勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2026年01月

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    習近平中国国家主席は、人民解放軍中央軍事委員会副主席張又侠氏ら2名を粛清した。この唐突な事態は、深刻な経済停滞と台湾侵攻作戦遅延で、習氏が焦っていたことを示している。習氏が、人民解放軍へ深い猜疑心を持っていることを裏付けた。こういう局面で、高市首相の「台湾発言」が飛び出したのである。習氏が、これに本能的に反応して激烈な日本批判を始めた。こういう、新たな見方が出ている。

     

    『ニューズウィーク日本語版オンライン』(1月30日付)は、「高市首相の発言は正しかった...『対中圧力』と『揺れるアメリカ』に向き合う『日本の戦略』とは?」と題する記事を掲載した。筆者は、元CIA工作員グレン・カール氏である。

     

    中国政府が台湾に武力を行使すれば、それは日本にとって自衛隊の出動を正当化する「存立危機事態」になり得る──高市早苗首相が昨年11月の国会答弁で述べたこの言葉は、日本政府の長年にわたる立場を再確認したものにすぎない。だから無視してもよさそうなのに、中国側の反応は不自然なほどに過剰だった。

     

    (1)「中国軍が昨年12月下旬、台湾を包囲する実弾演習を実施して民間機の発着を阻害し、10万人以上の旅客に影響を与えた。それは米国のナンシー・ペロシ下院議長(当時)が台湾を訪問した2022年以来の大規模な軍事演習だった。日本の指導者が台湾について発言することには必ずリスクが伴う。現に中国は今回も怒ってみせた。しかし私は、この激烈な反応も実は米国と台湾に向けた、さらには国内に向けた戦略的な動きではないかとみている。そして高市首相の周辺も同様な見方をしていると思う」

     

    中国が、昨年11月の高市「台湾発言」以来、過激な言動と中国軍の台湾包囲の大演習を行い日本への不満を表わした。だが、本当の狙いは、米国と台湾に向けた牽制であるという。

     

    (2)「だが横暴で身勝手な大国の常として、中国は高市首相の政策を自国の覇権に対する脅威と見なす(実際は中国の脅威に対する反応なのだが)。だから生意気な高市には、その無礼な言動への代償を払わせねばならないということになる。中国は高市の「存立危機事態」発言に不快感を示す一方で、台湾周辺での大規模な軍事演習によって米国をも挑発したのだ」

     

    高市発言は、米軍の台湾防衛出動を前提にしている。中国としては、日本牽制が米国と台湾へ向けた警告でもあろう。

     

    (3)「昨年12月17日、トランプは急に気が変わったのか、台湾の主権に対する中国の脅威に対抗する形で台湾に111億ドル相当の武器を売却すると発表した。単一の武器取引としては米・台湾間で史上最大の規模だ。この支援は台湾の主権を守るという米国政府の長年にわたる約束に沿うものだが、「米国ファースト」の範囲を超えた国外への軍事的関与を嫌うトランプ流の孤立主義とは矛盾していた。その12日後、中国は台湾周辺で威嚇的な軍事演習を実施し、日本から台湾への空路・海路を実質的に遮断することで怒りを表明した」

     

    米国トランプ氏は、日中の対立に何ら発言しなかったが、台湾へ111億ドル相当の武器を売却すると発表。米国は、中国の牽制に対して「武器売却」で回答した。間接的な高市発言支持である。

     

    (4)「中国は、米中間で「大いなる取引」というアメを見せておいてムチを振るう一方、日本に対しては罰を与え、日本が果たそうとする自立した戦略的役割を無力化する試みだった。中国は台湾や日本の領海に対する侵犯の頻度も上げており、国際的に公海と認知されている海域での主権主張も繰り返している。高市発言を含め、台湾や南シナ海における主権の主張に反対するいかなる発言も許さず、それを自らの行動規範を押し付ける機会として利用するのが中国流だ」

     

    中国は、強い米国へは「微笑」を送る一方で、日本へは「罰」を与えるという傲慢な振舞をしている。かつて日本が、ODAで3兆円も支援したことを忘れた顔である。こうして中国は、対外的に強気姿勢である。だが、問題は国内で発生している。


    (5)「高市発言への過剰な反応の背景には、中国の国内事情や軍・政府部内の腐敗もありそうだ。その攻撃的な姿勢は見せかけにすぎず、中国軍が依然として台湾を占領する能力を持たず、腐敗や効率の悪さに苦しんでいる事実を隠したいだけだという解釈も成り立つ。現に習は汚職その他の不正行為を口実に、何十人もの高級将校を解任または更迭している。こうした動きや高市発言に対する過剰反応から透けて見えるのは、中国が自らの能力に対して抱く不安感であり、いかに習政権の国内基盤が盤石でも、国際社会では思いどおりにいかないことへの焦りではないか」

     

    習氏が、「一日千秋」の思いで過ごしている台湾侵攻作戦は、中国軍内部から「無理」という声が出ている。習氏は、これに対して粛清というムチを振るっている。絶対に許さないという姿勢だ。習氏は、軍事教育を受けた経験がない。こうした「軍事の素人」が、国家のトップに座って「勝利」を夢見るという最悪な状態にある。犠牲は軍隊、果実は習近平という構図である。

     

    (6)「皮肉なもので、中国共産党は国内の抗争や腐敗で支配の正統性が脅かされるたびにナショナリズムを鼓舞してきた。反日感情と「反植民地主義」に代表されるナショナリズムと台湾の併合、そして経済成長こそが、辛うじてその正統性を支えてきた。気が付けば中国の共産主義は習の個人崇拝に変質し、個人の権利は国家の優越に従属させられ、治安と安保が最優先の国になっている。だからこそ中国側は高市発言に食い付き、日本を悪者にすることで国民の不満のガス抜きを図った。つまり、高市首相の発言も日本の政策も正しいが、国内外の複雑な力関係が錯綜するなかで条件反射的な反発を招いたと言える」

     

    高市発言は、習氏が焦っている最中に飛び出した。習氏は、これを絶好の機会と捉えてナショナリズムを煽っているにすぎない。問題の本質は、中国国内にある。

     

     

     

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    中国経済は、不動産バブル崩壊後遺症によって金融危機へ発展しかねないリスクを抱えている。不動産不況の長期化が、地方政府債務を累増させ、投資の停滞と家計消費の不振を招いているからだ。中国経済の実体は、改革以来の後退局面に陥っている。これと歩調を合わせるように、政治面でも、習氏が人民解放軍中央軍事委員会副主席の張又侠氏ら二人を粛清した。こうした経済不振と軍事における人事の混乱は、中国にとってどういう意味を持つのか。国家として、極めて危険なシグナルである。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月27日付)は、「中国の退廃と軍幹部粛清」と題する記事を掲載した。

     

    粛清の波によって人民解放軍の高位の人物が次々に失脚する中で、張又侠氏は手出しできない存在に見えていた。張氏は習近平国家主席に抜てきされ、共産党政治局員を務めるとともに、軍の序列で習氏に次ぐナンバー2に当たる中央軍事委員会副主席の地位にあった。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が最初に報じた24日の軍最高幹部向け会合で、張氏が家族との不正共謀から核兵器を巡る米国への機密漏えいに至るまで、ありとあらゆる疑惑で告発されたことが報告された。

     

    (1)「このニュース自体が衝撃的なものだったが、これに関する論説記事はさらに不気味だった。有力な中国ウオッチャーのビル・ビショップ氏が自身のニュースレター「シノシズム」に掲載した翻訳によると、人民解放軍の日刊紙「解放軍報」の論説記事では、両容疑者は「政治的問題や腐敗を深刻なまでに助長し、軍に対する党の絶対的指導力に影響を与え、党の統治基盤を危険にさらした。(中略)彼らは軍の政治構造や政治体系、戦闘能力の構築に甚大な打撃を与え、党・国家・軍に極めて悪質な影響を及ぼした」と書かれていた」

     

    追放された2人の軍最高幹部は、「悪人」扱いである。真相はどうなのか。習氏が、経済疲弊と台湾侵攻問題で行き詰まった結果と読むべきだ。これが、専制主義国家の最後の「あがき」として浮上するありふれた事態である。習氏の焦りである。

     

    (2)「この文言からは、習氏の最も信頼する側近の1人が金銭的な不正行為に関与しただけでなく、習氏に対して陰謀を企てていたことが示唆されている。軍事クーデターが未然に防がれたのか。最高指導者を中心に固く結束しているイメージを常に打ち出している中国指導部だが、実際は派閥争いがあり、分裂しているのか。一般市民よりもはるかに多くの情報を持つ高官らは、習氏が導く中国の未来に懸念を抱いていたのだろうか」

     

    人民解放軍は、統一と団結が特色である。真相は、漏れてこない。ただ、何十年後には「習氏の独断」という形で暴露されるに違いない。

     

    (3)「米大統領の予測不能さ、多くの西側諸国の首脳の無能さ、そして多くの民主主義社会における政治不安や社会的対立が、自由な政治体制の持続可能性や有効性に疑問を投げ掛ける中、中国の粛清は他の政治体制にも欠点があることを思い起こさせてくれる。中国のような体制では、健全で自浄的な方策は機能し得ない。党が重要な状況への対応を間違えば間違うほど、当局者やメディアはより大きな声で一斉に党指導部を称賛しなくてはならないからだ」

     

    西側諸国では、トランプ米大統領など日常的に批判の対象になっている。中国では逆だ。賞賛され尽くしている。

     

    (4)「中国のほぼすべての世帯は、破滅的で非人間的な一人っ子政策の影響を受けている。この政策は国全体に人口動態上の危機をもたらした。しかし、誰も反対できなかった。今、それを強制した残酷で誤った考えを持った指導者たちに説明責任を要求できる人は誰もいない。中央政府の数十年にわたる誤った政策がもたらした、当然予想できたはずの不動産バブル崩壊によって、何百万もの世帯が生涯の貯蓄を失った。中央政府は、腐敗した地方政府の当局者や強力な利益集団にけしかけられて政策を実行していた。これについても誰も何も言うことができない」

     

    専制主義国家は短期的には成功しても、長期的には腐敗する。批判することが許されないからだ。米国のトランプ批判は、中間選挙という関門によって「浄化」される。中国には、こういう自浄組織が存在しないのだ。

     

    (5)「専制主義の官僚政治体制は短・中期的にはうまく機能することが多かった。ルイ14世、ナポレオン、ドイツ帝国、ヒトラー、東条英機、スターリンには、いずれも好調な時期があった。しかし、絶対的権力者に付きものの有害な孤立が彼らの洞察力を鈍らせ、社会の能力を損なうといった流れが何度も繰り返されてきた。中国に現在突き付けられている問題は、張又侠氏が軍事機密を米国に売り渡したかどうかではない。これまで破滅と敗北に追い込まれてきた歴史上の多くの専制主義体制と同様に、中国共産党が専制主義的退廃の犠牲になりつつあるのかどうかだ」

     

    中国共産党は、これまで敗北に追い込まれてきた歴史上の多くの専制主義体制と同様に、専制主義的退廃の犠牲になりつつあるのか。客観的言えば、そういう危険性が高まっている。経済危機という時限爆弾が、中国の専制主義を追詰めるのだ。

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    高市早苗首相が、若い女性の間で高い人気という。「働く女性」のシンボルのような存在になってきた。高市氏が、使っているボールペンやバッグの売行きが良いのも、高市氏への憧れという解説まで登場している。ただ、こういう「ふあっと人気」は萎むのも早いという警告もある。さて、どうなるか。

     

    『毎日新聞 電子版』(1月30日付)は、「サナ活は選挙を動かすか 政策は知らないけど『働く姿に憧れ』」と題する記事を掲載した。

     

    高市早苗政権が初めて有権者の審判を受ける衆院選では、若者や無党派層の動向が注目されている。世論調査では若い世代ほど内閣支持率が高い傾向にあるが、何が支持を生み、交流サイト(SNS)はどう影響しているのか。実像を探った。

     

    (1)「『高市早苗さん、応援したくなる首相だ』。会社員の女性(27)は2025年11月、TikTokに高市氏を応援する「サナ活」のショート動画を投稿した。高市氏が記者会見などで用いる三菱鉛筆のピンクのボールペンを、女性が使って勉強する内容。「しっかりサナ活」とテロップを付けると、5万回以上再生された。サナ活は高市氏の名前から取った「推し活」の一種だ」

     

    日本で初の女性首相である。働く女性には、何か親近感があるようだ。「働いて、働いて、、、」の台詞がすっかり定着している。

     

    (2)「高市氏のニュース映像から持ち物を特定し、同じものを買い求める現象がSNSで話題になった。官邸入りの際に手にするトートバッグは注文が殺到し、販売会社によると入荷は9ヶ月待ちという。「正直、首相が代わることも知らなかった」。女性は取材にそう明かす。サナ活という言葉はSNSで知った。当初は韓国の人気女性グループ「TWICE」メンバーのサナを推す活動のことだと思ったが、調べたら「まさかの高市首相だった」。たまたま同じボールペンを持っていて「なんとなくSNSに載せたらプチバズりした」と振り返る」

     

    高市氏の手にしているトートバッグは、注文が殺到して9ヶ月待ちという。野球の大谷選手並みの人気である。

     

    (3)「女性にとって、高市氏は「働く女性のお手本のような存在」だ。政策は詳しく知らなくても「働く姿勢に憧れる」という。高市氏が、韓国コスメを使っていると聞くと身近に感じ、外交の場で堂々としている姿を「カッコいい」と思う。今月16日、高市氏がイタリアのメローニ首相の誕生日を祝う歌をイタリア語で披露する姿をTikTokで見て感銘を受けた。衆院選の投票に行くかどうかは決めていない。「SNSでしか政治を目にする機会がなく、切り抜き動画だと偏りが出るので情報の取捨選択が難しい」「候補者が誰一人分からないので、票を入れるのもどうなのか」と迷いを打ち明けた」

     

    これまでに日本の首相タイプからみれば、高市氏は華やかな存在に映るのであろう。ドラムは叩くし、イタリアの唄も原語で歌う。「タレント並み」である。首相という威厳のある立場が、隣の「おばさん」というイメージを与え身近な存在にさせているのであろう。

     

    (4)「東京都内の国立大に通う男性(24)も、強い支持というより、ふわっとした期待を寄せる若者の一人だ。「個別の政策や実績では判断できない」が、なんとなく「好印象を持つ」という。「僕の周りでも、強気で常に笑顔で、流行語にもなった『働いて、働いて、働いて……』という発言がなんか信頼できるという意見が強い」と話した。専門家はどう見ているのか。SNSを用いた情報分析などを行う「JX通信社」の米重克洋社長は、若者がインターネット上の情報を重視するようになった「メディアシフト」を挙げる」

     

    24年から生まれたSNSを使った選挙運動が、若い層のニーズのピタリ合っている。映像として流れているからだ。

     

    (5)「公益財団法人「新聞通信調査会」の調査によると、25年の参院選で投票先を決める際に参考にしたメディアは「民放テレビ」と答えた人が42.5%で最も多く、NHKテレビ(36.5%)、新聞(33.8%)と続いた。しかし、年代別で見ると、20代が参考にしたのは1位がインターネット(SNS以外)で44.4%。2位はX(ツイッター)など「短文投稿型SNS」で34.6%、3位はYouTubeなどの動画投稿・共有型SNSで29.8%だった。30代も似た傾向にあり、若い世代ほどSNSを参考にする比率が高かった」

     

    SNSは、若い世代ほど参考にされている。選挙も、この波に乗れるかどうかが勝敗を左右する時代になった。

     

    (6)「米重氏は、「SNSでは保守的な主張をしたり、積極財政を訴えたりするインフルエンサーが多く、拡散力が強い」と指摘。こうした方向性と軌を一にする高市氏について「歴代で最も『ネット地盤』が強い首相と言える」と語る。特に若い世代はインフレの影響を受けやすいため、高市氏が唱える積極財政への期待感が高いと分析する」

     

    高市氏が、唱える積極財政への期待感は、若い層ほど高いという。財政によって、景気がさらに良くなるという期待だ。だが、危険である。円安を促進して生活を圧迫するからだ。

     

     

    あじさいのたまご
       

    トランプ大統領は1月26日、SNSを通じ、米韓首脳が昨年11月に合意した関税引き下げ措置を2カ月半ぶりに元に戻すと宣言し、韓国政府を震え上がらせた。トランプ氏は、「韓国の議会がわれわれの歴史的な貿易協定を立法化しなかった」とし、韓国製自動車、木材、医薬品の品目関税と相互関税を15%から25%に引き上げると明らかにした。

     

    これを受けて、韓国の金正官(キム・ジョングァン)産業通商部長官が29日、米国を緊急訪問しラトニック米商務長官と緊急会談を行った。90分の会談を行ったが結論はでず

    で、再会談することになった。

     

    公平に見て、韓国に落ち度がある。韓国の対米投資の法的根拠となる「韓米戦略的投資管理に向けた特別法」は、いまだに韓国国会で議決されていないのだ。米国は、韓国が3500億ドル規模の対米投資をする条件として、特別法が韓国国会に提出されればその月の1日付で遡及し関税を引き下げることにした。

     

    現実は、米国が昨年11月26日に関税を11月1日付で遡及して引き下げたのだ。韓国国会は、こういう米国の「好意」に報いず、2カ月にわたり案件上程すらされていない状態で放置してきた。トランプ氏が、「爆弾」を落としたのは当然であろう。韓国が、国家間の約束を守らなかったからだ。

     

    『中央日報』(1月28日付)は、「トランプ氏の関税圧力、原則を守り緻密な対応を」と題する社説を掲載した。

     

    トランプ米大統領が、昨年7月末に妥結した韓米関税交渉と11月の両国首脳間で再確認した合意を一方的に覆した。トランプ大統領は26日(現地時間)、韓国製品に対する関税を貿易合意以前の水準に再び引き上げるという内容をSNSに投稿した。自動車・木材・医薬品などの関税を15%から25%に引き上げるという内容だ。

     

    (1)「トランプ大統領は、韓国国会が韓米間の貿易合意履行に必要な法的手続きを進めていないと主張した。相互関税の違法性の是非に関する米連邦最高裁判所の判決が近く下される予定であるだけに、韓国を圧迫して対米投資の可視的な成果を早く示したいと考えたのだろう。現在、韓国国会に係留されている「対米投資特別法」を巡って国内に異論はあるものの、この法案が対米投資の根拠法であり、年間200億ドルの対米投資を今年開始することで合意している以上、法案の国会通過自体は予定された事実だ。トランプ氏の関税圧力は、同盟国である国会の適法な国内手続きに過度に介入しているという点でも不適切な処置だ。トランプ氏の関税撤回が、圧力止まりに終わることを願うばかりだ」

     

    韓国は、トランプ関税が米最高裁で違法判決が出るのを待って、わざと国会での審査を遅らせていた。トランプ氏は、これに気づき激怒したのであろう。韓国が、安保で最大の後ろ盾である米国との約束を履行しなかったのは、逃げ隠れできない話であろう。韓国の誠意が疑われる。

     

    (2)「ただし、トランプ大統領の突発的な関税撤回が、韓米間のコミュニケーションの亀裂を露呈させただけでなく、我が政府の対応の甘さを示しているという点は懸念せざるを得ない。最近、訪米してJD・バンス副大統領と会談した金民錫(キム・ミンソク)首相は、「米国とのホットライン」構築を成果として掲げた。金首相は、トランプ政府が関税交渉の履行に関して韓国政府に抱いている不満の深刻さを、全く感知できていなかったというのか」

     

    韓国が、約束を守らなかったという大きな落ち度がある。国家間の約束は、早急に履行すべきであるからだ。

     

    (3)「米国は2週間前、すでに韓国側に対し、関税交渉の合意事項のうち「米国のビッグテック企業に対する差別禁止」の履行を促す書簡を送ってきたという。駐韓米国大使代理が送ったこの書簡が、たとえ対米投資特別法の話ではなかったとしても、韓国に対する不満を公式に表明したものである以上、政府は問題意識を持ってより積極的に対処すべきだった」

     

    米国は、韓国へこれまで種々の「不満」を伝えてきていた。それらを敏感に処理しなかった「甘え」が、問題を大きくしたのだ。

     

    (4)「李在明(イ・ジェミョン)大統領は新年記者会見で、米国の半導体関税圧力に対し「一喜一憂していては軸を据えることができない」とし、「自分たちの軸を明確に持ち、定められた方針と原則に従って対応していけばよい」と述べた。しかし、トランプ氏の関税撤回騒動に見るように、韓米間に不信と誤解が積み重なり、破綻へと突き進むようなことがあってはならない。関税だけでなく、クーパン(Coupang)事態やデジタル規制などを巡り、両国間の不協和音は鮮明になっている。政府はまず、米国の意図を正確に把握し、国益最優先の原則の下、慎重かつ緻密に対処すべきである。国会も政争を止め、政府と積極的に協力することを促す」

     

    クーパン問題とは、次のような米韓での行き違いによる。韓国最大のEC企業クーパンが、米国市場へ上場したことから、米国はクーパンを米国企業として扱っている。これに対して韓国政府は、クーパンを韓国企業として扱い種々の調査を行っている。米国政府がこれを違法として韓国へ抗議しているもの。これが、米国側には「米国企業への不当な規制」と映っていると報じられているのだ。この双方の行き違いは、微妙な問題である。

     

     

     

    テイカカズラ
       

    衆議院選挙は、冷え込んだ日中関係の行方を占う上でも注目されている。安倍晋三元首相が、強い政権基盤を背景に中国との関係を立て直したように、高市首相が大勝すれば、圧力をかけ続けてきた中国は、戦略変更を迫られる可能性が出る。日本の政府関係者や外交の専門家らは、こう見ているという。

     

    『ロイター』(1月30日付)は、「日中関係の行方占う衆院選、高市氏勝利なら中国は戦略変更も」と題する記事を掲載した。

     

    「このタイミングの解散総選挙はとてもプラスだ」。高市氏が記者会見で衆院解散を表明してから数日後の1月下旬、安全保障政策に携わる日本の政策関係者はロイターにこう語った。

     

    (1)「念頭にあるのは膠着状態にある日中関係だ。このままでは改善の糸口さえつかめないままに両国の溝は深まり続けてしまう。同関係者は「中国は弱い政権だと『いじめ尽くしてやろう』『追い込めばもっと良い政権に代えられるかもしれない』と考えるが、強い政権なら『いじめる戦略じゃない方がいいかもしれない』と考える」と分析し、「高市氏が選挙に勝てば、中国にとってインセンティブになる」と期待を寄せた」

     

    今回の衆院選は、日中外交の今後を占う重要なポイントになる。高市氏は、大勝しない限り中国を動かすことは難しいとしている。

     

    (2)「防衛事務次官や内閣官房参与などを歴任した島田和久氏は、「中国はおそらく当初、高市政権を倒そうという発想だったと思う」と言う。「少数与党で政権基盤が弱いと、中国は足元を見る。日本国内の世論の分断を狙ってくる。だから今回の選挙は非常に重要だ」と語る。日本初の女性宰相となった高市氏は、日中関係が悪化する中でも高い支持率を維持している。29日付の読売新聞と日本経済新聞の世論調査によると、個人的な人気を追い風に衆院選は自民党が単独過半数をうかがう情勢だ」

     

    中国は当初、高市政権が弱いとみて揺さぶってきた。それが、国民の反中意識へ火を付ける結果となれば、全くの失敗になる。

     

    (3)「前出の政府関係者は、「レアアースの輸出規制までやったのに高市首相が勝つとすると、中国としては『この方法では日本の政権を痛めつけられない』となるだろう」と話す。いくらプレッシャーをかけても日本国内の分断が進まないという証明となり、中国の戦略が意味をなさなくなるというわけだ。加えて、「圧力をかけていたはずの中国側にとって良くない経済データが出てくる。中国が世界に訴える『日本が右傾化した』という言説が国際社会で広がらない実感が出てくる。この条件が揃えば中国は日本と向き合わざるを得なくなる」とも語る」

     

    日本のレアアース事情はここ1~2年、中国依存が続く。だが、その先は明るい展望だ。日本の化学的精錬法が世界で普及し始めることと、南鳥島のレアアース開発が軌道に乗る。これらが実現の暁は、中国優勢という状況が消えるのだ。

     

    (4)「とはいえ、現時点で中国が方針転換する兆候はない。政治アナリストらが「近年で最も予測困難な選挙」と評する今回の選挙で、高市氏率いる自民が勢いを保ったまま投開票を迎える保証はないからだ。衆院選で比較第1党を目指す「中道改革連合」は、主要政策として対中関係を盛り込み、「中国に対する懸念への毅然とした対応と、国益確保を両立させる中長期的視点に立った戦略的互恵関係の構築」を掲げている」

     

    中国が、選挙期間中日本批判すれば、確実に自民党の得票を増やすであろう。中道は、その割を喰う形となる。

     

    (5)「高市氏が、与党内でも予想外のタイミングで衆院を解散し、総選挙に打って出たのは、国政選挙で連勝して盤石な政権基盤を築いた安倍元首相の影響があると秘書官を務めた島田氏は見る。安倍氏の場合、2012年末の第2次政権発足前から日中関係は悪化していた。同年10月に当時の民主党政権が尖閣諸島(中国名:釣魚島)を国有化したのが主な原因だ。それでも安倍氏は13年7月の参院選で圧勝。同年末に靖国神社を参拝して対中関係は一層冷え込んだが、翌14年11月には習氏との初会談を実現した」

     

    安倍晋三元首相は、選挙戦で強かったので中国も一目置くほかなかった。民意を反映していたからだ。

     

    (6)「島田氏は、「安倍政権の時も最初は2年近く首脳会談ができなかった。その間も、その後も選挙に勝ち続け、非常に強固な体制を築いた。そうなると中国も安倍政権を相手にせざるを得なくなった」と振り返る。ユーラシア・グループの北東アジア担当上級アナリスト、ジェレミー・チャン氏は、自民が単独過半数(233)を確保できるかどうかが高市氏の勝利を測る指標だと指摘する。定数465の衆議院で現在の198議席から35議席を上積みする必要がある」

     

    高市氏の勝利を測る指標は、自民党が単独過半数を取るかどうかにかかっている。

     

    (7)「チャン氏は、「実現すれば高市氏が今後数年間首相の座にとどまる可能性が高く、圧力をかける中国の戦略が裏目に出たというシグナルを中国に送ることができる」と、言う。「逆に、勝利が小幅にとどまれば、中国は日本に対する威圧を強める可能性が高い」と指摘する」

     

    高市氏が単独過半数を得られれば今後、数年間は首相の座にいることが可能とみる意見も出ている。逆に、小幅勝利では中国の威圧が高まるとしている。対中関係を展望する上でも、今回の衆院選は重要なポイントである。

     

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