勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2025年12月

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    防衛省が、防衛白書のミニバンを小学校に配布しようとしたところ、学校側の対応が分かれているという。戦後間もない頃、日教組は自衛隊絶対反対を叫んでいたが、今もこういう雰囲気が残っているのだろうか。

     

    日本を取巻く安全保障上の環境は、悪化の一途である。中ソの爆撃機が、日本列島を威嚇して一周するという時代だ。日本の平和を守るにはどうするか。ただ、平和を守ろうという理念だけでは、平和を守れない「弱肉強食」時代が逆戻りしている。外交も必要だが、抑止力を同時に持つことも不可欠であろう。ドイツの哲学者カントは、「同盟を結ぶことが、独裁国から身を守る手段」(『永遠平和のために』1795年)と訴えた。この著書は、現在も読み継がれている永遠のベストセラーである。

     

    『毎日新聞 電子版』(12月28日付)は、「小学校に防衛白書、割れた教委対応 識者『一方的見方伝えるリスク』」と題する記事を掲載した。

     

    防衛省が2025年から公立小学校への配布に乗り出した子ども向け防衛白書。配布を計画した防衛省や、対応した教育委員会を取材すると、調整や取り扱いに苦慮する状況が浮き彫りになった。

     

    (1)「防衛省によると、子ども向け白書は、小学校高学年から高校生を対象に、防衛省・自衛隊について分かりやすく解説し理解を得る目的で製作。21年の初版から23年版までは防衛省ホームページの「キッズサイト」で掲載し、24年版で初めて「小学生が手に取って読めるように」と紙の冊子にした」

     

    他国を侵略することは、二度と引き起してはならない。これは、日本人共通の願いである。だが、攻込んでくる敵に対して無抵抗で良いのか。この一点が、今問われている。

     

    (2)「24年版は文とイラスト、写真を使ったフルカラーの全22ページ。抑止力の重要性を挙げ、中国、北朝鮮、ロシアの国名を出して日本周辺での軍事活動を説明する。22年末に閣議決定された「国家防衛戦略」を踏まえ、「日本を守るために強くする七つの分野」として、敵の射程圏外から攻撃する「スタンドオフ防衛能力」や宇宙・サイバー領域での作戦能力などにも触れている。防衛省は、「小学校の図書館を含む場面で活用いただけたら」としている」

     

    戦後の平和教育は、日教組が牛耳ってきた。銃を取るなと言う無抵抗主義が、長いこと支持を集めてきた。日本がGDP世界2位となるに及んで、国民の防衛意識は変ってきた。自国は、自分の手で守るという認識だ。

     

    (3)「毎日新聞は10~12月上旬、47都道府県の教委を対象に冊子配布に関するアンケートをした。回答した39道府県教委のうち、防衛省から配布の相談があったのは25道県教委。14府県教委には相談自体がなかった。子ども向け防衛白書で配布の相談があった自治体(25道県教委)の対応と主な理由はつぎの通りだ。25道県教委のうち、配布を「了承した」と回答したのは栃木、三重、長崎の3県教委と、自治体名非公表との条件付きで回答した1県教委。防衛省への取材で、アンケート未回答の青森、秋田も了承したことが判明し、少なくとも計6県教委が了承したとみられる。理由について、了承した県教委は「国からの依頼に対して省庁によって差をつけるのは不適切」などと回答している」

     

    47都道府県の教委には、未だ日教組の流れが残っているのであろう。学校現場からの突き上げを恐れて、「事なかれ主義」に陥っている。日本の防衛をどうするのか、小学生に教えるには早すぎるとしても、データだけは用意しておくべきだろう。

     

    (4)「一方、判断や対応を「見送った」としたのは17道県教委。理由として11県教委は「配布するかどうかは市町村教委ごとの判断」とし、5道県教委は「文部科学省からの依頼文がない」、1県教委が「小学生には内容が難しい」とした。残る4県教委は、相談を受け協議している間に、防衛省から配布断念の連絡が入ったなどとしている。防衛省は「調整の整った都道府県の小学校に配布した」とする。では「配布は市町村ごとの判断」と説明した教委の地域にはどう対応したのか。防衛省は取材に対し、「調整先が多数に及び業務が煩雑になることから配布の調整を断念した」と答えた」

     

    日教組の反応を恐れている雰囲気が、手に取るように分る。強制して配布する必要はないが、自然に受入れる「防衛意識」が欲しいものだ。防衛は、決して忌避できる問題ではない。日本は、太平洋戦争を引き起した責任を回避できないが、自国を守るという最低限の意識まで放棄した訳ではあるまい。

     

    (5)「長崎大核兵器廃絶研究センターの中村桂子准教授(核軍縮)は、「安全保障をタブー視することなく、必要なことは教えていくべきだ」とした上で、国同士の関係構築が外交や市民交流、留学、経済・文化など多面的であることを踏まえ、今回の冊子は「軍事力による安全保障が解決策であるかのような一方的なものの見方、考え方を伝えてしまう大きなリスクがある」と指摘。ウクライナの防衛力不足を指摘する記述についても「歴史的経緯を踏まえず、防衛力強化の説明に都合のいいところをつまんでいる」と批判した」

     

    ウクライナ侵攻に、歴史的経緯があるという指摘は極めて遺憾である。プーチン・ロシア大統領の発言をそのまま認めたのも等しい暴言である。いかなる理由があろうと、侵略は悪である。長崎大核兵器廃絶研究センター教授の発言としては、撤回すべきであろう。カントの『永遠平和のために』をもう一度、手にして欲しいものだ。

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    中国軍で台湾方面を管轄する東部戦区は29日、台湾を取り囲み、同日から軍事演習を行うと発表した。「台湾独立勢力と外部の介入勢力に対する強い警告」と主張しており、米国の台湾支援だけでなく、高市早苗首相の台湾有事発言を意識している可能性がある。台湾包囲の演習は今年4月以来だ。

     

    だが、実戦さながらの大演習で実弾射撃も行うので、米軍にとっては中国軍の生の情報収集にはまたとないチャンスだ。軍事演習は、威嚇のために行われるが、同時に情報を晒す行為でもある。演習をすればするほど、米軍は中国軍の戦争計画を理解し、対策を練ることができるのだ。中国軍は、怒りの余りに「逆上」しているようだは、貴重な軍事情報がソックリ米軍へ渡っているとすれば、賢明とは言えないのだ。墓穴を掘るからだ。

     

    米軍は以下の手段で中国軍を常時監視できる「メリット」があると指摘されている。

    偵察衛星(軌道上からの高解像度観察)

    電子偵察機

    潜水艦による通信傍受

    無人機(グローバルホーク)

    海軍艦艇のレーダー観測

    中国軍の演習が大規模であればあるほど、レーダー波、通信、部隊配置、指揮系統、反応速度などの「生データ」が大量に収集可能となる。中国軍は、こういう欠陥をどこまで意識しているのか。

     

    『毎日新聞 電子版』(12月29日付)は、「中国の大規模軍事演習 背景に高市首相の『台湾』答弁と米の武器供与」と題する記事を掲載した。

     

    中国軍で台湾方面を管轄する東部戦区は29日、台湾周辺で大規模な軍事演習を開始した。実弾射撃を伴う訓練のため、30日には指定の演習区域に船舶や航空機が入らないよう警告した。同戦区の報道官は「『台湾独立』勢力と外部の干渉勢力に対する重大な警告だ」と主張。日本や米国をけん制し、台湾の頼清徳政権を揺さぶる狙いがあるとみられる。

     

    (1)「東部戦区の発表によると、演習は陸海空、ロケット軍などの兵力を動員し、台湾を包囲するように訓練区域が設定された。東部戦区の報道官は「制海・制空権の奪取や重要港湾の封鎖などを重点的に訓練し、艦船や航空機が多方向から台湾島に接近し、統合作戦での実戦能力を検証する」と表明した。中国軍は29日、多数の戦闘機や艦艇が出動し、実弾射撃を伴う訓練を行っている映像を公開。爆撃機が台湾東部の空域に展開し、太平洋上の目標への攻撃訓練も実施したという。中国海警局も台湾周辺でのパトロールを強化した」

     

    相手を威嚇するのは、「孫氏の兵法」によるものだ。だが、情報戦の現代において、中国は手の内を晒すリスクを背負っている。米軍がすべて収集しているのだ。演習を見れば、弱点もすぐ分るという。手の内を米軍へ晒しながら、怒りの演習を行うのだ。

     

    (2)「中国軍が、台湾で大規模な軍事演習を実施するのは今年4月以来。台湾の頼政権を「独立派」と敵視し、軍事的な圧力を常態化させている。今回の演習は「正義使命2025」と名付けられ、中国で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の報道官は29日の声明で「台湾は中国の台湾であり、いかなる外部勢力も介入を企てれば、中国軍の鉄壁によって必ず打ち砕かれる」と主張した」

     

    日清戦争前に、清国海軍は、新鋭艦2隻を長崎へ回航させて日本を威圧したが、日本海軍は、その弱点を見抜いた。中国海軍は、今回も米軍にすべての情報を握られる。

     

    (3)「台湾情勢を巡っては、日本の高市早苗首相による台湾有事を巡る国会答弁で日中関係が悪化。さらにトランプ米政権が最近、台湾への大規模な武器供与を承認したことにも中国側は強く反発していた。一方、台湾総統府の郭雅慧報道官は29日、中国軍が台湾周辺で大規模な軍事演習を始めたことについて「台湾海峡とインド太平洋地域の平和で安定した現状を破壊するだけでなく、国際法や国際秩序に公然と挑戦するものだ」と非難した」

     

    中国が,演習と偽って奇襲攻撃するのでないかと懸念されたこともある。これは、事前に把握されるであろう。大軍を艦船へ乗船させれば、すぐに分るので奇襲攻撃の線はないのだろう。

     

    (4)「国防部(国防省に相当)は29日に記者会見し、午後3時までに台湾周辺で延べ89機の中国軍機と14隻の軍艦、14隻の海警局公船の活動を確認したと明らかにした。空母は参加していないとの見方を示した。中国軍の演習区域内には旅客機や商用船舶が利用する多くの国際航路が通っている。中国は30日に実弾演習を予定していることから、卓栄泰・行政院長(首相に相当)は関係部門に対し、航路を調整し、安全確保に当たるよう指示した」

     

    これら中国軍機間の通信も傍受されている。米軍がもっとも欲しい情報は、レーダー・通信・ミサイル誘導波・司令部の通信パターンとされている。米軍は、すべての情報を探索しているのであろう。

     

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    中国の労働事情は、悪化の一途である。正規雇用が減って不正規雇用へ流れている。ギグワーカー(日本では日雇い)が、2億人と推定されている。就業者数が7億3400万人(24年)であるから、ざっと27%がこの不安定な雇用で生活している計算だ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月29日付)は、「中国ギグワーカー、11ドル・14時間労働でも増加の一途」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「不動産業や教育業などは数年前まで多くの雇用を生み出していたが、不動産バブルが崩壊し、中国政府が民間セクターに対する規制強化に乗り出すと、窮地に陥った。習近平国家主席が優遇投資分野と位置づける、ロボット工学や先端製造業などのハイテク産業は、労働集約的ではない。そのため、パートタイムや非正規職に目を向ける人が一段と増えている。龍洲経訊(ガベカル・ドラゴノミクス)のデータによると、現在、中国の非農業労働力に自営業者が占める割合は約30%で、2013年の20%から上昇している」

     

    習氏が唱える「新質生産力」の先端産業は、いくら増えても雇用が増えないというジレンマを抱えている。そこで、パートタイムや非正規職に生活の糧を求めるほかない。ギグワーカーは、分類上は「自営業」である。非農業労働力の3割も占める。自営業比率の高さは、発展途上国特有の現象である。中国の3割は、世界ワースト上位4ヶ国にランクされるほど。ブラジルやメキシコ並みである。これで、世界覇権へ挑戦すると言うのだから、自らの足下を忘れた「妄想」であろう。

     

    (2)「中国の配車ドライバー数は、2024年までの4年間で3倍の750万人に増加した。一方、同じ期間に配車サービス利用回数は約60%しか増えていないことが、政府統計で明らかになっている。中国の多くの都市は今年、競争が激しすぎるとして、求職者に配車業界に参入しないよう呼びかけている。ギグ経済に参入する人があまりにも増えた結果、賃金に下押し圧力がかかっている。他の業界で解雇された人や、フルタイムの仕事を見つけられない人が、低賃金を競っているためだ。龍洲経訊のアナリスト、アーナン・ツイ氏は「このグループの供給はほぼ飽和状態にある」とし、ギグワーカーがここ23年で急拡大していると述べた」

     

    配車ドライバー数は4年間で3倍に増えたが、同じ期間に配車サービス利用回数は約60%しか増えていないのだ。これでは、供給過剰で手数料は減らされる状況だ。

     

    (3)「配達ドライバーは、多くの人にとって最も簡単な選択肢だ。電動バイク、スマートフォン、そして走り回る意欲さえあれば、ほぼ誰でもこの業界に参入できる。中国東北部出身のウー・ディさん(37)は、軍隊での勤務や建築業などの仕事を経て、7年前に配達ドライバーを始めた。配達ドライバーとしての月給は、仕事を始めてすぐに約2800ドルで頭打ちとなった。その後、約1400ドルまで下がったが、1日8時間働けば、少なくともその金額は比較的楽に稼げた。最近では、その金額を稼ぐには1日14~15時間働く必要がある。ウーさんの場合、配達1回の報酬は約1ドルで、数年前の1.25ドルから減った。彼の今の目標は、別の業界に移ることだ」

     

    配達ドライバー参入者が増えているのは、不況の影響を反映している。正規職が減って非正規職へシフトしている結果だ。ウー・ディさん(37)は、7年前は約2800ドル稼げたが、その後は半減で1400ドルへ下がった。それでも、1日8時間働けば良かったが、現在では1日14~15時間働く必要がある。配達1回の報酬は約1ドルである。

     

    (4)「中国のフィンテック企業アント・グループの研究部門と別の研究機関による最新の四半期ギグワーカー調査によると、宅食ドライバーを含む「プラットフォームベースの人員」の週労働時間は平均54時間で、月収は平均約730ドル相当となっている。この仕事は危険を伴う場合があり、健康保険などの福利厚生は最小限で、雇用の安定性もほとんどない。国営メディアによると、2023年には宅食ドライバーが関係する交通事故が約1万2000件発生した。1日平均およそ33件の事故が起きている計算になる。ウーさんはこれまでに3回の交通事故に遭った。また、同じ配達ステーションの同僚3人が業務中の事故で死亡したという」

     

    平均的ギグワーカー収入は、週労働時間は平均54時間、月収は平均約730ドル相当(約11万3000円)だ。だが、交通事故が1日平均およそ33件も起きている。危険なビジネスである。

     

    (5)「多くのギグワーカーは、他の仕事よりもまだましだと語る。低賃金にもかかわらず、中国の宅食ドライバーは、工場労働者よりも多く稼げることが多く、勤務時間も自由に選べる。ただし、配達アプリがドライバーの動きを常に追跡しているため、過酷な労働環境になりやすい。このアプリは、ドライバーが時間通りに商品を配達できなかった場合、金銭的またはその他の罰則を科すことがあり、研修への参加を求めることもある。ブルートゥース・ヘッドセットを内蔵した「インテリジェント」ヘルメットは、アプリからの警告や通知をドライバーの耳に絶え間なく流し続ける」

     

    多くのギグワーカーは、他の仕事よりも稼げるので、まだましだという。だが、配達アプリがドライバーの動きを常に追跡している。過酷な労働環境になりやすいのだ。このアプリは、ドライバーが時間通りに商品を配達できなかった場合、ペナルティを課している。手取りは減らされる。

     

     

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    中国は、深刻な内需不振に陥っている。11月の小売売上高は、前年同月比1.%増と低迷し、コロナ禍を除けば最も低い増加率へ落込んだ。こうした事態を受けて、中国政府は、年末の全国財政工作会議で、2026年に財政支出ベースを広げ、必要な歳出を確保するよう求めた。同会議は翌年の財政政策の重点を決定する重要会議と位置付けられている。

     

    『ブルームバーグ』(12月28日付)は、「中国は来年も積極財政、買い替え支援を継続へ-全国財政工作会議」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国財政省は28日、週末開いた会議に関する発表資料で、より積極的な財政政策を実施する方針をあらためて示した。家計所得の伸びを高め、内需を拡大し、消費を後押しする措置を拡充することを目指す。先端的製造業や技術革新、人材開発といった重点分野に的を絞り投資を拡大する」

     

    積極的財政政策とは、財政赤字を拡大することを示している。具体的には、先端製造業への補助金支給による企業支援であろう。また、耐久消費財の買い替え支援を継続する。要するに、これまでの財政政策の延長であって何らの基調的な変化もなさそうだ。現在の中国経済が直面している問題は、内需不足をいかに補うかにある。先端製造業へ幅広く補助金をばら撒いても、結果的に過剰投資→過剰生産に陥り、企業は満足な利益も上げられないという不満足な結果に終っている。こういう無駄な補助金を止めて福祉へ向けた方がはるかに効果的だ。

     

    現実には、補助金減額が不可能である。理由は、台湾侵攻という軍事目的に合せた製造業への補助金を支給する「軍民融合」が始まっているからだ。補助金には、軍事目的が与えられているので、中止する訳にいかないのだ。疲弊する民間経済を尻目に軍民融合が優先されている。

     

    (2)「財政省は税制上の優遇措置の標準化に加え、製造業技術の高度化に向け「パイロット都市」の新たなグループもスタートさせる方針だ。国営の新華社通信が、藍仏安財政相の発言を引用したところでは、中国政府は消費財買い替えプログラムへの支援も継続する。債務管理と金融分野での国際協力を強化し、政府投資を通じて社会的投資も効果的に推進するという」

    「パイロット都市」とは何か。中国政府が、新たな政策や制度を全国展開する前に、特定の都市や地域を選んで先行的に実施・検証するためのモデル都市のことだ。これは、中国の政策運営においてよく使われる手法で、特に技術革新や産業高度化の分野では頻繁にみられる。現在は、次のような事業が行われている。

     

    1)スマート製造の推進 AI、IoT、ビッグデータなどを活用した「スマート工場」や「デジタルツイン」などの導入を進める。

    2)産業チェーンの強化 部品から完成品までのサプライチェーンを地域内で完結させ、外部依存を減らす。

    3)グリーン製造の実験 エネルギー効率や環境負荷の低減を目指した製造プロセスの導入をする。

    4)制度設計の試行:税制優遇、補助金、規制緩和などの政策を限定的に試し、全国展開の前に効果を検証する。

     

    1)の事例では、製造業のデジタル化率が全国平均を大きく上回っている。たとえば、蘇州や広州では、スマート工場の導入率が30〜40%に達し、AIによる品質管理や自動搬送システムの導入が進んでいる。

     

    「パイロット都市」は、モデル地区として成果が出ているところもあるが、人材難などによってバラツキが出ているという。こういう面での補助金は有効でも、企業への一律補助金は売上高の23%も与えられている。これが、補助金目当ての設備投資を始めるきっかけになっており過剰投資を招く大きな要因である。

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    中国政府は、不況で正規の仕事に就けずにその日暮らしのアルバイト稼業を、賞賛するキャンペーインを始めている。中国の若者は、7割以上が高学歴という社会になったが、満足な雇用先がなくフードデリバリーなどの仕事で辛うじて生きているのだ。こういう就職難への責任を回避すべく、「賛美する」テレビ番組を流している。どこまでも,無責任な政府であるのか。共産主義社会の実態を浮き彫りにしている。

     

    『ニューズウィーク日本語版』(12月28日付)は、「低賃金労働者の『怒り』を『感動』へ変換する、中国共産党のプロパガンダ」と題する記事を掲載した。

     

    中国で、賃金が低く社会的地位も低い仕事といえば、出稼ぎ労働者(農民工)の次にフードデリバリー配達員が挙げられる。より多くの収入を得るため常に時間と競争させられ、周囲から差別的な扱いを受けることも少なくない。

     

    (1)「その配達員について、中国官製メディアの代表格である中国中央電視台(CCTV)が先日制作した短編動画が物議を醸した。動画は、「デリバリーの仕事はお金が稼げるだけでなく、いつでも道中の景色を楽しめる」「いつでも役割を切り替えられ、夢に一歩近づいた気がする」と仕事を美化する内容だが、公開されるやネット上で袋だたきに遭った。「なるほど、出前配達は景色を見るため、工事現場でレンガを運ぶのは筋トレのため、道路清掃は日光浴のため、首つりはブランコに乗るためというわけか!」などと皮肉るコメントがあふれた」

     

    デリバリーの仕事が、お金が稼げるだけでなく、いつでも道中の景色を楽しめるとは、何という無責任さであるか。交通渋滞で配達先へ遅れれば、その分がペナルティとして給料から差し引かれている。道中の景色を楽しむゆとりなどゼロ。1分1秒を競うきつい仕事である。

     

    (2)「今回のように、現実と懸け離れた「正能量(ポジティブエネルギー)」プロパガンダが炎上するのは初めてではない。例えば、2020年の新型コロナウイルス流行期、CCTVは短編動画で妊娠9カ月の看護師が武漢の重症病棟で防護服を着たまま働き続ける姿を称賛し、「英雄的な母」というイメージを打ち出そうとした。しかし、「命を軽視しているだけだ」という強い怒りを全国規模で招く結果になった」

     

    労働者を英雄視して「持ち上げる」のが、中国共産党の流儀である。今の若者に,こういう見え透いた手段が通じるはずがない。余りにも姑息な手段であるからだ。

     

    (3)「国民の怒りを感動へと変換すること。それこそが、中国共産党が長年にわたり最も得意としてきた宣伝システムである。天災や人災、深刻な貧富の格差に直面しても、官製メディアが政府の失策を省みることはない。代わりに繰り返し喧伝されるのは、「多難興邦(ドゥオナンシンバン)」のようなスローガンだ」

     

    多難興邦とは、苦難が私たちをより強くするという意味である。2008年の四川大地震で被害に遭った学校を訪れた当時の温家宝(ウエン・チアパオ)首相が、呼びかけた言葉として有名である。政府は、現在の不況を「天災」扱いして、国民に我慢を強いているのだ。


    (4)「上海市政府は最近、ポジティブエネルギーを人民に注入する一方で、不動産不況のネガティブ情報を流したSNSアカウントを次々削除・凍結した。その数は、計11万件に上る」

     

    シンガポール華字メディア『連合早報』(12月18日付)は、上海市に続き北京市も不動産市場の先行きを悲観的にあおる情報を取り締まったと報じた。記事によると、北京市の住宅都市建設委員会はこのほど、複数の部門と合同で、インターネットプラットフォームを呼び出し、市の不動産市場について悲観的にあおる内容や虚偽の物件情報などを点検して直ちに削除するとともに、常態化した内部審査メカニズムを確立するよう求めた。住宅にまつわる暗い記事の削除である。不都合なことは、「見ざる・言わざる・聞かざる」のという徹底的な情報管理を行っている。

     

     

     

     

     

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