防衛省が、防衛白書のミニバンを小学校に配布しようとしたところ、学校側の対応が分かれているという。戦後間もない頃、日教組は自衛隊絶対反対を叫んでいたが、今もこういう雰囲気が残っているのだろうか。
日本を取巻く安全保障上の環境は、悪化の一途である。中ソの爆撃機が、日本列島を威嚇して一周するという時代だ。日本の平和を守るにはどうするか。ただ、平和を守ろうという理念だけでは、平和を守れない「弱肉強食」時代が逆戻りしている。外交も必要だが、抑止力を同時に持つことも不可欠であろう。ドイツの哲学者カントは、「同盟を結ぶことが、独裁国から身を守る手段」(『永遠平和のために』1795年)と訴えた。この著書は、現在も読み継がれている永遠のベストセラーである。
『毎日新聞 電子版』(12月28日付)は、「小学校に防衛白書、割れた教委対応 識者『一方的見方伝えるリスク』」と題する記事を掲載した。
防衛省が2025年から公立小学校への配布に乗り出した子ども向け防衛白書。配布を計画した防衛省や、対応した教育委員会を取材すると、調整や取り扱いに苦慮する状況が浮き彫りになった。
(1)「防衛省によると、子ども向け白書は、小学校高学年から高校生を対象に、防衛省・自衛隊について分かりやすく解説し理解を得る目的で製作。21年の初版から23年版までは防衛省ホームページの「キッズサイト」で掲載し、24年版で初めて「小学生が手に取って読めるように」と紙の冊子にした」
他国を侵略することは、二度と引き起してはならない。これは、日本人共通の願いである。だが、攻込んでくる敵に対して無抵抗で良いのか。この一点が、今問われている。
(2)「24年版は文とイラスト、写真を使ったフルカラーの全22ページ。抑止力の重要性を挙げ、中国、北朝鮮、ロシアの国名を出して日本周辺での軍事活動を説明する。22年末に閣議決定された「国家防衛戦略」を踏まえ、「日本を守るために強くする七つの分野」として、敵の射程圏外から攻撃する「スタンドオフ防衛能力」や宇宙・サイバー領域での作戦能力などにも触れている。防衛省は、「小学校の図書館を含む場面で活用いただけたら」としている」
戦後の平和教育は、日教組が牛耳ってきた。銃を取るなと言う無抵抗主義が、長いこと支持を集めてきた。日本がGDP世界2位となるに及んで、国民の防衛意識は変ってきた。自国は、自分の手で守るという認識だ。
(3)「毎日新聞は10~12月上旬、47都道府県の教委を対象に冊子配布に関するアンケートをした。回答した39道府県教委のうち、防衛省から配布の相談があったのは25道県教委。14府県教委には相談自体がなかった。子ども向け防衛白書で配布の相談があった自治体(25道県教委)の対応と主な理由はつぎの通りだ。25道県教委のうち、配布を「了承した」と回答したのは栃木、三重、長崎の3県教委と、自治体名非公表との条件付きで回答した1県教委。防衛省への取材で、アンケート未回答の青森、秋田も了承したことが判明し、少なくとも計6県教委が了承したとみられる。理由について、了承した県教委は「国からの依頼に対して省庁によって差をつけるのは不適切」などと回答している」
47都道府県の教委には、未だ日教組の流れが残っているのであろう。学校現場からの突き上げを恐れて、「事なかれ主義」に陥っている。日本の防衛をどうするのか、小学生に教えるには早すぎるとしても、データだけは用意しておくべきだろう。
(4)「一方、判断や対応を「見送った」としたのは17道県教委。理由として11県教委は「配布するかどうかは市町村教委ごとの判断」とし、5道県教委は「文部科学省からの依頼文がない」、1県教委が「小学生には内容が難しい」とした。残る4県教委は、相談を受け協議している間に、防衛省から配布断念の連絡が入ったなどとしている。防衛省は「調整の整った都道府県の小学校に配布した」とする。では「配布は市町村ごとの判断」と説明した教委の地域にはどう対応したのか。防衛省は取材に対し、「調整先が多数に及び業務が煩雑になることから配布の調整を断念した」と答えた」
日教組の反応を恐れている雰囲気が、手に取るように分る。強制して配布する必要はないが、自然に受入れる「防衛意識」が欲しいものだ。防衛は、決して忌避できる問題ではない。日本は、太平洋戦争を引き起した責任を回避できないが、自国を守るという最低限の意識まで放棄した訳ではあるまい。
(5)「長崎大核兵器廃絶研究センターの中村桂子准教授(核軍縮)は、「安全保障をタブー視することなく、必要なことは教えていくべきだ」とした上で、国同士の関係構築が外交や市民交流、留学、経済・文化など多面的であることを踏まえ、今回の冊子は「軍事力による安全保障が解決策であるかのような一方的なものの見方、考え方を伝えてしまう大きなリスクがある」と指摘。ウクライナの防衛力不足を指摘する記述についても「歴史的経緯を踏まえず、防衛力強化の説明に都合のいいところをつまんでいる」と批判した」
ウクライナ侵攻に、歴史的経緯があるという指摘は極めて遺憾である。プーチン・ロシア大統領の発言をそのまま認めたのも等しい暴言である。いかなる理由があろうと、侵略は悪である。長崎大核兵器廃絶研究センター教授の発言としては、撤回すべきであろう。カントの『永遠平和のために』をもう一度、手にして欲しいものだ。





