勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2026年01月

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    米国がベネズエラの大統領を拘束したことにより、中南米の指導者らにとって中国との関係強化は魅力を増すと同時に、より複雑なものになるだろう。米軍の「急襲」があり得るからだ。

     

    ベネズエラのマドゥロ大統領は中国の特使と会談したわずか数時間後、そして米中両国が相反する中南米構想を公表して数週間後というタイミングで、米軍によって「拉致された」(マドゥロ氏)。トランプ米大統領は「敵対的な外国が侵入したり、重要資産を所有したりしない」西半球を望んでいる。

     

    一方、中国の習近平国家主席は中国を中南米およびカリブ地域の開発パートナーとして位置付けようとしている。中国は昨年12月10日、「中国のラテンアメリカ・カリブ海政策文書」を9年ぶりに改定し、こうした文言を盛り込んだ。米国の「裏庭」とも言われ、地球の反対側に位置する中南米諸国との連携を強調し、影響力拡大に乗り出した格好だった。それが、米軍のベネズエラ強襲で一変した。

     

    『ロイター』(1月8日付)は、「複雑化した中国の中南米戦略、米国のベネズエラ攻撃で環境一変」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国は中南米に非常に大きな利害関係を持っている。中国の経済誌「財新」今週、通関データを引用して報道したところでは、中国がベネズエラから輸入している原油は全体の1%未満に過ぎないが、中南米地域とのつながりは重要であり、さらに拡大している。2024年、同地域の国々は中国の海外貿易の少なくとも8%を占め、これには比亜迪(BYD)や奇瑞汽車(チェリー)の電気自動車(EV)など主要製品が含まれていた」

     

    中国は、中南米の資源開発と自動車の販売先として重視している。

     

    (2)「同地域は原油、鉱物、大豆など、重要資源や食料の調達先を多様化する中国の取り組みの柱でもある。中国は中南米で、投資が不足している鉱業プロジェクトやインフラ事業に開発資金を流し込み、その過程で同地域における最大債権国の1つとなった。国営の中国開発銀行は24年末までに、中南米21カ国に対し1600億ドルの資金提供を行ったと報告している。中国は、ペルーのチャンカイに建設された35億ドル規模の深海メガポートなどのプロジェクトに融資を行ってきた。同港の主要投資家の1つは中国遠洋海運集団(コスコ)だ」

     

    中国は、24年末までに中南米21カ国へ1600億ドルの融資をしている。港湾へも積極融資を行っている。港湾を重視するのは物流を抑えるという意味だ。本格的なチャイナ化を狙っているのだろう。それにしても、米国の足下で大胆な振舞である。米国覇権へ対抗するという「底意」をみせてきたのだ。ここへ降って湧いたベネズエラ強襲事件である。米国の中国への反撃が始まったとみるべきであろう。

      

    (3)「18年以降、中南米の約22カ国が「一帯一路」構想に参加している。そして昨年、トランプ氏が関税戦争を始めると、習氏はさらなる投資と開発支援を約束することでこれに応じた。こうした支援の多くは、最終的に対中貿易を支えるだろうが、中国には、こうした大盤振る舞いが台湾を一層孤立させることにつながるとの期待もあったかもしれない。実際、台湾と外交関係を維持している世界12カ国のうち、7カ国は中南米の国々だ」

     

    中国は、台湾孤立を狙って大盤振る舞いしてきた。中南米の豊富な資源開発を狙ってきたことは事実だ。独善外交の弊害で、都市部住民からは嫌われている。ただ、農村地帯では「カネづる」としての期待があるという。ASEAN(東南アジア諸国連合)同様に、評判が悪いのだ。

     

    (4)「ベネズエラは本来、パキスタンやベラルーシと並んで中国の「全天候型戦略的パートナー」の1つになるはずだった。しかし、マドゥロ氏の現在の状況は、中国の影響力の限界を浮き彫りにしている。米軍による中南米指導者らの拘束という事態が現実的なリスクとなった今、中国は中南米に市場を開放し、中国からの投資拡大を受け入れ続けてもらうため、これまで以上の誘因を提供する必要があるかもしれない」

     

    中国は、ベネズエラへ肩入れしてきただけに苦しい立場だ。激高して、4月とされるトランプ訪中をキャンセルする方法もあろうが、現在のところは「我慢一筋」である。そのトボッチリが日本へ向けられた。レアアース輸出の禁止である。中国の鬱憤を日本へ向けたのだ。これで、国内向けに「強い中国」を演出している積もりなのだろう。日本が、長期に描く反撃戦略も知らないでいるのだ。

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    中国は、レアアース(希土類)やレアアース磁石の日本向け輸出を制限し始めた。これは、世界の半導体や自動車メーカー、軍事産業向けの部品生産にレアアースを使っている日本企業に大きな打撃をもたらす可能性がある。この動きは、台湾を巡る紛争に日本が関与する可能性を示唆した高市早苗首相の発言に対する中国政府の制裁措置だ。中国は、台湾を統合するために、必要なら武力行使も辞さない構えを示している。国内不況をカムフラージュする一環である。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月8日付)は、「中国、レアアースの対日輸出を制限 輸出審査停止も」と題する記事を掲載した。

     

    中国は、ジェットエンジンから自動車までさまざまな製品の生産に不可欠なレアアースを、経済的な武器として使っている。

     

    (1)「中国が昨年、米国企業に対するレアアース輸出を停止したことで、ドナルド・トランプ米大統領は中国との貿易戦争で後退を余儀なくされた。米国の緊密な同盟国で主要な産業パートナーである日本への新たな輸出制限は、中国政府が地政学的な影響力を行使するために、引き続きレアアースを活用しようとしていることを物語っている。中国は6日、軍民両用のいわゆる「デュアルユース」品目の多くについて、対日輸出を禁止すると発表した。中国の輸出業者2社によると、中国はそれ以降、希少で高価な「ヘビー」レアアースと、それを含有する強力な磁石の日本企業向け輸出を制限し始めた」

     

    日本は今回、感情的な報復や即時の対抗措置に走ることなく、「制度・技術・外交の三位一体」で静かに構え、長期的な自立と信頼の構築を選んでいる。中国のように感情的な言葉を発することもなく、「深く静かに」多国間協議を進めるのだ。日本・米国・豪州3カ国による鉱物協定も存在する。鉱物の探査から採掘・精錬・再活用にいたるすべての過程で提携を強化するもので注目されている。

     

    日米豪3カ国協力の本質は、役割分担の体系化だ。豪州は資源採掘を、日本は精製・加工技術を、米国は巨大な需要市場と制度的インセンティブ(IRAなど)をそれぞれ担う。これは単純な購買ライン多角化でなく、規範・金融・技術を結合したサプライチェーン生態系の構築だ。特定国家の資源武器化に対応する集団的防御装置でもある。

     

    中期的には、日本が28年から南鳥島のレアアースに商業ベースの採掘が始まる。精錬法は、従来の物理的精錬から化学的精錬へ転換する日本独特の技術だ。中国よりもはるかに安い生産コストとされている。世界的レアアース価格引下げにも寄与するので、中国のレアアース寡占体制が崩される。今回が、日本を威圧する「最後の機会」となろう。中国は、こうした「強圧行為」によって国際社会の信頼感を失っていくのだ。代わりに,日本へ信頼が集まる仕組みになっている。

     

    (2)「中国政府の決定に詳しい別の関係者は、日本向け輸出申請の審査が停止されたと明らかにした。それによると、輸出許可の制限は日本の産業全体に及び、防衛企業だけを対象としたものではないという。国営メディアの「チャイナ・デイリー」は今週、中国が日本向け特定レアアース製品の輸出許可の審査を厳格化することを検討していると報じた。日本外務省の船越健裕事務次官は8日午後、中国の呉江浩駐日大使と会談し、軍民両用品の輸出管理措置を撤回するよう求めた」

     

    日本向け輸出申請の審査は、停止されたことが明らかになった。日本は、2~3ヶ月分の政府在庫がある。企業も在庫があるはずだから、目先で不足する事態とはならないであろう。

     

    (3)「中国商務省は同日、民生用製品の輸出には影響しないと説明。同省報道官は「目的は(日本の)再軍備化と核を巡る野心を阻止することで、この措置は完全に正当かつ合理的で合法的だ」と述べた」

     

    中国の目的は、(日本の)再軍備化と核を巡る野心を阻止することだという。勝手な理由を付けている。独裁国家が、民主主義国家への挑戦状を突きつけているのだ。

     

     

     

    あじさいのたまご
       

    中国は、焦っている。日本を孤立させようと懸命に動いているが、これまで何らの効果も出ていないことからレアアース輸出禁輸をちらつかせてきた。中国は、日本の経済支援で現在の経済成長ができた「恩」を忘れて、日本の軍国主義を罰するがごとき振舞をしている。レアアースが、いつまでも中国の「独占物」ではない。日本は、28年以降に南鳥島でレアアース開発を開始する。そうなれば、中国のレアアース主権は消えるのだ。こういう事情も分らずに、騒ぎ立てている。不思議な国だ。

     

    『毎日新聞 電子版』(1月7日付)は、「中国、禁輸『あいまい戦術』で圧迫 高市氏高支持率に透けるいらだち」と題する記事を掲載した。

     

    日本政府は7日、中国が日本への軍民両用(デュアルユース)品目の輸出を禁止すると発表したことに強く抗議し、措置の撤回を求めたと発表した。外務省の金井正彰アジア大洋州局長が在日中国大使館の施泳次席公使に「日本のみをターゲットにした今般の措置は国際的な慣行と大きく異なり許容できず、極めて遺憾だ」と伝えた。

     

    (1)「日本を狙い撃ちにした中国側の措置は、同国からのレアアース(希土類)などの輸入に影響が出る可能性があり、民間企業は日中両政府の対応を注視している。中国外務省の毛寧報道局長は7日の記者会見で、「高市首相の台湾に関する誤った発言は中国の主権と領土の一体性を侵害した。日本側が誤りを正し、発言を撤回するよう求める」と、日本を狙い撃ちにした輸出禁止措置をそう正当化した」

     

    台湾有事は、日本有事であることに変わりない。日本の防衛政策は、そうした前提で組立てられている。高市発言の有無にかかわらず、自衛隊は米軍と行動をともにするであろうことは中国自身が認識している。これが、中国の台湾侵攻抑止力として働いているのだ。

     

    (2)「そもそも中国は、軍事転用可能な製品や技術の輸出を厳しく制限してきた。その対象には無人航空機(ドローン)や半導体などの製造に不可欠な一部のレアアースも含まれる。今回のポイントは「軍民両用」がどこまで対象範囲と解釈されるかだ。商務省は6日の発表文で「日本の軍事力向上につながるあらゆるエンドユーザーや用途への輸出を禁止する」と説明。民生品向けのレアアースを含む余地を残すあいまいな表現となった。恣意(しい)的な運用が懸念されるほか、中国側の現場が規制対象ではなくても日本企業との取引を萎縮する事態も予想される」

     

    中国が、日本へレアアース輸出を禁輸したとしても、日本には眠れるレアアース資源が存在している。これが開発されれば、中国の地位を脅かすことは確実である。そういうライバルへ、なんとも身の程知らずな「ムチ」を当てよとしている。中国は、必ずこの「代償」を受ける。日本へ化学的レアアース精錬法を教わりにくるはずだ。その時は,お断りであろう。

     

    (3)「さらに、世界各国の企業に日本へ協力しないよう「踏み絵」を突きつけた意味も重い。商務省は規制範囲が国外にも及び「いかなる国家・地域の組織や個人も(中国原産の対象産品を)日本に移転、提供した場合は法的責任を追及する」とも追記した。中国は採掘で7割、精錬で9割の世界シェアを持つレアアースを度々外交カードとして使ってきた。10年に、尖閣諸島沖での漁船衝突事件に反発した際にも、日本向けのレアアース輸出が滞り、日本の産業に影響が出た。近年は、米国の圧力に対抗する「切り札」ともなっている。25年4月にはトランプ米政権の相互関税を受け、7つのレアアースを輸出管理の対象に指定。米中交渉で中国優位の状況を作り出した」

     

    中国は、世界各国の企業に日本へ協力しないようにお触れを出すという。これは、日本を余りにも甘くみた処置だ。いよいよ、日本はレアアース精錬の新技術の伝授を拒否すべきである。

     

    (4)「高市首相の発言に対し、中国政府はこれまで日本への渡航自粛の呼びかけなど、自国の経済的打撃を抑えた範囲で反発してきた。今回、フェーズを1段階上げた形だが、運用次第では各国供給網の「脱中国化」を促すなど「もろ刃の剣」となりかねない。それではなぜ、習近平指導部は今になって対日圧力を強化したのか。中国政府は当初、訪日客の減少を通じて日本経済に打撃を与え、高市政権を揺さぶり、答弁撤回へと追い込もうとしていた。ところが、高市政権は高い支持率を維持している」

     

    各国は、中国のこういう荒々し態度に苦り切っているであろう。28年以降、日本はレアアース「大国」として登場する。中国とは互角の勝負を挑む体制が整うのだ。

     

    (5)「次に、中国政府は「日本の軍国主義復活」を唱え、国際世論を味方に付けようとしたが、この試みも功を奏しているとは言い難い。こうした誤算に業を煮やした中国側が、輸出規制の強化へ踏み込んだようだ。そのタイミングは韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が国賓訪中する時期と重なった。習国家主席が李氏を厚遇する姿とあえて対比させ、欧州や東南アジアなどを含む各国に対して日本を「見せしめ」とする効果を狙ったようにも映る。今や中国の官僚機構にとって、高市政権への強硬姿勢は、習氏への忠誠心を示す政治的な意味合いを帯びている。それだけに、中国が振り上げた拳を下ろす時期はまだまだ見通せない」

     

    軍国主義とは、中国自身のことを指すことばだ。経済と軍事が一体化している中国こそ、ミリタリズムに侵されている。中国は、ミリタリズムによって滅びるリスクを抱えている国である。それに気付かないのだ。第二の「ソ連化」である。

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    問われる人型ロボの本質

    ASIMOから現場AI

    革命的な労働力代替効果

    再定義される労働の意義

     

    高市早苗首相は1月5日、三重県伊勢市での年頭記者会見で「財政の持続可能性を確保しながら投資すべき分野に大胆に投資していく」と発言した。具体例として、半導体や人工知能(AI)や宇宙分野を挙げた。また、「日本は(AIとロボットを組み合わせた)フィジカルAIで世界に打って出る」とも強調した。フィジカルAIとは、現場AIのことだ。首相が、念頭記者会見でここまで言い切った裏には、国策半導体企業ラピダスが、世界初の現場AI開発で見通しが立ったのだ。日本が、人型ロボットで勝利者になるだろう。

     

    AIと言えば、「生成AI」を思い浮かべるが、技術はすでにフィジカルAI=現場AIへとシフトしている。静態的な生成AIから、ロボットやクルマを自律的に制御するフィジカルAIへ舞台を移している。日本が、この分野で世界をリードする技術的な見通しがついたことは、意外と知られていないのだ。

     

    日本は,産業ロボットで世界シェア6割である。昨今のメディアを賑わしている人型ロボット(ヒュウマノイド)では、中国が先行している。マラソン大会へ人間と一緒に「出場」するなど話題を振りまいているのだ。このことから、人型ロボットでは中国が最先端というイメージを与えている。だが、「走ったり、踊ったり、お盆を運ぶ」ロボットは、本来の人型ロボットではない。人型ロボットとは、人間の本質的作業をどこまで代替できるかにかかっている。それは、ロボットが見て・聞いて・判断する「脳」を持つことを意味する。

     

    問われる人型ロボの本質

    現状では、人型ロボットの実用化にほど遠いのが実態だ。それにもかかわらず、メディアは、「日本の人型ロボットはなぜ出遅れたか」と報じている。例えば、「日本は、人型ロボットの開発でもリードしていたが、現在は米中の後塵を拝している」(『毎日新聞』12日付)と嘆いているのだ。だが、中国勢が開発する人型ロボットは、腕の力が弱いために、人間との協働作業には向かない根本的欠陥を持っている。そこで、「踊ったり、お盆を運ぶなどの軽作業」を前面に出してPRしているのであろう。

     

    米国のロボット・メーカーは、人型ロボットが過大評価されていると「自己評価」している。科学的な実験から人間の労働代替へと移行する前に、困難な技術的課題に直面していると述べているのだ(『ウォール・ストリート・ジャーナル』(25年12月30日付)。この自己評価こそ、製造現場の苦悩を表わしている。この苦悩の原因は、どこにあるのか。メディアは、そこを素通りしている。本質的問題は、人型ロボットが作業現場で自主的に判断し行動できる先端半導体がまだ、世界中で製造されていない結果である。

     

    産業用ロボットは、「正確に同じ動きを繰り返す達人」である。一方の人型ロボットは、「環境に応じて柔軟に対応する労働者」と位置づけられる。この「柔軟な対応」こそ、先端半導体の果す役割である。

        

    冒頭に挙げた高市首相発言は、「日本がフィジカルAIで世界に打って出る」と強調した。これは、人型ロボットが人間と協働作業できる「フィジカルAI(人工知能)」段階へ発展するという意味である。つまり、「現場AI」を日本企業によって実現すると世界へ宣言したのである。フィジカルとは、身体的動作を意味する。それを司る(脳)AIが、日本の国策半導体企業ラピダスによって、27年春に量産化される技術的見通しがついたのだ。これは、日本が世界へ誇る「革命的」な技術開発である。

    人類が、夢見てきた労働という「苦役」の軽減は、人型ロボットによって一部でも代替可能になることは、これまでにない快挙である。産業革命以降の歴史は、機械化によって人間の労働を軽減する過程であった。それが、人間と協働する現場まで近づいてきたことは、大きなエポックである。その人型ロボットを動かす脳である現場AIが、日本企業によって生み出されようとしていることは、日本経済はもちろんのこと、世界経済へも大きな「福音」となることが間違いないであろう。

     

    人型ロボットが登場する背景には、労働力不足という動かしがたい事実がある。日本は、生産年齢人口(15~64歳)比率が、58.78%(2024年)と先進工業国で最低である。少子高齢化の進行によって今後、さらに低下する宿命にある。この事態を解決するには、現場AIを開発する以外に道がないのだ。ラピダスが、現場AI開発で見通しを付けたことにより、日本経済は大きな翼を得た。高市首相が、年頭記者会見で発言した裏には、深い安堵感があったのであろう。

     

    ASIMOから現場AI

    日本は、かつて人型ロボットで世界をリードしていた。ホンダが2000年に、「ASIMO(アシモ)」を発表して話題となった。その後、開発が進まず22年に表舞台から姿を消した。人型ロボットが、歩いたり走ったりダンスをしたりするパフォーマンスだけなら、日本が20年前に実現していたことだ。ASIMOがなぜ消えたか。詳しい事情は不明だが、半導体の進歩がみられなかったのであろう。

     

    「踊ったり、お盆を運ぶ」程度の人的ロボットは、以下のような古いタイプの半導体を組み合わせている。つまり、成熟半導体で十分にその役割を果すことが分る。(省略)以上のように、「オールド半導体」で動く人型ロボットは本来、メディアの報道するほど派手な存在でないのだ。米国ロボット企業は、新たな機能を付加する上で苦悩している。これこそが、真実である。ラピダスが開発している現場AIは、2ナノである。このレベルの最先端半導体が登場しなければ、人的ロボットが現場で「見たり・聞いたり・判断して」瞬時に行動することができないとされている。(つづく)

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    中国商務省は1月6日、今年の第1号公告として「日本に対する軍民両用物資の輸出規制強化に関する告示」を発表し、軍事用途に使用可能なすべての物資の日本輸出を禁止すると発表した。この規定は同日から適用される。このうち、軍民両用物資には先端製造業に欠かせないレアアースをはじめとする戦略鉱物、半導体、ドローン(無人機)などが含まれる。

     

    中国のこの措置に対して日本政府は落ち着いた対応だ。赤沢亮正経済産業相は7日夜、民放のテレビ番組に出演し、中国が発表したデュアルユース(軍民両用品)の日本向け輸出管理の強化について「米国やG7(主要7カ国)各国をはじめとする関係国とも連携の上、冷静かつ毅然に必要な対応を行っていく」と述べた。輸出管理の具体的な対象品目は現時点で分かっておらず、日本経済への影響は「精査中」だとした。

     

    『日本経済新聞 電子版』(1月7付)は、「中国がレアアースで対日規制か 車・機械『輸なら影響重大』」と題する記事を掲載した。

     

    中国政府が軍民両用(デュアルユース)の規制に基づいて日本への輸出規制を強化することを決めた。レアアース(希土類)関連製品も対象に含むとの見方もあり、自動車や電子部品、工作機械などの幅広い産業に影響する可能性がある。

     

    (1)「中国商務省は6日、輸出管理法に基づいて日本に対するデュアルユースの規制を即日で厳格にすると公表した。商務省はレアアースを含むかは明らかにしていないが、重希土類は電気自動車(EV)から兵器まで幅広いハイテク製品に不可欠とされる。中国政府は日本で軍事にかかわる顧客への輸出を禁じるほか、日本の軍事力向上につながるすべての輸出を禁止するとしている」

     

    中国が,日本へ喧嘩をふっかけてきた。国内経済不振の不満を日本へ向けさせる狙いだ。日本は、ここで慌てることはない。28年には、南鳥島のレアアースが操業予定である。これを「担保」に、米国などから一時的に借入れも可能だ。中国は、米国へ喧嘩を売れないので日本へ向けている。経済産業省が、G7各国と協議するとしているのは、「一時的借入れ」措置を考えているのであろう。

     

    (2)「EVのモーター用磁石の製造でレアアースを使用しているプロテリアル(旧日立金属)は「当社製品が軍事用途に使われていることは一切ない」とコメントした。レアアースは半導体や電子部品などに幅広く使われるため製品出荷後の流れを把握しきれず、「軍事用に絶対に使われていないと断言するのは難しい」(業界関係者)との見方もある。木原稔官房長官は7日の記者会見で、中国政府が日本に対するデュアルユース品目の輸出管理を強化したことについて、外務省などから抗議し、撤回を求めたと明らかにした。「国際的な慣行と大きく異なり、決して許容できず、極めて遺憾だ」と述べた。レアアースが含まれるかどうかを問われると「措置の対象など不明瞭な点も多く、日本産業への影響などコメントは差し控える」と話した」

     

    中国の嫌がらせには、ドカーンと大きい「球」を打ち込むことも必要だが、ここはまともに相手にしないことだ。関係を持たないことが、中国への拒否反応に通じることなろう。

     

    (3)「レアアースが含まれれば、企業活動への影響は避けられない。例えばEVやハイブリッド車(HV)の駆動用モーターにはネオジム磁石という強力な磁石が搭載される。耐熱性を高めるために添加するジスプロシウムとテルビウムは、生産地が中国に集中する。2025年4月に米国の相互関税への報復の一環で中国政府が7種類のレアアースの輸出規制に踏み切った際には、日本の自動車大手が生産の一時停止に追い込まれた。豊田通商の今井斗志光社長はレアアースについて「中国からの輸出が止められたら本当にクリティカル(重大)だ」と自動車供給網への影響を危惧する。汎用的な半導体のような代替手段がなく「日米韓で国を挙げて対応していくしかない」と指摘する」

     

    業界でやりくりする方法もあるし、政府機関が直接、斡旋する方法もあろう。

     

    (4)「レアアースを巡っては、10年にも尖閣諸島問題で中国が日本へのレアアース輸出を制限し、供給が逼迫した。この教訓から各社はリスク低減に動いてきた。ミネベアミツミはスマートフォンカメラの手ぶれ補正を助ける駆動装置(アクチュエーター)を手がけている。レアアースを使わない製品を開発し、既存製品との置き換えが進んでいる。一方で、貝沼由久会長CEO(最高経営責任者)は、「日本企業全般に向けての規制なら製品の脱レアアースを進めなくてはならない」と強調する」

     

    脱レアアースという方法もある。2010年には、この方法も広く採用された。

     

    (5)「日本は調達先の多様化も進め、オーストラリアやカザフスタンなどと鉱山開発などの分野で連携を強化してきた。海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、1月に南鳥島沖でレアアースの試験掘削を始める。世界のレアアース生産の大半を中国が担うなか、国産資源の開発にも踏み出している。経済産業省も所管するエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じて民間の鉱山開発や製錬事業を支援する。これまでは銅のみだった支援対象をそれ以外にも広げる。関連予算を25年度の補正予算に計上した。JOGMECによる重要鉱物の備蓄を増やすための経費を支給し供給網が途絶えることも防ぐ。鉱山開発支援なども含めて25年度の補正予算に937億円を計上した」

     

    日本は、2010年に中国のレアアース輸出禁止に遭遇している。その後、企業別で対策が練られたはずだ。今になって、大騒ぎする日本企業はいささか油断していたという誹りを免れないであろう。

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