中国の年間貿易黒字が、1兆ドルを超えて急増している。ダンピング輸出の結果だ。最近、欧州の首脳が相次いで訪中するなど、中国の習近平国家主席には風が吹いている。だが、貿易黒字急増の裏側を探ると、内需の弱さに帰着する。輸出だけ増やしたが、国内不況で輸入が増えない結果でもある。手放しで貿易黒字増大を喜べない状況に追い込まれているのだ。
元財政相の楼継偉氏は最近、不動産不況が少なくとも後5年続くとの見通しを語った。不動産バブル崩壊後遺症が、中国経済を焼き尽くす感じだ。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月10日付)は、「もろい土台:習氏の外交成果、低迷する経済を覆い隠す」と題する記事を掲載した。
習近平氏は最近、自信を持つ理由が十分にある。中国の年間貿易黒字が1兆ドルを超えて急増する中、西側諸国の首脳が北京訪問に列をなしている。また、WSJ中国支局長のジョナサン・チェンが指摘したように、最近発表された米国の国家安全保障戦略は、中国に対するトーンが以前より穏やかになったことを示している。そしてドナルド・トランプ米大統領は週初めに、エヌビディアがより高性能なH200チップを中国に出荷することを承認した――中国からの見返りはほとんどなかったが。
(1)「国内経済に関しては、その自信は厳しい現状に直面している。輸出は底堅さを維持しており、中国は今年1~11月に1兆1000億ドルの黒字を積み上げることができた。だが、より広範な国内データは、構造的な疲弊に苦しむ経済を浮き彫りにしている。 10月の鉱工業生産の伸びは急激に鈍化し、中国の製造業の勢いが冷え込んでいることを示している。あらゆる景気拡大の生命線である借り入れ需要は、民間部門と全体の貸し出しの両方で減少した。インフラ投資は前年比で12.1%という驚異的な減少を記録した。小売売上高は、アナリストらが一時的な上昇と呼ぶ金と宝飾品の需要によって支えられた。これは安全資産への逃避であり、自動車と家電の売上高の減少をかろうじて覆い隠した」
中国は、今年1~11月に1兆1000億ドルの黒字を積み上げた。ダンピング輸出と内需不振にともなう輸入停滞に基づく。不況の象徴的事例である。
(2)「より深刻な苦境は、かつて中国の台頭を支えたセクターである不動産にある。国有系デベロッパーの万科企業は、かつて業界の最優良企業と見られていたが、現在は2億8300万ドルの債券について1年間の支払い猶予を懇願している。万科は債権者への書簡で「当社の経営状況は依然として極めて厳しい」と認めた。業界の最後の安全のとりでとされていた万科がつまずけば、ほとんど誰も無傷ではいられないだろう」
不動産バブル崩壊で、大手不動産企業が倒産の瀬戸際に立たされている。万科で3社目になる。
(3)「元財政相の楼継偉氏は最近、中国の著名なビジネス誌『財新』が主催したフォーラムで、投資家を震え上がらせるような見解を披露した。中国の不動産縮小は少なくともあと5年は続く可能性が高いというものだ。楼氏の予測が現実化すれば、資本流出がゆっくりと長く続く可能性がある。さらに5年間の住宅不況は、システミックな金融危機のリスクを高めるだろう。銀行のデベロッパーや建設業者、住宅ローンへの膨大なエクスポージャーが、着実に有害な不良債権に変わり、資本バッファーを食いつぶすことになる」
元財政相の楼継偉氏は、中国の不動産縮小が少なくともあと5年続くとみている。つまり、あと5年以上は続くという暗い見通しである。この間、景気底入れはない、ということだ。
(4)「長年にわたる低迷は、すでに地方政府の財政を直撃している。土地使用権売却はかつて歳入の最大40%を占めていた。長期にわたる低迷がさらに続けば、都市がその資金調達手段とする融資平台(地方政府傘下の投資会社)が抱える数兆ドルの不透明な債務を返済することをさらに困難にし、回復を支えるために必要な財政能力を空洞化させる可能性がある」
不動産不況の長期化は、中国財政の空洞化=赤字拡大を意味する。深刻な事態へと突入する。
(5)「おそらく最もやっかいなのは、マイナスの資産効果だ。不動産は中国の家計総資産の約70%を占めるため、価格下落は中間層の中核を直撃する。すでに数兆ドルの帳簿上の富が蒸発し、経済学を超えた深い不安を生み出している。正味資産のほぼ4分の3を占める資産が急落している時、自然な反応は貯蓄を増やし、支出を大幅に減らすことだ。これは経済回復にとって必要な国民の信頼を損なう守りの姿勢である」
家計の正味資産は、地価値下がりでほぼ4分の3が消えている。こういう局面での自然な反応は、家計が貯蓄を増やし、支出を大幅に減らすことだ。これからは,財政悪化と個人消費切り詰めが徹底化する、くらい時代へ移行する。
(6)「多くのアナリストは、中国の成長が冬の間も萎縮し続けると予測しており、ここ数年で常に後手に回っているように見える中央政府にとってリスクが高まっている。楼氏の予測は、長期化する住宅危機による累積損失が、最終的には中国政府の中央集権システムでさえ吸収するには大きすぎるものになる可能性があることを示している。習氏は国際舞台では強く見えるかもしれないが、立っている土台にはすでにひびが入っている」
長期化する住宅危機による累積損失は、最終的に中国政府の中央集権システムでさえ吸収できない財政赤字を生むであろう。習氏は、国内的に深刻な事態に遭遇する。これが、経済学からみた中国の「病状」である。





