中国の輸出依存経済は、世界中から非難の的である。ダンピング輸出であり、「近隣窮乏化政策」であるからだ。こういう身勝手な政策は、これ以上は続けられない限界点だ。世界銀行のインダーミット・ギル上級副総裁兼チーフエコノミストは、中国の一人当たり国民所得は今後、停滞して「中所得国の罠」に嵌まる危険性を指摘している。
『日本経済新聞 電子版』(12月20日付)は、「『貿易のゆがみが成長下押し』世銀上級副総裁 中国の輸出主導は限界」と題する記事を掲載した。
世界銀行のインダーミット・ギル上級副総裁兼チーフエコノミストは日本経済新聞のインタビューで「米国の関税引き上げによる不確実性は薄れたが、2026年にかけては貿易のゆがみが下押し圧力となるだろう」と予測した。輸出主導で内需が弱い中国の成長が鈍化する可能性にも言及した。
(1)「世銀は25年の世界経済の成長率予測を6月時点の2.3%から2.7%に上方修正した。年央にはトランプ米政権の関税政策が貿易や投資、消費を大幅に減少させるとみていたが、予想以上に経済活動が持ちこたえていると判断した。ギル氏は26年の成長率を2%台半ばと見込む。新型コロナウイルス禍前の10〜19年平均の3.2%を下回る状況が続く。「貿易体制が根本的に変わるとは思わないが、これまでのような米国市場へのアクセスは維持されないだろう。(米国以外の)輸出が輸入を大幅に上回る状態が長く続くとは考えにくい」と述べた」
世界経済成長率が3%を割れば、「不振」と位置づけられている。25~26年は、いずれも3%以下の予測である。トランプ関税が、巻き起こした部分もある。
(2)「さらに、「米国の関税引き上げばかりが関心を集めるが、欧州や日本などの非関税障壁による貿易のゆがみもかなり大きくなっている」とした。世銀の報告書によると、安全認証や独自規格といった非関税障壁は貿易全体の90%に影響を与えている。その比率は1990年代後半の15%から大幅に上昇した。東アジア、とくに中国経済が多くの問題を抱えていると指摘した。「たとえばインドは内需が成長を支えており、生産年齢人口(15〜64歳)は40年まで高水準だ。中国は依然として外需が成長をけん引し、個人消費の割合が低い」と分析した」
中国は、外需が成長をけん引するという異常事態だ。個人消費の割合が極めて低い結果だ。
(3)「中国は、GDPに占める個人消費の割合をみると、40%にとどまる。米国の68%やインドの61%、日本の55%に比べて低い。10月の米中首脳会談を経て米国が対中関税を引き下げたとはいえ、中国は米国向け輸出が伸び悩んで内需の弱さをカバーしきれなくなるおそれがある。少子高齢化や人口減少が急速に進み、労働生産性が低下するリスクも抱えている」
中国は、少子高齢化や人口減少が急速に進み、労働生産性低下のリスクを抱えている。こういう基本的脆弱性に対して、台湾侵攻という「国是」を抱えて製造業中心経済を修正できないジレンマに立たされている。戦争するには、製造業の過剰生産能力を抱えていなければならないからだ。
(4)「中国が、成長途上で失速する「中所得国のわな」にはまる可能性も示唆した。中国の1人あたり国民総所得(GNI)は24年で1万3660ドル(約212万円)で、約3万6000ドルの日本や8万ドルを超す米国とは開きがある。世銀が、毎年7月にインフレを加味して定める高所得国の基準(1万4000ドル)に迫るものの、これから数年は不動産不況や人民元安の影響をうけ高所得国を目前にして伸びが鈍っていた。さらにギル氏は「チリのように2万ドルの壁を越えるのに苦労する国は多い」と語った。そのうえで、「内需が不足しているからといって、日米など先進国の需要に頼るのはもはや的確な戦略とはいえない。中国は債務水準も非常に高く、政府投資への依存も是正すべき不均衡だ」との認識を示した」
中国経済は、「戦争か平和か」という重大な選択を迫られている。台湾問題が、中国経済を浮沈の瀬戸際に立たせているからだ。このジレンマが、皮肉にも中国を「中所得国の罠」に追い込んでいる。平和を選択すれば、製造業中心から脱して個人消費へシフト可能だ。
(5)「26年にかけて世界経済が大きく崩れることがないとみるのは米国経済が堅調だからだ。「財政赤字の削減は必要だが、経済を引っ張っているのは政府ではなく民間部門だ。企業が激しく競争し、勝者が敗者の技術者らを雇用してさらに成長する仕組みが整っている。個人消費も非常に安定している」と強調した。米国以外の先進国では「投資が減り、人口動態が変わり、生産性が低下している。これらの要因を逆転させる必要がある」と語った」
米国経済については、楽観的見通しだ。民間経済が堅調としている。だが、物価問題を抱えている。11月の鈍化はデータの「未整備」が原因との見方もされている。





