斌氏が就任し、習国家主席によって軍階級最高位の上将に任命されたことが明らかになった。習指導部としては、新たな司令官の下で台湾を包囲する大規模演習を遂行することで、粛清の嵐が吹き荒れる中でも、軍の運用に支障がないことを国内外に示す意味もあるとみられる」

     

    大規模な汚職の飛び交う人民解放軍が、決して「戦意」の高い軍隊と呼べる存在ではない。大きな汚点を抱える軍隊が、「正論」を述べてもまともに響かないのだ。

     

     

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    韓国の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に出産する子供の数)は、世界ワーストワンである。これは、将来の人口減が最も早く進むことを示しているが、労働力不足を招くことの予告でもある。経済成長率の鈍化が、予想外の早さで進むシグナルだ。こうした状況にある韓国経済は、これから経済成長率が1%台になることを示している。

     

    『中央日報』(12月30日付)は、「『失われた5年』予約した韓国経済」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のコ・ヒョンゴン編集人である。

     

    韓国政府は、2026年の経済成長率目標を18%と発表した。新年を「韓国経済大跳躍の元年」としている。1.8%は1%台の低成長ではないのか。大跳躍元年というには気まずい水準だ。いっそ率直な方が良かった。「来年も1%台の成長が避けられないからさらに奮発する。政府を信じて応援してほしい」と言うべきだ。

     

    (1)「韓国は低成長に慣れていない。朴正熙(パク・チョンヒ)政権以降1%以下の成長は4回だけだった。異常兆候が現れたのは2023年からだ。大きな事件はなかったのに16%の成長にとどまった。世界がコロナ禍を克服するために資金を大幅に放出した後遺症を患った。ロシアとウクライナの戦争で世界的供給網が崩れインフレが深刻になった。だが1%台の成長に落ちるほど深刻な状況ではなかった。同年、米国は韓国より高い29%成長した。2024年はベース効果もなかった。かろうじて2%台に入った」

     

    韓国経済が、変調をみせた23年以降には明らかな根拠が見られる。それは、生産年齢人口(15~64歳)比率が、70%台へ低下していることと無縁でない。この比率は今後、一段と低下していく。韓国経済が、トンネルへ入った証拠である。

     

    (2)「2025年の10%、2026年の18%に続き韓国銀行は2027年も19%にとどまるという暗鬱な見通しを出した。2023~2027年の5年間1%台の低成長のトンネルに閉じ込められるということだ。こんなことでは、危機が迫るのでないかと懸念するが、危機はすでに始まったと言っても過言ではない。日本の「失われた10年、30年」のように、韓国が一度も経験したことのない「失われた5年」を予約した形だ」

     

    2023~2027年の5年間が、1%台の低成長のトンネルに閉じ込められるのは、労働力供給からみて不可避である。これを前提にした経済政策が、求められる時代になったのだ。

     

    (3)「事態の深刻性に比べ、政府の対策は危機感が不足する。アイデアも貧困に見える。支援金と地域通貨を前面に出して金融を緩和する短期対症療法に頼っている。進歩政権のおなじみのメニューだ。国政を城南市(ソンナムシ)運営の拡大版ぐらいと考えているようだ。李在明(イ・ジェミョン)政権が発足してすぐにやったことも全国民支援金だった。経済研究機関は、今年13兆ウォンの民生クーポンが成長率を01ポイントほど引き上げたと分析している。効果はあったが、景気回復の呼び水になるほど大きくはなかった。その上財政に負担を与える臨時方便だ。新年にも景気が良くなければ、また追加補正予算の話が出るだろう。6月に地方選挙があるので民主党がおとなしくしているわけがない。国民の税金を自分の金であるかのように恩着せがましく放出するのは間違いない」

     

    李政権は、地域通貨にウエイトを置いているが、地域経済の活性化策であって、国家レベルの政策ではない。労働力不足に対処した政策が不可欠である。それには、終身雇用政策をやめて労働市場の活性化が必要である。50歳前で、会社を辞めて自営業へ転じる姿こそ、労働市場の硬直化を示している。

     

    (4)「資金を放出するので、市中に流動資金があふれる。残念ながら、その資金は実体経済に向かわず、証券市場と不動産に集まる。韓国政府は、韓国総合株価指数(KOSPI)が5000ポイントを目前に控えていると自慢するが、株価だけ上がるのではない。住宅価格が高騰し、物価も揺れる。結局、持ち家がなく、株式投資は考えることもできない庶民と弱者が最も大きな影響を受ける」

     

    韓国政府は、流動性供給が経済活性化の道とみているが間違いである。労働市場の改革こそ不可欠だが、労組が年功序列賃金と終身雇用制に固執しているので大きな障害である。左派政権は、労組の支持で成り立っているからだ。

     

    (5)「政府の経済成果としては、株価上昇と米国との関税交渉妥結が挙げられる。実体経済が支えなければ常に不安なのが株価だ。米国関税交渉も大成功のように武勇談があふれたが本当にそうだろうか。厳密に話せば毎年200億ドル以上の資金を米国に送らなければならない大きな負担が残った。これが韓国の現実で実力だ。長期沈滞が始まったが、何があれほど自信満々だったのかわからない」

     

    韓国政治は、左右両派の対立が激しく妥協が困難である。特に、労組が絡む問題では平行線である。李政権は、労組を説得して国民すべてに経済成長の果実が行き渡る政策に転換すべきであろう。それができるのは、身内の左派政権だけであろう。

     

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    中国は、来年1月からEV(電気自動車)の輸出で許可制にする。品質の劣るEVが輸出されており、各国からクレームが付いているからだ。国内では、地方財政の悪化からEV購入の補助金が打ち切られている。こうした事情が重なり電池業界は、「寒風」が吹き荒れそうである。ここ数年、中国の電池メーカーは「世界需要は無限に伸びる」という前提で設備投資を拡大してきた。だが、需要急減によって過剰設備が一気に表面化し、収益を圧迫する事態を迎える。典型的な「中国型巨大投資」の逆回転現象が始まるのだ。

     

    『ロイター』(12月29日付)は、「中国製リチウム電池需要、来年初めに失速へ 乗用車協会幹部が見通し」と題する記事を掲載した。

     

     中国乗用車協会(CPCA)の崔東樹事務局長は28日、中国製リチウム電池需要は、国内の電気自動車(EV)販売の急減や輸出鈍化によって、来年初めに落ち込む公算が大きいとの見通しを示した。

     

    (1)「崔氏は、「来年を見据えると、新エネルギー用電池の需要は今年末から劇的に減少するだろう。だから電池メーカーは生産を減らし、そうした変動に対応するために一服するべきだ」と述べた。環境に優しい自動車(グリーンカー)の来年初めの販売台数は、今年第4・四半期を少なくとも30%下回ると予想し、その理由として自動車購入の税制優遇措置が段階的に廃止されつつある点を挙げた」

     

    これまで、補助金で伸びてきた中国EVが、補助金打切りとともに販売が落込む局面になった。同時に、電池も落込む。EV・電池は、これまでも過剰生産の坩堝に置かれてきたが、補助金が命綱となって生き延びてきた。地方政府の財政ひっ迫で、その補助金継続を不可能にしている。

     

    (2)「商業用のEVの販売も、今年末にかけての補助金や税控除適用目当ての駆け込み購入の反動で、来年初めは確実に落ち込むだろうと述べた。その上で、国内需要の減少を輸出で補える可能性は乏しいとの見方を示した。中国製リチウム電池の欧州連合(EU)向け輸出は今年4%増加したが、米国向けは9.5%減少した。崔氏は、米国向けの輸出減少について、同国における人工知能(AI)ブームに起因するエネルギー貯蔵関連需要の拡大が、中国製電池需要を押し上げていないことがうかがえると指摘した」

     

    米国は、AIブームで蓄電需要が急増しているにもかかわらず、中国製電池はその需要を取り込めていない状況だ。これは単なる経済問題ではなく、中国に関わる安全保障・産業政策・技術覇権の総合的排除を意味する。中国が、「敵対国」という厳しい対応をされている結果だ。中国のEV・電池産業は、「輸出で過剰生産を吸収する」モデルだった。だが、世界は中国製EV・電池を政治的理由で受け入れない時代に入っている。

     

    背景には、中国の威圧外交がある。中国は、自国にとって不都合な事態が起こるといきりたち,相手国を腕力で押し潰そうとする。そういう「暴力的体質」に拒否反応が出ているのだ。まさに、政治的な嫌悪感の表明である。

     

    中国の電池産業は、「成熟期」から「調整期」へ入ったとみられる。これまでの成長は、補助金に支えられた国内市場の急拡大。それに、輸出の爆発的増加などの要因に支えられてきた。しかし、2026年以降は相手国の市場要因が中国製品の輸出を左右する事態へ転換する。 これは、中国製造業全体に共通する「成長モデルの限界」を象徴するものだ。中国経済にとっては、厳しい要因がもう一つ増える格好となろう。

     

     

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