米国がベネズエラの大統領を拘束したことにより、中南米の指導者らにとって中国との関係強化は魅力を増すと同時に、より複雑なものになるだろう。米軍の「急襲」があり得るからだ。
ベネズエラのマドゥロ大統領は中国の特使と会談したわずか数時間後、そして米中両国が相反する中南米構想を公表して数週間後というタイミングで、米軍によって「拉致された」(マドゥロ氏)。トランプ米大統領は「敵対的な外国が侵入したり、重要資産を所有したりしない」西半球を望んでいる。
一方、中国の習近平国家主席は中国を中南米およびカリブ地域の開発パートナーとして位置付けようとしている。中国は昨年12月10日、「中国のラテンアメリカ・カリブ海政策文書」を9年ぶりに改定し、こうした文言を盛り込んだ。米国の「裏庭」とも言われ、地球の反対側に位置する中南米諸国との連携を強調し、影響力拡大に乗り出した格好だった。それが、米軍のベネズエラ強襲で一変した。
『ロイター』(1月8日付)は、「複雑化した中国の中南米戦略、米国のベネズエラ攻撃で環境一変」と題する記事を掲載した。
(1)「中国は中南米に非常に大きな利害関係を持っている。中国の経済誌「財新」今週、通関データを引用して報道したところでは、中国がベネズエラから輸入している原油は全体の1%未満に過ぎないが、中南米地域とのつながりは重要であり、さらに拡大している。2024年、同地域の国々は中国の海外貿易の少なくとも8%を占め、これには比亜迪(BYD)や奇瑞汽車(チェリー)の電気自動車(EV)など主要製品が含まれていた」
中国は、中南米の資源開発と自動車の販売先として重視している。
(2)「同地域は原油、鉱物、大豆など、重要資源や食料の調達先を多様化する中国の取り組みの柱でもある。中国は中南米で、投資が不足している鉱業プロジェクトやインフラ事業に開発資金を流し込み、その過程で同地域における最大債権国の1つとなった。国営の中国開発銀行は24年末までに、中南米21カ国に対し1600億ドルの資金提供を行ったと報告している。中国は、ペルーのチャンカイに建設された35億ドル規模の深海メガポートなどのプロジェクトに融資を行ってきた。同港の主要投資家の1つは中国遠洋海運集団(コスコ)だ」
中国は、24年末までに中南米21カ国へ1600億ドルの融資をしている。港湾へも積極融資を行っている。港湾を重視するのは物流を抑えるという意味だ。本格的なチャイナ化を狙っているのだろう。それにしても、米国の足下で大胆な振舞である。米国覇権へ対抗するという「底意」をみせてきたのだ。ここへ降って湧いたベネズエラ強襲事件である。米国の中国への反撃が始まったとみるべきであろう。
(3)「18年以降、中南米の約22カ国が「一帯一路」構想に参加している。そして昨年、トランプ氏が関税戦争を始めると、習氏はさらなる投資と開発支援を約束することでこれに応じた。こうした支援の多くは、最終的に対中貿易を支えるだろうが、中国には、こうした大盤振る舞いが台湾を一層孤立させることにつながるとの期待もあったかもしれない。実際、台湾と外交関係を維持している世界12カ国のうち、7カ国は中南米の国々だ」
中国は、台湾孤立を狙って大盤振る舞いしてきた。中南米の豊富な資源開発を狙ってきたことは事実だ。独善外交の弊害で、都市部住民からは嫌われている。ただ、農村地帯では「カネづる」としての期待があるという。ASEAN(東南アジア諸国連合)同様に、評判が悪いのだ。
(4)「ベネズエラは本来、パキスタンやベラルーシと並んで中国の「全天候型戦略的パートナー」の1つになるはずだった。しかし、マドゥロ氏の現在の状況は、中国の影響力の限界を浮き彫りにしている。米軍による中南米指導者らの拘束という事態が現実的なリスクとなった今、中国は中南米に市場を開放し、中国からの投資拡大を受け入れ続けてもらうため、これまで以上の誘因を提供する必要があるかもしれない」
中国は、ベネズエラへ肩入れしてきただけに苦しい立場だ。激高して、4月とされるトランプ訪中をキャンセルする方法もあろうが、現在のところは「我慢一筋」である。そのトボッチリが日本へ向けられた。レアアース輸出の禁止である。中国の鬱憤を日本へ向けたのだ。これで、国内向けに「強い中国」を演出している積もりなのだろう。日本が、長期に描く反撃戦略も知らないでいるのだ。





